爆・爆ストーリー ZERO 第3話

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第3話「セシル登場」

 

 ビーダマンを極める旅の途中。
クロウとヒスイは、荒野を抜けてようやく前方300mほど先に活気ある街の入り口が見えてきた。が、街には入らずに真剣な顔して何やら話し合っているようだ。
クロウ「・・・まずいな・・。」
ヒスイ「ええ・・・まさか、こんな事態になるとは・・・。」
道の外れで座り込み、二人が話し合っている事とは・・?
クロウ「相当、切り詰めないといけないな・・・。」
ヒスイ「食費が尽きたら、旅どころじゃありませんからね・・・。」
どうやら、残り少なくなった食費の事で話し合っているらしい。
クロウ「そもそも、何の収入も無い二人で旅すること自体間違ってるからな。」
ヒスイ「それを言ったら物語が成立しなくなりますよ~!」
クロウ「これが物語だったらな……。」

 ヒスイの言葉に若干の違和感を覚えたクロウだが、軽く流して頭を抑えた。
???「グルルルル!!」
その時だった。クロウの背後から何かのうめき声と液体の滴る音が聞こえた。
クロウ「うるさい・・・!黙ってろ。」

 だが、今はそんなものに構ってる余裕はない。クロウは悪態をついてそれを無視した。
ヒスイ「あ・・・あ、あ・・・。」
が、反対側に座っているヒスイは何かに驚いているようだ。
クロウ「なんだ、お前までうるさいぞ。」

 クロウが怪訝になって顔を上げると、ヒスイは表情を強張らせながらクロウの背後を見ている。
ヒスイ「あ、あれ・・・!」
ヒスイは震えながらそれを指差す。
クロウ「ん・・?」
クロウはゆっくり振り向く。そして、そこにいたのは・・!
クロウ「狼か・・。」

 目が血走り、口からは涎をダラダラとたらし、今にも噛み付きかからんとしている狼の姿があった。

 しかし、さほど気にする事でもないのか、クロウは再び前を向いて今の深刻な状況を打破するために思案を続けた。
ヒスイ「って、なんで落ち着いてるんですかっ!!」

 狼を見ても微動だにしないクロウに対して、ヒスイは恐怖心を忘れてツッコンだ。
ウルフ「ガウッ!!」
その時、クロウの行動を隙と判断した狼が飛び掛ってきた。

 クロウは狼を見ていない。今なら一瞬で食える……!
クロウ「遅い・・!」
クロウは、首をゆったりと動かし、紙一重で狼の攻撃をかわす。

ヒスイ「わっ!」

 

 

 ゴッ!

 ヒスイも慌ててとびかかる狼をよけ、狼は勢い余って地面へとかぶりついてしまった。
ウルフ「ガッ、ガルルルル~!!!」
地面を味わわされてしまい、狼は怒りをあらわにしてクロウへ向き直る。
クロウ「ふんっ、面白い・・!」
チャキ・・!
それを宣戦布告と見なしたクロウは、メタルレイヴンレクイエムを構えた。
クロウ「ずっと頭使ってきたからな、いい運動になりそうだ・・・!」
ドキュンッ!
先制はクロウのショット。しかし、狼は得意の俊敏さであっさりかわす。
クロウ「ちぃ・・!」
ドキュンッ!ドキュンッ!!
何発も連射するが、なかなか当たらない。
クロウ「さすがに速いな・・!そこいらにいるビーダーとは大違いだ。いい練習になる。」
そして、クロウはまた縦横無尽に動き回る狼へ連射する。
しかし、その全てを狼はことごとくかわしてしまう。
ヒスイ「(さすがですね・・・。あれは、一見デタラメに撃っているだけに見えます
けど、確実にあの狼の不規則な動きを捉えています!もう5発撃てば・・狼の動きを完全に掴めますね!)」
ドキュンッ!ドキュンッ!ドキュンッ!!バシュッ!
ヒスイが予想してから、3発撃った所で、狼にビーダマが当たった。
ウルフ「キャイン!」
狼が怯む。
クロウ「なかなか楽しかったぜ・・!」
とどめのパワードライブショットが狼にヒットし、狼は気絶してしまった。
ヒスイ「(やはり、予想が外れてしまいましたか・・・。)」

 予想外にクロウが優秀だったことに、ヒスイは妙な感心をしていた。
クロウ「何をボーッとしている。早くいくぞ。こいつが目覚める前にな。」

 狼如きに食い殺されるクロウではないが、小うるさい動物がいては考え事も出来ない。

 そう思ったクロウはヒスイを促してその場を立ち去ろうとした。
ヒスイ「え、ええ・・!」

 ヒスイも我に返って慌ててクロウの後に続こうとする。
???「ちょっと待ちなさいよ!!」
歩き出そうとした二人の後ろから、気の強そうな女の子の声が聞こえた。
クロウ「あん・・?」
振り向くと、やはりそこには金髪ショートヘアな少女がいた。歳の頃は10代前半だろうか、幼さを感じる顔立ちだが、軽装で活発そうな雰囲気を感じさせる。

 黙っていれば可愛らしいのだろうが、今の彼女は何か文句言いたげに顔を顰めている。
クロウ「なんだ、お前は?」

 声をかけられる理由が分からないクロウは、いぶかしげな視線を少女へ向ける。
???「なんだじゃないでしょ!私のビーダマンを壊しといて!!」

 クロウの失礼な態度に、少女は怒りを露わにした。
ヒスイ「壊した・・?」
少女は自分の壊れたビーダマンを二人に見せた。
???「あんたの流れ玉が当たったんだからね!」

 ヘッド部分にビー玉の大きさのくぼみが出来ており、そこから派生して全体にひび割れている。

 破損はコアにも達しており、これではまともにビー玉が撃てない。

ヒスイ「(見た感じ、たった一発ヒットしただけでここまでの破損……。さすがはクロウ)」

 ヒスイは妙な所に感心していたが、さすがに心の中に留めておいた。
クロウ「ああ・・・あの狼と戦った時の流れ弾が当たったのか・・。まぁ、自分に当
たって怪我しなかっただけでも、運が良かったと思うんだな。」
クロウはサラリとそう言って振り返り、歩こうとする。
???「だから、待ちなさいって言ってるでしょ!」

 歩き出したクロウの襟首を両手でグッと掴んで制止した。
クロウはめんどくさそうに振り返る。
クロウ「だから、なんだ?」

 本気で何も悪いと感じていないのか、逆に相手を非難するように目を細めた。
???「私のビーダマン壊したんだから、ちゃんと弁償しなさいよね!!」

 しかし少女もクロウのそんな態度に屈する事無く、当然の請求をする。
クロウ「弁償だと・・?」

 それを聞いて、一瞬クロウの顔色に焦りが浮かんだ。が、すぐにそれを直す。
???「当然でしょ!」
クロウ「そんな金は無い・・。あるのは、最低限の食費だけだ。」

 淡々とそんな事実を告げる。が、それで相手が納得するわけがない。
???「だからって、弁償しなくてもいいってことにはならないでしょ。」
クロウ「だったら、ツケでもしておけばいい。覚えてたらいつか弁償してやる。」
そう言って、クロウは歩き出す。
ヒスイ「あ、待ってください!」
ヒスイも慌てて後を追う。
???「あ、待ちなさいよ!」
少女もついてくる。
クロウ「ついてくるな・・。」
???「ねぇ・・だったら、ビーダマンが手に入るまで私を守ってよ!」

 少女はクロウの隣まで来て、顔を覗き込むようにして言った。
ヒスイ「守る?」

 ヒスイが首を傾げる。
???「当たり前でしょ。か弱い女の子である私にとって、ビーダマンが身を守る唯一の武器だったんだから!」

 少女は、か弱いらしからぬ態度でふんぞり返って言った。
クロウ「ちっ・・・勝手にしろ!」

 面倒な言い争いが嫌いなクロウは少女の要求を飲んだ。不本意ではあるが、面倒な事になればヒスイに丸投げしてしまえばいい

ヒスイ「そういえば名前聞いてませんでしたね。僕はヒスイです。君は?」
セシル「私はセシル。よろしくね!」
ヒスイ「よろしく!」
セシル「で、そっちの無愛想君の名前は?」
クロウ「あいにく、お前に名乗る名前は持ってないん・・。」
ヒスイ「クロウ・・!」
セシル「へぇ、クロウって言うんだ。よろし・・・。」
クロウ「結構だ。女なんかとよろしくされたくない。」
セシル「ちょ、どういう事よ!」
クロウ「分からないのか?弱い奴と仲良くなっても足を引っ張られ・・。」
ヒスイ「クロウ!」
クロウ「なんだよ・・。」
ヒスイ「相手は女の子なんですから、いつもよりもっとこう・・・愛想良く出来ない
んですか?」
クロウ「俺は俺だ。いちいち相手に合わせる必要など無い。」
ヒスイ「そうですか・・・。」
 そして、三人は歩き始める。
クロウ「(おい・・。)」
 クロウはヒスイにボソッと話し掛ける。
ヒスイ「(なんですか?)」
クロウ「(適当になんかビーダマンを作ってやれ。)」
ヒスイ「(そんなに早く開発できるわけないじゃないですか~!)」
クロウ「(しかし、アイアンEGくらい作れるだろ?)」
ヒスイ「(だからそんな予算はありませんよ~(汗))」
セシル「ねぇ・・・ちょっと歩くペース早過ぎない?私疲れちゃった・・・。」
クロウ「(ちっ・・・早速かよ・・)」
ヒスイ「じゃあちょっと休憩しましょうか。」
セシル「うん!」
クロウ「仕方ねぇな・・・。」
 三人は適当なところで腰をおろす。
ヒスイ「はぁ・・・そう言えばお腹すいたな~・・・。」
クロウ「もう昼だからな。」
セシル「だったら、丁度(ご都合主義の如く)あそこにファミレスあるから、あそこ
で昼食にしよう。」
 セシルは、ボロいネコの形をした建物を指差す。
クロウ「んな金ねぇよ。言っただろ?最低限の食費しかないって。」
セシル「大丈夫☆お金ならあるから!」
 セシルは懐から札束を取り出し、見せる。
クロウ「なっ・・!」
 驚く二人。
クロウ「(お、おい・・・こいつ子供の癖になんでこんなに金持ってんだよ・・!
?)」
ヒスイ「(さ、さあ・・?)」
クロウ「(まぁでも、これで当面の問題である食費不足は解消できそうだな・・
・。)」
セシル「どうしたの?早く行こうよ!」
ヒスイ「あ、うん!」
 三人は店の中に入っていった・・・。
ウェイトレス「いらっしゃい!」
クロウ「ボロいな・・・。」
ヒスイ「シー!!」
 ヒスイが慌ててクロウの口を塞ぐ。
ウェイトレス「・・・・(怒)」
 ウェイトレスさんは、必死に怒りをこらえている。第一声であんな事いわれたら誰
だって怒るだろう・・。
ウェイトレス「(我慢よ、我慢・・・!折角の三ヶ月ぶりのお客様なんだから!
!)」
 ウェイトレスさんは、精一杯の営業スマイルを作る。
ウェイトレス「何名様ですか?」
クロウ「見て分からないのか?三名だ。」
ウェイトレス「(な、生意気・・!!どういう育て方されたのかしら!?)」
ヒスイ「クロウ!失礼だって!」
クロウ「そうか?」
ウェイトレス「そ、それでは・・・空いてる席にお座りください・・!」
クロウ「ふん・・・見事にガラガラだな(笑)」
 クロウは鼻で笑う。
ウェイトレス「ぐっ・・・!ご、ご注文がお決まり次第お呼びください・・・。ご
ゆっくりどうぞ・・。」
 ウェイトレスは歯を噛み締めながらもなんとかお決まりのセリフを言う事が出来
た。
セシル「それじゃ、何食べようかな~♪」
 セシルがメニューを見ながら嬉しそうに言う。
 と、その時!
 バーン!!
クロウ「なんだ!?」
 店のドアが壊され、黒い服を着た男が入ってきた。
男「見つけましたよ・・!」
セシル「あっ・・!」
クロウ「なんだお前は!シャドウのビーダーか!」
 クロウは素早く男の前に立つ。
男「シャドウ・・?何のことです?どきなさい、あなたに用は無い。」
クロウ「とぼけるな!シャドウが俺の事を狙ってるのは分かりきってる事なんだよ
!」
男「まぁいいでしょう。邪魔をするのなら誰であろうと容赦はし・・!」
 ゴンッ!
 クロウのショットが男の顔面を直撃した。                  
    (注)ビーダマンを人に向けて撃ってはいけません!!クロウは元シャドウ
だからこんな事をするのです!
男「きゅ~・・!」
 男は気絶した。
クロウ「なんだ・・?シャドウのビーダーとは言え、やけにあっさりだな。」
セシル「・・・・。」
クロウ「ま、いいや。早く選ぶとするか・・。」
ウェイトレス「(あ~、ドアが壊れてる~!!壁に穴を開けまくるヤマトが旅に出た
ばかりだってのに、また修理代が・・・!!!)」
 折角三ヶ月ぶりにお客が来てもロクな事が無いミエ。果たして彼女は、これからも
店を続けていく気力が残っているのか!?(なんか間違ってるよ!!)
クロウ「今日はあまり運動してないから、あっさりしたものがいいな・・。ネギうど
んにしとくか。」
ヒスイ「じゃ、僕は牛丼!」
セシル「私、カレーオムレツ!」
 三人の旅は、まだまだ続く・・・!

 つづく

 次回予告

ヒスイ「強力なショットを放つビーダマン、ライジングヘイロン!そして、それを持
つ少年、ロン!」
クロウ「なんだ!?あいつから感じられる、この凄まじい憎悪は!!」
ヒスイ「次回!『憎しみのショット!』」
クロウ「極めろ、強さへの道!」

  

 



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