爆・爆ストーリー ZERO 第2話

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第2話「二人旅」




 眩しい日差しに北からの空っ風が心地よく吹いていた。

 クロウは、そんな辺り一面何もないだだっ広い荒野を無言で歩いていた。

 その後ろをヒスイがトコトコと付いてきている。
クロウ「おい」
振り向きもせず、クロウはヒスイに話し掛けた。
ヒスイ「なんですか?」

 ヒスイはキョトンとした顔で首を傾げた。

クロウ「どういうつもりだ?」

ヒスイ「と言うと?」

 質問の押し問答になってしまって話が進まない。

 普段他人と話をしないクロウはこう言うコミュニケーションは少し苦手だ。
クロウ「何故俺に構う。」
ヒスイ「別に、ただ僕がそうしたいと思ったからと言うだけです。理由が必要ですか?」

 ヒスイは飄々とした口調で、抽象的な返答をした。
クロウ「ちっ・・!」
納得は出来ないが、反論する言葉も浮かばなかったクロウは舌打ちしてから言う。
クロウ「仮にも俺はシャドウのビーダーだ。必要とあらば、お前の命を奪う事に躊躇はしない。そんな奴と関わって、怖くないのか?」
ヒスイ「えぇ。だって、君はもうシャドウのビーダーじゃありませんし。

 脅すような口調に対して、ヒスイは平然とクロウの言葉を否定した。
クロウ「何故、そんな事が言える?」

 それを聞いて、クロウは立ち止まって振り返り、ヒスイの顔をマジマジと見た。

 その様子を見て、何故かヒスイは嬉しそうに口を開いた。
ヒスイ「今の君の目は、もうシャドウの目じゃない。あの時・・・僕との勝負が終わった後、君はシャドウの命令を無視し、僕から伝説のビーダマンの在り処を聞き出そうとせず、そのまま走り去っていった・・。それが、何よりの証拠です。君は、シャドウの命令よりも、自分の力を優先させた。そんな君がいつまでもシャドウにいるわけないし、だからこそ、僕はメタルレイヴンレクイエムを作ったんです。」

 そんな風に自分の推測を語るヒスイは少々得意気だった。
クロウ「・・・・。」
クロウは無言でレクイエムを見つめ、すぐにヒスイへ向き直った。

クロウ「そんな事より、お前確か、伝説のビーダマンの場所を知ってたよな?」
ヒスイ「え、ええ・・まぁ・・・。」
ヒスイの表情が明らかに変わる。
クロウ「案内しろ。」
ヒスイ「え・・・!?」

 クロウの言葉にヒスイはあからさまな動揺をした。
クロウ「確かに、お前の言うとおり、俺はシャドウを辞めた・・・。だが、伝説の
ビーダマンには興味がある。それに・・・シャドウの連中にとられるのもシャクだからな。」

 シャドウとしてではなく、あくまで自分のために伝説のビーダマンの元へ行きたい。

 クロウのその言葉に揺るぎないものを感じたヒスイは、諦め気味に答えた。
ヒスイ「・・・・・わ、分かりました・・・。」

 そして、ヒスイは荒野を外れてある岩山にクロウを案内する。

 そこは、ゴツゴツとした岩肌に強烈な風が吹きつける、この間ヒスイが隠れ家としていた場所よりも更に険しい場所だった。
クロウ「本当にここにあるんだな?」

 風に耐えながらクロウとヒスイは岩の突起を手掛かりに岩壁を登っていく。
ヒスイ「それは、分かりません・・・あくまで噂にすぎませんから・・・。」
クロウ「まぁ、あってもなくても別にいいんだけどな・・・。」

 なんとか二人は崖を登り切り、平坦な場所へと辿り着いた。

 しかし、そこから先は二手に道が分かれている。
ヒスイ「二手に分かれましょう。」
クロウ「ああ。」
効率を重視し、クロウとヒスイは二手に分かれて捜索する。
クロウ「・・・・。」
ヒスイと別れたクロウは、やや緩い上り坂を歩いていた。
クロウ「ん・・・あれは・・・?」
と、そんなクロウの目線の先に、一人の少年が立っていた。
クロウ「まさか・・・!」
その少年は、クロウを見つけると、物凄い形相でこっちに向かってきた。
クロウ「貴様・・・シャドウのビーダーだな・・!」

 その様子を見て、クロウは一瞬で相手の素性を見破る。
シャドウA「クロウ・・・あなたは、アババ様の期待を裏切り、シャドウに背いた・・・処分します。」
シャドウのビーダーはビーダマンを取り出し、容赦なくクロウへ銃口を向けた。
クロウ「ザコが・・!」
クロウもレクイエムを取り出した。

 

 バシュッ!!


 岩山の中でビー玉の発射音が鳴り響いた。 

 
 そして、数分後・・・。
ヒスイ「おーい!」
さきほどまで反対側を探していたであろうヒスイが小走りでクロウの所にやってきた。
ヒスイ「どうですか?」
クロウ「いや、見つからないな・・・。」
と、ヒスイはクロウの足元に倒れている少年を見つけた。
ヒスイ「あれ・・・この人は?」
クロウ「シャドウのビーダーだ。まぁ、ここが伝説のビーダマンの在り処だとした
ら、シャドウが情報を掴んでいない方が不自然だしな・・。」
ヒスイ「そっか・・・。でも、これでここに伝説のビーダマンがあるって説が濃くなりましたね。」
クロウ「あるいは、裏切り者である俺を始末しに来た、シャドウの回し者か・・・。なんにせよ、まだまだシャドウとの付き合いは切れそうにないな。」

 そう言うクロウの表情はどこか楽しそうだった。
ヒスイ「・・・。」
クロウ「そんな事より、そっちは何もなかったようだな。」

ヒスイ「えぇ。そう簡単には見つかりませんよ」

クロウ「と、なると。やはり頂上を目指した方が確実か」
ヒスイ「えぇ~!?」
頂上と聞いたとき、ヒスイが奇声を発生する。
クロウ「どうした?」
ヒスイ「い、いや・・・・な、なんで頂上に・・・?」

 ヒスイはあからさまに動揺しながら問いかける。
クロウ「ただの勘だ。こういうものは最も辿り着きづらい場所にあるものだからな」
ヒスイ「そ、それは・・・そうかもしれないけど・・・。」

 ヒスイの歯切れが悪い。
クロウ「なんだ、都合でも悪いのか?」
ヒスイ「う~・・・わ、分かりました。行きましょう・・・。」

 渋々ではあったが、ヒスイは承諾し歩みを進めた。
二人は、頂上へ向かう。
ヒスイ「・・・・。」
ヒスイは浮かない顔をしている。
クロウ「どうした、何かあるのか?」
ヒスイ「・・・実は、これも噂なんですが、この山の頂上には、鋼の翼を持った大烏がいるとか・・・。」

 ヒスイが躊躇していたのはその噂だった。

 大烏がもし実在するとしたら、いくらビーダーとは言え命の保証は出来ないだろう。
クロウ「お前・・・そんな事信じきってるのか?あからさまにデマじゃないか。」

 が、クロウはその話を聞いて怖がるどころか、鼻で笑った。
ヒスイ「それは・・・そうかもしれないけど・・・。」
クロウ「そうかもじゃなくて、そうに決まってんだろうが。」
んな事を話しながら歩いている時、黒い服を着た少年が立ちふさがった。
シャドウB「ほう・・・こんな所で裏切り者に会えるとはな・・・。昇給のチャンスだ・・・。悪いが、ここで潰れてもらう!」

 こいつもシャドウのビーダーなのだろう、クロウをみつけるやビーダマンを構えた。
クロウ「ザコが・・・粋がるな・・・。」
クロウもビーダマンを取り出し、二人がにらみ合う。
ヒスイ「待って。」
クロウ「なんで、お前が止める?お前には関係ないだろう。」
ヒスイ「ちょっと、このパーツを試してみたくてね・・・。」
ヒスイはポケットからあるパーツを取り出し、ジェイドガンナーの腕に取り付け
る。
クロウ「そのパーツは・・・!」
ヒスイ「ジェイドガンナーの腕を強化するパーツ、ジェイドシールド!持ちやすさがアップして、よりパワーをホールドパーツに伝えやすくしたんです!」
クロウ「いつの間にそんなものを・・。」
ヒスイ「昨日、一日で作ったパーツだから、うまく機能するか自信はありませんが・・!」
クロウ「(一日だと・・・!?どうなってるんだ、こいつの技術力は・・・!)」
シャドウB「ごちゃごちゃ言ってないで、早く準備しろ!」
ヒスイ「準備ならとっくに出来てますよ。早く始めましょう。」
シャドウB「お前に用はない!部外者は黙ってろ!」
ヒスイ「クロウは、僕に勝ったビーダーですよ。僕を倒せないようじゃ、クロウには勝てません。試しに僕とやってみた方が、身の程を知る事が出来るんじゃないですか?」
シャドウB「ちっ・・・いいだろう。まずはお前から血祭りに上げてやる!」
二人がビーダマンを構える。
シャドウB「喰らえ!」
シャドウBの攻撃。
ビーダマが真っ直ぐジェイドガンナーに飛んでくる。
ヒスイ「・・・・。」
だが、あっさりかわされる。
シャドウB「くっ!」
ヒスイ「隙が大きいですね・・!」
ドキュンッ!
ジェイドガンナーのしめ撃ち。
クロウ「(前よりも威力が上がっている・・!ちゃんとパーツは機能してるようだな・・・。それに、強度もあるようだ・・・)」
バァーン!!!
シャドウのビーダマンが吹っ飛ぶ。
シャドウB「うぅ・・・!くそっ!」
尻尾を巻いて逃げるシャドウB。
ヒスイ「テストにしては、上々ですね・・・。」
クロウ「いや、あんなザコ相手に、時間かけすぎだ。俺なら、一瞬でかたをつける・・・!」
ヒスイ「相変わらず、厳しいですね。」
クロウ「そんな事より、先を急ぐぞ。これ以上面倒な奴に絡まれたくないからな。」
ヒスイ「え、ええ・・・。」
そして、二人は、頂上にたどり着いた。
クロウ「ここか・・・。」
ヒスイ「・・・。」
ヒスイはかなり怯えている。
クロウ「大丈夫か?体が震えてるぞ。」
ヒスイ「だ、だだだ大丈夫・・・だといいな・・。」
クロウ「・・・・・。」
クロウはため息をつき、近くを捜索する。
すると、近くに小さく光る物体が・・・。
クロウ「あれは・・・!」
クロウは、その光る物体に近づく。
クロウ「間違いない・・・これは、ビーダマンだ・・・!」
ヒスイ「見つかったんですか?」
ヒスイも近づく。
クロウ「ああ、これは、間違いなく伝説のビーダマンだろう。」
それは、黒く、威圧感のあるビーダマンだった。
素体だけで、アーマーはついていないのだが、その素体も一般のビーダマンとは全く違う構造をしている。
ヒスイ「そうですね・・・。この重厚感、まるで、鋼だ・・・。」
ヒスイがそのビーダマンに手を伸ばしたその時・・!
ビュウウウウウ!!!
突如突風が吹き、頭上で、金属音が聞こえた。
クロウ「なんだ・・?」
ヒスイ「ま、まさか・・・・!」
二人はゆっくりと、上を見上げる・・・。
ヒスイ「あ、あ、あ、あああああああ~~~!!!!」
大きな鋼の翼を持った烏が羽を大きく動かしている。
クロウ「本当にいたんだな・・・。おそらく、あの羽の内部は空洞になってるんだろうな、だから重い鋼の翼でも飛ぶ事が出来るんだ・・。」
ヒスイ「れ、冷静に分析してる場合じゃありませんよ!!早く逃げますよ!!」
クロウ「何でだ?まだ伝説のビーダマンを取っていない。」
ヒスイ「それどころじゃありませんよ!!!」
バッサバッサ!!
その時、烏が伝説のビーダマンをくわえる。
クロウ「あ!」
そして、そのまま飛び去ってしまった・・・。
クロウ「行っちゃったな・・・。」
ヒスイ「ええ・・・。」
クロウ「結局、無駄骨だったか・・・。まぁいい。少しは鍛錬になったか」

 クロウの真の目的は伝説のビーダマンではなく、強くなる事にあるから。

 自分を鍛える事に繋がるのであれば、伝説のビーダマンが手に入ろうが、手に入らなかろうがどっちでもいいのだろう。
ヒスイ「は、はは・・・」

 が、常人には理解しがたいクロウの行動理念を見て、ヒスイは引きつった笑いを浮かべた。

つづく

次回予告

クロウ「旅の途中に出会った騒がしい女、セシル。しかも何故かそいつは、俺たちのあとをついてくる!」
セシル「何故かじゃないでしょ~!あんた達が私のビーダマンを壊したんだから、
ちゃんと弁償しなさいよね~!!」
ヒスイ「そんな事言われても・・・。」
クロウ「次回!『セシル登場』極めろ、強さへの道!」

 
 

 



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