第4話「憎しみのショット!」
ビーダマン修行を続けている三人組は、とある森の中に聳え立つ大きな木の下で野宿をしていた。
セシルが仲間に加わってからお金に不自由はしていないのだが、泊まるべき宿が見つからなかったのだ。
当然、セシルは猛反対したが、なんとか説得し、三人は仲良く並んで寝ることに・・・なるわけもなく、セシルだけは何センチか離れて寝ている。
・・・・・。
・・。
そして、翌朝。
ヒスイ「ふぁ~、よく寝た~・・!」
ヒスイが最初に起き上がり、大きく伸びをする。
クロウ「・・ん・・・。」
次にクロウも目覚める。
クロウ「朝か・・・。」
クロウは未だに寝ているセシルの前までいき。
クロウ「起きろ、もう行くぞ!」
しかし、セシルは気持ち良さそうに寝息を立てて、起きる気配は無い。
セシル「・・・zzz・・・。」
クロウ「・・・。」
ヒスイ「よし、これを使いましょう。」
ヒスイは、おもむろに、丸い機械を取り出し、上についてある白いボタンを押した。
『起きんかいコラァ!起きんかいコラァ!!』
突如、その丸い機械から、ドスの聞いた声がけたたましく鳴り響いた。
セシル「きゃっ!?な、なになに!?」
セシルはびっくりして飛び起きた。
クロウ「なんだ、それは・・?」
クロウは、全く驚きもせず、淡々と聞く。
ヒスイ「僕が開発した。目覚まし機です。これならどんなお寝坊の人でもバッチリ起きれますよ!」
クロウ「(起きれればいいってもんじゃないだろう・・・。)」
自信満々なヒスイに、クロウは心の中でツッコミを入れた。
セシル「はぁ・・・もっとマシな起こされ方をされたかったよ・・・。」
セシルは寝床を片付けながらぶつくさ文句言っている。
クロウ「贅沢言うな。」
ヒスイ「マシな起こされ方って?」
セシル「それはもちろん、愛しの王子様からのキ・・・きゃっ☆恥ずかしい!!」
セシルは、両手を赤らめた頬に当て、恥ずかしがっている。
クロウ「(なら、言うな。)」
ヒスイ「・・・・・(汗)」
ヒスイとクロウは、セシルの思考回路についていけないようだ・・・。
クロウ「まぁ、いい。そろそろ出発するから。準備しとけよ。」
既にクロウとヒスイは準備万端なようで、立ち上がって歩き出そうとしている。
セシル「え、もう行くの?」
対するセシルはまだまだ出発の準備は出来ておらず、むしろその行動の速さに驚いていた。
クロウ「ああ。いつまでも同じ所にジッとしててもしょうがないからな。ま、不満なら別に一緒に旅しなくても良いんだぞ。」
セシル「不満なんて言ってないでしょ。ちょっと、待ってて!」
セシルは近くの木陰に身を隠して身支度をしはじめた。
そして、三人は準備を終え、また旅に出る。
何も無い荒野を歩く三人。
ただクロウが強くなりたいというだけの、明確な宛ても何も無い無意味な旅だ。
ヒスイ「あ、そう言えば、セシルちゃんってなんで旅してるんですか?女の子の一人旅なんて、よく家族が許してくれましたね?」
とは言え、ただ無言で歩いていても味気ないので、道中はなるべく会話をつづけようとする。主にヒスイとセシルだけだが。
セシル「・・・許してもらってない・・。」
ヒスイの問いに対して、セシルはうつむき加減に答えた。
ヒスイ「え・・?」
ヒスイが問いかけると、セシルは言いづらそうに答えた。
セシル「家出してきたんだ・・。」
ヒスイ「家出・・?」
クロウ「家出は良くないな、早く帰って家族を安心させろ。」
クロウの冷たい態度は相変わらずだ。
ヒスイ「クロウ。話は最後まで聞かないと・・!」
が、そんなクロウの態度にはもうすっかり慣れっこなのか、セシルは話を続ける。
セシル「私の親、すっごい過保護で・・。まともに外にも出してもらえなかったんだ・・。だから・・・。」
所持金からも察せる通り、セシルはかなりのお嬢様だったらしい。身なりからはとても想像できなかったが。
クロウ「外の世界を見てみたくて家を出たってわけか。」
セシル「うん・・・。」
クロウ「おめでたい奴だ。自ら幸せを手放すとはな」
クロウの皮肉に大して、セシルは否定せずに自嘲気味に笑った。
セシル「そうかもね。でも、私は……」
クロウ「外なんてロクなもんじゃない。出ないで済むなら、それに越した事は無い」
セシル「そう、なのかな……じゃあ、クロウはどうして旅を」
セシルがクロウへ聞き返そうとしたその時だった。
ドキュンッ!
いきなり、後ろからビーダマが飛んできて、クロウの頬をかすめた。
クロウ「はぁ・・・。」
クロウはゆっくり振り向く。そこには目つきの悪い少年が立っていた。
???「俺は・・・。」
クロウ「はいはい、みなまで言わなくてもわかってる。シャドウのビーダーで、裏切り者の俺を始末しに来たんだろ?すぐに片付けてやるから、早くビーダマンを構えろ。」
シャドウ「・・・(泣)」
セリフを全部とられたので、なんだか悲しそうなシャドウのビーダー。ビーダマンを構えている姿も哀愁を漂わせている。
ヒスイ「それじゃ、始めますよ!ビー、ファイアー!!」
ヒスイの合図でバトルが始まバトルが始まる。
シャドウ「うおおおおお!!!!!」
シャドウのビーダーは気合いを入れて連射しまくった。
クロウ「ふん・・隙が多すぎだな。」
クロウは余裕でレクイエムを構える。
そして、いつのもように勝負は一瞬で着いてしまった。
シャドウ「ぐっ・・・や、やられた~・・!」
バタッ!
かなり演技くさく倒れるシャドウ。しかし、これはネタではなくマジなのだ!
クロウ「ザコが・・。」
そう言い捨てて立ち去ろうとするクロウ。
ヒスイ「あ、ちょっと待って!」
それをヒスイが止める。
クロウ「なんだ?」
ヒスイ「ほら、このビーダーのポケット、何か入ってる・・・。チラシかな?」
シャドウのポケットからチラシのようなものがはみ出ていた。
セシル「なんだろう・・?」
セシルは、それを手にとって見る。
セシル「・・・なになに?ビーダマンバトルリーグ・・『ウィナーズ』?」
ヒスイ「へぇ~、すごい!ビーダマンの大会かぁ~!!」
クロウ「ふん・・・。」
ヒスイは大はしゃぎだが、クロウは鼻で笑う。
セシル「クロウは乗り気じゃないみたいね?」
クロウ「くだらないな・・。こんなお遊び大会・・・。」
ヒスイ「そんなことありませんよ!腕に覚えのあるビーダーが世界中から集まってくるんですよ!」
クロウ「腕に覚えのあるビーダーといっても、たかが知れている・・・。有名にな
るって事は、表の世界でのうのうと暮らしてきたって言う証拠だ。」
セシル「そんな事ないと思うけどな~。一生懸命努力してきたからそれを評価されて有名になったんだから、のうのうとしてるわけじゃないと思うよ。」
クロウ「まぁ、そんな甘い考えのお前らに理解してもらおうとは思わないけどな・・・。それに、ここを良く見てみろ。」
クロウは、チラシの右端の部分を指差す。
セシル「え、なになに?」
覗きこむ二人。
ヒスイ「うわっ!すごい!!優勝賞金もあるんだ!?しかもこの金額、半端じゃないですよ」
セシル「これは、絶対に出場しなきゃ!賞金手に入れて、ビーダマン弁償してよね!」
クロウ「相変わらずバカだな・・・。」
クロウは、額に手をあて、呟く。
セシル「どういう意味よ?」
クロウ「これだけの賞金がかけられてるって事は、シャドウは当然出場してくるだろう?」
ヒスイ「そりゃ、そうでしょうね・・・。」
クロウ「そうなると恐らく、出場するビーダーは殆どシャドウのビーダーになるだろうな。」
セシル「なんで、そう言いきれるのよ?」
クロウ「少しは頭を使え。あいつらはどんな汚い手を使ってでも目的を果たそうとす
るような奴らだ。つまり、あらかじめ大会前に、脅威となりうるビーダーを潰しておくに決まってるだろ。」
ヒスイ「あ、確かに・・・。」
クロウ「あんな低レベルなビーダーの集まりばかりが出場するような大会なんか、出場する価値はない。」
セシル「普通の人が言うと、壮大な負け惜しみみたいに聞こえるけど・・・。」
ヒスイ「シャドウのビーダーをあっさり片付けるクロウが言うと、妙に説得力があるような・・・。」
クロウ「大体、あんな低レベルな大会に出場しなくとも、もっと・・・っ!?」
突如、遠くからもの凄い勢いでビーダマが飛んで来た。
ヒスイ「うわっ!危ない!!」
ビーダマは三人には当たらなかったが、地面にぶつかる。
ドオオン!!
爆音とともに、砂煙が巻き起こる。
クロウ「くっ!」
そして、砂煙が晴れたとき、三人は驚いた。
セシル「こ・・・これ・・・」
ヒスイ「な、なんてショットだ!」
地面は、ショットの威力でめり込んでおり、更にビーダマはキュルルルル!!と激しい音を立てながら縦回転している。
クロウ「(!?・・・なんだ、この、感覚は・・!)」
セシル「地面がめり込むなんて・・・なんて凄いパワーショットなの!?」
ヒスイ「いえ・・・驚くのはそれだけじゃありません!」
セシル「え?」
ヒスイ「あのビーダマ、スピードはクロウのレクイエムの撃つパワーショットより下回っていました!なのに、実際の破壊力は、レクイエムとほぼ同等です!」
セシル「と、言う事は?」
ヒスイ「ドライブショット・・・!しかも、レクイエムの改良型素体ZERO以上の回転力を持ってることになります!」
クロウ「(レクイエム以上のドライブショット・・・。だが、本当に驚くべき事は、パワーでも回転力でもない・・!)」
クロウは、既に回転の止まっているビーダマを見据える。
クロウ「(このビーダマに込められた・・・身震いするほどの激しい想いだ・・!)」
ヒスイ「誰だ!こんな事をするのは!!」
ザッ!
クロウ達の前に一人の少年が現われる。
クロウ「お前・・・シャドウのビーダー・・・なわけないか。こんなショットを撃てる奴がシャドウのビーダーであるはずがない・・・。」
???「・・・・。」
少年は不適に笑う。
クロウ「!?」
そして、踵を返す。
セシル「ちょっと待ちなさいよ!こんなことしといて名乗りもせずに去るなんて失礼じゃない!?」
ロン「ロンだ・・・。そして、こいつはライジングヘイロン・・。」
ロンと名乗った少年は、ビーダマンを見せる。
クロウ「・・・!」
セシル「・・・。」
ロン「これで満足だろう?」
そういって、一瞬で姿を消した。
ヒスイ「消えた・・・。」
クロウ「ロン・・・!」
クロウは震える唇でその名を呟いた。
セシル「クロウ・・?」
クロウ「(なんだ・・・!?あいつから発せられる凄まじい憎悪は・・・!)」
ヒスイ「どうしたんですか、クロウ?」
クロウ「(そして、あの憎悪の矛先は・・・!)」
クロウは拳を握り締める。
クロウ「(俺・・!)」
つづく
次回予告
ヒスイ「え、ウィナーズ以上に凄い大会があるって本当なんですか、クロウ?」
クロウ「ああ。最高に熱い大会があるぜ・・・・!」
ヒスイ「次回!『闇のトーナメント』」
クロウ「極めろ、強さへの道!」
