爆・爆ストーリー ZERO 第5話

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第5話「闇のトーナメント」



 クロウのビーダマン修行のために旅をしている三人は、前回仕入れた情報からウィナーズの会場への道のりを歩いていた。

ヒスイ「え~っと・・・もうすぐですね、ウィナーズの会場は。」
 ヒスイが地図を確認しながら言う。

 ヒスイは心なしか楽しげだが、クロウはあまり乗り気ではないようだ。
クロウ「ほんとに行くのか?」

ヒスイ「ええ。」
クロウ「時間の無駄だと思うけどな・・・。」
ヒスイ「そんな事ありませんよ。世界中のビーダーが出場するんですよ。出場しなくても、見るだけでいい勉強になるし、データもとれますし・・・。」
クロウ「第一に、こんな大会から学ぶ事はない。第二に、ザコのデータを取った所で、なんの特にもならない。」
セシル「そんな愚痴ばかり言ってないで早く行こうよ。せっかくここまで来たんだから。」

 セシルに促され、クロウはめんどくさくなったのか、それ以上は何も言わなかった。

クロウ「(まぁ、暇つぶしにはなるかどうか、見てみるのもいいか。あれの会場にも近いらしいしな)」

 
 ウィナーズの会場前。
 大勢のビーダーがワイワイガヤガヤとにぎやかにしている。
セシル「うわ~!凄い人~!!」
ヒスイ「さすがですね~!」
クロウ「何がさすがだ・・・。こんな有象無象の集まりが・・・。」

 クロウは一応周りに腕の立ちそうなビーダーがいないか見回した。

 だが、お眼鏡にかなうようなビーダーはいなかったようで、見下すような表情になる。

クロウ「(こんなものか。最初から期待していなかったが、とっとと切り上げないと時間の無駄だな)」
 そんな風に考えている時だった。

 ドンッ!
 何か、クロウの背中にぶつかった。
クロウ「ん・・?」
 振り向いて見ると、小さな少年が、鼻を押さえている。
少年「いてて・・・!すまん、大丈夫か!?」
 赤くとんがった髪型に饅頭みたいに丸い顔が特徴的な猫のような少年だ。

クロウ「ああ・・。」
少年「そっか・・・すまんかったな・・。」
忍者少年「前も見ずに走り出すからでごじゃるよ!」
 そこへ、少年と同じくらいの背丈の忍者の格好をした少年が注意する。
少年「そんな事言われても、ジッとしてられなかったんやもん!な、コバルトブレード!」
 少年は、自分のビーダマンに同意を求めている。
忍者少年「試合前からそんな調子じゃ、先が思いやられるでごじゃるな・・・。」
 そんな事をしゃべりながら、二人の少年は会場へ走っていった。

クロウ「(騒がしいガキどもだ)」

 とても強者としてのオーラを感じさせない子供ですら参加できる大会……ますますクロウはウィナーズへの価値を見いだせなかった。
ヒスイ「クロウ、本当に出ないんですか?」
クロウ「ああ。こんな大会、出る価値は無い。ザッと見た所、出場する奴らも雑魚ばかりだからな。出た所で準備運動にもならん

 相変わらずディスりまくりだ。
セシル「そ、そう言う事は、もっと小さい声で言ったほうが・・・!」
 大会に出るであろう数人のビーダーがクロウ達を睨んでいる。

ビーダーA「なんだてめぇ!文句あんのかよ!!」

ビーダーB「俺達が雑魚ってんなら、おめぇはどうなんだよ!!!」

 ガラの悪そうなビーダーがクロウに突っかかってきた。


クロウ「なら、今ここで試してみても良いぞ。この程度の大会に出る自分たちが、如何に価値のないビーダーか」

 クロウが挑発するようにレクイエムを取り出した。

ビーダーA「おもしれぇ!」

ビーダーB「後悔させてやるぜ!!」

 ガラの悪いビーダーもビーダマンを取り出す。

ヒスイ「あわわ、ま、まずいですよ!!大会前に会場でバトルするのは!!」

 ヒスイは慌ててクロウを止めようとするが、聞く耳持たれない。

クロウ「安心しろ、この程度バトルにすらならん」

ビーダーA「言ってくれるぜ!」

ビーダーB「ボロボロにして追い出してやる!」

 

 三人は距離を取って対峙した。

三人「ビー・ファイアー!!」

 

 この合図とともに三人が一斉にビーダマンを撃つ。 

 が、勝負は一瞬でついた。クロウの言う通り、バトルにすらならず二人のガラの悪いビーダーのビーダマンは粉々に砕け、二人は気絶してしまった。

 

セシル「す、すごい……!」

ヒスイ「さ、さすがクロウ」

クロウ「言っただろう、こんなものはバトルではない」

 しかし、この騒ぎを聞きつけた警備員のような男が怒りの形相でこちらへやってきた。

警備員「こらー!!大会出場者は試合前のバトルは禁止だぞ!!」

 警棒を持ってクロウの前にやってきて説教をする。

クロウ「安心しろ。俺は出場者じゃない。この二人はどうかしらんが」

 クロウは動じる事無く、気絶している二人を侮蔑しながら言った。

警備員「そ、そうなの?でも、とにかくここでバトルするのは禁止だ!観戦するならちゃんと観客用の順路があるからそこへ並んで!」

クロウ「俺はこんな大会、観る気も……」

 言い返そうとするクロウを遮って、ヒスイが警備員に謝った。

ヒスイ「あ、はいすみません!ほら、クロウ、行きますよ!!」

 そしてクロウの腕を引いてその場を後にした。


 三人はそそくさと会場を後にして、トボトボと会場の外の道を歩いていた。
ヒスイ「はぁ~あ・・・。新しく開発したバックパーツ、試してみたかったんだけどな・・・。」

 ヒスイはため息をつきながら未練がましく会場を眺める。
セシル「クロウがあんな事言うからよ!」
クロウ「うるさい奴らだな・・・。どうせあんな大会に出場した所で、ロクなテストにはならん。」
セシル「また勝手な事ばかり言って・・!」
クロウ「テストがしたいんなら、ウィナーズなんかよりももっといい大会がある。」

 そう言って、クロウはニヤリと笑った。
ヒスイ「え、ウィナーズよりも凄い大会があるんですか?」
クロウ「ああ・・。そもそも俺がここまで来たのも、その大会会場が近くにあると聞いていたからだ」
 そして、クロウに言われるまま、三人がついた場所は・・・。
ヒスイ「ほ、ほんとに、こんな所で大会が開かれるんですか・・?」
クロウ「ああ。」
セシル「でも・・・・。」
 廃墟だった。3階建ての鉄筋コンクリートビルだが、使われなくなって相当な年月が経つのか、外装がボロボロに剥げており、建物の右側が半壊している。
ヒスイ「こんな所でビーダマンバトルなんかしたら、崩れそうなんですけど・・・。」
クロウ「いいから、ついて来い。」
 クロウは、廃墟の中に入っていく。二人も、困惑しながらもついていく。
ヒスイ「中はもっとボロボロ・・・。」
セシル「うわ~、ほこりっぽい~!!」
クロウ「何ボーッとしてるんだ。早く行くぞ。」
 クロウは、地下へと続く階段の前に立っている。
ヒスイ「あんな所に階段が・・。」
 三人は階段を下りる。
ヒスイ「こ・・これは・・!」
 地下は、ライトでまぶしく、大勢の人たちの熱気で蒸していた。
セシル「地下にこんなに人が・・・!」
 ヒスイとセシルが驚いている時、クロウは受付らしき所で話していた。
クロウ「もう受付は終了したのか?」
受付嬢「いえ、あと三人ほど、出場枠があります。」
クロウ「そうか・・・。」
ヒスイ「クロウ~!」
 ヒスイとセシルも受付へやってくる。
クロウ「よかったな、ギリギリで間に合ったようだ。」
ヒスイ「それより、なんなんですか、ここは・・・?」
セシル「観客も、ビーダーも、みんな柄の悪い連中ばかりだし・・・。」
 ヒスイとセシルはオドオドしながら、周りを見ている。

クロウ「闇のトーナメント。裏社会のビーダマンバトルだ。」
ヒスイ「裏社会?」
クロウ「そうだ。表世界を追放された、裏社会で生きるビーダーが出場する大会だ。優勝すれば莫大な賞金が手に入る。」

 説明しながら、クロウは自然と笑みが浮かんでいる。よほどこの大会を楽しみにしていたようだ。
ヒスイ「・・・・。」
クロウ「この大会に出るには、かなりの覚悟がいるぜ・・・。なんせ、出場する奴らは皆命を賭けてるんだからな・・・!」
セシル「命を・・・。」
クロウ「ああ。ここにいるのは、全てを失い、腐っちまった奴らばかりだからな。その場しのぎで生きてる奴らにとって、この大会はその日の食料にありつけるかどうかが掛かってるんだ。・・・中
には、何週間も、何も口にしていない奴もいる・・・。」
ヒスイ「・・・・。」
クロウ「お遊び大会とは、全然緊張感が違うだろ?お前も、死に物狂いで戦わないと・・・殺られるぞ。本当の戦いとはそういうものだ。」
ヒスイ「こんな大会があったなんて・・・。」
 その時、ライトが消え、辺りが暗くなる・・・。
クロウ「そろそろ始まるな。」
 そして、ライトがステージに立っている人に集中する。
DJ「いぇ~い、みんな!乗ってるか~い?」
 DJらしき人が、マイクをもって叫んでいる。
DJ「それじゃ、本日の大会を開催するよ~ん!!」
ヒスイ「(なんて、軽いノリなんだ・・!?)」
セシル「(あんな話を聞いたあとだから、余計に違和感が・・・。)」
DJ「まずは、ルールの説明だじょ~!もう、殆どの人が知ってると思うけど、初めての人もいるみたいだから、説明するよん!バトルは、デスマッチ方式で行われる!相手のビーダマンを、フッ飛ばすか、もしくは、破壊したものの勝利だ!トーナメント形式で、最後まで勝ち抜いたビーダーが優勝だ!そして、今回は特別に1~3位までのビーダーに、賞金が与えられるぞ!これは、出血大サービスだ~!」
 DJの立っているステージの後ろのモニターにトーナメント表が映し出される。
DJ「まずは、Aブロックのビーダー達だ!」
 Aブロックのビーダーたちの名前がモニターに出る。
ヒスイ「あ・・!」
セシル「あいつは・・。」
クロウ「・・・。」
 モニターには、ロンの名前が載っていた。
クロウ「ロンも出るのか・・・。」
DJ「続いてBブロックだよよーん!」
 Bブロックのビーダーたちの名前が出る。
ヒスイ「あ、僕とクロウが載ってる!」
クロウ「Aブロックで出なかったんだから当たり前だろ・・・。」
 しかし、ヒスイとクロウは、両端にいるので、当たるのは準決勝だろう。
DJ「ほんじゃま、第一試合を開始するので、出場選手は、スタンバってくれたまえ!」
 半径20メートルくらいの何の変哲も無い円形のバトルフィールドにやせとチビの二人のビーダーが立つ。
DJ「第1試合は、ヤセン選手vsチビン選手だ!」
チビン「まけねぇからな!」
ヤセン「お前も大きくなったよなァ・・・。あの頃に比べると。」
チビン「いつだよ!」
ヤセン「あの頃は、確か・・・身長2ミリくらいしかなかったのにな。」
チビン「そんなわけねぇだろ!」
 痩せとチビはくだらない漫才をしている。その姿は、あの某漫才コンビを彷彿とさせていた・・・。
ヒスイ「く、くだらない・・・。」
セシル「この大会に出るビーダーって、みんなあんな感じなのかな?」
DJ「さぁ、軽く言葉のジャブをかわしたところで、始めるぞ!」
 二人がビーダマンを構える。
DJ「レディー、ビーファイア!!」
チビン「うおおおお!!」
 チビンの連射。しかし、ヤセンは全く動じない。
ヤセン「いや、2マイクロメートルくらいか・・?」
チビン「だからそんなわけねぇっていってるだろ!っていうかいつまでやってんだよ!」
ヤセン「俺とお前の愛が尽きるまでさ・・。」
チビン「気色悪ぃ事言うなよ!」
 チビンのショットを全てまともに受けてしまうヤセン。
DJ「おおっと!チビン選手の連射をまともに喰らってしまったヤセン選手!大丈夫かなぁ~!?」
ヤセン「いててて・・・。」
DJ「無事だよ~!!ここで、ヤセンの反撃が始まるかな!?」
ヤセン「いけっ!」
 ドンッ!!
 ヤセンのパワーショット、しかし、チビンはあっさりかわす。
チビン「おりゃあ!!」
 チビンもヤセンにパワーショットを撃つ。
ヤセン「はっ!」
 カンッ!
 ヤセンのショットがそれを止める。
DJ「二人とも、一歩もゆずらない激しいバトルだね!まぁ、一回戦で負けるわけにもいかないしな!」
ヒスイ「微妙に変な実況・・・。」
ヤセン「そろそろ決着をつけるぜ・・!」
チビン「ああ・・!」
 チャキ!
 二人は素早くビーダマンを構え、撃つ。
 シュバー!!
 二つのビーダマが真っ直ぐ向かっていく。
チビン「いけー!」
ヤセン「ポー!!」
チビン「どんな気合いなんだよ!」
 バーン!!
DJ「な、なんと!パワーはほぼ互角!決着をつけるであろうこのショットは、打ち消されてしまったぁ~!!」
クロウ「随分粘るな・・。」
ヒスイ「これは・・・長期戦になりそうですね。」
クロウ「ああ・・。」
セシル「(なんでザコの試合でこんなに時間取るの!?(汗))」




       つづく


 次回予告

ヒスイ「次はいよいよ、僕の試合ですね!」
セシル「見たところ、相手は弱そうだし、楽勝ね!」
クロウ「甘く見ないほうが良いぜ・・。この大会を制するのは、単純な強さだけじゃない。」
セシル「どう言う事よ?」
クロウ「そのくらい自分で考えろ。」
ヒスイ「とにかく、僕の開発したこの新ブースターの出番ですね!」
セシル「次回!『ビー玉の嵐!ローラーシールドブースター』」
ヒスイ「極めろ、強さへの道!」



 

 



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