第13話「ダントツのグルメ」
グレートフリックスカップ決勝戦。
お互いのアーマーを砕き合うと言う正しく死闘だった。
ダンガ「喰らい尽くせ!キメラビースト!!」
カイヤ「やれ、プロトキメラ!」
お互いの超ゼツな激突により、どんどんパーツが壊され、使えるアーマーの手持ちが減っていく。
ダンガ「イーピードルコンボ!ビーストバーン!!」
バキィィィ!!
ダンガは赤のコンボによる必殺技でプロトキメラの灼熱アーマーを破壊した。
カイヤ「そんなもの……ハーフチェンジ!」
疾風!
カイヤは灼熱から疾風アーマーへチェンジ。
カイヤ「烈風刃!」
疾風切札アーマーによるスピン攻撃!
まさしく血の旋風を思わせるような赤い残像を発しながらの斬撃攻撃に、なんとキメラビーストのピーコックとコンドルアーマーが一気に破壊されてしまった。
ダンガ「ちっ!」
ダンガはそれらを外してプテラフロントを取り付ける。
だが、ピットインのルール上トリケラアーマーを取り付けるにはもう1ターン必要だ。
カイヤ「遅い!!」
カイヤの素早い連撃がそれを許すはずもなくプテラアーマーは砕かれてしまう。
これではもうコンボは使えない。今更トリケラアーマーを付ける意味がない。
ダンガ「ふ、ははは、はっはっはっ!!!!」
と、ピンチにも関わらず、ダンガは笑い出した。
真島「どうした事でしょう?武器を失い絶体絶命の状況でダンガ君は笑い出しました!」
カイヤ「気でも狂ったかい?」
ダンガ「……いや、逆に目が覚めた」
そう言いながら、ダンガは生き残ったアーマーを手に取り、自らの握力で握り砕いた。
ダンガ「しゃらくさい!」
カイヤ「……なんの真似だ?」
ダンガ「ゴチャゴチャした味付けも良いが、素材の味を楽しむのが真のグルメだ」
素のままとなったキメラビーストを構えるダンガ。
カイヤ「そんなもので僕に勝てると?良い経験値だと思っていたが、どうやら買い被り過ぎていたようだ」
ダンガ「料理は、味わってから言え!」
ダンガは気合を込めて素体キメラビーストをシュートする。
ダンガ「ビーストインパルス!!」
バシュッ!!
小さく軽くなった事でより速く鋭くなった一撃がプロトキメラへ襲い掛かる。
とは言え、所詮素体は素体。取るに足らない攻撃のはずだが……。
バキィィィ!!
その一撃は、疾風アーマーを砕いてしまった。
カイヤ「なに……!」
真島「おおっとこれは驚きです!武器を失い丸裸になったはずのキメラビーストですが、その攻撃はより鋭さを増しています!!」
カイヤ「な、なぜだ…なぜあんな、素体に……!」
さすがのカイヤも予想外の強さを目の当たりにして狼狽える。
アキラ「ど、どう言う事?アーマーを失ったキメラビーストは軽くなって性能が落ちてるはずなのに」
播磨「いや、そうか。ダンガ君は砕けたアーマーをシャーシの中に組み込んでウェイトにしている。それである程度は重さを確保しているんだ」
アキラ「それでもアーマー無しじゃ……」
播磨「普通なら、戦力は大幅に落ちる。だが、ダンガ君は……機体じゃなく己の力で戦っているんだ」
ダンガ「なかなか良い味だろう?」
カイヤ「ぐ……!」
カイヤは顔を顰めながらシュートする。
しかし、片側のアーマーが壊れてバランスを失ったプロトキメラでは大した攻撃力はない。
ダンガ「お前が不味くなった理由が分かった。経験値だのアーマーだの、添加物まみれだからだ。お前の素材を味わわせろ!!」
ドンッ!!!
再びダンガの鋭い一撃がカイヤを襲う。
カイヤ「くっ!」
どうにかバリケードで耐え切るがカイヤは劣勢だ。
カイヤ(バカな、僕が、こんなものに、負ける……バカな……!)
カイヤの表情に明らかな焦りが浮かぶ。
コウキ「カイヤの奴……」
タイラ「あんな表情、初めてっすね」
観戦席で見ているダスト達もカイヤの異変に気づいた。
カイヤ「う、うおおおおおおお!!!!!」
そしてカイヤは叫んだ。今までのカイヤでは考えられないほどの咆哮だった。
ひとしきり叫ぶとカイヤはダンガを一睨みし、プロトキメラのアーマーを取り外し代わりに中にウェイトを入れた。
真島「な、なんと!突如叫んだかと思ったら、カイヤ君もアーマーを外して素体のまま戦うようです!まさに、裸一貫のガチンコ勝負!!」
カイヤ「負けてたまるか!いけぇ!プロトキメラ!!」
気合を込めた渾身の一撃!
キメラビーストはたまらず吹っ飛んで大ダメージを受ける。
ダンガ「……今の一撃は豊かな味だったぞ。まったりとしていて鮮烈だ」
カイヤ「そうか、そう言うことか、悪くないな……」
カイヤは手に感じた手応えを堪能しながら呟いた。
ダンガ「そうだ!美味いバトルは最高だろう!!」
カイヤ「負けを恐れ、勝ちたいと願いを込めてシュートを放つ……このスリルこそが、バトルの味か!」
アーマーを脱ぎ捨て、素のままとなってぶつかり合う事で、カイヤはバトルの本質を体感したのだ。
カイヤ「強くなるための作業じゃない、スリルも手応えも味わうためのバトル……」
ダンガ「そうだ!もっともっと味わうぞ!!」
バッ!!
それから、二人は何度も何度も渾身の力を込めてぶつかり合った。
ダメージはジリ貧状態の消耗戦。
お互い疲労困憊になりながらもなかなか決め手にならずにバトルが長引いてしまう。
ダンガ「美味いな……完食するのが勿体無いくらいにな!」
カイヤ「だが、勝負は決着がついてこそ意味がある」
ダンガ「あぁ、飯は腹に入れてこその飯だ。だが、美味い料理はいつまでもじっくり味わい尽くすに限る!早飯は勿体無いぞ!!」
カイヤ「いつまでも、か。決着を求めないで、それは勝負と……食事と言えるのか?」
ダンガ「当たり前だ!決着がつこうがつくまいが、美味けりゃいいんだよ!!」
カイヤ「ふ、はは……ははは……なんだそれは、めちゃくちゃにも程がある。……だが、乗ってやろう!!」
そして二人は、いつまでもフリックスをぶつけ合うのだった。
……。
…。
数日後。
カイヤと白井が公園のベンチに並んで座っていた
白井「調子はどうだ、カイヤ?まさか決勝戦の直後に疲労で倒れるとは思わなかったが」
カイヤ「えぇ、おかげさまでかなり良くなりましたよ。ご心配おかけして申し訳ありません」
白井「気にするな、君は私の大事な商品なんだ。このくらいの心労は必要経費だ」
カイヤ「商品、ですか……僕は、その役割を果たしたと言えるのでしょうか」
カイヤは少し憂いな表情になる。欲望のままに自分勝手な行動を取ったことを反省しているのだろう。
白井「何を言っている。君の行動もあの試合結果も、マイナスよりプラスの方が多かったように思うぞ。将来的に見れば、ね」
カイヤ「……だと良いのですが」
カイヤは空を仰ぎ、一呼吸置いて口を開いた。
カイヤ「……あいつは、今頃エキシビジョンマッチを戦ってる頃ですね」
白井「そうだな。優勝者特典、段田バンとの特別バトル。未だかつて誰も勝てたものはいないが……彼なら、ひょっとするかもな」
カイヤ「ですね」
フッと微笑むカイヤ。そんな彼の前に騒がしい連中が現れた。
コウキ「おうおうカイヤ!こんな所で何シケたツラしてんだ!!」
カイヤ「君は」
コウキ「もう調子は万全なんだろ?あの時のリベンジマッチだ!とっととやろうぜ!」
コウキ達ダストが馴れ馴れしくカイヤに迫る。
白井「おいおい、無茶を言うな。カイヤは病み上がりで」
さすがに止めに入る白井だが、カイヤはそれよりも先に答えた。
カイヤ「ああ、やろう。バトル」
コウキ「へっ、そうこなくっちゃな!!」
……。
千葉県幕張メッセ、エキシビジョンマッチ会場。
バトルフリッカーコウ「さぁ、グレートフリックスカップ優勝特典の特別マッチを始めるぞ!果たして、無敵のチャンピオン段田バンを倒す事が出来るのか!?」
ステージにバンが現れて決めポーズをとる。
バン「誰が相手でも俺が、ダントツ一番!!」
そんなバンの前にダンガが対峙する。
バトルフリッカーコウ「今回の挑戦者はダンガくんだ!!」
ダンガはチャンピオンを目の前にしても怖気付かずに舌舐めずりをした。
ダンガ「チャンピオンとは、美味そうだ。お前のダントツを食わせろ!!」
おわり