爆・爆ストーリー ZERO 第17話

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第17話「老いし刺客」
 クロウが行方不明になったその日の夜。ヒスイとセシルは、とりあえず橋を渡ってグラビトンビレッジの宿に泊まる事にした。
セシル「結局・・・見つからなかったね、クロウ。」
ヒスイ「ええ・・・。」
 六畳一間の和室
の中で、セシルとヒスイは卓を挟んで座っている。
セシル「・・・私達、こうしてていいのかな?クロウがまだどこにいるかも分からないのに・・・。もしかして、まだ川に流されてるかもしれない、だとしたら・・・!」

 思考はどんどんネガティブな方向へと転がっていく。

 居ても立っても居られなのだが、何もできない自分に歯がゆさを感じる。
ヒスイ「落ち着いてください。もう外は暗いんです。あのまま探し続けて、僕らが体を壊したりしたら元も子もないでしょう?」

 居ても立っても居られないのはヒスイも同じだろうに、それは表情に出さずにヒスイはセシルをなだめた。
セシル「それは・・・そうだけど・・・。」
ヒスイ「信じましょう。クロウの無事を!」
セシル「うん・・・。」
ヒスイ「(無事でいてください・・・クロウ!)」
セシル「それじゃ、私そろそろ・・・。」
 セシルが立ち上がる。当然の事ながら、二人は別の部屋に泊まるのだ。
ヒスイ「ええ、おやすみなさい。何かあったら言ってください。」
セシル「うん、ありがとう。おやすみ。」
 そう呟き、セシルは自分の部屋に戻って行った。

 扉が閉まるのを確認すると、ヒスイは姿勢を崩して一息ついた。
ヒスイ「(さて・・・どうしたものか・・・。)」
 ヒスイは徐に、ポケットから見た事の無い緑のパーツを取り出す。
ヒスイ「(このままの状態が続くようなら、代わりを探すか・・・だが、そう簡単に見つかるとも思えないし・・・はぁ・・・。)」

 
 その頃・・・。
 廃棄置き場らしき場所では、膝を抱えている女性と、仰向けになっているクロウ、そして二人の間には焚き火がパチパチと音を鳴らしている。
 クロウは上半身裸で、その上に上着らしきものが被されており、女性は膝を抱えたままウトウトとしている。
クロウ「う・・・ん・・・。」
 クロウがうっすらと目を開ける。
女性「あ、気がついた?」
 それに気づいた女性がクロウに話し掛ける。
女性「よかった~。このまま目を覚まさなかったらどうしようかと思ったわ。」
クロウ「あ・・・あんたは・・?」
 上半身を起こすクロウ。まだ意識がはっきりしてないようだ。
女性「私は、クレア。買い物の途中に、川辺で倒れてるあなたを見つけて・・・。」
クロウ「・・・・・。」
 クロウは聞いておきながら上の空だ。まだ回復しきっていないのかもしれない。
クレア「あ、まだ辛い・・?」
 そう言って、クレアはクロウの額に手を添える。
クロウ「!?」
クレア「ん・・・まだちょっと熱があるみたいね・・・。」
クロウ「・・・・。」
 クレアの手の温もりに身を任せ・・・しだいと、クロウの意識が薄れていく。
クロウ「くっ・・・・。」
クレア「無理しなくていいのよ。」
 クレアの言葉に、クロウは少し気が楽になったのか、そのまま仰向けになる。
クレア「大丈夫、私がついてるから・・・。」
 その時・・・!
不良A「おいおい、誰に断ってここで焚き火なんかしてんだよ?」
不良B「ここは俺達の縄張りなんだぜぇ~!!」
 いかにも不良っぽいグループがやってきた。
クレア「!?」
 びっくりして立ち上がるクレア。その事で、不良達に自分の容姿を見せてしまった。
不良C「おっ、ねーちゃん意外と美人じゃん?」
不良D「そんなガキの相手なんかやめて、俺達とあそばね?」
クレア「い・・・いや・・・!」
 クレアは完全におびえ切っている。
クロウ「くっ・・・。」
 クロウは微かに意識を保っている・・・が、体がついていかない。
クロウ「っ・・・・!」
 何も出来ない自分に腹が立つ。
 何よりも、あんな雑魚相手にこんな無様な姿を見せている事に。
クレア「!?」
 不良達がクレアに近づく。
不良A「いいじゃんいいじゃん、遊ぼうぜ~。」
クレア「こ・・こないで・・・!」
 じりじりと近づく不良達に退くクレア。
不良B「そんなに怖がるなよ~。」
不良D「俺達、こう見えても結構イイヒトなんだぜ?」
 不良Aの薄汚い右手がクレアの顎に触れる。
クレア「いやああぁぁ!!!」
 クレアは懐から黄色いものを取り出し、そこから何かを発射した。
不良達「ぐわああああ!!!」
 その発射されたものにはそれほど威力はなかったのだが、なぜか、不良達は気絶してしまった。
クロウ「あれは・・・?」
クレア「はぁ・・・・はぁ・・・。」
 クレアは疲れきった表情で息切れしている。
クロウ「・・・・。」
 あんな光景を見せられ、クロウは完全に覚醒してしまった。
クレア「・・・・・。」
 その様子を見たクレアはクロウの手を引いた。
クロウ「お、おい・・・。」
クレア「行きましょう。」
 
 夜の道を、クロウとクレアが並んで歩く。
クレア「さっきはごめんなさい・・・もっと早く私の家に行けばよかったね。」
クロウ「・・・・・。」
クレア「でも、ここら辺って人里から離れてるし、家までちょっと距離があったから・・・。さすがにあなたを背負っていけなくて・・・。」
クロウ「そうか・・・。」
クレア「大丈夫、肩貸そうか?」
 クロウの体を気遣うクレア。
クロウ「全然大丈夫じゃない。・・・だが、あんたが気にする事じゃない。このくらい、いつもの事だ。」
 そう・・・クロウは常に、このくらい辛い思いをし続けてきたのだ。
クレア「え・・・もしかして病弱とか・・・!?」
クロウ「そういう意味じゃない。」
クレア「(他にどういう意味が?)」
 そして、クロウとクレアは、クレアの家に向かった・・・。
 ・・・・・。
 ・・。
 翌日。B-フォースのアジト。
シルバ「出来たぞい・・・!」
 ついに、シルバのビーダマンが完成したようだ。
レシアス「ついに完成したんですか、あなたのビーダマンが。」
シルバ「そうじゃ、長い道のりじゃった・・・。」
チルド「よかったね、シルバ。」
シルバ「ああ。それで・・・ためし撃ちがしてみたいんじゃが・・。」
レシアス「でしたら、先日、ノワー弁護士からの依頼をこなしてみては?」
シルバ「そうじゃな・・・悪くないかな。」
チルド「あ、ずるいよ。その依頼は僕に譲ってくれるって言ったじゃないか!」
シルバ「悪いな、チルド。今回は我慢してくれ。」
チルド「えぇ・・・。」
レシアス「チルド、あなたにはもっと面白い事をさせてあげますよ。」
チルド「ほんと?約束だよ。」
レシアス「ええ。」
シルバ「それでは、行ってくる。ターゲットはゴルー弁護士じゃったな。」
 シルバは出て行った。
レシアス「(シルバ・・・あなたも私にとって憎むべき相手でした・・でも今は私と同じ被害者・・・出来る限り協力しますよ。)」
 そして、シルバは、ゴルー弁護士のもとへ向かった。
 依頼内容は簡単だ、今度の裁判でノワー弁護士が有利になるように、ゴルー弁護士が遅刻するように足止めしてほしいと言うものだった。
ゴルー「~♪」
 ゴルーはのん気に裁判所までの道のりである、崖沿いの道をあるいていた。
シルバ「いくぞい、ホーリープリンス!!」
 ズドドドド!!
 ホーリープリンスから信じられないほどの連射が放たれる。
 その連射は都合よく崖の上にある丸い岩だ。
 ガ・・・ガ・・・ゴオオオオ!!
 岩は連射によって動き、そのままゴルーの歩いている道に向かって転がっていく。
 ドスンッ!!
 そして、ゴルーの道をふさいでしまった。
シルバ「よし。あそこから回り道をしてたら確実に遅刻じゃな。これで任務完了じゃ。」
 そして、アジトへ帰ろうとするのだが・・・。
セシル「今日こそ、クロウを見つけよう!」
ヒスイ「ええ!」
 セシルとヒスイがクロウを見つけようと意気揚々と歩いていた。
シルバ「あれは・・・。丁度良い。同時に二つの任務をクリアじゃ。」
 シルバが二人の前に現れた。
セシル「!?」
ヒスイ「!?」
シルバ「セシルをこっちに渡して貰おうか!」
セシル「あなたもB-フォース!?」
ヒスイ「(こいつは・・・!?ど、どうなってるんだ、B-フォースってのは!なんで二人も・・・!!)」
 しかし、セシルはB-フォースが現れた事より何よりもシルバの容姿に驚いていた。
セシル「B-フォースって・・・老人じゃない。」
 そう、シルバの姿は、前にも書いたが、白髪にしわだらけの顔、曲がった腰・・・どうみても老人そのものだった。
シルバ「失礼な!俺はまだまだ若いぞい!」
セシル「どこが・・・?どうみても生い先短い老人にしか見えないんだけど・・・。」
シルバ「なんと!?俺は、こう見えても11歳じゃぞ!」
セシル「えぇ・・・?」
 とても信じられない。
ヒスイ「ま、まぁ、信じてあげましょうよ。別に信じようが信じまいが彼が敵である事は間違いないんですし。」
セシル「それは、そうだけど・・・。」
ヒスイ「(大いなる実験か・・・。)」
 ヒスイの脳裏に、ある事が浮かぶ。
 あの忌々しい実験が・・・。
 数々の機材やサンプルの並んだ研究室らしきところで、ヒスイと白衣を着た同い年ぐらいの少年、そしてもう一人、大人の男が立っている。
 大人の男がヒスイと同い年くらいの少年に何かを強要していた。
 激しく抵抗する少年。
 しかし、無理矢理、ある事が実行されて・・・・。
 ヒスイと男が激しく動揺していた・・・どうやら失敗だったようだ・・・そして、その少年の姿はどんどん変わって行って・・・・。

セシル「ヒスイ!」
 セシルの言葉で我に帰るヒスイ。
ヒスイ「!?」
セシル「こんな時になにボーっとしてるの?」
ヒスイ「そ、そうでした・・・。(しかし、まさかシルバとレシアスが協同しているとは・・・意外でしたね。)」
 ホーリープリンセスを構えるシルバ。
ヒスイ「(やはり、ローラー素体を使いますか・・・。昔のままですね。)」
シルバ「行くぞい・・・!」
ヒスイ「・・・・。」
 ヒスイもビーダマンを構える。
セシル「ビー、ファイア!!」
 とりあえず合図するセシル。
ヒスイ「いけっ!ワンハンドミッション!!」
 初っ端からワンハンドミッション。必殺技の出し惜しみをしている場合ではないのだ。
 ワンハンドミッションの力で連射するヒスイ。
シルバ「ふっ・・・・。」
 ズドドドド!!
セシル「え!?」
ヒスイ「なに!?」
 しかし、シルバのホーリープリンスはそれ以上の連射で圧倒する。
ヒスイ「(くっ・・いくら『改良型素体ZERO』を使ってると言っても、ここまでの連射は・・!?)」
シルバ「驚いているようじゃの?」
ヒスイ「!?」
シルバ「ホーリープリンスの連射は半端じゃないぞい!」
 ヒスイはホーリープリンスのトリガーに奇妙な装置が付いてる事に気づいた。
ヒスイ「あれは・・・!?」
シルバ「これこそ、このホーリープリンスの連射を実現する新パーツ!『ショートストロークトリガー』じゃ!」
セシル「しょーとすとろーく・・・?」
ヒスイ「短い動作でビー玉を発射できるって事ですよ!」
シルバ「その通り、このトリガーには特殊機構を組み込み、より短いストロークでビー玉を発射できる!つまり、それだけ連射が可能なんじゃよ!」
 どんどん押されていくヒスイ。
ヒスイ「くっ・・・!どうすれば・・・!」
              つづく
 次回予告
???「はーい、カットカット!なんだ今のバトルは!」
ヒスイ「え、あなた誰ですか?」
???「ビーダーだったらさ、もっと熱いバトルを見せろよ!」
セシル「だから、誰なの?」
???「次回!『熱きバトルを求めて!』イエッヒ~燃えてきたぜ!ビーファイア!!」
ヒスイ「だから誰なんですか~!?」
クロウ「極めろ、強さへの道!」

 

 



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