第18話「熱きバトルを求めて!」
ズドドドドド!!
グラビトンビレッジからあの大きな崖へと向かう途中で、二人のビー玉が凄まじい量の連射をぶつけあっていた。
超速連射を可能とするショートストロークトリガーを搭載しているホーリープリンスとシルバの連射に押されていくヒスイとジェイドガンナー。
シルバ「ふぉっふぉっふぉ!」
ヒスイ「くっ!!」
シルバのショットを必死で防御するヒスイ。
だが、シルバのショットはどんどん近づいて来る。
ヒスイ「くそっ!!」
まともにぶつかり合っても勝てないと判断したヒスイは、すばやく身を翻し、シルバのショットをかわす。
シルバ「!?」
ヒスイ「いけっ!」
そして、シルバの横につき、ショットを撃つ。
シルバ「むっ!」
しかし、そのショットはホーリープリンスのヘッドの角をかすっただけだ。
セシル「惜しい・・・!」
シルバ「ほう、なかなかやりおるのう、若僧。じゃが・・・。」
再びシルバの猛攻。
ヒスイ「くっ!」
ヒスイはまたもかわしながらシルバを攻撃。
ヒスイ「はぁ・・・はぁ・・・!」
さすがに疲れてきた。
シルバ「ふっふっふ、そんなに動き回って・・・いつまで持つかのう?」
しかし、心なしか、シルバの方が疲れているように見える。
シルバ「ぜぇ・・・ぜぇ・・・!」
ヒスイ「いっけー!!」
ヒスイのショット。真っ直ぐシルバに向かって飛んでいく。
シルバ「くっ・・!」
シルバはよろめいてそれをかわす。
シルバ「(さ、さすがに疲れてきたのう・・・このままじゃと血圧が上がってしまう・・・!)」
ピタリと、シルバの攻撃がやんだ。
セシル「??」
ヒスイ「ど、どうして撃たないんですか!?」
シルバ「ふ・・・ふふ、今日はこのくらいにしといてやろう。」
そう言って、シルバはよろよろしながら去って行った。
ヒスイ「ふぅ・・・何にせよ、助かりました~。」
ヒスイはため息をつき、その場にヘタリこむ。
ヒスイ「はぁ・・・はぁ・・・!さ、さすがに最初からワンハンドミッションを使うのは無茶でした・・・。」
セシル「だ、大丈夫!?」
ヒスイ「えぇ、こんなの、ちょっと休めば・・・あぁ、でもちょっと運動不足かも。」
ヒスイは天を仰ぎながら大きく息を吐いた。その時だった。
???「は~い、カットカット!なんだあのバトルは!」
どこからか、映画監督のようなセリフが聞こえてきた。
セシル「え?」
振り向くと、そこには一人の少年が不機嫌そうに立っていた。
セシル「君・・・誰?」
???「ったく・・・お前もいっぱしのビーダーならさ、もっと熱いバトルしてみろってんだよ!」
どうやら、熱血少年のようだ。拳を握り締めて熱く語っている。
セシル「だから、誰なのよ?いきなりやってきて・・・。」
ジョー「俺か?俺は、ジョーだ!荒波ジョー!熱きバトルを求めて旅を続けている熱血ビーダーさ!」
親指で自分の事を指し、歯をチラリと見せる。当然、その歯はキラッと光る。
ヒスイ「は・・・はぁ・・・。」
セシル「熱血・・・ねぇ・・・。」
完全に引いているヒスイとセシル。かなりウザいタイプのキャラだ。
ジョー「そんな事より。なんだよ、あの冷めきったバトルは!あんなんじゃ全然ダメだ!」
ヒスイ「ダメって言われても・・・。」
ジョー「そんなんじゃ、この業界生きていけないぞ!」
ヒスイ「業界って・・・。役者じゃあるまいし・・・。」
何故だかジョーに叱られるヒスイ。
セシル「でも、十分激しいバトルだったと思うけど・・・?」
ジョー「ちっが~う!!」
ジョーは疑問の一言を呟いたセシルを激しく指差した。
セシル「(びくっ!)」
ジョー「熱いバトルってのはさ・・・熱いバトルってのはさ・・・激しければいいってわけじゃないんだよ!」
またも拳を握り締め、語りだすジョー。
ヒスイ「・・・。」
セシル「・・・・。」
とりあえず黙って聞く事にした。
お行儀良く正座する。でも、屋外で正座するのって・・・結構きつい(笑)
ジョー「そう、熱いバトルって言うのは、お互いを認め合い、そして全ての力を出し尽くしてぶつかりあう!そして何より、楽しむ事が大事なんだ!そこのお前!」
ビシッ!とヒスイを指差すジョー。
ヒスイ「は、はい!」
条件反射で返事するヒスイ。
ジョー「さっきのバトル・・・お前は全然楽しんでなかった・・・!そう、二人ともただ勝つ事だけに必死になっていた!それが冷めきったバトルだって言うんだよ!!」
ヒスイ「勝つ事だけにって言うか・・・負けるわけにはいかないし・・・・。」
B-フォースとのバトルはただの遊びではない。負けるわけにはいかない戦いを楽しむことなど出来るわけがない。
が、ジョーはそんなヒスイの言葉を聞くつもりはないようだ。
ジョー「口答えは許さん!!!」
ピシャリと言い放ってヒスイのセリフを遮断した。
セシル「それに、あれは向こうから襲ってきたんだから、楽しめるわけ無いよ。」
ジョー「問答無用じゃ~!!あぁ・・・熱いバトルが見たい・・・最近いいバトルがないなぁ・・・・あぁ・・・欲求不満だ・・・!!」
この少年、人間の三大欲求の一つである、戦欲に飢えているようだ。
ジョー「と、言うわけで君!」
ジョーはまたヒスイを指差す。
ヒスイ「ぼ、僕?」
ヒスイは唐突に指を差されてキョトンとする。
ジョー「俺とバトルしようじゃないか!!」
ヒスイ「え、えぇ・・!?」
突然のバトルの申し込み。さすがにすぐには返事が出来なかった。
セシル「(こんなに無駄に長い前フリしておきながら結局それ?)」
ヒスイ「ま、まぁ・・・構いませんけど。」
困惑しながらもOKするヒスイ。
セシル「いいの?さっきのバトルで疲れてるんじゃない?」
ヒスイ「大丈夫ですよ。もう大分回復しましたから。それにいろんなビーダーと戦ってデータを集めるのは損ではありませんし・・・。」
クイッとメガネを上げるヒスイの表情はもう戦闘モードに入っていた。
ジョー「カーッ!!」
突如、ジョーが渇を入れる。
ヒスイ「(びくっ!)」
セシル「な、なに・・・いきなり・・・!?」
ジョー「だから違うって言ってんだろうがよ!!」
ヒスイ「ち、違うって・・・・?」
ジョー「データ集めだとか、損だとか得だとか、そんなものは一切考えないで思いっきり楽しもうぜ!それがバトルだろう!先の事も前の事も考えるな!ビーダーなら思いっきりビー魂をぶつけ合おうぜ!」
ヒスイ「・・・・・・。」
ジョーの言葉に面食らうヒスイだが、徐々にその顔が引き締まっていく。
ヒスイ「そうですね。どうせやるなら、思いっきりやりましょう!」
ジョー「そう来なくっちゃな!よし、久々に出陣だ!ウェイブギル!!」
ジョーがウェイブギルを取り出す。バレルが特徴的な、見た事もない水色のビーダマンだ。
ヒスイ「そのビーダマンは・・・!?」
セシル「新型!?」
ジョー「そう!俺が熱いバトルをするために作り上げた最高に熱いビーダマンさ!」
ヒスイ「面白そうですね・・・!」
見た事の無いビーダマンを見て、俄然やる気になるヒスイ。
ジョー「そんじゃ、はじめるぜぇ・・・!」
セシル「ちょっと待って!ルールはどうするの?」
ジョー「さっきお前らがやってたのと同じでかまわねぇよ!いいから早くやろうぜ!体がうずいてしょうがねぇ!!」
ヒスイ「は、はい!」
ビーダマンを構えて対峙する二人。
ジョー「ビーファイア!!」
ジョーの合図とともに一斉に動く二人。
まずヒスイは間合いを取るためにジョーから離れる。
ジョー「いっくぜ~~!!」
一方ジョーは先手必勝と言わんばかりにヒスイに猛攻撃を仕掛ける。
ヒスイ「くっ!!」
ジョーのショットを全て撃ち落す。
ヒスイ「クロウほどではないが、凄いパワーショットですね・・・。しかも、狙いが正確だ!」
ジョー「見たか!これがウェイブギルの力だぜ!」
ヒスイ「そっちがパワーと精度のビーダマンなら・・・!」
ヒスイがジェイドシールドをローラーシールドブースターに取り付ける。
ヒスイ「こっちは補充スピードと連射スピードを極めた連射型です!!ワンハンドミッション!!」
ワンハンドミッション発動。
猛スピードでビー玉をチャージし、連射する。
ジョー「す、すげぇ連射だ!!」
向かってくる連射をパワーショットで防ぐジョー。いくら手数が多くても、一発一発の威力が低い。
しかし、その連射は徐々に威力を増していく。
ジョー「なんだ・・・?」
ヒスイ「・・・・。」
ヒスイが連射しながら歩いてジョーに近づいているのだ。
距離が近くなったので、威力が上がったのだ。
ジョー「ちっ!最初に離れたのはこう言う事かよ!」
ヒスイ「ふふふ・・・。」
どんどん押されていくジョー。
カンッ!
そして、ヒスイのショットの一つが、ウェイブギルに当たる。
ジョー「くそっ!」
やむを得ず、その場を動いてやりすごす。
そして、動いたと同時に、ヒスイに向かって一発撃ちこむ。
ジョー「喰らえ!」
ドキュンッ!
ジョーのショットはヒスイの横腹に向かって突っ込んでいく。
ヒスイ「・・・。」
カンッ!!
しかし、あっさり止められる。
ヒスイ「動きながら狙えるとは・・・コントロール性能は半端じゃない、と言う事ですか。」
ジョー「まぁな。お前も、この俺と互角に戦えるなんてやるじゃねぇか!」
ヒスイ「どうも!」
再びジェイドガンナーからビー玉の嵐が巻き起こる。
ジョー「うおおおおおおお!!!」
ジョーのパワーショット。
二三発撃ち、ヒスイのショットを全て弾く。
ジョー「ふ・・・ふふふ・・・。おもしれぇ・・・!!」
ヒスイ「え・・・?」
ジョー「こんなにおもしれぇバトルは本当に久しぶりだ・・・!ウェイブギル・・・久々にお前の本当のショットが撃てそうだぜ!」
ヒスイ「本当のショット・・・?」
ジョー「ふふふ。」
カチャッ!
ジョーは既にビー玉が装填されているのにも関わらず、ウェイブギルのバックルにビー玉を込めた。
ヒスイ「・・・何を・・・?」
ジョー「喰らえ!ファングバースト!!」
ウェイブギルからパワーショットが放たれる。
ドキュンッ!ズバアア!!
ヒスイ「!?」
セシル「あれ・・・?」
しかし、そのショットは、今までのパワーショットよりも若干遅い。
ヒスイ「そ、そんなショットくらいで・・・!」
ヒスイは今までのように連射でそれを止めようとする。
しかし・・・!
ヒスイ「え・・・!?」
ヒスイの連射はことごとく、その遅いショットに弾かれる。
ヒスイ「そんな・・・!?」
セシル「なんで!?なんでヒスイの連射があんな遅い玉を止められないの!?」
ジョー「ふっふっふ。」
ヒスイ「くっ!」
ガキンッ!!
成す術も無く、ジョーのショットがヒットしてしまう。
ヒスイ「こ、これは・・・!」
ジェイドガンナーに当たり、地面に落ちたビー玉を見たヒスイが驚きの声を上げる。
ヒスイ「二つ・・・!?今、二つの玉が当たったのか!?」
セシル「え・・・一発しか撃ってなかったと思うけど?」
ヒスイ「まさか・・・ダブルバーストが撃てるんですか!?」
セシル「ダブルバーストって・・・?」
ヒスイ「一発のショットで二つの玉を同時に撃つ事が出来る技ですよ!」
ジョー「そうさ。俺のウェイブギルは、ホールドパーツ内だけでなく、バックルの中にもビー玉を溜め込む事が出来る。そしてその状態のまま撃てば、ダブルバーストを放つ事が出来るのさ!」
ヒスイ「なるほど・・・。さすがにそんな撃ち方じゃ、一発一発の威力は半減する・・・でも二つの玉が同時に発射される事で、威力は二倍になる・・!見たところ、さっきのショットは従来の80%くらいのスピードでした・・・80+80=160・・・通常の1,6倍の威力って事ですね。」
ジョー「はっはっは!どうだ凄いだろ!!」
ヒスイ「ええ。こんなビーダマン、今まで見た事ありませんよ!まさか、ZEROシステムでは不可能だと思われていたダブルバーストを実現するなんて!」
ジョー「そんなにほめんなよ、照れるじゃねぇか~!まぁでも、バトルはまだまだこれからだぜ!」
ヒスイ「ええ!」
“俺の攻撃にここまで耐えるとはたいしたもんだ。でも、これで終わりだ。”
クロウの言葉が脳裏に浮かぶ。
ヒスイ「(クロウとの戦い以来ですね、こんなバトルは・・・!)」
再びビーダマンを構え、戦闘体勢に入る。
バトル再開だ。
ヒスイ「いきますよ!」
ジョー「おお!!」
しかしその時、ジョーの鼻がヒクヒクと動いた。
ジョー「む・・・むむむ!!」
ジョーの動きが止まる。
そして、クンクンと匂いをかぎ始める。
ヒスイ「え・・どうしたんですか?」
ジョー「バトルの匂いだ~!!!こっちか!?」
ジョーは、バトルの匂いがするであろう方向へ走って行ってしまった。
ヒスイ「・・・・・・。」
セシル「なんなのよ、一体・・・。」
ヒスイ「忙しい人ですね・・・。」
つづく
次回予告
クロウ「川に流された俺は、クレアと言う女性に助けられた。しかし、クレアはあるものを持っていて・・・!?
次回!『人の手から手へと』極めろ、強さへの道!」