弾突バトル!フリックス・アレイ 超X 第4話 「激突!頂点(ヴァーテックス)VS頂点(エイペックス)!!」

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第4話 「激突!頂点(ヴァーテックス)VS頂点(エイペックス)!!」

 

 GFCウインター地区予選大会の翌日。
 達斗は学校に登校するなり、翔也へ機体を突き付けて挑戦状を叩きつけたのだった。

「翔也……今度こそ、僕と勝負だ!!!」
「タツ、お前……」
 いきなりの挑戦に面食らう翔也だが、達斗の真剣な瞳を見て何かを察する。
 そして、達斗の心情も何も知らないクラスメイト達はどよめいた。

「なんだなんだ?」
「喧嘩か?」
「神田の奴、何マジになってんだ?」
「私、神田君があんな大声出してるの初めて見た」

 そして、翔也は一度目を閉じてからゆっくり開き、達斗の目を見据える。
「そうか、お前がそう言うなら……タツ、本気でやりたいって事なんだよな」
「……」
 翔也の目つきが変わった。今までの、友好的なものではない、どこか冷たさを感じる視線だった。
 少し怖気が走りつつも、達斗は神妙に頷いた。
「分かった。じゃあ昼休みに屋上な」
 それだけ言うと、翔也はチラッと時間を確認して席に戻った。
 その直後に始業を知らせるチャイムが鳴り、児童達は一斉に自分の席についた。

「……」
 達斗は周りの様子に気付く事なく、だらんと垂れ下がった両手を震わせながらその場に立ち尽くしている。
 らしくない事をしてしまったからか、緊張で固まってしまったようだ。

「神田、何やってんだ早く席につけ!」
 いつの間にかやってきた若い男の担任に促されて達斗は我に返った。
「あ、すいません」
 慌てて席に戻る。その様子を翔也は横目で見ていた。その表情からは感情が読み取れなかった。

「んじゃ、出席を取るぞ!阿部!」
「はい、元気です!」
「井ノ口!」
「はい、風邪で〜す!風の子のように元気で〜す!」

「「あははは!」」

「はいはい、おもしろいおもしろい。次、伊村!」

 ……。
 …。
 そして、昼休み。
 給食を食べ終えた達斗と翔也達は屋上へ向かった。

 屋上では、ズコウケイ三人組やモブ太、スナ夫、ミハル、うすとがフィールドをセッティングしている。
 そのフィールドは少々派手な装飾が施されており、『〇〇年卒業!姉ヶ崎小学校6年2組』というデカデカと書かれた文字と、ビッシリと寄せ書きの様に人の名前が連ねられていた。
 装飾は派手ではあるが、実機能に関しては中央から少し外れた箇所の線対象に穴が設置してあり、端の四辺の真ん中あたりにフェンスがあると言う基本的なフィールドだ。

「まさか、屋上の倉庫にこんなフィールドがあったなんてなぁ」
「去年の六年生が卒業制作で作ったらしいよ」
「へぇ〜、俺らもこんなの作りてぇ」
「そういえば、あたしらのクラスまだ卒業制作で何作るか決めてないもんね」
「でも、勝手に使っていいのかなぁ」
「ふっ、フィールドは使ってこそさ、ベイベー」
「うひひ、卒業生達の念が篭ってそうで良いねぇ」

 それを挟んで対峙する達斗と翔也。その周りを、クラスメイトだけじゃなく話を聞きつけたギャラリー達が取り囲んでいた。

「ねぇ、なんか雰囲気超シリアスじゃね?」
「いつもの翔也君じゃな〜い」
「神田ってああいうキャラだっけ?」
「昨日の結果がショックだったのかな?」
「あれって、そういうマジなノリの奴じゃないっしょ」
「まっ、このバトルもどーせ翔也が舐めプして完全勝利で決まりだな」
「じゃあ賭けようぜ!俺、翔也に全財産♪」
「じゃあ俺は翔也に地球の未来賭けるわww」
「お前ら神田にも賭けろよwww」

 取り囲んでいるギャラリー達が皆口々に好き勝手な事を言っている。
 善意でも悪意でも無いただの好奇から来る視線は居心地の悪いものだった。

「……」
「タツ」
 達斗が周りからの視線に強張っていると、翔也が柔らかくそれでいて凛とした声で言った。
「これはお前が仕掛けた戦いだぜ。だから、俺だけ見てろ」
「翔也……うん」
 翔也に言われ、達斗は肩の力を抜いた。

 そして、フィールドのセッティングが終わりシチベエが翔也へ声を掛ける。
「翔也、準備出来たぜ!」
「あぁ、サンキュー。じゃあ、モブ太悪いけどそのままレフェリー頼む」
「え、うん。いいよ」
 フィールドの準備を終えたズコウケイ三人組達は周りへ散り、モブ太だけが残った。
 そして、翔也と達斗はフィールドを挟んで対峙し、機体とマインをセットする。
「それじゃ、いくよ」
 フィールドへ機体をセットしたのを確認したモブ太がスタートの合図をする。

「3.2.1.アクティブシュート!!」

「行こうぜ、エイペックス!!」
 バシュッ!
 翔也は、エイペックスをスピンシュートし相手からのシュートを躱すような軌道を取ろうとした。
 しかし……。

「いっけえええ!!!」
 達斗は渾身の力で叫んでシュートした。
 それによって、エイペックスは本来の軌道を取る前にインフェリア・ビークブレードの刺突を受けてしまい加速を封じられてしまう。
 インフェリアもある程度弾き返されたものの、進んだ距離では達斗が勝った。

「せ、先攻はインフェリア・ビークブレード!」
 意外な結果に、モブ太は一瞬唖然としながらも判定を取った。

「っ!」
「いけっ!」
 達斗はそのままエイペックスへ向かってシュートを放ち、ビークブレードの先端をぶつけた。
「エイペックス!!」
 エイペックスはスピンでそれを受け流すことで衝撃を逃し、二機はY字に分かれるように弾かれた。
「ビートヒット!1ダメージで、翔也残り14!」
 先制ダメージは達斗が与えた。その事でギャラリー達は騒然としていた。

「うっそぉ」
「天崎翔也が、初心者に先手を取られた……?」
「でも、1ダメージだけだぜ?」

 周囲がざわつく中、ズコウケイ三人組も達斗の急な実力アップに驚いていた。
「神田の奴、昨日までよりもシュートが鋭くなってねぇか?」
「確かに、そうだねぇ……それに機体の動きも安定してるような」
「……そうか、きっとリプレイスシステムのジョイント部分を太らせてガタつきを抑えたんだ。それで軌道が安定してスピードが出せたのかも」
 ガクシャが冷静に分析する。
「でも、俺達そんな改造教えたっけ?」
「……自分で考えてチューンナップしたって事だろうね」
「あいつが、一人で?」
「神田君、昨日家に帰ってから、すごく頑張ったんじゃないかな?だって、右手の中指と人差し指、少し腫れてるし」
「あいつ……!」
 シチベエは、達斗の意外な一面を垣間見たような気がして思わず拳を握りしめた。

 そしてバトルは翔也のターン。
 翔也は呼吸を整えて、達斗を見据えた。
 達斗はその瞳を真っ直ぐに見返す。
「タツ……そうか、そう言う事なんだな……」
 ギンッ!と翔也の目が鋭くなる。
「だったら……俺は、本気で行くぜ」
「……っ!」
 今までに見た事のない翔也の静かな気迫に、達斗は一瞬たじろいだ。

「はあああぁぁぁぁ!!!!」
 翔也は気合を込めてエイペックスを構える。

 その様子を見ているズコウケイ三人組。
「翔也の奴、すげぇ気合!だけど、あそこからどうする気だ?」
「マインヒットもフリップアウトも、穴も狙いづらい位置だよね」
 エイペックスの狙う先にはマインもフリップホールもなく、場外を狙おうにも遠すぎる位置だ。気合を込めてどうなるものでもないのだが……。

「いっ、けええええ!!!!」
 バシュウウウウウ!!!!
 翔也は、エイペックスのシュートポイントを掴んで手首のスナップを効かせて投げるようにスピンをさせた。
 スピードは遅いが凄まじいスピンで進んでいく。
「っ!こ、このスピンは……!」
 ガッ!
 エイペックスのサイドボディがインフェリアに引っかかり、そのままねじ込むように鋭角に弾き飛ばした。
 それによってあり得ない角度に飛ばされてフリップホールの上に停止させられてしまった。
「そ、そんな……!」
「はぁ、はぁ……!」

 フリップアウトで5ダメージ。これで達斗のHPは10だ。
 そして、仕切り直しアクティブになる。

「3.2.1.アクティブシュート!」

「いけっ、インフェリア……!」
「遅い!」
 ギュンッ!!
 先ほどと違い、エイペックスは素早い加速でスピンしながらインフェリアに迫り、サイドを小突く。バランスを崩されたインフェリアは場外してしまった。
 アクティブアウトで4ダメージ。残りHP6だ。

「あ、ぐ……!」
 達斗は完全に圧倒されてしまい、驚く隙も与えられない。

「そ、それじゃあ仕切り直しアクティブ……」
 想像以上の翔也の気迫と一方的な展開に圧倒されながらもモブ太はバトルを進行しようとするが、間髪入れずに翔也は宣言する。
「フリップスペル発動!電光石火!!

 電光石火……アクティブシュートの結果に関係なく先手を取れる。

「フリップスペル……!」
「効果の説明はいるか?」
「だ、大丈夫」

 このタイミングでスペルの使用。徹底的に容赦のない翔也に、さらにギャラリー達は騒つくがそんな事は気にせずにアクティブシュートに臨む。

「3.2.1.アクティブシュート!!」
 バシュッ!
「場外させれば、先手を取られる事はないはず……!」
 達斗はエイペックスを場外させようと狙って撃つが……。
「跳べ!エイペックス!!」
 エイペックスはその場でジャンプしてインフェリアの突撃を躱し、その上部に着地した。
「あっ……!」
 インフェリアの上に乗ったままエイペックスのターン。翔也は更に畳み掛ける。
「フリップスペル発動!ブレイズバレット!!
 マインヒッターお得意のスペルだ。

 バシュッ!バーーーーン!!

 翔也はスピンシュートして一つのマインを弾き飛ばし、もう一つのマインにぶつけた。
 これによってダメージ6で達斗は撃沈だ。

「インフェリア・ビークブレード撃沈!エイペックスの勝利!!」
「俺の勝ちだな、タツ」
 翔也の勝利判定を受けて、達斗はフィールドに手をついて俯いた。
「……!」

 そしてまた騒つくギャラリー達。
「なぁんだ、やっぱ翔也の勝ちか」
「だよなぁ」
「ってか、全然勝負になってなかったしな」
「あいつ何考えてんだ?勝てるわけないのに」
「ほんとほんと」
「つまんな」
 分かりきった結果に文句を言うものや達斗を非難するものも現れ出した。

「お前らバカにするな!!」
 そんなギャラリーへシチベエが声を荒げた。
「こいつはな、誰も知らねぇとこで努力して、過酷な勝負を挑んだんだ!お前らは過酷な勝負のために真剣に努力した事あんのか!?した事ない奴は……」
「シチベエ君!あれ……」
 熱くなるシチベエをガクシャが制して達斗の方を指差した。
「なんだよ」
 ガクシャに促されるままシチベエも達斗の方へ視線を移した。

 見ると、俯いていた達斗の体が少し震えていた。泣いているのだろうか?

「……ふ、はは……ははは……」
 しかし、そこから聞こえる声には悲しみの感情はなかった。むしろ……。

「ははは!はははは!!あはははは!!」

 笑っていた。
 達斗は、顔を上げると人目も憚らずに楽しそうに笑った。
 そして、ひとしきり笑うと一息ついてしみじみと呟いた。

「……そっか、やっぱり翔也って強いんだなぁ。僕なんかじゃ全然勝てないくらい、フリックスバトルって難しくて凄いんだ……!」
 晴れやかな顔をする達斗へ、翔也は頭を掻きながら呆れながら苦笑をした。
「ったく、手も足も出ずに完敗した癖に一人で楽しそうにしやがって」
「あ、ごめん……次は、もっと良い勝負できるように強くなるよ」
 控えめな表情ながら達斗の目には強い芯のようなものが感じられた。
 それを確信した翔也は頷いて達斗の肩に手を置く。
「あぁ。だったらタツ、俺に付き合え」
「えっ……?」
 ウインクしながらの突然の告白。

 それ聞いたギャラリーの女子が何故か黄色い嬌声を上げた。
 その女子の視界フィルターでは、達斗と翔也の周りに淡い光と赤い花が散りばめられているようだった。

 ……。
 …。
 放課後、達斗は翔也に連れられて段田ラボにやってきた。
 翔也に連れられるままラボの中に入り、廊下を抜けて部屋の中に入った。
 そこには真ん中に大きなフィールドが、その周りには大仰な機械が設置してあった。
 そして、段田バン、遠山リサ、伊江羅博士が待機していた。

「よぉ、来たな翔也。そいつか、電話で言ってた見所あるって奴は」
 段田バンが翔也と達斗を見比べながら声をかけてきた。
「えぇ。神田達斗、俺の同級生です」
「あ、どうも、はじめまて」
 達斗は流れで頭を下げた。
「あぁ、はじめまして。俺は段田バン、こっちが遠山リサに伊江羅博士」
 リサと伊江羅も軽く挨拶をした。

「段田バン……って、確か去年の大会でエキシビジョンやってた人……?」
 達斗は朧げながら去年観戦したSGFCの事を思い浮かべた。
「そうそう!タツは知らないと思うけど、この人はフリックスの殿堂入りチャンピオンですげぇ人なんだぜ!」
「チャ、チャンピオン……!」
 その言葉の重さに達斗は少し身体をこわばらせた。
「まぁそんな硬くならなくていいぜ。それより達斗、俺達と手を組まないか?フリックス界の未来のために」
 バンは達斗をリラックスさせるように笑いながら手を差し出した。
「え……?」
 あまりにも重く多すぎる情報量に、達斗の思考は停止し固まった。
「……バン、さすがにその言い方だと唐突すぎじゃない?」
「あ、はは。わりぃわりぃ」

 ……。
 …。
 と言うわけで、バン達は神威継承戦に関する事を掻い摘んで丁寧に達斗へ説明した。

「……って感じだ。大体分かったか?」
「あ、はい。僕なんかで良ければ、喜んで」
「サンキュ!そんで、このヴァーテックスをお前に使ってみて欲しいんだ」
 バンは一つの機体を達斗へ渡した。

「……!」
 ヴァーテックスを受け取った瞬間、達斗の手に何か不思議な力が伝わったような気がした。
「どうだ?一回撃ってみないか?」
「はい、やってみます」

 伊江羅博士がフィールドにターゲットをセットした。
「準備出来たぞ」
「はい」
 達斗はヴァーテックスをスタート位置にセットし、ターゲットを見据えた。
 ポゥ……!
 ターゲットに小さな光が灯るのが見える。
「いけっ、ヴァーテックス!!」
 達斗はその光の点目がけてヴァーテックスをシュートした。
 ガッ!!
 ヴァーテックスのフロントがその点を捉え、ターゲットを弾き飛ばして場外させる。

「ほぅ……あのシュート力でここまでの攻撃力を発揮するとは」
 伊江羅が感心したように呟いた。
「パワーの伝達率が高いんだ」
「やるじゃねぇか達斗!どうだ、ヴァーテックス撃ってみて?」
「あ、はい!凄く良かったです、……ただ」
「なんだ?」
「もうちょっと、フロントを低くしたいなって」
「フロントを?」
「僕、昨日の大会で攻撃を上に受け流されて負けたんです。だから、もっと低く出来れば」
 達斗の意見に伊江羅が頷く。
「なるほど、一理あるな。フロントが確実に接地していれば受け流される確率は減る。だが、普通に形状を変えるだけでは確実性は薄い。何か仕込みたいところだが……」
「んじゃ、フロントに仕込むギミックの設計だな!早速取り掛かろうぜ」
 バン達の行動は早い。達斗の何気ない一言を聞いただけでもう設計を始めようとコンピュータを起動する。
「え、でも僕なんかの意見でそんな……」
「何言ってんだよ、ヴァーテックスはもうお前の機体なんだぜ。だったら、使いやすいように意見聞いて改良するのは当たり前だろ」
「……」
「まぁとりあえず今日のとこは設計だけだな。明日からも暇があったらいつでも来てくれ、毎日でもいいぜ。んで、GFCスプリングに向けてヴァーテックスを完璧に仕上げようぜ!」
「は、はい!よろしくお願いします!」
 それを側から聞いていた翔也はニヤッと笑う。
「GFCスプリングでお披露目かぁ、いいっすねぇ!でもタツ、その前に俺とバトルしてくれよ!それでほんとの決着つけようぜ!」
「翔也……うん!」
 達斗は強く頷いた。

 ……。
 …。
 神田家。達斗は辺りがすっかり暗くなった時間帯で家に帰った。
「ただいま〜」
 台所からは良い匂いが漂ってきており、エプロンをつけた美寧が夕飯の準備をしていた。
「おかえり、たっくん。どうしたの、今日は遅かったね?お店の手伝いしてたとか……?」
「ううん。ちょっと、翔也に誘われてフリックスの……」
「そう」
 達斗の話をぶった切るように美寧は無機質に頷き、話を切り替えた。
「今日はたっくんの好きなはかりめ丼だよ!良いアナゴが手に入ったんだぁ♪」
「え、それは、楽しみだなぁ……」
 美寧の変わり身に面食らいながら達斗は脊髄反射でいつものような返事をした。
「でしょ♪ほら、早く荷物置いて、手洗ってきて」
「う、うん」
 美寧に促されるまま、達斗は荷物を置いて洗面所へ向かった。
「……」
 美寧はリビングに置かれた達斗のカバンからはみ出ているプリントと横に置かれたヴァーテックスに目をやった。
 プリントを手に取ると、そこには『段田ラボ』の概要が書かれているのが見えた。
 美寧は冷たくも悲しげな表情でそれを眺めていた。

 ……。
 …。
 それから、毎日のように達斗は学校から家に帰るなり鞄を置いて即段田ラボへ向かうようになった。
「ただいま!それから、いってきます!」
 昔とは違う、活発でイキイキとしたその様子だ。
「いってらっしゃい」
 美寧はそんな達斗を複雑な視線で見送るしかなかった。

 そして、達斗がラボへ通うようになってから数日が経過した。

「いっけぇぇ!ヴァーテックス!!」
 バゴォォーーーン!!
 達斗の一撃がターゲットをぶっ飛ばす。

「おお!良い感じじゃん!!」
「あぁ、上出来だ」
 達斗のシュートを見て、バン達は感嘆の声を上げた。
「新設計の『グラビティノーズ』もしっかり機能してるみたいだな」
「どんな状況でも重力を利用してノーズを接地させるシステムはこれまでも多くの機体が採用してきたが、その殆どが一点の軸を支点に下降させるものだった。だがヴァーテックスは垂直に下降するから角度の変化が少なく、路面状況に関わらず常に一定の性能を確保出来る」

「はい!まるで自分の力がダイレクトに伝わるみたいで、シュートしてて気持ちいいです!」
「それは達斗の腕が上がってるからでもあるんだぜ!」
「そ、そうですかね……?」
「あぁ!ヴァーテックスの使いこなしもバッチリだぜ!」
 バンのお墨付きをもらえた。
「やったな、タツ!これでほんとにヴァーテックスのフリッカーになれたぜ!!」
「うん!バンさん達や翔也のおかげだよ!」
「おっしゃ、じゃあさ!約束通り決着付けようぜ!次の日曜日に公園でみんな集めてさ!」
「うん!」

 と言うわけで、日曜日に姉ヶ崎公園でギャラリーを集めての達斗と翔也の決着バトル会を開催する事となった。

 日曜日の昼下がり、達斗は出掛けるために急いで昼ご飯を食べている。
「たっくん、もっと落ち着いて食べなきゃダメだよ」
「うん、だって今日は約束があるから」
「まったくもう……」
 すると、リビングでつけっぱなしにしているテレビからニュースが聞こえてきた。

 『千葉県市原市姉ヶ崎にて、連続通り魔事件発生。外で遊んでいる子供達が何者かに輪ゴム銃で狙わられる。犯人に関連する情報は未だ無し』

 と言った事件が発生しているようだった。

「物騒だね……たっくん、暫くは外で遊ばない方がいいんじゃないかな……?」
「大丈夫だよ、このくらい」
「でも万が一事件に巻き込まれたら」
「ごちそうさま!」
 達斗は半ば強引に話を切り上げて食器を流しに置いてさっさと出掛けてしまった。
「たっくん……」

 達斗が公園に向かうと、既にギャラリーが集まっておりフィールドもセットされていた。

「おっ、来たなタツ!」
「おまたせ!ごめん、遅くなって」
「良いって良いって。それより、さっさと始めようぜ!」
「うん!」

 二人がフィールドについてバトルの準備をする。
「じゃあ今回も僕がレフェリーをやるよ」
「サンキュ、モブ太」
「バトルの様子は、この高性能カメラでバッチリ記録するよ、ベイベー!」
「頼むぜ、スナ夫」

 ズコウケイ三人組や影野うすと、今野ミハルらも口々に二人を応援してくれる。
 今回は仲の良いメンバーしか呼んでないので雰囲気は良好だ。

「いくぜ、タツ!」
「うん!」

「3.2.1.アクティブシュート!!」

「いっけぇ!ヴァーテックス!!」
「行こうぜ、エイペックス!!」

 バーーーーン!!
 ヴァーテックスのストレートシュート、エイペックスのスピンシュートがフィールドの中央で激突し、二機は同時に場外する。
 しかも二機ともフィールドから1m以上離れた地点で着地した。

「ど、同時に場外!しかもお互い1mのオーバーアウトだから……二人に3ダメージ!」
 自滅2ダメージ×1mオーバーによる1.5倍増加なので二人とも3ダメージを受けて残りHP12となった。

「パワーは互角か……!」
「でも、まだまだ!」

「仕切り直し!3.2.1.アクティブシュート!!」
 バシュッ!
「いけぇ!」
「甘いぜ!」
 今度はエイペックスはヴァーテックスを回避するような動きをとった。
 ヴァーテックスは先程と同じように一直線に突っ込んだので、そのまま自滅するかに思われた。
「止まれぇ!」
 しかし、ヴァーテックスはギリギリのところでブレーキがかかり停止。結果ヴァーテックスの先攻になった。
「俺が躱すのを読んで力を抑えたか……!」
「翔也ならそうすると思ったから」
 達斗のターン。しかし、マインもフリップアウトも狙いづらい状況だ。
「ここからどうする?マイン再セットでもするか?」
「いや……フリップスペル!ライジングチャージ!!

 ライジングチャージ……フリッカーの体力を消耗する事でビートヒットのダメージ量を増加する。

 このスペルを発動した瞬間、達斗の目の前に急角度の登り坂が現れた。これはスペルの効果によって見せられる幻なのだが、これによって受ける身体の負荷は現実にもシンクロする。
 達斗は駆け出して登り坂を登る。制限時間内にどれだけ進めたかによってダメージ量が変化するようだ。

「おおおお!!!!」
 気合いを叫びながら駆けていく。
 そして、ダメージ量3増加する地点まで進んだ所で時間経過した。

「はぁはぁ……!」
 急坂を全力疾走したため、達斗は息を切らしている。
「い、けぇ!!」
 疲労しながらも、しっかりとエイペックスへビートヒットを決めた。
 これで4ダメージ。翔也残りHP8だ。
「いきなりライジングチャージなんて、飛ばすじゃねぇか」
「さ、最初から攻められる時に攻めとかないと、翔也にペースを奪われちゃうからね……!」
「おもしれぇ!」
 バシュッ、バーン!
 翔也は難なくマインヒットを決める。
 達斗残りHP9。

「食らい付くぞ!いけぇ!!」
 達斗の攻撃。しかし、これはビートヒットのみだ。翔也のHPは7。
「どうした?息が上がって狙えてないぜ!」
 バシュッ、バーン!!
 またも翔也はマインヒット。達斗の残りHPは6になり、逆転された。

 一進一退なバトル展開に興奮するズコウケイ三人組。
「くぅぅ、神田の奴頑張ってたけど、逆転されたかぁ」
「まだ勝負は分からないよ」
「うん。ターンが経過して、神田君の体力も回復してきてるし」

 そして、達斗のターン。
「ふぅ……よし!」
 ライジングチャージによる疲れも取れてきたので、達斗とは集中してエイペックスを狙う。
「いけっ!!」
「堪えろ!」
 バキィ!!
 ヴァーテックスの攻撃がヒット。飛ばされたエイペックスは翔也のバリケードで守られるが……。
「くっ!」
 エイペックスのグリップパーツがフィールドから離れた事で防御力が下がり、バランスが崩れて転倒してしまった。
 ビートヒット受けた上にスタンだ。翔也残りHP6。
「やったっ!」
 スタンなので再び達斗の攻撃。
 転倒して防御力が減ったエイペックスを難なく場外へ弾く。
 カッ!
 しかし、本体全てではなく、フィールド端から機体の一部のみが場外に接地しただけのフリップアウトだったので5ダメージだ。

「あぁ、惜しい……!」
「あっぶねぇ……!」

 仕切り直しアクティブ。

「3.2.1.アクティブシュート!!」
「あと一発なんだ!頼むぞヴァーテックス!!」
「俺達の力見せてやろうぜエイペックス!!」

 バシュッ!!
 達斗はいつものストレートシュートだが、なんと翔也もストレートシュートを放った。しかし、ゆっくりと回転している。
「いつものスピンじゃない……!」
「いけぇ!」
 ガッ!
 フィールド中央でぶつかると、エイペックスはヴァーテックスの攻撃を利用して猛スピンして飛び上がり、距離をとってシュートポイントを反対側へ向けながら着地した。
 これによって翔也の先攻だ。

「こ、こんなシュートも出来るなんて」
「いくぜエイペックス!こいつでトドメだ!」
「ブ、ブレイズバレットか……どうにか避けないと……」
 達斗がステップの構えを取ろうとするが……。
「フリップスペル発動!ライトニングラッシュ!!
「え!?」
 思わぬスペルに達斗だけでなくギャラリーも湧いた。
「ライトニングラッシュ!?」
「あの翔也が!?」
 ライトニングラッシュは3秒間連続でシュートできるスペルだが、どちらかと言うとフリップアウト向きのスペルだ。
 それをマインヒット向きの翔也が使用するとは……。

「いくぜ、エイペックス!!」
 バシュッ!
 翔也はエイペックスをシュートしてヴァーテックスの横へ移動させる。
「っ!」
 達斗はバリケードを構えて攻撃に備えた。
 バシュッ!ガッ!!
 エイペックスのスピンシュートを横っ腹に喰らった事でヴァーテックスが少し浮き上がりながら飛ばされる。
 しかし、威力は強くないので簡単にバリケードでガードした。
「耐えろ!!」
「まだまだ!!」
 ガードはしたものの、バランスの崩れたヴァーテックスへ向かって畳み掛けるように連撃を喰らわせて、更に体勢を崩し、間髪入れずに攻撃してバリケードの横をスルーさせながら場外へ落とした。

「あっ!」

「フリップアウト!ヴァーテックス撃沈で翔也の勝ち!」

「おっしゃあ!どうだ、タツ!俺の攻撃、ダントツにおもしれぇだろ!!」
「翔也……うん!やっぱり翔也は強いや、僕じゃまだまだか」
 達斗はヴァーテックスを拾い、負けを認める。
「おしっ、じゃあ第二ラウンドやるぞ!」
「え?」
 そう言いながら翔也はエイペックスをスタート位置にセット。
「マインの位置はここだな。スペルは何使おうっかな〜♪」
「……」
 キョトンとしている達斗へ翔也が催促する。
「何やってんだ?早く準備しろよ」
「え、だって、もう決着付いたんじゃ」
「はぁ?たった一回のバトルで決着付くわけないだろ!まだ時間あるんだからたっぷりやろうぜ!」
 時刻は午後2時半。
 まだまだ日が暮れるには早い。
「う、うん!」
 達斗は戸惑いつつも少し嬉しそうに頷き、バトルの準備をした。

 ……。
 そして、二人は何度も何度もバトルをした。

 バキィ!!
「マインヒット!翔也の勝ち!!」

「あぁ、また負けたぁ……!これで四連敗かぁ」
「へへ、でもどんどん強くなってるぜタツ!まだまだやろうぜ!」
「うん!!

 ……。
「いっけぇぇ!ライトニングラッシュ!!」
 シュン、シュン、バキィ!!
 ヴァーテックスが連続攻撃でエイペックスを穴の上に停止させる。

「フリップアウト!神田君の勝利!」

「や、やった!初めて勝てた!!」
「くぁーーー!しまったぁぁぁ!!くっそぉ、リベンジだ!もう一回やるぞ!!」

 ……。

「アクティブアウト!翔也の勝ち!!」

「あっぶねぇぇ〜〜!カウンターブローしてなかったら負けてた」
「はぁ、はぁ……うーん、10回に1回くらいじゃないと勝てないなぁ」
「それでもすごいぜタツ!めちゃくちゃおもしれぇ!!さぁ、決着付けるためにまだまだやるぞ!!」
「……っていうか、どうやったら決着って付くの?」
「そりゃ、勝率が100%になるまでだろ!」
「僕もう何回か勝ってるから、100%になるのは無理なんじゃ……」
「じゃあ何回でもやれば良いだろ!それがフリックスだぜ」
「……」

 そう、最終的に誰が強いかとか、決着をつけるとか、そんなの本当はどうでも良い。
 ただこの瞬間、手応えのある強い相手と勝ち負けのやりとりをする事が堪らなく楽しい。
 だから理由を付けて何度でもやる。
 それが天崎翔也という男なのだと、達斗はなんとなく察した。
 そして、きっと自分も根はそんな奴なんだろうなって気がしてきた。

「そうだね!やろう!!」
 力強く楽しげに頷く達斗にギャラリー達も湧いた。

「おおお!いいなぁ!お前らばっかり!!」
「バトル観てるのもいいけど、僕たちもやりたくなっちゃうよね」
「ほんとほんと!」
「うひひ、僕にやらせないと呪いかけちゃうよ……」
 自分達もバトルがしたいと訴えるギャラリー達に、翔也は笑いながら答えた。
「あはは、分かった分かった。じゃあこのバトル終わったら皆でやろうぜ!」

 って事で、達斗と翔也はアクティブシュートのセットをした。

「3.2.1.アクティブシュート!!」

「エイペックス!!」
「ヴァーテックス!!」

 バシュッ!!
 向かい合いながら迫る二機。
 その時だった。
 シュン!!
 フィールド外から何かが飛んで来たかと思ったらヴァーテックスとエイペックスの機動が不自然に変化し、バランスを崩した二機が接触する事で変に弾かれて場外してしまった。

「っ!」
「え?」

「同時場外!二人とも2ダメージだよ」
 モブ太の判定。
「やっぱり二人の力は互角って感じなんだなぁ」
「結構同時場外発生してるもんね」
 そんなギャラリー達の感想。

 しかし、翔也は神妙な表情になる。
 そして、フィールド外に何かが落ちているのを発見した瞬間振り返った。
 カサッ……!
 公園の隅にある茂みが不自然に動いた。
「……」

「あ、あの、翔也?仕切り直しは……」
 モブ太がおずおずと声をかけると、翔也は低い声で返事をした。
「悪い、バンさんから頼まれた用事思い出した。タツ、付き合ってくれ」
「え、ぼく?」
「後片付けする頃には戻るから、皆は遊んでてくれ。いくぞ、タツ」
 翔也は達斗を連れて駆け出した。

 公園を出て路地裏を走る翔也を達斗は必死で追いかけた。
「ちょ、翔也!どうしたの?」
「タツ、ここら辺で発生してる通り魔事件の話知ってるか?」
「え、そういえば美寧姉ぇが」
「さっきのアクティブシュートで、俺達の機体が狙われた。だから変な動きしたんだ」
「えぇ!?」
「まだ遠くには行ってないはずだが……!」
 角を曲がった所で、ビンゴ!
 帽子を深く被り、輪ゴム銃をボディに搭載したようなフリックスを手に持った挙動不審の少年が行き止まりの塀の前で右往左往していた。

「お前か!」
「ゲェ!なんだよ、何追っかけて来てんだよ、めんどくせぇな……!」
 帽子少年は悪態をつく。相当根性が捻じ曲がってるようだ。
「お前だな。ここ最近フリッカーを襲ってる通り魔は!」
「だったらなんだよ!大体くだらねぇんだよ!たかがおはじきで勝った負けたしたくらいで盛り上がってよぉ!!」
「なに!」
「くだらなくなんかない!」
 帽子少年に対して達斗が声を荒げた。
「フリックスバトルは、楽しいんだ!それを邪魔する方がくだらないよ!!」
「うるせぇぇ!!」
 チャキ……!
 帽子少年が輪ゴム銃機体を二人に向けて構えた。
「ガンナー機体か……!」
「おらぁぁ!!!」
 パシュッ!パシュッ!!
 機体から輪ゴムが飛び出す。

「いくぞ、タツ!」
「うん!」
 バシュッ!!
 翔也と達斗は機体をシュートして輪ゴムを弾き飛ばし、帽子少年の手から機体を叩き落とした。

「ぐっ、くそぉぉぉ!!!」
 ヤケになった帽子少年は機体を踏み潰しそのまま二人に向かって突進してこようとした時。

「待ちなさい!」
 達斗と翔也の後ろから大人の男の声が降って来た。
 振り返ると、白衣に仮面をつけた長身の男が立っていた。

「あ、あなたは……?」
 翔也が聞くと、男は答える。
「一部始終を見ていた者だ。これ以上は子供の出る幕ではない。この場は私に預けてお家に帰りなさい」
「で、でも……」
「ここからは大人に任せなさい」
「……はい」
 そう言われては仕方ない、翔也と達斗は渋々その場から去り、仮面の男と帽子少年だけが残った。
 男がズイっと少年に迫ると、少年は睨み返した。
「なんだよ!サツに言うってのか!?言っとくが、俺は未成年だから法に守られてんだぜ!!逆にあんたを不審者として通報してやる!!」
 ビビりながらもイキがる少年に仮面の男は話しかけた。
「会員番号15番。的場テルだったね」
「な、なぜ俺の名前を……!」
 思わぬ言葉に少年……テルは目を見開いた。
「君は、フリックスを憎んでいるのか?」
 男の問いにテルは目を逸らしながら答えた。
「別に、ただ気に入らねぇだけだ。こんなので勝っただの負けただのはしゃぎやがって」
「君の感情は正しい」
「え?」
「だが、やり方が間違っている。来なさい、私が正しいやり方を教えてあげよう」
「なに?」
「……君の望む彼女達も、その先にいる」
「まさかっ!」

 そう言って、仮面の男は踵を返して歩き出し、テルもその後に続いた。

 

   つづく

 

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