【二次創作妄想注意】こう言うベイブレード物語を観てみたい願望 第2話

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第1話はここ

 

「なぁ、俺と、チームを組まないか?」
 その言葉を口にしてミナタはハッとして口を噤んだ。しかしもう遅い。目の前にいるゲキオは一瞬怪訝な顔をしたが徐々に顔が綻び目を輝かせている。
 ミナタは『やっちまった』と言う顔で目を逸らしたが、ゲキオはそんな事を構わずグイっと顔を近づけてきた。
「僕とチーム!?ほんと!?」
「あ、いや、そう言うんじゃなくて」
「うわぁ、感激だなぁ!そんな風に言って貰えるなんて!!」
 うわめんどくせぇ、さっさと訂正して退散した方が良さそうだ。
「悪い!今のはナシ!聞かなかった事に」
「僕、チームを組むのずっと憧れだったんだぁ!チーム名どうしようか!?」
「聞けよ!!!」
 ミナタの声はもうゲキオには届かず、1人で勝手に盛り上がっている。

「あ、でもさ」
 と、ゲキオはいきなりスンと落ち着く。
「なんだよ」
「ミナタってもうチーム組んでるんじゃないの?だって今朝やってた大会に出てたみたいだし」
 ゲキオはミナタの手首に付けてある大会整理券リストバンドを指しながら言った。
「……チームは、解散したんだよ」
 ミナタは目を逸らしながら言った。そのバツが悪そうな雰囲気に、何かを察したゲキオはこれ以上事情を聞かなかった。

「解散!?なんで!?」
 もとい、ゲキオは何も察してなかった。

「どうでもいいだろ!それより、お前こそどうなんだよ?」
「え、僕?」
「さっきチーム組むのが憧れとか言ってたけどな、ここらはプロ選抜大会が開かれるくらいにはベイが栄えてる地域だ。加えて、お前みたいに強けりゃチームなんて作り放題だろ。俺なんかと組まなくたって……」
 すると、今度はゲキオの声が沈んだ。
「んー、だからって言うかさ……ほら、強いブレーダーはもうチーム組んでプロになってるし。もちろん、ブレーダー仲間はいっぱいいるけど、大会がこんなに身近にあると実力差がハッキリして皆尻込みしちゃってさ……」
 ゲキオは、夕日に照らされながら空いたスタジアムでワイワイとバトルに興じている子供達を眺めながら切なそうに言った。
「そうか……」
「まぁ、こうやって皆とバトル出来るだけでも楽しいんだけどさ!でもやっぱり大会には出てみたいし……だから君みたいな強いブレーダーに誘ってもらえて凄く嬉しいんだ!」
 寂しさを隠すように笑うゲキオの姿にさすがに情が湧いたのか、ミナタはため息をつき堪忍したように言った。
「……今日はもう遅い。明日から時間空けとけよ」
「え?」
「チームは原則三人。次の選抜大会までにメンバー集めしないとな」
「うん!!」

 翌日からゲキオとミナタはメンバー集めに奔走した。
 片っ端からゲキオの知り合いに声をかけたり、広場で遊んでいるブレーダーを勧誘したり。
 しかし、成果はゼロ。日々だけが過ぎていき、1週間が経過した。

「へぇ、ゲキオもついにプロ目指すんだ!頑張れよ!」
 今日も今日とて、ゲキオは知り合いのブレーダーに声をかけていた。
「う、うん、それでなんだけど実は、メンバーが……!」
「デビュー戦決まったら教えてくれよ!絶対応援に行くから!んじゃ、俺これから塾あるから!」
 知り合いは誘われる前に遠回しに拒絶して去って行った。

「あっ」
 見事に勧誘失敗し、ゲキオはうなだれる。
「これで知り合いのブレーダーは全滅だよ……」
「なんだよ、ここベイブレード盛んな地域じゃないのかよ!なんでこんなに意識低い奴らばっかなんだよ!!」
「だから言ったじゃん。強いブレーダーはもう皆チーム組んでプロになってるんだって」
「くぁ〜!ブレーダー格差社会がこんなに深刻だったとはぁ!!!」
 ミナタは頭を抱えて唸る。
「って言うかミナタの知り合いは誘わないの?」
「……俺、友達いないんだよ」
 しかもチーム解散したばかりなので地元から探すのは気まずい。
「ごめん」
「謝んな」
「……」
 2人の間にしばし沈黙が流れる。

 その時だった。

「てめぇ!どう言うつもりだ!!」
「ご、ごめんなさぁ〜い!知らなかったんですぅ!!」

 突如けたたましい金属音とドスの効いた女の声と赦しを乞おうとする少年の声が聞こえてきた。

「なんだ!?」
「あ、あっちだ!」
 ゲキオは声の聞こえてきた路地裏へ駆け出す。
「あ、おい!」
 ミナタも仕方なくその跡を追った。

 路地裏は思いのほか広い空間が広がっており、そこにはベイスタジアムが設置してあった。
 その前でロングスカートのセーラー服を着たスケバン風の女が三人、ガタイはいいが気弱そうな少年に詰め寄っていた。

「知らないで済むかよ!この野郎!」
「ヤキ入れてやんよ!」
「勘弁してください〜!」

 リーダー風の女が少年の胸ぐらを掴み、少年は今にも泣き出しそうだ。

「おっ、こいつの持ってるベイって今だと結構レアじゃね?」
 女の仲間の1人が少年の手に持っているベイに目を付ける。
「マジじゃん!これって再販かかってないから転売ヤーからじゃないと手に入らないんだよね〜、ラッキー!」
「丁度いいや。こいつは場所代として貰ってやるよ」
 女が少年の手を掴み、ベイを奪おうとする。
「い、いやだ!」
 少年はベイを奪われないようにギュッと力を込めて握りしめた。
「こ、こいつ、力強っ!」
「離せよ……!!」
 二人がかりでこじ開けようとするとするも、少年の手はビクともしない。凄まじい握力だ。

「やめろよ!」
 そこへゲキオが止めに入る。
 スケバン達と少年が一斉にゲキオの方を見る。ゲキオの後ろではミナタが息を切らしていた。
「三人で一人をよってたかって卑怯だぞ!!」
 スケバン達はそんなゲキオへあからさまにめんどくさそうな態度を取る。
「あんたには関係ないだろ、引っ込んでな」
「た、たすけて……」
 涙目で助けを求める少年を見て、ゲキオの正義感はますます燃え上がる。
「弱いものイジメを放って置けるわけないだろ!」
「はぁ?あんた勘違いしてない?」
 リーダー風の女が眉を顰める。
「え?」
「ここはうちら『チームベイレディース』の練習場なわけ。それなのにこのクソガキが勝手に入ってスタジアム使ったからお仕置きしてるだけなんだよ」
 三人がベイブレードを取り出して見せる。
「ブレーダーチームだったのか……」
「そ。不法侵入の悪人はこのクソガキだったって事」
「だ、だって、知らなかったから……」
「だからせめて場所代としてこいつのベイを貰おうって話なんだよ」
「それで勘弁してやるんだから、あーしらって優しいよねぇ〜。ある意味ラッキーじゃん!」
「い、いやだ!ベイを渡すなんて絶対やだ!!」
「あぁ?今更口答えしてんじゃねぇよ!」
「ひぃぃ!」
 リーダー女が怒号を上げると少年は情けなく腕で顔を覆った。

「こ、ここ私有地だったのか。じゃあしょうがないな。ゲキオ、俺達も不法侵入になっちゃうからそろそろおいとましよう。失礼しました〜」
 ミナタは愛想笑いを浮かべながらゲキオを促して退散しようとするが……。

「知らなかったんならしょうがないだろ!それに、どんな理由があったって大事なベイを奪うなんて許さないぞ!」
 ゲキオの正義感は収まらない。
(こいつはなんでこう面倒な……)

「許さないから何?腕尽くで来る?」
 周りの女が指を鳴らしながら迫ってくる。
「よし、やってやる!」
 ゲキオも拳を握りしめた。
「ちょ、バカお前!俺喧嘩なんかゴメンだぞ!!」
「喧嘩なんかしないよ!僕らがやるのは、ベイバトルだ!!」
「は?」
「君達ブレーダーチームなんだろ!だったらベイブレードで勝負だ!!」
 ゲキオがベイを取り出して宣言すると、スケバン達は笑い出した。

「ひゃっはっはっ!!いいよ、その勝負乗ってやる」
「でもあたいらに負けたらあんた達二人のベイもいただくかんね!」
「負けるもんか!」
「え、俺のも!?」
「それじゃあルールはチーム3on3だ。順番決めて1人ずつ戦って、ポイントが多い方が勝ち。決着付かなかったらまた順番決めて1人ずつバトル」
「う、うん、分かった……!」
「ちょ、ちょっと待て!チームって、俺達2人しか……」
「ここにいんだろ!このクソガキがよ!」
「おら、お前向こうの陣地なんだからとっとと行け!」
 ドンッ!!
 少年は乱暴に背中を押されてヨロヨロとゲキオ達の方へ歩み寄った。

「マジかよ……こんな即興チームで戦うのか……」
 ミナタは額を抑えて唸った。
「あ、ありがとう……でもごめんね、僕のために」
「良いって!勝てば良いんだから!!僕はコウ・ゲキオ!で、そっちがスタ・ミナタ!一緒に頑張ろう!」
「う、うん……僕はフィジ・カルキ……ベイブレードは昨日始めたばかりなんだ……」
「しかも初心者かよ……終わった……俺のブレーダー人生……」
「大丈夫!このルールだったら僕とミナタで2p取れば良いんだ!絶対勝てるよ」
「どこから来るんだその自信は……」

「あんた達!いつまでもくっちゃべってないで構えな!」
「は、はいぃ!!……ええい、もうやるしかない!!」
 ミナタは怒鳴られた勢いでつい前に出てしまった。
「先方はワルコ、あんたがいきな」
「おーけー」

 ミナタとワルコがスタジアムを挟んで対峙する。
(さっき見た感じだとあいつらのベイはディフェンスタイプっぽかったよな……それならこっちは)
 ミナタはベイレディースがベイを見せてきた時のことを思い出しながら自分のベイを選択した。
「3.2.1.ゴーシュート!!」

「ヤキいれてやんよ!モンブラン!!」
「回れ!アロー!!」

 山のようにどっしりとした構えでセンターを取って防御するワルコのモンブラン。
 それに対してアローが軽く接触する。

「軽い軽い!そんなんじゃ!!」
 ガッ、カカカカ!!
 中央で鍔迫り合いが続く。そして、暫くするとモンブランの回転が落ちてきた。

「な!?こんな軽い当たりで……!」
「別に俺は攻撃を仕掛けたわけじゃない。そっちが勝手にバテてるだけだ」
「ちっ、スタミナタイプうぜぇ……!」
 普通にミナタがスピンで1p獲得。

「やったぁ!さすがミナタ!!」
「す、凄いです!」
「ま、基本的な事やっただけだけどさ」
 ミナタは少し照れ臭そうに言った。

「ごめんワルミ、負けちったわ」
「ちっ、あいつら意外とバカにならないね……」
「じゃ、次はあーしが行く」
「頼んだよワルエ!」

 次のバトルはゲキオVSワルエだ。

「いっけぇぇ!ソード!!」
「ラッキー、アタックタイプはモンブランのカモだ!!」

 バトルが始まり、ワルエのモンブランはセンターで構える。そこへゲキオのアタックタイプベイ、ソードが迫る。
 ガキン!!
 良い当たりだ。モンブランが思いっきりぶっ飛ぶ。

「うそぉ!モンブランがこんなに弾け飛ぶなんて!!」
「いいぞ!ソード!!」

 ガゴッ!!
 しかし、飛ばされたモンブランは壁にぶつかってしまいオーバーはできなかった。

「あっ!」
「へへ、ラッキー♪」
「何やってんだよ!」
「だってさ〜!」

 攻撃を当てる事までは出来てもどこに飛ばすかまではコントロールできなかったようだ。
 初太刀が決まらなかった事でソードは一気に回転力を失い、停止してしまった。

「これであーしの1pだね!」
「うぅ……!」
 ゲキオは項垂れながらスタジアムから離れると、ミナタからの叱責を受けた。
「おまっ!自分でふっかけたバトルで負けてんじゃねぇ!!」
「ごめん、いけると思ったんだけど……!」
「アタックタイプは一発勝負だと勝率が安定しないからなぁ……くそぉ……これで俺のブレーダー人生も終わりか……」
 これで1VS1の同点。最後に勝たなきゃ負けだ。
「何言ってんのさ!まだサードバトルがあるだろ!」
「でも最後に戦うのは……」
 ミナタが恨めしそうにカルキを見る。
「う、うぅ……!あ、あの、やっぱり2人は逃げてください!こうなったのも僕が悪いので、僕のベイを渡せば……」
 この空気に耐えられなくなり、カルキはそんな提案をするが……。
「そんなのダメだよ!それに決着はまだついてないんだ!僕はカルキを信じてる!」
「ゲキオくん……」
「なんで会ったばかりの初心者を信じられるんだよ」
「だって、カルキはどんなに怖い目に遭っても自分のベイを守ってたから。だから凄くベイが好きなんだろうなって」
「好きと勝てるは別問題だろ……」
「それに、ベイブレードは誰がやっても勝つか負けるか分からないんだ!だから面白いんだよ!」
「それでお前が負けたからこうなってんだろうが!」
「うっ!そ、そうだけど……でも!とにかく信じて戦うしかないよ!カルキ!」
 ゲキオの根拠のないまっすぐな言葉に、カルキの瞳に光が灯る。
「う、うん……ありがとう。ゲキオくんに言われてなんだか自信が出てきたよ!」
 カルキの言葉に、ゲキオは笑顔で頷く。
「はぁ……ちょっとお前のベイ貸せ」
「え?」
 急に言われて面食らうも、カルキはミナタにベイを渡した。
「何する気?」
「自信が出ただけで勝てりゃ苦労はしないんだよ。少しでも勝てるように俺が調整する。即興だけどな」
 ミナタはカルキのベイを分解し、そしてパーツの向きなどを揃えながら組み直していく。
「調整?」
「ベイブレードは繊細なんだ。同じパーツでも取り付け方でバランスが変わる。出来る範囲で少しでも整えてやるよ」
 カチャカチャと軽く弄り、カルキへ渡す。
「ほら、これで素組の時とは段違いだ」
「……ありがとう」

「おら、何ちんたらやってんだ!とっととサードバトル行くよ!」
 少し時間をかけ過ぎたようだ。痺れを切らしたワルミが怒鳴ってきた。
 カルキは慌ててスタジアム前へ移動する。

「3.2.1.ゴーシュート!!」

「やっちまいな!モンブラン!!」
「頑張れ!サイズ!!」

 二つのベイがスタジアムに放たれる。
 ワルミのモンブランは他の二人と同様にセンターで構えた。

「いけー!」
 カルキのベイ、サイズが猛スピードでモンブランへアタックを仕掛ける。
「っ!なんつースピードだ……!」
「カルキ、凄い」
「シュートパワーが半端じゃない!ほんとに初心者なのか!?」
 シュンッ!
 しかし、狙いが出鱈目なため攻撃が当たらない。

「が、がんばれ!!」
 何度も何度も攻撃を仕掛けるが、サイズはなかなか中央に行ってくれない。
「……ひゃ、っはっは!最初はビビったけど、所詮初心者か!全然狙えてないじゃん!」

「そ、そんな……!」
「ベイの角度が浅い所為だ……回転力の強さが仇になってセンターが狙いづらくなってる!」

 ミナタの分析通り、サイズはどれだけ攻撃を仕掛けようとしてもワルミのモンブランには一切触れられない。

「くそっ、いくら調整したって言っても、こんなに空振りが続いたらスタミナが……!」
「カルキー!負けるな!ベイを信じろ!!」

「サイズ……頑張れ……頑張れ!!」
「はぁ、もう勝負はついたでしょ。諦めたら?」
「嫌だ!絶対諦めない!僕は、サイズを信じるんだ!」
「はいはい」

 同じような展開が続き、バトルは終盤戦に差し掛かる。
「頑張れ!サイズ!!」
「しつこいな……ん?」
 スタジアム内に一つの異変が起こった。
「モンブランの回転が、落ちてる?」
 回転の遠心力が減ったことにより、モンブランが少しぐらつきはじめた。
「違う、おかしいのはモンブランの回転が落ちた事じゃない……サイズの回転がまだ落ちてないんだ!」
「っ!」
 モンブランとは対照的に、あれだけ暴れ回っていたサイズはまだぐらついておらず遠心力が保たれている。

「な、なんで!?」
 ゲキオの疑問にミナタが分析する。
「シュートパワー……あれだけ出鱈目な動きをしても終盤まで力を温存できるくらいシュートパワーがあったって事か!」
「ほんとに!?凄いぞカルキ!!」
「しかも、俺の調整で重心バランスが整ってるから終盤粘るぞこれは!」
「よーし、そのままいけーー!!」

 ゲキオの応援を受けて、カルキも気合を入れる。

「頑張れ、サイズ!いけーーー!!!」
「っ!それでも持久戦になればディフェンスタイプの方が有利なはず!耐えな、モンブラン!!」

 回転力がそれなりに落ちた事でサイズの軌道が中央へ向かう。
 そして、丁度傾いて弱点パーツを晒しているモンブランへサイズのアタックがヒット。

 パッカーーーン!!とモンブランのパーツが分解した。

「バ、バーストフィニッシュ……って事は、カルキの勝ちだー!!!」
 ゲキオが勝利を宣言し、歓喜する。

「や、やった……勝てた!!」
「やったね!凄いよカルキ!!」
「うん!2人のおかげだよ!!」
 ゲキオはカルキのそばに駆け寄り、喜びを分かち合った。
「あのまま持久戦になってたらさすがに危なかったけど、粘ったおかげで相手がふらついたからバーストが取れたのか」
 ミナタは冷静にこの結果の分析をする。

「ワルミ……」
「お、惜しかったね……」
 敗北し、呆然としているワルミに仲間二人が声をかける。
 しばらくして我に帰ったワルミは振り返って二人に言う。
「二人とも、ベイを出しな」
「え?」
「う、うん」
 ワルミは二人からベイを受け取り、そして歓喜しているゲキオ達の方へ歩み寄った。

「あんた達」
「な、なんだ、まだなんかあるのか……!」
 ミナタが警戒して身を強張らせると、ワルミは自分達のベイを差し出した。
「これは?」
「……ベイブレードを賭けてバトルしたからな。ウチらも出さなきゃ不公平だ」
「えぇ!?い、いらないよそんなの!!」
「そんなの……?」
 ワルミの頬がピクッと動く。聞き用によっては侮辱に聞こえる。

「いや、そう言う意味じゃなくて!僕らは別に無事に帰れればそれで良いし、それにバトルは楽しかったからさ!タダでこの場所を使わせてもらったって事で良いよ」
「……そうか」

「また、バトルしよう!今度は何か賭けるとか無しで!」
 ゲキオは笑顔で握手を求めるが、ワルミは鼻で笑って踵を返した。
「ふん……とっとといきな」
 ぶっきらぼうにそう言われ、三人はそそくさとこの場を去った。

 ……。
 …。

「あー、ちょっと怖かったけど楽しかったぁー!」
 夕日に照らされる商店街を三人が並んで歩いている。
「俺は寿命が縮んだよ……あんなのは二度とごめんだからな」
「あ、はは……ごめんて」
 ミナタが全ての元凶であるゲキオを恨めしそうに睨む。
「あ、あの……!」
 カルキが意を決したように声を張る。
「今日は助けてくれてありがとう!二人が来てくれなかったらどうなってたか……」
「良いって良いって!ブレーダーは助け合いでしょ!」
「結局、勝負を決めたのはカルキだから、ある意味自分で解決したようなもんだけどな」
「確かに……」
 助けに入ったはずのゲキオが負け、助けられたはずのカルキが勝った事で結果的に助かった。
 そんな奇妙な状況を思い出して三人は苦笑した。
「……僕、ベイブレード始めたばっかりでまだブレーダー仲間がいないんだ。だからもし良かったら、また一緒ベイブレードしてくれる?」
 カルキがおずおずと遠慮がちにそう言うと、ゲキオはカルキの背中を叩いた。
「そんなのあったりまえじゃん!……あっ!ミナタ!!」
 ゲキオは不意に何かを思いついたようにミナタへ顔を近づけた。
「なんだよ」
「チームだよチーム!!三人目のメンバーがついに決まったよ!!」
 言われて、ミナタはハッとした。
「ああ、そういやメンバー探ししてたの忘れてた」
「あのシュートパワー、絶対に戦力になるよね!」
「確かにそうだが、本人の意思を」

「カルキ!良かったら僕らとチーム組まない!丁度三人目のメンバーを探してたんだ!」
「え、あ、ぼ、僕なんかで良かったら」
「やったーーー!!!」
「即答かい」
 突っ込みつつも、まぁこの流れだとそうなるよな、とミナタは微笑した。

「よーし、『仲良しブレーダーズ』結成だ!!!」

「ん、ちょっと待て。なんだそれは?」
「え、チーム名だけど。ダメ?」
「勝手に決めるな」
「いいじゃん、僕たちにぴったりで」
「あのなぁ……」
 さすがにダサすぎる。ミナタは反対しようとするが……。
「仲良し……良いなぁ。僕も二人ともっと仲良くなりたい」
「よし、多数決で決まり!」
 こうなって来るともう面倒になり、ミナタはヤケクソ気味に叫んだ。
「あぁーもぉー……なんでも良いや!それじゃ、明日から大会に向けて猛特訓だ!良いな!?」

「「おーーーー!!!」」

 こうして、チーム仲良しブレーダーズの戦いが始動したのだ。

 

   つづかない

 

 

 

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