弾突バトル!フリックス・アレイ 超X サイドエピソードVol.2「赤壁」

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サイドエピソードVol.2「赤壁」

 

 これは超X第1話から少し前のお話。
 千葉県市川市の郊外にあるフリックス道場『小竜隊』では、少年少女達の活気ある声が漏れていた。

 道場内にいくつも設置されているフリックスフィールド、その中の一つでは初代小竜隊メンバーであるツバサとユウスケが四人の教え子達を相手にバトルをしていた。

「行きますよ張本コーチ!」
 タイヤを装備したユニコーン型のフリックスが機動力を活かしてツバサのソレイユワイバーンへマインヒットを決める。
「この位置からマインヒット決めたか……やるやないかトウジ!ツインターボユニコーンのシュート精度はかなり上がっとるで!」
「ありがとうございます!」
 トウジと呼ばれた少年は溌剌に礼をした。

 一方でユウスケは二人の少年と対峙している。
「ゆけっ!カリバーセンチュリオン!!」
 袴を身に纏い、古風な雰囲気を漂わせる少年が巨大な剣を装備したフリックスをシュートし、ユウスケのシールダーアリエスへ迫る。

「堪えろ!アリエス!!」
 ガッ!
 シールダーアリエスはその攻撃をスポンジ搭載したボディで耐える。
「っ、さすがの防御力……だが、バランスは崩した!」
「やるじゃねぇかテッペイ!そんじゃオラの番だな!!」
 金髪染めた髪をツンツンに固めた少年がレヴァントワイバーンとよく似た雰囲気のフリックスをシュートする。
「サンシャインワイアーム!!!」
 バキィィィ!!!
 バランスを崩された直後に攻撃型フリックスの追撃を受けてしまってはさすがのアリエスもたまらずに場外してしまった。

「うっ、流石に耐えきれないか……!」
「おっしゃぁ!乾コーチをぶっ飛ばしたぞ!」
「見事だ、サイヤ」
「うん、二人とも良い連携だったよ」
 やられてしまったが、ユウスケはコーチとして満足そうだ。
 これでアリエスは撃沈したのか、次はツバサ一人だけのターンとなった。

「あとは張本コーチだけですね!このまま攻めましょう、先輩達!!」
 トウジが溌剌と鼓舞すると、他三人は素直に頷いた。
「防御を固めて確実に攻撃を凌いだ方がいいかな……。皆、僕のシュラーフアリエスのところに集まってくれる?」
 大人しそうな少年が控えめに作戦を提案する。
「御意!」
「ソレイユワイバーンの攻撃力は半端じゃねぇもんな!」
「ですね!」
 四人はツバサが機体に触れたと同時にステップ移動でシュラーフアリエスが構えている中央へ集まった。しかし、それによって的は大きくなり、ソレイユワイバーンからの距離も近くなる。
「えぇ作戦やマサノブ、せやけどソレイユワイバーンのパワーを舐めたらあかんで!!」
 ツバサはソレイユワイバーンのシュートポイントを掴みながら前に押し出した。

「ツインキャノンインパクトや!!」
 バゴォォォォ!!!!!
 固まっていればそれだけ狙いやすくもある。
 ツバサは必殺のシュートで四体を一気に吹っ飛ばした。

「耐えてくれ、シュラーフアリエス……!」
「ひゃ〜、やべぇぇぇ!」
「こ、ここまでか……!」
 サンシャインワイアームとカリバーセンチュリオンは場外してしまうが、ツインターボユニコーンとシュラーフアリエスはどうにか場内で耐えていた。

「二機残ったか。やっぱりいっぺんに倒すのは無理やったな」
「でも凄いです張本コーチ!俺、感動しました!!」
「そうか?まぁ、距離が絶妙やったからな!でもマサノブらしくないやん、自分から相手の必殺の距離に仲間を移動させるなんて……あっ!」
 言いながらツバサは盤面を見てハッとした。
 フィールド中央で近距離技を使ったせいでソレイユワイバーンはフリップホール付近で停止していたのだ。
 とは言え、敵機のシュート軌道とフリップホールの位置は微妙にズレているので普通なら落とされることはない。が、これはチーム戦だ。
「頼んだよ、トウジ君」
「はい!任せてくださいマサノブ先輩!」

 トウジはツインターボユニコーンをシュートしてソレイユワイバーンの横っ腹を付き位置を移動させる。そこはシュラーフアリエスがソレイユワイバーンをフリップホールへ落としやすい位置だ。
「いけっ、シュラーフアリエス」
 マサノブは絶妙な力調整でソレイユワイバーンを弾き飛ばしてホールの上へ停止させた。
「あっちゃ〜、これでウチの撃沈かー!!」
 ツバサは額に手を当てながら悔しげに唸った。

「拙者達を集めたのは防御を固めるためじゃなく、必殺技を誘発させるためか」
「やるじゃねぇかマサノブ!オラおっでれぇたぞ!!」
 サイヤがマサノブの肩に腕を回すとマサノブは照れながら笑った。
「ははは、ほんとはちょっと偶然なんだけどね……」
「やりましたね、先輩方!あの乾コーチと張本コーチに勝てましたよ!!」
 トウジが目を輝かせながら素直に喜びを表現する。
「まぁ、ハンディキャップマッチではあるがな」
「勝ちは勝ちだろぉ!こねぇだの赤壁杯予選にも勝って、オラ達は腕上げてっかんな!」
「次の日曜に開かれる決勝大会もこの調子で行きましょう!!」

「おう!」「うん!」「御意!」

 テンションの上がっている教え子四人をユウスケとツバサは微笑ましく眺めている。
「良い感じやな、ユウスケ」
「うん、皆確実に腕を上げてるね。次の決勝大会はいいところまで行くかも」
「何言うとるんや、優勝するに決まっとるやん!ほれ、ウチの切り札も絶好調みたいやで」
 ツバサが別のフィールドを目配せする。

 そこでは、東堂ゲンジと龍剣型フリックスを使っている少年が一対一で戦っていた。
 仕切り直しのアクティブシュートをしているようだ。

「いっけぇ!ブレードドラゴンゴッド!!」
「行くぞ、ライジングドラグナー!!」

 バゴォォォォン!!
 お互い強力な竜型機体同士と言うことでその衝突は凄まじい。
「う、く……!」
 ブレードドラゴンゴッドをシュートした少年は衝撃波に顔を歪ませてしまう。そのせいか、ブレードドラゴンゴッドはフリップホールの上に停止してしまった。

「どうした、リュウ!まだ力を制御しきれてないぞ!ブレードドラゴンゴッドを信じて、一心同体になるんだ!」
「は、はい……!頼むぞ、ブレードドラゴンゴッド……」
「俺も、次は本気で行く」
 ゲンジはライジングドラグナーにパーツを取り付け変形させた。これはかつての赤壁杯で披露した必殺の形態だ。
「……!」
 それを見たリュウは気を引き締めて機体を構える。

「「3.2.1.アクティブシュート!!」」

「ライジングドラグナー!ドラゴントリニティフルバースト!!!」
「ブレードドラゴンゴッド!龍剣突破!!!」

 フル装備したライジングドラグナーに対して、リュウはブレードドラゴンゴッドを正確に真っ直ぐシュートさせる。ブレのない姿勢によってフロントの剣を正確にヒットさせ、ライジングドラグナーのヘッドが曲がりブレードドラゴンゴッドの上を飛び越えてしまい場外してしまった。

「全場外……って事は俺の負けだな」
「はぁ、はぁ……!」
「やったなリュウ!ブレードドラゴンゴッドを自分のモノに出来たじゃないか!」
 息を乱すリュウへゲンジは笑顔で称賛した。
「は、はい。ゲンジ師匠のおかげです!」
 リュウも笑顔で答えて礼をする。

「完成したみたいやなゲンジ、我がチームの秘密兵器が」
 バトルが終わったので他のメンバー達も近寄ってきた。
「まぁな。秘密兵器ってのは大袈裟だけど」
「例のシステムは問題なかった?」
「あぁ、粗方試したけど大丈夫だった。ユウスケの調整の賜物だ」
「それにしても、ガチでやって教え子に負けるなんてゲンジも衰えたんちゃうか?」
 成果の報告は終わったので、今度はツバサの軽口が始まった。
「大きなお世話だ」
「ライジングドラグナーもずいぶん年季が入ってるしね。今度オーバーホールするよ」
「あぁ、頼む。……まぁ、主役はあいつらなんだし乗り越えられるなら本望さ」
「相変わらずやな」

 チームメイトの新型機の力を目撃したメンバー達は無邪気にはしゃぎながらリュウの周りに集う。
「すっげぇパワーだな、ブレードドラゴンゴッド!」
「ここまで力をつけるとは驚きだ」
「完成おめでとうございます!リュウ先輩!!」
「ははは、サンキュー!皆の協力のおかげさ」
「これでリュウ君もフォーメーション練習に復帰出来るね」
「あぁ。決勝大会まで時間ないし、急いでブレードドラゴンゴッドをチーム戦にも慣れさせないとな」
「よーし、早速練習しましょう!!」
「なんだかワクワクしてくっぞ!」
 トウジの意見に乗ってやる気を見せたサイヤだが、すぐにその動きが止まる。
 そして。

 グーーーーー!

 とドデカい音が鳴り響いた。
「ははは、オラ腹減っちまった」
 サイヤが腹を押さえながらはにかむと一同はずっこけた。
「さ、さすがにそろそろ休憩にしようか」
「せやな。ウチもうクタクタや」
「そうだ。この前美味そうなお菓子見つけたから買っといたんだ。みんなで食べようぜ」
 ゲンジの言葉に、メンバー達の顔が綻ぶ。
「「「やったー!!」」」

 こうして、小竜隊メンバーは茶室に移動して休憩する事にした。
 お茶菓子を机に並べて皆思い思いに寛いでいる。

「っひゃー!東堂コーチの買ってきたお菓子うめぇ〜!」
「うむ、美味だ!」
「千葉ミルフィーユって言うらしい、ドソキホーテで安売りしてたから沢山買っといたんだ」
「安売りって、消費期限は大丈夫やろな」
 ツバサはお菓子の袋を目敏く見る。
「ちゃんとチェックしたに決まってるだろ」
「でもほんと美味しいです!MAXコーヒーともよく合うし」
「甘いお菓子にはやっぱりMAXコーヒーだよなぁ」
「あ、でもこの間コンビニで見かけた『ミルクの呪縛』って言うパックのカフェオレもスッキリした甘さで美味しかったですよ!ちょっと高いですけど」
「へぇ、今度買ってみるわ」
 がやがやと和やかな時間が過ぎていく。

「……」
 そんな中、マサノブは会話に参加せずチビチビと飲み物を飲みながら皆の様子を眺めていた。
「どうしたマサノブ?さっきから黙ってるけど」
 見かねたリュウが話しかける。
「うん、なんて言うか……僕らが赤壁杯に出るようになってからもう1年経ったんだなって思って」
 マサノブがしみじみと呟いた。
「そっか、初めて出た大会からもう1年か……早いなぁ」
「時とは、あっという間なものだな」
「去年は予選落ちしちまったけど、今年はこのまま優勝すっぞ!」
「去年はいきなりチームバイエルンと当たったからなぁ……でも結局優勝するためにはあいつらを乗り越えないといけない」
 ゲンジは気を引き締めるように呟いた。
 チームバイエルンとは、正本ハジメが師範を務めているチームだ。去年大会の優勝チームでもある。
「強敵はチームバイエルンだけじゃないよ。決勝大会には老舗の江東館も勝ち上がってるし、それに今年から新規参戦してきた……」
「レッドウィングスやな」
「あぁ、あの洪レンがまさかソウの意志を継いでチームを立ち上げてくるとは思わなかったよな」
「南雲ソウの意志はあんまない気がするけどな」
 ツバサがかつてのソウの姿を思い出しながら苦笑した。
 おそらくレッドウィングスの名を使っているのは洪レンの勝手な拘りだろう。

「江東館もレッドウィングスも、昔から凄い強いチームだってネットで見た事あります。俺たちで、勝てるでしょうか……」
 トウジが不安げに言う。
「なに、昔は昔!今の俺達には今の俺達の絆があるんだ!それを信じてぶつかろうぜ!」
 ゲンジがその不安を吹き飛ばすように鼓舞すると、メンバー達は明るく返事をした。

「「「はい!!」」」

 ……。
 …。
 そして、大会当日。
 会場となる幕張に多くのフリッカー達が集っている。
 そこに小竜隊も到着した。

「いよいよだな!」
 メンバー達は皆緊張した面持ちだ。
「そんなに緊張するな!いつもの力を発揮すれば良いんだ!」
 ゲンジがメンバー達を激励していると、後ろから声をかけられた。
「よっ、東堂ゲンジ」
 振り向くと、そこには正本ハジメと天領ガン、そして二人に引率されているチームバイエルンがいた。
「ハジメ!今日は良いバトルしようぜ」
「あぁ。また俺のチームが勝たせてもらう」
「そうはいくか!今年こそ小竜隊が優勝だ!!」
 チームを率いる師匠同士として熱いライバル意識を飛ばし合うゲンジとハジメ、そこへガンが口を挟む。
「悪ぃけどそうはいかねぇ。今年はチームバイエルンにとって特別だからな!」
「特別……?」
 ガンの言葉の意味が分からずキョトンとするゲンジへ、ハジメがメンバーの一人へ視線を移した。
「うちのリーダーのナオトが来年からプロ入りが決まった。だからこのメンバーで戦うのは今年が最後だ」
「俺達としちゃ、きっちり箔をつけて送り出すつもりだからな」
「そっか、って事は今年がリベンジのラストチャンスだな。ますます負けられないぞ、皆!」
 チームバイエルンの事情を聞いて、ゲンジはますます闘志を燃やし、小竜隊メンバーも同調するように強く頷いた。
「はっはっはっ!それを聞いて安心したよ!!じゃ、フィールドで会おう」
 そう言って話を切り上げ、チームバイエルンは去って行った。
「……」
 その背中を、マサノブは複雑な表情で眺めていた。

 そして決勝大会が始まる。
 ルールは勝ち上がった4チームによるトーナメントだ。
 バトルは3点制のアクティブバトルを5VS5で行うチーム戦だ。

 まずは第一試合は江東館とチームバイエルンのようだ。

『さぁ、赤壁杯決勝大会第一試合は江東館とチームバイエルン!去年は惜しくも準々決勝となった江東館、今年こそは優勝を狙いたい!しかしチームバイエルンもリーダー闘将ナオトにとって今回は赤壁杯引退試合となる!どちらも絶対に負けられない屈指の好カードだ!!』

 江東館ベンチではサクヤがメンバーへ作戦を伝えている。

「まずは相手の出方を伺った方がいい。ケンタは後方で待機して味方機のサポートだ」
「うん、分かった」

「ヒビキとショウゴは攻められる時に攻めるんだ。ホウカはディフェンダーとして二人の護衛に回ってくれ」
「「「はい!」」」

「それからリク、現場での細かい判断はお前に任せる。頼んだぞ」
「任せてください!」

 こうして、両チームとも準備が整いフィールドに着く。

『そんじゃ、そろそろおっ始めるぞぉ!3.2.1.アクティブシュート!!』

 バシュウウウウ!!!

 両チームともに強豪だけあってバトルは互角の大接戦だ。

「決めろ、トレイルスティーラー!!」
 ヒビキのトレイルスティーラーは設置した分離機を壁にしてそれに反射する事でマインヒットを決めていく。
「シンヤ!!」
「ふん、機動力で俺のレイダーイフリートと張り合う気か!」

 シンヤのレイダーイフリートもフロントローラーを活かして敵機を乗り越えながらマインヒット。

「ぶっ飛ばせ!ダブルディックス!!」
 ショウゴのダブルディックスは備え付けられた二本の悔いによって相手を弾き飛ばすアタッカーだ。
「受け止めろ」

 ガッ!
 ダブルディックスの攻撃を巨大な腕を持つシロクマ型フリックスが受け止める。

『おおっと!ショウゴ君の攻撃を義勇君のハガーブリザードが受け止めた!!』

「ナイス義勇!こっちにパスだ!」
「……」
 義勇と呼ばれた少年はこくりと頷いて受け止めたダブルディックスを黒い味方機へパスする。

「パワードヘラクレス!オーバーヘッドバスター!!」

 パワードヘラクレスは受け止めた敵機を上へ放り投げる事が出来る機体のようだ。
 ダブルディックスが場外しそうになる。

「受け止めろ!バイフー!!」
 ケンタのバイフーがダブルディックスを受け止める。
「あ、ありがとうございます!」

『これはナイスチームプレイだ!チームバイエルンの義勇君とケイスケ君の連携攻撃も江東館ケンタ君のアシスト防御も、どちらもチーム戦に相応しいコンビネーションだ!!』

「いけぇ!ロデオボルケーノ改!」

ロデオボルケーノ

「耐えて!シェルターサイカニア!!」

『ジモン君のロデオボルケーノ改は凄い攻撃力!しかし、ホウカ君のシェルターサイカニアが耐える!』

 こんな感じの互角な展開が続く。

『バトルは一進一退の攻防!!まさに大接戦の様相だ!しかし、少しずつだが江東館が押されているか!?ここが踏ん張り所だぞ!!」

「思ってた以上にチームバイエルンの火力が高いですね……ここは、なるべく相性の良さそうな相手を狙って各個撃破を目指しましょう」
 リクが戦術の方向性を指示すると、メンバー達は頷く。
 それが功を奏したのか、少しずつ江東館も立て直していく。

「行きなさい!ハリケーンプテラ!!」
 リクのハリケーンプテラもスピンの遠心力で羽が開くギミックを使ってマインヒットを決めていく。

 そしてバトルは後半戦。
 残ったのはチームバイエルンはナオトとシンヤ、江東館はケンタとホウカとなった。

「向こうと比べて、こっちは火力が足りない……防御を固めて隙を窺いましょう!」
「分かった」
「えぇ!」
 リクの指示に従ってケンタとホウカはお互いの機体を近付けて防御フォーメーションを取った。

「甘いぜ!」

 シンヤはレイダーイフリートの前後を入れ替えてローラーを後ろにし、フロントに二本の杭を備えたモードにした。
 そしてナオトのディバインスパルナを突く。
 バキィ!!
 レイダーイフリートに突かれたディバインスパルナはバイフーとサイカニアの近くまできた。

「よくやった、シンヤ」
「っ!」
 ここはナオトの距離だ。
 ディバインスパルナのアームを広げて江東館の二機へ接して、ナオトは両手を使ってスピンの構えを取る。

「ハリケーンブレイカー!!!」

 バキィィィ!!!

『のぉっと!!ここでディバインスパルナの必殺技が炸裂!!!江東館の防御自慢二機を一気に吹っ飛ばしてしまった!!!
勝者はチームバイエルンだ!!!』

「凄い攻撃力だ……」
「あとちょっとだったのに」
「すみません、作戦が甘かったです」
「ううん、リク君のせいじゃないよ」

 悔やむ江東館へバイエルンのメンバーがやってくる。
「良い試合だった。ありがとう」
 ナオトは堂々とした態度でケンタへ握手を求めた。
「うん、こちらこそ。決勝戦も頑張って」
 ケンタはその手を快く握り返した。

 

 そして、次の試合は……。

『さぁ、小竜隊VSレッドウィングスの戦いも熱いぞ!!
メンバー全員がビギニングフェニックスを使っているレッドウィングスはリーダーのヒイロ君の大胆なテクニックや洪レン監督の的確な指示もあり、抜群のコンビネーションで小竜隊を追い詰めている!!』

「っ!なんて攻撃範囲だ……!」
「あんなバカでっけぇフリックスが五体もいたんじゃ逃げ場がねぇぞ!」
「メンバー全員がマインヒッターで一貫しているとは」

「フミナリ、ケンジ、スバル、クララ、一気に攻めるぞ!」
 ヒイロがメンバー全員に合図すると、メンバー達は一斉にフリップスペルを発動させた。

「「「ブレイズバレット!!!」」」

 お馴染みのマインヒットの火力を強化するスペルだ。

 バーーーーーーーーーン!!!!

『チーム一斉のブレイズバレット炸裂!!!これには小竜隊もたまらず全員撃沈か……!?』

 いや、ブレードドラゴンゴッドを守るようにシュラーフアリエスとカリバーセンチュリオンが攻撃を防いでいた。

『封神リュウ君のブレードドラゴンゴッドは生き残っていた!!!しかし、たった一機では大ピンチは変わらないぞ!!』

「助かったぜ、マサノブ、テッペイ……!」
「う、うん、でもこのままじゃ……」
「形勢は変わらずだ……!」
「いや、こうなったらアレを使ってやる。ピットインだ!」

 リュウはピットインしてパーツを換装させる。

「ブレイズドラゴンゴッド!!」

 まるで炎の翼を生やしたようなモードに変形した。

「換装でモードチェンジ……!?」
「っひゃ〜そんなやべぇ仕掛けがあったんか!」
「何年か前に道場に乱入してきた奴が使ってた機体を参考にしたんだ。これなら、あいつらに対抗出来る……!」
 リュウはキメラ第5話の事を思い浮かべながら言った。

「なんか凄そうなもの出してきたな」
「いや、敵はあと一機……ここから逆転は無理だろ」
 レッドウィングスのメンバーは警戒しながらも余裕を崩さない。

「いくぞ……燃え上がれ!炎の翼!!」
 リュウはブレイズドラゴンゴッドのウィングを広げる。
 ブレードドラゴンゴッドとは比べ物にならない幅になった。
「いっけぇ!!炎龍突破!!!」

 ゴオオオォォォォ!!!!
 まるで炎を吹き上げるかのように突進するブレイズドラゴンゴッド。
「っち!」
 ヒイロは咄嗟にステップで交わすが、他のメンバーは間に合わない!
 ブレイズドラゴンゴッドはレッドウィングスのビギニングフェニックスを三体マインヒット、もう一体は穴へフリップアウトさせてしまった。

『これは凄い!小竜隊の封神リュウ君はとっておきの秘密兵器でフミナリ君、ケンジ君、クララ君の三人を撃沈させてしまったぁ!!スバル君も被弾し、残りHP1だ!!』

「よし、上手く行った……!」
「す、凄い攻撃範囲だ……」
「しかも機動力も上がってる」
「こんなすげぇのあるならなんで最初から使わなかったんだ?」
「慣れてないと味方巻き添えにする危険があったからさ、迂闊に使えなかったんだ」
「なるほど、確かにこの攻撃範囲は諸刃だな」
「……」
「リュウ先輩、これならきっと逆転出来ますよ!!」
「あぁ!やってやる!!」
 起死回生で盛り上がる小竜隊。反対にレッドウィングスには焦りが見えた。

「マジかよクソ、聞いてねぇぞ……!」
 ヒイロが舌打ちしながらブレイズドラゴンゴッドを憎々しげに睨みつける。
 そして、生き残った仲間であるスバルのビギニングフェニックスの立ち位置が自機と敵機の間にある事を確認するとほくそ笑んだ。
(仕方ねぇ、こいつ利用するか)
 ヒイロは自機ビギニングフェニックスの羽根を前方に伸ばしてスバルのビギニングフェニックスへ引っ掛けた。
「なにをする!?」
 ヒイロの行動に気付いて非難するスバルだがもう遅い。
「勝つためだ。黙ってろ」
 ヒイロは無理矢理味方機を引っ掛けて合体し、二機分の重量になったビギニングフェニックスを押し出すようにシュートする。
「おらぁ、喰らえやぁぁ!!!」
「っ!」
 バゴォォ!!!
 二機分の重量に負けて押し込まれるブレイズドラゴンゴッド。
 しかし接続が甘いので、リュウがバリケードで支えるとその衝撃でスバルのビギニングフェニックスが外れて場外してしまった。
 スバルはシュート権が残ってるのでシュートして場内に戻れば自滅扱いにはならないが、机から落ちているのでそれは無理だろう。

「おま、なんて事……!」
「仕方ねぇだろ、これしか手が無かったんだ」
「だからって……!」
 ヒイロとスバルが揉めるが、リュウのターンになる。

「フリップスペル!ブレイズバレット!!」
 リュウは揉めるレッドウィングスに構わずスペルを発動させてヒイロを撃沈させた。
 小竜隊の勝利だ。

 ……。
 …。
 小竜隊控室。
「ふぅー、危なかったけどどうにか勝てたー……!」
「ブレイズドラゴンゴッド、凄かったですね!!!」
「あぁ、上手く行ってよかったぁ」
「でも、あれをフォーメーションに取り入れるのは難しそうだなぁ」
 チームの司令塔を担う事も多いマサノブがボヤく。
「まぁな。基本は使わないよ、いざって時だけ」
「うん……」
 マサノブは静かに頷いてから立ち上がりドアの方へ向かう。
「どした?」
「ん、ちょっとトイレ」
 そう言って出て行った。

 一方、レッドウィングスは通路の奥で言い合いをしていた。

「ヒイロ!お前どう言うつもりだ!!あんな作戦聞いてねぇぞ!!」
 スバルがヒイロの胸ぐらを掴んで詰め寄っている。他のメンバーはオロオロと見守るしかない。
「っせぇな。あの時はあの手しかなかったって言ってんだろ」
「でも負けたじゃないか!」
「負けたのはお前らが足引っ張ったからだろうが。あの程度の攻撃に被弾しやがって。あのままお前を生かしててもしょうがねぇからな」
「なんだと……!」
 スバルが拳を振りかざす。
「待て!!」
 そこへ大人の声が響いた。監督の洪レンだ。
 スバルは気まずくなり手を離すと今度はレンが詰め寄ってくる。
「監督……」
「控室に戻ってこないと思ったらこんな所にいたか」
 ヒイロは顔を逸らして舌打ちする。
「ヒイロ、なんださっきの試合は」
「すみませんね、敵の隠し球を侮ってました。機転効かせて逆転しようとはしたんですが、こいつらがもう少し生き残ってたら使いようもあったのに……」
「バッカやろう!!」

 バキィィィ!!
 レンは拳を思いっきりヒイロの頬にぶつけた。
 ヒイロは吹っ飛んで壁にぶつかり、唾を吐いてレンへ侮蔑の視線を向けた。
「……なんすか?そんなに負けたのが気に食わないんすか?だったらこいつらの指導ちゃんとしてくださいよ」
「そうじゃねぇ!お前がフリッカーの道を踏み外した事を言ってんだ!!」
「は?フリッカーの道……?」
「昔、お前と同じような奴がいた。そいつは俺の仲間で、誰よりも強さを追い求めるフリッカーだった。俺はそんなあいつを尊敬していた。だが、理想を求めるあまりにあいつは仲間を拒絶し、破滅しかけた……」
「……」
 レンはヒイロの手を掴んで立ち上がらせる。
「お前はあの時のあいつとそっくりだ。フリックスは自分一人で勝つためにやるものだと思ってやがる。でもな、ライバルや仲間がいなきゃバトルは出来ねぇんだよ。勝つとか負けるとかは二の次で……」
「うざ」
 ヒイロはレンの手を振り解いて歩いていく。
「待て、話はまだ……」
 レンが呼び止めると、ヒイロは仕方なく立ち止まり振り返らずに口を開く。
「言いたい事は理解しましたよ。確かに今回は先走った俺に非がある。スバル、悪かったな勝手な事して」
「い、いや、俺の方こそついカッとなって……」
「お、俺達も足引っ張らないように、もっと強くなるからさ!」
「また一緒に頑張ろうぜ」
「そうだよ、チームなんだから……」
 他のメンバー達もヒイロへ優しい言葉をかける。
「……」
 素直になれないのか、ヒイロはそれに答えず歩き出してしまった。
(心からの反省ってわけじゃなさそうだが、ソウと違って取り繕おうとするだけマシだな。現代っ子め)
 いきなり改心させるのは難しいが、表面だけでも取り繕っていれば仲間との関係は保てるし、保ててさえいれば自然と内面も変わっていく可能性はある。一先ずはこれで良いだろうとレンは考えた。

 ……。
 …。
 トイレから控室に戻る帰りの薄暗い廊下をマサノブは暗澹たる表情で歩いていた。
「……」
 脳裏に浮かんでいるのは、先程たまたま見かけた光景。
 レッドウィングスのリーダー、ヒイロが監督に怒鳴られて殴られているシーンだ。

 ”バッカやろう!!!”

 怖くなってすぐにその場を去ったため、詳しい事情は分からなかったが、恐らく試合に負けた事を叱責されていたのだろう事は察せられる。
 胸の中でなんとも言えない恐怖心と嫌悪感が溢れていた。

 負けたくらいであんなに怒鳴られるなんて。
 怖い。
 あれって、体罰?
 痛そう。
 可哀想。
 東堂コーチなら負けたとしてもあんな事しないのに。
 彼らも、負けてなかったらあんな目に遭わなかったのかな。
 僕らに負けたせいで……僕が勝ったから……?

 そんなモヤモヤを抱えながら控え室に戻っていった。

 そして、いよいよ決勝戦。
 チームバイエルンVS小竜隊。

『さぁ、いよいよ決勝戦!チームバイエルンも小竜隊も負けるわけにはいかないと凄い気迫のぶつかり合いだ!!』

 白熱の試合の末にバトルは終盤戦。
 リュウとマサノブ、ナオトが生き残っていた。
「すみませんナオトさん、俺達耐え切れませんでした」
 シンヤ達メンバーはナオトを残して撃沈してしまった事を詫びる。
「いや、よくやってくれた。あとは任せろ」
 ナオトはそんなメンバーを労った。

「あと一人だ……!」
「でも、その一人が大きい」
「あぁ、並の攻撃じゃ俺たち二人がかりでもあいつには絶対勝てない。マサノブ、一旦時間稼ぎ頼む」
「え?」
「こいつを使うにはターンが必要なんだ」
「う、うん」
 リュウはピットインで換装をする。

「……レッドウィングス戦で見せたあの技か。だがあれは多人数戦向きのはず」

 しかし、その換装した姿は中途半端な形だった。リュウはそのまま行動終了して、マサノブはシュラーフアリエスをドラゴンゴッドの前につけた。

「稚拙なフォーメーションだ。各個撃破で崩すのみ!!」
「この距離なら必殺技は使えないはず……!」
「甘い!フリップスペル、サンダーラッシュ!俺はバリケードを二枚消費する!!」

 サンダーラッシュ……宣言したターンは何もせずに行動終了し、次のターン中2回シュートするスペルだが、バリケードをニ枚消費すれば宣言したターンに即時使用できる。

「しまっ……!」
 ナオトは1回目のシュートでシュラーフアリエスに接近、2回目のシュートで必殺技を放った。
「ハリケーンブレイカー!!!」

 バキィィィ!!!

『ナオト君、フリップスペルを駆使して小竜隊の壁をぶち破った!!これで1vs1のタイ!果たして勝利の女神はどちらに微笑むのか!?』

「ご、ごめんリュウ君、耐え切れなかった……」
「いや、十分だ!これでアレが使える!!」
「え?」
「ピットインだ!」

 リュウは再びピットインしてパーツを追加する。
 そして出来上がった姿は……!

「完成!ブラストドラゴンゴッド!!」

 より武骨で強そうな形態だった。

「そ、その形態は……!」
「ピットインで換装出来るボディパーツは15gまでだけど、このパーツは30g近くあるからさ。だから小分けで換装するためにターン数が必要だったんだ!これなら……!」

 リュウは換装したパーツを展開させる。
 フロントが前に伸びて、その先端にバネ蓄勢ギミックが備え付けられている。

ブラストドラゴンゴッド

「いっけぇぇ!!暴竜突破!!!」

 ディバインスパルナ目掛けて、伸びたフロントでフィールド端まで押し込むようにシュートし、バネギミックで吹っ飛ばした。
 サンダーラッシュでバリケードを失ったナオトにはこれを防ぐ術がない。

『決まったァァァ!!!封神リュウ君の凄まじい必殺技によって、闘将ナオト君のディバインスパルナは撃沈!!
よって、赤壁杯優勝は小竜隊だぁぁぁぁ!!!!』

 わあああああああああ!!!!!
 実況と共に湧き上がる歓声。
 それに負けないくらいに声を張り上げて喜びを分かち合う仲間達。

 勝った。ついに勝ったんだ。
 マサノブは念願の勝利に酔いしれる仲間達を見ながら、自身も湧き立つ想いを抑えられずにいた。

 しかし……見えてしまった。
 視界の端。
 チームバイエルンのメンバー達が涙しながらナオトへ頭を下げている姿が。

「っ!」

 マサノブは会場に着いた時のガンの言葉を思い出した。

 ”悪ぃけどそうはいかねぇ。今年はチームバイエルンにとって特別だからな!”

 気付いてしまった。
 勝利者が決して気付いてはいけない事実に。

 自分達は来年も再来年もあると言うのに……。
 この大会は彼らにとって最後の大会なのに……。
 リーダーへ有終の美を飾りながら送り出したい言う、至極真っ当で健気な彼らの願いを最後の希望を奪ってしまった……。

 それからの事はあまりよく覚えていない。

 ただ、もやもやを抱えながらも月日は流れる。

 ……。
 …。
 数ヶ月後、小竜隊は次の赤壁杯での連覇を目指して練習の日々を送っていた。

「よし、それじゃ今日はここまで」
「「「ありがとうございましたー!」」」

 練習が終わり、メンバーはロッカーで帰り支度をする。
「マサノブ、この後皆でコンビニ寄らないか?この前トウジに教えて貰った『ミルクの呪縛』にハマっちゃってさぁ、良かったら一緒に買いに行こうぜ」
「あ、ごめん。僕ちょっと早く帰らなきゃいけないから」
「あ、そっか。わかった……」
 マサノブはそそくさとロッカー室を出ていく。

「なんだぁ?マサノブ最近付き合いわりぃんじゃねぇか?」
「何か悩みでもあるんですかね?」
「しかし、詮索するのも野暮だろう」
「まぁ……な……」
 マサノブのよそよそしい態度にメンバーは不安げな顔をするのだった。

 夕日に照らされた公園の端で、マサノブは一人佇んでいた。
(僕達は、念願の赤壁杯優勝を果たして、そして連覇に向けて頑張ってる……充実してるはずなのに……なんだろう、この気持ち……)

 その時、公園で遊んでいた子供達の声が聞こえてきた。
 いや、先程から子供達の喧騒は聞こえていたのだが、自分と関係あるであろう話題を耳が勝手に拾い、脳が勝手に理解してきたのだ。

「そう言えばもうそろそろ赤壁杯の予選大会だよな」
「小竜隊連覇するかな?」
「去年の大会すごかったもんなぁ。でもあれか、凄いのはリーダーの封神リュウなんだよな」
「ブレードドラゴンゴッドね!あの換装ギミックかっこよかったぁ!」
「それがなかったら他のメンバーは微妙だもんな。特にあの、アリエス使ってた、誰だっけ?決勝であっさり吹っ飛ばされてたの情けなかったよなぁ」
「強いフリッカーがいるチームにいたら、弱くてもチャンピオンって名乗れるんだからチーム戦ってお得だよね〜」

 それは子供らしく遠慮の無い、素直で無邪気で、残酷な言葉だった。
 それを聞いた瞬間、マサノブの脳裏に次々と黒い感情が浮かび上がる。

「っ!」

 負けたせいで叱られ殴られたレッドウィングス。
 最後の試合だったのに有終の美を飾れずに悲しんだチームバイエルン。
 勝ったのに、誹謗中傷されている自分……。

(僕は、僕たちは、勝って良かったの……?)

 勝って良かったのか、負ければ良かったのか。
 それはまるで、周りを崖で挟まれた赤壁の如く、マサノブの心を蝕んでいった。

 

 

   Vol.2終

 

 

 

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