弾突バトル!フリックス・アレイ キメラ 第5話「フリックスの鬼」

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第5話「フリックスの鬼」

 

 播磨博士の所有している地下練習場。
 今日も今日とて、ダンガはキメラビーストのデータ収集のためのトレーニングバトルをしていた。
 ダンガの目の前には高速で動き回るターゲットが一台。

播磨「よし、準備OKだ!ダンガくん、キメラビーストをスタマンホコンボへ組み替えてくれ!」
ダンガ「待ちくたびれたぞ……!」

 ダンガがキメラビーストに全身緑のアーマーを取り付ける。

ダンガ「喰らい付け!!」

 ガッ!
 高速で動き回るターゲットを狙いを定めてシュートし、キメラビーストのクワガタを模したフロントがターゲットを捕らえ拘束する。
 キメラビーストに捕まったターゲットはもう動けない。

ダンガ「いい感じだ……」

 ダンガはニヤリと笑いながらマンティスセンターから先端のパーツを取り外し、それをターゲットへ取り付けた。

ダンガ「ビーストポイズン!!」

 バシュッ!!
 ターゲットは毒針に侵されたかのように動けなくなり、その間にダンガは連続でマインヒットを決めてターゲットを撃沈させてしまった。

播磨「見事だ、ダンガ君!」
ダンガ「悪くないな、新しい食器は」

播磨「……それにしても、こうも見事にコンボを使いこなせるとは。本当に、君は一体……」

 普通の人間には使いこなせないはずの機体をいとも簡単に扱えてしまうダンガへ、播磨は改めて疑問に思うのだった。

アキラ「た、大変だよ!!」

 その時、アキラが慌てた様子でトレーニングルームに入ってきた。

播磨「どうしたんだ、アキラ?」
アキラ「お父さん、ダンガ君!こ、これを観て!!

 アキラは乱れた息を整える事もせず、タブレットの画面を二人へ向けた。
 そこには、バーチャルなCGの金髪美少女が映し出されており、軽快にトークしている。

チハル『はいどうも〜!バーチャルフリッカーのチハルで〜す!』

播磨「……この子が大変なのかい?」
アキラ「この子はただのVtuberだよ。フリックスの時事ネタとかを扱う人なんだけど、とにかく観て!」

チハル『それではまずこのコーナー!【最近のフリッカー日和!】はい、なんだかここ最近怖い事件が起きてるようですよ〜!これ観てください』

 画面に荒らされたフリックスバトル会場が映し出された。
 無惨にも破壊された機体が散乱し、子供達が泣いている。

チハル『辻斬りって言うんですかね〜?大会やフリーバトルしてる所へ急に襲い掛かる悪いフリッカーが出没してるのです!怖いですよねぇ〜!実はチハルも昔フリックスで不思議な事件に巻き込まれたことがあってぇ〜』

播磨「……物騒な世の中だなぁ」
アキラ「それよりもこの画像の場所!これ近所のバトル会場だよ……もしかしたら、この近辺に辻斬り犯がいるのかも……」
ダンガ「……じゅるり」

 ダンガは舌舐めずりすると、途端に駆け出した。

アキラ「ちょ、ダンガ君!?」
ダンガ「その辻斬り犯とやら、俺が食ってやる!」
アキラ「ま、待ってよ!!」

 飛び出すダンガを追って、アキラも外へと駆け出した。

 外へ出てアテもなく彷徨うダンガとアキラだが、闇雲に歩いた所で都合良く遭遇できるわけがない。

ダンガ「腹が減ったぞ……!誰でもいいからバトルをさせろ……!」
アキラ「ダンガ君……」
ダンガ「ん、ここは……」

 と、ここでダンガが見つけたのは道場らしき建物だった。
 看板には『小竜隊』と書かれており、中からはフリックスのぶつかる音が響いている。

ダンガ「美味そうだな、行くぞ」
アキラ「あっ、ちょっと!」

 すっかり本来の目的を忘れているダンガはアキラの制止も聞かずに道場の中に入っていった。
 道場内では小中生くらいの子供たちがフリックスのトレーニングに励んでおり、それを同い年くらいの三人の男女が指導していた。

ダンガ「お前達のダントツを食わせろ!!!」

 入るなりそんな意味不明な事を叫ぶダンガに、指導者三人と道場生達は一斉にダンガへ訝しげな視線を向けた。

ゲンジ「ん?あれ、君達は……何か用?」
ユウスケ「もしかして入門希望かな?」
ツバサ「この雰囲気、道場破りと違うか?」

 それぞれの反応を見せる指導者三人に対して、ダンガは見定めるような視線を向けて口を開いた。

ダンガ「お前が1番美味そうだ」
ゲンジ「へ?俺?」
ダンガ「俺と戦え!!」

アキラ「あわわ、ダンガ君!いきなりはダメだよ!!」
 失礼な振る舞いをするダンガを止めようとするアキラだが、その前に道場生の少年がダンガへ食ってかかる。

少年「やいやいお前!ゲンジ師匠に失礼だぞ!!そんなに戦いたいなら、俺が相手になってやる!!」

ゲンジ「お、おいおい、こんな奴相手にするなって……」
ツバサ「別にええんやないか?他流試合みたいなもんやろ、いい経験や」
ゲンジ「でもなぁ、最近は物騒だって言うし」
アキラ「あ、あの……お騒がせしてすみません。僕、播磨研究所に所属してる播磨アキラと言います。ダンガ君、言い出したら聞かなくて……一戦だけしたらすぐに引き取りますので……!」
 アキラがゲンジ達にペコペコ頭を下げると周りの雰囲気も軟化した。
ゲンジ「あ、こりゃどうも……」
ユウスケ「保護者?もいるみたいだし、大丈夫じゃないかな」
ゲンジ「……分かった。けど、危なくなったらすぐ止めるからな」

 ゲンジ達の許可も得たのでバトルスタート。

少年「いけっ!ダッシュドラグナー!!」
ダンガ「食らいつけ!キメラビースト!!」

 ガッ!
 キメラビーストスタマンホフォームのフロントが龍剣を模したフリックスを捕捉する。

少年「なに!?」
ダンガ「そんなものか……!」

 ダンガはキメラビーストに青いアーマーを取り付けた。
 ハンマーヘッドシャーク、シャーク、シーラカンス、海洋生物を模したハシカンスコンボだ。
 金槌のようなフロントと摘んで振り回せるリアシュートポイントが特徴的な形状をしている。

ツバサ「なんや、あのフリックス!?」
ユウスケ「すごい、あそこまで換装する機体見た事ないよ……!」

ダンガ「ビーストスプラッシュ!!」

 アックススラッシュの要領でキメラビーストを振り、密着していたドラゴンキングを吹っ飛ばしてしまった。

ダンガ「美味かったぞ、お前のバトル」

 これで一旦満足出来たのか、ダンガは小竜隊を後にした。
 商店街を歩きながら、アキラはダンガを嗜めた。

アキラ「ダンガくん、もうああいう事しちゃダメだよ……」
ダンガ「安心しろ、さっきのはほんの前菜だ。メインディッシュを喰らう容量はある」
アキラ「そう言う問題じゃなくて!!」

 バキィィィ!!!
 その時だった。どこからか、機体の断末魔と子供達の悲鳴が聞こえてきた。

アキラ「い、今の……!」
ダンガ「あっちか!」

 ダンガとアキラは弾かれるようにその場へ向かった。

 向かった先は、フリーバトルスペースのある公園だった。
 そこでは泣きじゃくる子供達とそれを見下ろす大柄な男がいた。

ダンガ「お前か……こいつらをやったのは……!」
???「ダンガ」
ダンガ「っ!レイガ……!」

 その男と目があった瞬間、ダンガとレイガはお互いの名前を呟いた。

アキラ「え、なに、知り合い?」
ダンガ「いや、こんな奴など知らん!だが……なんだお前は!!」

 明らかに狼狽した様子のダンガにレイガは感情のない瞳で答える。

レイガ「俺は、フリックスの鬼だ。兄弟よ」

 

   つづく

 

 

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