爆・爆ストーリー ZERO 第10話

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第10話「正義のビーダー!」


 闇のトーナメントが終わってから数日後・・・。

 クロウ達が、次の街へ行く途中にある山を越えるため、山道を歩いていた。
セシル「ねぇ、そろそろ休憩しようよ~。」

 いつものようにセシルが先にヘバッてペースが遅れている。
クロウ「ん?さっき休んだばかりだろう・・・。」

 クロウが露骨にめんどくさそうに振り返った。が、歩くペースを遅める気はなく、どんどん先に行く。
セシル「さっきって・・・2時間も前じゃない!あれからずっと歩きっぱなしなのよ!!」

 クロウとの差が広がっていくのでセシルの声は徐々に大きくなる。セシルもペースを上げる気はないようだ。
ヒスイ「そうですね、そろそろ休憩しましょうか。クロウのレクイエムのメンテナンスもしたいですし」

 ヒスイは一応間を取り持つ形で、それとなくペースを落としつつ、クロウに休憩を促した。
クロウ「ふん・・・。」

 機体のメンテナンスをしたいとあればクロウも無下には出来ないだろう。クロウは面白くなさそうに足を止めた。
 そして、三人は近くにあった石に腰掛ける。
セシル「ふぅ・・・やっと座れた~・・。」

 座るなり、セシルは足を延ばして息を吐く。
 今のセシルの心境は、三時間くらいずっと立ちっぱなしだった満員電車で、ようやく席が空いたのと似ているだろう。
セシル「ところでさ、ここ数日ずーっと歩き続けてるわけだけど、一体この旅の目的って何なの?どこ目指して歩いてるの?」

 セシルはまるで純粋な子供のような瞳でクロウ達に質問した。
ヒスイ「え、そ、それは・・・・。」

 すると、何故かヒスイは目をそらして答えづらそうにしている。
クロウ「そんなものはない。」

 ヒスイとは対照的に、クロウはピシャリと答えた。
セシル「へっ・・?」
 クロウの言葉にセシルは呆然とする。
セシル「じゃ、じゃあ何の当てもなく、ただひたすら延々と今まで歩き続けてたってわけ!?」

 セシルが驚愕の混じった口調でクロウを非難する。
クロウ「悪いか?」

 いけしゃあしゃあと答えるクロウに対して、セシルは一気に身体の力が抜けたのか、へなへなと項垂れる。
セシル「あぁ・・・今まで無駄に歩いてきた数日間って・・・・。」

ヒスイ「あ、あはは、一応ビーダマンの修行の旅って感じなので。明確な目的地とかはないんですよね。」

クロウ「お前も似たようなものだろ。家に帰らなければそれだけで家出は成立するんだからな」

セシル「ま、まぁ、それはそうなんだけど・・・。でも、私にだってちゃんと夢はあるっていうか、なんていうか・・・。」

 セシルの言葉は途中から小さくなり、ゴニョゴニョと何か言っているくらいにしか聞き取れなかった。
クロウ「(目的・・・か。)」
 そんなセシルは無視して、クロウは無言で手に取ったレクイエムを見つめる。
クロウ「(俺の目的は・・・望みは・・・ただ、一つ・・・!)」
 ザッ!

 その時、近くで草を踏みしめるような足音が聞こえてきた。
クロウ「誰だ!?」

 素早く反応したクロウが声を出すと、いきなりクロウ達の前に一人の少年が現れた。
少年「クロウ・・・だな。ようやく見つけたぜ!」

 目つきの悪い少年は、クロウを狙ってこの場に現れたようだ。と言う事は……。
クロウ「シャドウか・・・。」
 クロウは立ち上がり、レクイエムを構える。
少年「お前を倒して・・幹部へ昇格してやる!」

 シャドウの少年もビーダマンを構えてクロウを狙った。
???「ちょっとまて~ぃ!」
 そのとき、どこからともなく声が聞こえてきた。

 見ると、近くの木の枝にマントを付けた派手な服装の少年が立っていた。
???「天が呼ぶ地が呼ぶ、ビー玉が呼ぶ!悪を倒せとおいらを呼ぶ!!とう!」
 マント少年はど派手にジャンプし、着地する。
???「正義のビーダー!仮面ビーダー参上!!」
 ポーズを決める仮面ビーダー。しかし、仮面という割には素顔丸出しである。
ヒスイ「ビーファイア!」

 しかし、ヒスイ達はそれを無視してバトルを開始した。
クロウ「はぁ!」
 ドキュンッ、バキィ!
少年「ぐわぁ、やられた~!」
クロウ「雑魚が・・・。」
 そしてクロウ達は、あっさりと勝利する。
仮面ビーダー「・・・(泣)」
 生まれて初めて、無視される事の辛さを知った瞬間である。
クロウ「そろそろ行くぞ。」
ヒスイ「そうですね。」
セシル「え~、もう行くの~!?」
クロウ「もう十分休んだだろう。」
セシル「む~・・・。」
 歩き出す三人。


仮面ビーダー「って無視するな~!!」
 仮面ビーダーの叫び声を聞き、仕方なく振り向く三人。
クロウ「なんだ、お前は?」

 明らかに不審者を見るような目つきでクロウは尋ねた。
仮面ビーダー「聞いてなかったのかよ!」

 マント少年はさっき名乗ったはずである。
クロウ「だから、なんだと聞いている。」
仮面ビーダー「お、おいらは、正義のビーダー!仮面ビーダーだ!」

 先ほどのポーズを取って再
び名乗りを上げるが、三人の反応はうすい。

ヒスイ「仮面?」
セシル「素顔丸出しなのに?」
仮面ビーダー「うるさい!」
クロウ「ただのバカか・・・。」
仮面ビーダー「違う!」
ヒスイ「で、その正義のビーダーさんが、僕たちに何の用ですか?」
仮面ビーダー「え、そ、それは・・・・。」

 ヒスイの質問に仮面ビーダーは答えに窮した。

 彼的にはシャドウのビーダーに襲われた三人を助けるために現れたのだろうが、今となってはもうその必要はなくなったのだ。
セシル「あれ?この人・・・!」

 仮面ビーダーが悩んでいる間に、セシルが声を上げた。
 どうやら、見覚えがあるようだ。
ヒスイ「あ!闇のトーナメントに出てた、ジュウって選手!?」

 そう、仮面ビーダーと名乗るこの少年は、闇のトーナメントでロンとバトルをしたジュウ選手だった。

クロウ「あの避けるだけが取り柄のビーダーか」
ジュウ「失礼な・・・!」
クロウ「で、結局何の用なんだ・・?」
ジュウ「うっ・・・。」
 ジュウは返事に困った。無視された勢いで声をかけたのはいいものの、もう用なんて無いのだ。
ジュウ「ええい!」
 ジュウはビーダマンを取り出す。
ジュウ「この新しいビーダマンと手合わせしてもらおうか!」

 新型の黒いビーダマンを突き付けて、ジュウはクロウへバトルを申し込んだ。ビーダー同士ならこれで十分話が通じるから便利だ。
クロウ「バトルの申し込みか・・・。いいだろう。ここ数日、運動不足だからな。久しぶりにバトルするのも悪くない。」
 どうやら、さっきのシャドウのビーダーとのバトルは、運動のうちに入っていないようだ。
ジュウ「いくぞ、ビーストウェーブ!!」
 ビーストウェーブを見て驚くヒスイ。
ヒスイ「え!?ドライブ回転を生み出す改良型素体ゼロ!?それに・・・あのバックパーツは両手撃ちでの安定性を追及したもの・・・。」
セシル「え、それじゃまるで・・!」
ヒスイ「ロンのライジングヘイロンと同じギミックです!」
クロウ「ライジングヘイロンと!?」
ジュウ「そうさ・・・!おいらは、目に映るものを頭の中でコピーし、それを形にする事が出来るのさ!」
ヒスイ「!?」
ジュウ「まぁ、デザインはかなり変えてるけどな。」

 それを聞いて、ジュウのロン戦での行動に合点がいった。
クロウ「そうか・・・それで、闇のトーナメントで、ロンのライジングヘイロンを凝視してたのか・・・。」
ジュウ「そう、より強いビーダマンを生み出すため、そしておいらの目的を果たすため!」
ヒスイ「目的・・・!?」
ジュウ「おいらの、目的は・・・・。」
クロウ「・・・。」
ジュウ「この世の中にはびこる悪を滅ぼし、正義を守ることだぁ!」
クロウ「正義の味方というわけか・・。」
ジュウ「そのためには強い力が必要だ。だが、それを志した時のおいらにはその力が無かった。おいらの周りもな。」
セシル「そっか、いくらコピーできる能力を持ってるからといって、元になるビーダマンが強くないと意味が無いもんね。」
ジュウ「おいらは強いビーダマンを探すために旅に出た・・。そして、見つけたんだ俺の求める強さを持つビーダマンを!」
クロウ「それが、闇のトーナメントへと出場するロンのライジングヘイロンだったわけか。」
ジュウ「こいつがあれば、正義のために悪と戦えるんだ!」
ヒスイ「(ライジングヘイロンを元にした機体・・・ようするにそれは、ライジングヘイロンと戦うのと同じ・・・だったら!)」
 ヒスイはジェイドガンナーを取り出す。
ヒスイ「クロウ、悪いですけど、この勝負僕にやらせてください。」
クロウ「お前が?」
ヒスイ「研究者として、新型ビーダマンには興味がありますからね。」
ジュウ「おいらは誰とでもいいぜ。本当の悪と戦う前のトレーニングだ!」
セシル「ルールは、どうするの?」
ヒスイ「そうですね・・・。」
 ヒスイは、小石を二つ拾い、一つをジュウの足元に置き、もう一つを自分の足元に置く。
ヒスイ「先に相手の足元においた小石にビー玉を当てた方が勝ち・・・というルールでいいですか?」
ジュウ「異存はない。」
ヒスイ「それでは、始めましょうか。」
 チャキ・・!
 二人がビーダマンを構える。そう言えば、爆・爆ストーリー始まって以来の撃ち合い以外のルールでのバトルだなあ・・・。
セシル「レディ、ビーファイア!」
ジュウ「ビーストウェーブ!!!」
 ビーストウェーブのドライブショットが放たれる。
ヒスイ「ジェイドガンナー!!」
 ジェイドガンナーが連射でそれに立ち向かう。
 ガガガガガガ!!
 ぶつかり合う、ビー玉とビー玉。
ヒスイ「(さすが、ライジングヘイロンを元にしてるだけあって、凄いパワーですね・・。)」
ジュウ「うおおお!!」
 今度は、ドライブショットを3発くらい連射する。
ヒスイ「(でも、ライジングヘイロンと比べると、やや連射よりですか・・・。)」
 ヒスイは、ジェイドシールドを外す。
ヒスイ「ジョイント!ジェイドガンナーワンハンドミッション!」
 ジェイドガンナー必殺のワンハンドミッションモードだ。
ジュウ「もう、本気でやるのか?」

 ジュウもヒスイの戦いは闇のトーナメントで見ているようだ。
ヒスイ「長引くと不利と思いましてね。」
 ズドドドドドド!
 相変わらずワンハンドミッションの連射能力は優れている。
 ビーストウェーブはやや押され気味だ。
ジュウ「ぐぅ・・!このバトル、ターゲットが固定されてるから避けようが無いんだよな・・・!」
 
ジュウは必死でドライブショットを放つが、ジェイドの連射力にはさすがにかなわない。
ヒスイ「そろそろ決めますよ!」
 ガガガガガ!
 ジェイドの連射スピードがどんどん上がっていく。
ジュウ「くっそー!」
 カンッ!
 ジェイドの発射したビー玉がジュウの足元の小石にヒットする。
ヒスイ「やった!」
ジュウ「負けたー!」
 ジュウは頭を抱え、悔しがる。
ジュウ「このビーダマンなら絶対勝てると思ったのに~!!」
ヒスイ「いえ、こっちもかなり苦戦しましたよ。バトルのルールによっては負けてたかもしれません・・。」
ジュウ「・・・。」
ヒスイ「また、バトルしましょう。」
 ヒスイが握手を求めるようにジュウに手を出す。
ジュウ「お前・・・。あ、そういや、お前たちの名前聞いてなかったな。」
ヒスイ「あ、僕はヒスイです。」
クロウ「俺はクロウだ。」
セシル「私はセシル。」
ジュウ「そっか・・・よろしくな!」
 ジュウはヒスイの手を握った。
???「おいお前ら!」
 そのとき、大勢の少年たちがクロウ達の前に現れた。
クロウ「シャドウか・・!」
シャドウA「ああ、さっきお前にやられた奴から場所を聞いてな・・。」
シャドウB「今度こそお前を倒してやる!」
ジュウ「ふっふっふ・・・!」
 シャドウ達の姿を見たジュウは怪しげに笑う。
セシル「ジュウ・・?」
ジュウ「ようやく・・・・おいらの本領発揮というわけだな!」
セシル「え・・・?」
ジュウ「まずは、リーダーのレッド!」
 ジュウは一歩前に出て変てこなポーズをとる。
ジュウ「そして、頭脳明晰のグリーン!」
 ジュウはヒスイを指差す。
ヒスイ「へっ・・・?」
ジュウ「そして、クールな参謀、ブラック!」
 今度はクロウだ。
クロウ「???」
ジュウ「さらに、紅一点のイエロー!」
 次はセシルだ。
セシル「私?」
ジュウ「全員合わせて、爆球戦隊レジェンドファイブ!」
 ドドーン!
 と、なぜか四人の後ろで爆発が起きる。
セシル「四人なのに、ファイブ・・・?」
ジュウ「さあ、行くぞ!正義の力を見せてやるんだ!」
 ジュウがポーズをとり、敵に向かっていこうとするのだが。
 ドキューン!!バーン!!!
シャドウ達「ぐわああああ!!!!」
クロウ「ふん・・・。」
 クロウの一撃によって全員やられてしまっていた・・・。
ジュウ「(おいらの出番が・・・!)」
 クロウがいる限り、正義の味方が活躍することは無理なのかもしれない・・・。




            つづく

クロウ「俺たちの前にまた現れた黒服の男たち!あいつらは、一体何が目的なんだ!?」
ヒスイ「シャドウとは関係ないみたいですし・・・なんで僕たちを付けねらうんでしょう?」
クロウ「なんであろうと、立ちふさがる奴は倒すのみだ」
ヒスイ「次回!『黒服男の謎!』」
クロウ「極めろ、強さへの道!」

 

 




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