爆・爆ストーリー ZERO 第14話

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第14話「志す理由」
 街中で突如襲い掛かってきた謎の巨漢ビーダー、ジャベンス。その強力な力に圧倒されたヒスイだが、クロウのおかげでなんとか追い払えた。
ヒスイ「一体、彼は何者なんでしょうね・・・?」
クロウ「さぁな。」
 クロウは興味なさそうに答える。
セシル「(あの人は・・・もしかして、B-フォース?でもだとしたら、それを依頼出
来る人といったら・・・。)」
クロウ「で、お前はどう思う?」
 いきなりセシルに話が振られる。
セシル「え、何が?」
クロウ「聞いてなかったのか?」
ヒスイ「彼の事ですよ!さっき、僕らを襲ってきた。」

 ヒスイ達の問いに、セシルは不自然に目を反らしながら首を傾げた。
セシル「さ、さぁ?」
クロウ「さっきの奴はお前の事狙ってたらしいが。あの黒服達の件と言い、何か関係あるんじゃないのか?」
セシル「そ、そんな事言われても、分からないものは分からないよ・・・・。」
クロウ「ま、別になんでもいいがな。」

 何を言っても答えが返ってこないセシルに興味を失ったクロウはそれ以上の追及はやめておいた。

 そんなクロウに、セシルは密かに心を撫で下ろした。
セシル「(私の事を狙ってたって事は・・・・いや!私は・・・このままでいたい・
・・!)」

 
 そして場面は変わって、B-フォースの住んでいるマンションっぽい所。
 クロウに追い払われたジャベンスは部屋に戻っていた。
男A「しかし・・・珍しいですね、あなたほどの人が、任務をしくじってしまうとは
・・・・。」
 前回、旦那と話をした男がジャベンスに話し掛ける。
ジャベンス「・・・・。」
 ジャベンスは何も言わずに黙っている。
男B「そんな事無いよね・・・ジャベンスはもっと面白い事をしようとしただけだよ
ね・・・。」
 他の、ちょっと子供っぽいような印象の男が言う。フォローしてると言うよりは、本気で言っているようだ。
男A「ふっ、そうですね、あなたはB-フォースの一員だ。きっと、何か考えがあるのでしょう。」
ジャベンス「・・・・。」
 男達の言葉を無視するジャベンス。
ジャベンス「(このままじゃ、終わらないでごわす・・・。)」
 そして、夕方。
 クロウ達は運良く宿を見つけていた。
セシル「やった~、久しぶりに布団で寝られる~♪」
クロウ「まだ休むには早い時間だと思うが・・・。」
セシル「もう!ここからまた歩き出したら、宿が見つからないかもしれないでしょ!とにかく、今日はここに泊まりましょ!」
 セシルの言葉に同意するヒスイ。
ヒスイ「そうですね。今日は久しぶりに強敵と戦いましたし・・・。」
 ヒスイはあのバトルで少し疲労しているようだった。
クロウ「仕方ないな・・・。」
 まだ体力の有り余ってるクロウはしぶしぶと言った感じで了承した。
 そして、宿の中に入っていく三人。
 受付で、部屋を二つほど借りようとしたのだが・・・・。
セシル「え~!空いてないの~!?」
受付嬢「申し訳ございません。今日は以前から予約されていた団体様がお泊まりでして、一部屋しか空きが無いんです。」
クロウ「別に一つ空いていれば十分だろう。部屋を二つも借りて、無駄に金を使う必要などもない。」
ヒスイ「クロウ、お金の問題じゃないような気が・・・。」
セシル「はぁ・・仕方ないか、背に腹は変えられないわ・・・。」
 借りた部屋は和式旅館風のものだった。
セシル「ふぅ・・・。」
 セシルは畳の上に座り、大きく足を伸ばす。
ヒスイ「はぁ~。」
 ヒスイも仰向けに倒れる。
クロウ「・・・。」
 クロウは無言で窓の外を眺めている。
ヒスイ「あ、そう言えば、ここって温泉があるそうですよ~。」
セシル「え、ほんと!」
ヒスイ「ええ、この紙に書いてあります。」
 ヒスイは、部屋のテーブルの上に置いてあった紙を見せる。
セシル「じゃ、私入ってこようかな~♪」
 嬉々として準備をしはじめるセシル。
ヒスイ「僕も後で入ろう。クロウはどうですか?」
クロウ「俺も後で行く。」
セシル「それじゃ、私行ってくるね。」
 セシルはもう準備が出来たようだ。鼻歌を歌いながら部屋を出て行った。
クロウ「行ったな・・・。」
 セシルが出て行った後、扉を見ながら呟く。
ヒスイ「??」
クロウ「で、どう思う?」

 念の為小声で、クロウはヒスイに話しかけた。
ヒスイ「何がですか?」

 質問の意味が分からず、ヒスイは問い返した。
クロウ「昼間の、あいつの事だ。」

 クロウが言っているのは、いきなり襲い掛かってきたジャベンスの事だろう。
ヒスイ「あぁ・・。」
クロウ「セシルを狙っていたんだ、明らかに無関係であるわけがない。」
ヒスイ「そうですよね。」
クロウ「それに、セシル自身も何か知っている可能性は高い。」
ヒスイ「でも、セシルちゃんには覚えが無いって・・・。」
クロウ「それが本当なのかどうか・・・何か隠しているかもしれん。」
ヒスイ「そんな。何で隠す必要が・・・。」
クロウ「さぁな。だが、思わぬところであいつの価値を見出せたな・・・。」

 何故かクロウは、意味深に笑った。
ヒスイ「え、どういう事ですか?」
クロウ「さぁ?」
 とぼけるクロウに何を問い詰めても無駄だと思ったヒスイは、話題を変える。
ヒスイ「それから、ちょっ
 と気になる事があるんです。」
クロウ「なんだ?」
ヒスイ「ジャベンスが持っていたビーダマン・・・どこかで見た事があるような気がして・・・。」
クロウ「なんだ、あいつと知り合いだったのか?」
ヒスイ「いえ、ジャベンスとは赤の他人ですよ。」
クロウ「だったら、あのサンダースピアとかいうビーダマンをお前かお前の知り合いが開発したとか・・・」
ヒスイ「そんな覚えはありません。でも・・・。」
クロウ「だったら、単なるデジャヴだろ。初めて見たビーダマンに、見覚えがあるはずが無い。そんなに気にする事でもなかろう。」
ヒスイ「そうですかね・・。」

 クロウはそういうものの、ヒスイは何か奥歯に物が詰まったような、そんなスッキリしない想いを抱いていた。
 

 その頃、温泉で身も心も癒し中のセシル。
セシル「はぁ~、癒されるなぁ~・・・。」
 大きいお風呂の中で、手足を大きく伸ばす。
セシル「ふぅ・・・。」
 バシャ・・と、両手にお湯をすくって顔にかける。
セシル「あの二人・・・いくらなんでも感づいてるよね・・・特にクロウは妙に勘が
鋭いし・・・。」
 はぁ、とため息を付く。
セシル「・・・・ほんとの事、話した方がいいのかな?」
 そう呟いて、慌てて首を横に振る。
セシル「ダメダメ!ほんとの事を知ったら、いくらあの二人でも・・・。」
 ・・・・・。
 そして、セシルは温泉から上がり、部屋に戻る。
 部屋にはもの見事な懐石料理がテーブルいっぱいに並べられていた。
セシル「あ~おいしそ~!もう料理出てたんだ~!」
ヒスイ「ええ、さっき女将さんがきてくれて。」
セシル「それじゃ、早速食べよ♪」
 セシルは早々と席に着いた。
セシル「いっただっきま~す☆」
 そして、クロウ達三人は久しぶりにゆっくりとした休息を取る事が出来たのだった。
 そして、翌朝。
 三人は早くから出発していた。

 宿を出て、街の出口を目指して朝の繁華街を歩く。
セシル「はぁ~、昨夜はほんと、久しぶりに休んだって感じ~。」
ヒスイ「確かに、ここんとこず~っと野宿でしたからね~。」
セシル「あ~、あの懐石料理おいしかったな~。」
クロウ「相変わらず、食い意地が張ってるな。」
セシル「大人5人前をペロリと食べたクロウに言われたくない・・・。」
 そんな三人の前に巨大な人影がヌッと立ちはだかった。
ヒスイ「君は・・・!」
クロウ「お前、また現れたか!」
ジャベンス「今度は油断しないでごわす!」
 ジャベンスがサンダースピアを構える。
ヒスイ「やるしかないようですね!」
 ジェイドガンナーを構えるヒスイ。
クロウ「またやられたいらしいな。」
 クロウもレクイエムを構える。
ジャベンス「いくでごわすよ!!」
???「ちょっと待ったぁ~!!」
 どこからともなく声が聞こえてきた。
ジャベンス「な、なんでごわすか!?」
 ちょっと動揺するジャベンス。
セシル「うっ・・・この緊迫した雰囲気を台無しにする間抜けな声は・・。」
ジュウ「どこの誰だか知らないけれど、誰もが皆知っている!皆のヒーロー、ビーストキッド推参!」
 ジュウがどこからか現れ、またもへんてこなポーズをする。
クロウ「また邪魔しに来たのか・・・。」

ジュウ「正義を求める声があれば、おいらはいつでもどこでも参上いたす!そしてこのビーストウェーブで悪を成敗する!!」
 ジュウがビーストウェーブを自慢げに掲げた。

 その時、ヒスイが何かを思い出した。
ヒスイ「あ~思い出した!ジャベンスのサンダースピアとジュウのビーストウェーブ、ヘッドパーツが似てるんです!!」
 そのヒスイの言葉を聞いてジュウは何かに気づく。
ジュウ「ん・・・ジャベンス?」
 ジュウはちらっとジャベンスを見る。
ジュウ「あ~!お前は、ジャベンス!」

 ジュウはジャベンスを指差して叫んだ。
ジャベンス「久しぶりでごわすな。ジュウあんちゃん。」
 二人のセリフに驚く一同。
ヒスイ「えぇ!?」
セシル「兄弟だったの・・!?」

 驚くヒスイ達は置いておいて、ジュウとジャベンスは会話をつづける。
ジュウ「お前・・・やっぱり、未だにB-フォースに依存してるんだな・・。」
ジャベンス「あんちゃんも、まだそんなダサい事をしてるんでごわすな。」
ジュウ「ダサい事だと・・・!おいらは、おいらの夢を追っているだけだ!」
クロウ「(奴の言う通り、やってることは相当ダサいがな。)」
ジャベンス「あんちゃんのやってる事が無意味だって事を教えてやるでごわす!」
ジュウ「お前がいつまでも今のままでいると言うのなら、正義の味方の名にかけてお前を倒す!」
ジャベンス「やれるものならやってみろでごわす!」
 ジュウとジャベンスがお互いにビーダマンを構える。

セシル「よ、よく分からないけど、とりあえず兄弟対決って事?」

ヒスイ「何か事情があるみたいですねぇ……」

クロウ「くだらん……勝手にやっていろ」

 自分に攻撃の矛先が向けられていないと分かったクロウはやる気をなくして腕組みをした。
ヒスイ「えっと・・・じゃあとりあえず僕が合図をします。ビーファイア!」

 ヒスイの合図とともに兄弟対決が始まった!
ジュウ「うおおおおお!!!」
ジャベンス「うおおおおおお!!!」
 サンダースピアとビーストウェーブから放たれるビー玉が激しくぶつかりあう。
 ガンッガンッ!!
ジュウ「絶対に負けない!おいらは絶対に負けられない!!」
ジャベンス「無理でごわす・・・。所詮、あんちゃんの攻撃は、見えてるんでごわす
よ!」
 ガキンッ!
 ジャベンスのショットがビーストウェーブを撃ち落とす。
ジュウ「そ・・・そんな・・・!」
ジャベンス「見たでごわすか!これがB-フォースの力でごわす!所詮、尻尾を巻いて
逃げた弱虫に、わしは倒せないんでごわすよ!」
 ジャベンスは自信満々に高笑いをしながら去って行った。当初の目的を忘れて・・
・。
クロウ「結局あいつは何しに来たんだ・・・?」
ジュウ「く・・・くそっ!」
 地面に拳を叩きつけ、悔しがるジュウ。
ヒスイ「ジュウ・・・一体、どういう事なんですか?」
セシル「よかったら、話を聞かせてもらえない?」
 セシルとヒスイに聞かれ、口を開くジュウ。
ジュウ「おいらとジャベンスは、二人だけの兄弟だったんだ・・・。おいら達二人の
夢は、正義の味方になって、この世の悪を絶滅させ、洗濯物が真っ白になるように、
みんなが幸せになる事なんだ。」
クロウ「(絶滅って、また微妙な表現を・・・。)」
ヒスイ「(洗濯物が真っ白になるって例えは、ちょっとまずいんじゃ・・・。)」
ジュウ「そして、その夢を叶える第一歩としてB-フォースに入ったんだ。」
クロウ「B-フォース?」
ジュウ「B-フォースと言うのは、困った人の依頼を受けて、それをビーダマンで解決
させる・・・いわば、何でも屋みたいなものなんだ。」
ヒスイ「なんだ、B-フォースってそんなに悪い所じゃないんだ。」
ジュウ「ああ、それだけ聞くと、なんら問題の無いような所に思えるけど、問題なの
は、高額な依頼金なんだ。」
セシル「・・・・・。」
ジュウ「その高額な依頼金のせいで、本来の対象である困っている弱者よりも、悪趣
味なお偉いさんや悪徳政治家なんかの私利私欲のために利用される事がほとんどだっ
た・・・。」
セシル「そ、そうだったの・・・。」
ジュウ「それに嫌気が刺したおいらはB-フォースを出て行く事を決意した。だが、
ジャベンスは既にB-フォースの一員として馴染んでいた・・・。」
ヒスイ「・・・。」
ジュウ「そして、おいらは本当の正義を極める旅に出る事にしたんだ。そうする事に
よって、間違った正義の塊であるB-フォースに依存している、ジャベンスを救ってや
ろうと思ったんだ。」
ヒスイ「真の正義の強さを見せつけ、ジャベンスの目を覚まさせようとしたんですね
!」
ジュウ「ああ!そのためにおいらは敢えて身近にいたB-フォースのビーダマンでな
く、他の強いビーダマンを探してたんだ。」
クロウ「だがお前は負けた。間違っているB-フォースにな。」
ジュウ「・・・・。」
クロウ「いいか、これだけは覚えておけ、絶対的な強さに正しいも間違ってるも無い
・・・。お前が正義を貫いたところで、それが強さに繋がるとは限らないんだ。」
ジュウ「それは・・・。」
 クロウの言葉にちょっとうつむくジュウ。
クロウ「行くぞ。いつまでもここにいてもしょうがないからな。」
セシル「え、ええ・・・。」
 クロウ達三人は悩んでいるジュウを置いてけぼりにして歩き出してしまった。
ヒスイ「(いいのかなぁ・・・?)」

               つづく

 次回予告

クロウ「俺達の前に現れた次なるB-フォース。」
ヒスイ「くっ!彼らも、凄い強敵です!」
クロウ「そのバトルで、レクイエムが・・!そして、俺自身も・・・!」
ヒスイ「次回!『クロウ、散る』」
クロウ「極めろ、強さへの道!」

  

 



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