爆・爆ストーリー ZERO 第51話 K

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「分からない・・・俺は、どうすればいいんだ?」



セシル「クロウ・・・。」
 かけるべき言葉が見つからない。
 ただ悩み苦しむクロウを黙って見ているしか出来ないのか・・・。

クロウ「俺は・・・生まれてはいけない人間だった・・・だったら・・・いっその事・・・!」
 ふわ・・・。
クロウ「!?」
 セシルは、クロウを優しく抱きしめた。
セシル「お願いだから、そんな悲しい事言わないで・・・!」
 目に涙をためながら、やわらかく包み込む。
クロウ「・・・・。」
セシル「『生きてさえいればいい事ある』とか『生まれてきた事にはかならず意味がある』とか、そんな事は言わない。
クロウは確かに、生まれてはいけない人間で、生きてる価値の無い人間なのかもしれない・・・。」
 それは、否定できないこと。いや、否定してはいけないことなのかもしれない。
セシル「だけどね、生きる意味とか、価値とかって、生まれてきた瞬間に決まるものじゃなくて、生きていく中で自分で作っていくものだと思う。
だって、クロウはさっき『争いと悲しみを生み出すだけだ』って言ってたけど、私は、戦いの中でいろんな事を知ったよ?悲しみを乗り越えて強くなれたよ?
だから、私はクロウに感謝したい。『ありがとう』って、心から言いたい!」
クロウ「・・・・・。」
 クロウは耳を疑った。自分に、感謝する人間がいると言う現実に。
 今まで自分がして来た事は、全て自分のための事であり、他人はただ利用してきただけ・・・なのに・・・そう思っていたのに・・・。
セシル「これじゃ、ダメかな?たとえ私一人でも、クロウに対してそう思える人間がいるんだよ。それでも・・・クロウは生きる価値の無い人間なのかな・・・?」
クロウ「・・・・・。」
 分からない。判断が、出来ない。判断するための経験が、クロウにはまだなかったから。
セシル「もし、それだけじゃ足りないなら、これから探していこう!作っていこう!クロウが生きていく意味を・・・私と、一緒に。」
クロウ「・・・一緒・・・・に・・・・。」
 今まで、三人で旅をしてきたが、クロウは本当は孤独だったのかもしれない。
 心の奥底で、仲間という概念を拒絶し、一人で生きていると思いこんでいた・・・・。
クロウ「俺・・・は・・。」
 選べない・・・。選んでいいのか?この選択を・・・。
セシル「だって、好きなんだもん!クロウの事が、ずっと前から・・・!だから、クロウは生きてていいんだよ!他の誰かが、なんと言おうと、クロウは意味のある人間なの!私は、クロウに生きててほしいの!」
クロウ「(おれは・・・・生きてていい・・・。)」
 その言葉をはっきりと認識した時、目から、雫がたまった。
クロウ「・・・っ!」

 クロウは、その陽だまりのようなぬくもりの中で、静かに涙した。
 それは、今まで、感情を押し殺し、ただ強さだけを追い求めてきた男の流した、初めての涙だった・・・。





            BEST END

 

 




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