爆・爆ストーリー ZERO 第16話

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第16話「正義と真実」


 突如襲来して来た新たなB-フォース、レシアス。奴の強力なショットにより、クロウは橋から落ち、激流の川へ・・・!
セシル「クロウーー!!!」
 セシルが下に向かって叫ぶ。しかし、叫んだところで落ちていくクロウは止まらない。

 バシャアアアア!!!

 大きな水しぶきを立てて、クロウは川の中へ吸い込まれていった。
ヒスイ「そんな・・・・そんな、バカな・・・!」
 クロウの敗北を目の当たりにして、ヒスイは呆然とした。
レシアス「ふふふ・・・。この高さからでは助からないでしょう」
 レシアスが微笑しながらゆっくり歩み寄ってくる。
 そんなレシアスをヒスイはキッと睨む。
ヒスイ「(くそっ!こいつ、一体なんのつもりなんだ・・・!あの時の・・・あの事の腹癒せに、俺の妨害でもしようってのか?!)」
 そんな事を考えながらヒスイはジェイドガンナーを構える。
レシアス「同じ目にあいたいんですか?見たところ、あなたはさっきの彼よりも力を持っていない・・・大人しく身を引いたほうが賢明では?」
 そんな、あくまで冷静なレシアスの態度にヒスイは疑問を抱いた。
ヒスイ「(??・・・そうだ、冷静になれ、こいつが気づいているはずが無い・・・。)」
 その時、セシルがヒスイの袖を引っ張る。
セシル「行こう!まだ、間に合うかもしれない!!」
ヒスイ「そ、そうですね・・!」
 セシルとヒスイはきびすを返して走りだした。

レシアス「逃がしませんよ」

 当然黙って見逃してくれるはずもなく、レシアスが追ってくる。

ヒスイ「はぁぁぁぁ!!!」

 ヒスイは目くらましにとジェイドガンナーで猛連射を放った。

レシアス「くっ!」

 咄嗟の弾幕に、レシアスは一瞬気を取られてしまう。

 その隙に、ヒスイとセシルは姿をくらました。

レシアス「逃がしてしまいましたか。」
 逃したにもかかわらず、レシアスは余裕の笑みでヒスイ達が消えたであろう方向を眺めている。
レシアス「まぁいいでしょう。とにかく、これで戦力は半減した。あとは居場所を突き止めてじっくり追い詰めれば依頼は達成できる。」

 そう呟き、レシアスはアジトへと帰っていった。

 
 そして、セシルとヒスイは、崖を下るための坂道を見つけ、そこを下り、川の近くまでやってきた。
セシル「クロウ!クロウ!!」
ヒスイ「クロウ~!!」
 そこで必死にクロウを探すセシルとヒスイ。

 川の浅瀬の所まで入ってバシャバシャと動き回るのだが、流れが早く奥まではいけない。
セシル「クロウ・・・!クロウ・・・!!!」
 その声は、次第に涙声へと変わっていく。
セシル「クロウ・・・・もう、どこにいるのよ・・・!」
ヒスイ「クロウ~!!!」
 ヒスイも必死になっている。
ヒスイ「(くそっ!どこだ!どこ行った・・・!!)」
 必死、と言うより物凄い形相だ。
ヒスイ「(ちぃ・・・!いない・・・いない!!このまま、終わってたまるかよ!)」
セシル「クロウ~!!!」

 と、ヒスイは夢中になりすぎて深瀬になっている所まで足を踏み入れてしまった。

ヒスイ「うわああ!!」

 激流に足を取られ、ヒスイは転倒してしまった。

セシル「ヒスイ!!」

 セシルが慌てて駆け寄ってヒスイの手を掴んだおかげで流されずには済んだ。

セシル「だ、大丈夫・・・!?」

ヒスイ「え、えぇ!」

 ヒスイは近くにある岩に手を添えて立ち上がった。

セシル「心配なのは分かるけど、ヒスイまで流されちゃったら、私は……!」

 セシルは涙声になりながらヒスイを窘めた。

ヒスイ「えぇ、すみません」

 謝りつつも、ヒスイの焦りは消えていないようだった。

 ・・・・。

 ・・・・・・。


 そして、クロウを探してから、一時間くらいが経過した。
セシル「はぁ・・・はぁ・・・。」
 さすがに精神的にも体力的にも疲れてきているようだ。
ヒスイ「なかなか、見つかりませんね・・・。」
セシル「うん・・・。」
ヒスイ「この流れだし、どこかに流されてるのかも・・・・それに、あんな高さから
落ちたんだから、ひょっとして・・・。」
セシル「ヒスイ!」
 セシルは大声を出し、ヒスイに次の言葉を言わせないようにした。そこから先は聞きたくなかったのだ。
ヒスイ「・・・すみません。」
セシル「大丈夫、きっと見つかるよ!クロウの事だもん、どこかでピンピンしてるに決まってる!」
ヒスイ「そうですね。今は信じるしかありませんよね。」
セシル「うん!」
ヒスイ「(そうだ・・・まだ半分も進んでないんだ・・・折角この前いい実験材料も手に入っ
たってのに、ここで中止にするわけにはいかない・・・。)」
 そして、再び捜索を開始した。

 その頃、B-フォースのアジトでは・・・。
 カチャカチャ・・・。
 一人の老人が部屋の隅に設置されている作業場で何やらメカを弄っていた。
男B「シルバ、何してるの・・・?」
 男Bこと、幼い感じの男が老人らしき男・・・シルバに話し掛ける。
シルバ「おお、チルドか。新しいビーダマンを作っておるのじゃよ。」
 幼い感じの男はチルドと言う名前らしい。
チルド「へぇ~、どんなビーダマンなの・・・?」

 チルドは興味津々にシルバの作業場を覗き込んだ。
シルバ「これじゃ。」
 シルバがチルドにビーダマンを見せる。黒い角に、白い耳(?)らしきものが印象的なボディだ。
シルバ「こいつはまだ、試作型じゃが、完成品はもっと凄い機能がつくぞ。」
チルド「へぇ、面白そうだね。僕にも使わせてよ。」

 チルドがそのビーダマンへ手を伸ばそうとすると、シルバはひょいと引っ込めた。
シルバ「ダメじゃ、これは俺専用じゃからのう。」
チルド「ちぇ・・・。はぁ、なんか面白い事無いかなぁ・・・。」

 面白くないといった感じにチルドは軽く舌打ちしてその場を離れた。
 ガチャ。
 そんなやり取りをしてる時、扉が開かれ、レシアスが部屋へ入ってきた。
チルド「あ、お帰り、レシアス。」
シルバ「おぉ、レシアスは例の仕事をしておったんじゃったな。で、どうじゃった?」

 二人に迎えられ、レシアスは揚々と現状報告をする。
レシアス「ええ、惜しくも逃がしてしまいましたが、奴らの戦力を半減させる事に成功しました。」
チルド「と言うと、誰か一人殺ったの?」
 幼い雰囲気からは想像出来ないほど物騒な事を言う。
レシアス「あの黒い少年をですよ。」
シルバ「ほぅ~。」
 シルバは感嘆をあげた。
チルド「凄いね、さすがレシアス。」
 それだけクロウはB-フォースにとっても驚異的な存在だったと言う事だ。
レシアス「どうも。それで、一仕事終わった後の休憩を取りにきたんですが・・・ん?」
 レシアスは部屋を見回す。
レシアス「ジャベンスはどうしましたか?」
シルバ「それが、さっき出てったきりずっと帰ってこないんじゃ。」
レシアス「さっき・・?」
チルド「何があるんだろうね・・?もしかして、面白い事かな・・?」
 


 その噂になっているジャベンスはジュウと一緒にいた。
ジャベンス「勝負でごわす!ジュウあんちゃん!」
ジュウ「おう!!」
 ジャベンスとジュウがビーダマンを構える。
ジュウ&ジャベンス「ビーファイア!!」
 その掛け声とともに二人が一斉にビー玉を放つ。
ジャベンス「ぐおおおお!!!」
 ジャベンスの強力なショット。
ジュウ「うおおおお!!!」
 ジュウもパワーショットを撃つ。
 ガンッ!!!
 空中で激突する二つのビー玉。
 ビーダーのパワーはジャベンスの方が上だが、ビーダマンのパワーはビーストウェーブの方が上だ。
 それゆえ、二つのショットは相打ちになる。
ジュウ「くっ!もう一発!!」
ジャベンス「負けないでごわす!!」
 またパワーショットを撃つ二人。
 ガガガガガガ!!!バンッ!!
 しかし、さっきと同じ結果に終わる。
ジュウ「くっそー!!」
ジャベンス「はあああ!!!」
 また、何度も何度も同じ事を繰り返す。
 お互いの事を知り尽くしている間柄ゆえ、小細工が通じず、真正面からぶつかり合うしかないのだ。
ジュウ「はぁ・・・はぁ・・・!」
ジャベンス「ぜぇ・・ぜぇ・・!」
 そんなバトルをしているので、体力の消耗も激しい。
ジャベンス「これじゃ、キリがないでごわす・・・!」
ジュウ「こうなったら、根競べだな。どっちの体力が先に尽きるか・・・。」
ジャベンス「!?」
ジュウ「となると、スタミナの無いお前は完全不利だ。」
ジャベンス「それはどうでごわすかな?」
ジュウ「なに!?」
ジャベンス「わしには、まだジュウあんちゃんにも見せてない技があるでごわす!」
ジュウ「!?」
ジャベンス「はああぁぁぁ!!」
 ジャベンスが気合を入れる。
ジュウ「何を・・・!?」
 そして、ビーダマンを左手に持ち、右手は拳を握り締め、ビーダマンのトリガーを狙っている。
ジャベンス「これが、わしの必殺技・・・!」
 ジャベンスの右拳がトリガーに叩きつけられる!
ジャベンス「ナックルボンバーでごわす!!!」
 ドンッ!!シュパァー!!
 激しい爆発音を発しながら凄い勢いで飛んでくるショット。
ジュウ「くっ!」
 そのショットに、ジュウは撃ち落そうと必死で連射する。
ジュウ「止まれ!!」
 カンッカンッ!!
 しかし、ジュウのショットは全て弾かれてしまう。
ジュウ「な、なんてパワーだ・・・!」
ジャベンス「無駄でごわすよ。所詮ジュウあんちゃんは・・・B-フォースから逃げたあんちゃんは・・・わしには勝てないんでごわす!!」
 バーン!!
 ジャベンスのショットが当たり、吹っ飛ぶジュウ。
ジュウ「ぐわあああああ!!!」
 ドサッ!!
 そして、地面に叩き付けられ、仰向けに倒れるジュウ。
ジュウ「・・・・・。」
 どうやら気絶してしまったようだ。目を閉じたまま、ピクリとも動かない。
ジャベンス「・・・・・。」
 自分の勝ちを確信したジャベンスは振り向き、歩き出す。
 しかし・・・。
ジュウ「・・・天が呼ぶ・・・地が・・・呼ぶ・・・。」
 後ろから、ジュウの声が聞こえてきた。
ジャベンス「なに!?」
 振り向くと、ジュウが最後の力を振り絞り、立ちあがろうとしているのが見えた。
ジュウ「・・・ビー玉が・・・呼ぶ・・・B-フォースに依存している自分を救ってくれと・・・愛する弟のジャベンスの心がおいらを呼ぶ!!」
 そして、完全に立ち上がる。
ジャベンス「!?」
ジュウ「仮面ビーダー・・・参上!」
ジャベンス「あ、あの技を喰らって・・・立ち上がるんでごわすか・・・!?」
ジュウ「正義の味方は、悪を倒すまで絶対に負けたりしない!」
 そしてジュウはビーストウェーブを横にして、地面に向かってショットした。
 ドキュンッ!ギュルルルル!!
 地面にめり込み、横回転するビー玉。
ジャベンス「・・・?」
 更にジュウは、逆の横にして地面にめり込んでいるビー玉に向かって撃つ。
 ドキュンッ!!
 逆回転のビー玉同士がぶつかりあい、お互いに回転を与え合っている。
 ビュウウウウ~・・・!
ジャベンス「?」
 その時、ジャベンスはわずかに風が変わった事を感じた。
ジャベンス「・・・なにを・・・!?」
 ギュルルルル!!!
 ビー玉の回転がどんどん強くなっていく。
 ブオオオオオオ!!!
 そして風もどんどん強くなっていく。
ジャベンス「うっ!!」
 ゴオオオオオオオ!!
 そして、その風は突風へと変わり、ジャベンスをふっ飛ばす。
ジャベンス「うわあああ!!」
ジュウ「見たか!これがおいらの正義の鉄拳!ジャスティスタイフーンだ!!」
ジャベンス「!?」
 ジャベンスは、吹っ飛ばされる時に、ジュウのその正義を信じる真っ直ぐな目を見
た。
ジャベンス「(あの目は・・・あの時と同じ・・・・!)」
 ・・・・・・。
 ・・・。
 数年前。
 ジャベンスはその巨体ゆえ、悪がき達にいじめられていた。
悪ガキA「やーいやーい!!」
悪ガキB「お前なんでそんなにデカイんだよ~!!」
 数人の悪ガキに囲まれ、ベソをかいているジャベンス。
悪ガキC「あっ、こいつデカイ癖に泣いてるぜ~!!」
悪ガキA「あっはっはっは~、かっこわりぃ~!」
ジャベンス「・・・・・。」
ジュウ「コラー!!」
 数人の悪ガキが一斉にジュウの方を見る。
ジュウ「ジャベンスをいじめると!おいらが許さないぞ~!!」
悪ガキA「なんだあいつ?」
悪ガキD「あ、こいつ、ジャベンスの兄貴だ。」
悪ガキB「兄貴のくせにお前ってチビだな~。」
ジュウ「この~!!!」
 ジュウは悪ガキ達に突っ込んで行った。
 しかし、所詮は多勢に無勢。
 ジュウは悪ガキ達にボコボコにされてしまった。
 しかし、悪ガキ達はそれで満足したのか、ボロボロになったジュウをおいて去って
行った。
ジャベンス「ジュウあんちゃん・・・。」
 ジャベンスがべそをかきながらジュウの元にやってくる。
ジュウ「だ、大丈夫だったか?ジャベンス・・・。」
 仰向けになり、口だけ動かすジュウ。
ジャベンス「うん!」
ジュウ「そっか・・・。ごめんな、兄ちゃん弱くて・・・。」
ジャベンス「ううん!ジュウあんちゃんすっごく強いよ!あいつらなんかよりも、ずっと・・ずっと強かったよ!!」
 全然敵わなかったのに・・・こんなにボロボロになってるのに・・・ジャベンスは
そんな事を言う。
 慰めやお世辞なんかじゃない。ジャベンスはたった一人で数人の悪ガキ達に立ち向かったジュウを本気で強いと思い、誇りに思っていたのだ。
ジュウ「でも、兄ちゃん、もっと強くなりたいんだ・・・もっと強い正義の味方になって・・・皆を守りたいんだ。」
ジャベンス「うん!ジュウあんちゃんならきっとなれるよ!正義の味方に!」
 ・・・・・。
 ・・・。
 回想シーン終了。
ジャベンス「(ジュウあんちゃんは・・・わしを守ってくれたあの頃と同じ・・
・。)」
 ドサッ!
 ジャベンスはついに倒れてしまった。
ジュウ「はぁ・・・はぁ・・・。」
 そのジャベンスにジュウは手を差し出す。
ジュウ「大丈夫か、ジャベンス?」
ジャベンス「ジュウあんちゃん・・・ジュウあんちゃんは、あの時と同じように、わしを・・・。うぅっ・・!」
 そして、ジャベンスは泣き始めた。
ジャベンス「ジュウあんちゃ~ん!!」
 ジャベンスは思いっきりジュウに抱きついた。
ジュウ「うわわっ!」
 その巨体に抱きつれたジュウは倒れてしまう。
ジャベンス「うぅ・・!ううぅ・・!」
 そして、泣きじゃくるジャベンス。
ジュウ「あはは、ようやく昔の泣き虫ジャベンスに戻ったな!」
 この瞬間、ようやく二人の、兄弟の時間が再び流れ始めたのだ。
 ・・・・・・。
 ・・・。
 同じ頃、どこかの廃棄置き場らしき所。
少年「うぅ・・・!」
 黒い髪の少年が、仰向けになり、うめき声をあげている。
女性「大丈夫よ・・・。」
 髪の長い女性が少年の額に濡れタオルを添える。
少年「・・・・・。」
 再び深い眠りに入る少年。
女性「大丈夫・・・心配しないで・・・あなたには、私がついてるから・・・。」





          つづく

 次回予告

ヒスイ「結局、クロウ見つかりませんでしたね・・・。」
セシル「うん・・・。」
ヒスイ「と、そこへ、僕らの前に現れたのは、なんと年寄り!?」
クロウ「次回!『老いし刺客』極めろ、強さへの道!」



 

 



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