弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第31話「奴がチャンピオン!?対決!エンペラーガルディオン」

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第31話「奴がチャンピオン!?対決!エンペラーガルディオン」

 

 赤壁杯決勝戦の翌日。潁川エンタープライズ研究室跡地では、四神フリッカー達との激しい戦いでボロボロの廃材だらけになった部屋の中を神宮タツヤが汚れも気にせずに這いつくばって何やらゴソゴソ漁っていた。

「まったく、愚かな連中だ。みすみす最強を得る手段を手放すとは……。だが、もはや奴等など不要」
 ガサ……!
 タツヤの手に小物の感触が当たる。それは、コンピューターのメモリーだった。
 タツヤはニヤリと笑い、それを小型ノートパソコンに取り込んでデータの確認をする。
「奴らから得た四神フリックスのデータは無事だ。あとはセイバーギラフレアにこれを取り込めばデザイアは完成する……」
 セイバーギラフレアは四神フリックスどもに弾き飛ばされてしまい、廃材の山の中に埋もれているはずだ。
 タツヤは再び廃材を漁る。
「どこだ……何故見つからない……!」
 どれだけ探してもセイバーギラフレアは見つからなかった。
 それでも、この部屋の中に必ずあるはずだとイラつきはしつつも探す手を止めないタツヤ。

 ザッ、ザッ……!
 そこへ、一人の少年の足音がゆっくりと近づいて来た。
「っ!貴様、何故ここに……!」
 その少年の顔を見た瞬間、タツヤの顔が歪む。
「四神フリックスのデータをよこせ」
 その少年はゆっくりと手に持った機体をタツヤの顔へ向けた。
 その機体は、セイバーギラフレアとよく似ていた。
「それは、セイバー……いや、違う!まさか、貴様……」
「最強の機体、デザイアは俺が完成させる」
「バカな事を!そんなものは最強には成り得ない!それでは、ゴルドライグと同じ……!」

 ドンッ!
 少年は容赦なく機体を放ち、その衝撃でタツヤは気を失った。
 そして、少年はタツヤからメモリーを奪った。
「それは貴様の解釈だ。真の最強は俺の欲望が形作る」
 気絶したタツヤを気にもかけずに、少年は踵を返して去っていった。

 ……。
 ………。
 それから数週間後。
 ゲンジ達小竜隊の面々はコウに呼び出されて遊尽コーポレーションへと赴いた。
 受付に案内されて少し広めの会議室に入ると、そこには既に江東館のケンタとサクヤ、インビンシブルソウルのホウセン、タカトラ、アスカが待機していた。

「よぉ」
「あ、ゲンジさん!」
「久しぶりだな、小竜隊の皆」

 小竜隊と目が合った二チームは口々に挨拶をしてきた。
 インビンシブルソウル達とはあれだけ確執があったのに、それを全く感じさせない。

「お、お前らも呼ばれてたのか」
「なんやなんや、コウの奴うちらの事集めてどういうつもりやねん?」
「あたし達も用件は聞いてないのよね」
「この招集は俺たちにとっても寝耳に水だ」
「赤壁杯関連で何かあるのか……?」
「でも、それならレッドウィングスが来てないのはなんか変だな」
「あとから来るんじゃないの?」

 ガララ……と、扉が開く。

「レッドウィングスも呼ぼうとはしたんだが、残念ながらソウやアツシと連絡がつかなくてね。他のメンバーはそれぞれの地元に帰っていて、予定が合わなかったんだ」
 扉の前で話は聞いていたのか、コウが部屋に入ってくるなりゲンジの疑問に答えた。
「コウ!」
「やぁ、揃っているね。急に呼び出してすまなかった」
「それは良いけど、ソウと連絡がつかないって大丈夫なのか?」
「あぁ、多分決勝で負けたのが悔しくて武者修行にでも出てるんじゃないか?去年のGFCで準優勝だった時も、しばらく音信不通になったからね。おかげでカイザーフェニックス開発にも影響が出て苦労させられたよ」
 さすが、勝手知ったる幼馴染という事で、ソウの行動はお見通しといった感じの余裕を見せる。
「悔しくて、連絡断って、武者修行か……」
「意外とそういうとこあるんやな、南雲ソウって」

「んな事より、俺達を呼び出した理由はなんだよ?」
 ソウの事などどうでもいいホウセンがコウヘ問う。
「そうだったね。実は用があるのは僕じゃない。とあるフリッカーに、赤壁杯で優秀な成績を残した君らを招集してほしいと頼まれてね」
「とあるフリッカー?」
「そろそろ来る時間だ」
 コウはスマートウォッチでチラリと時間を確認し、扉へ目を向けた。
 しばらくすると軽快に扉が開かれて、外から明るい髪色をした気さくそうな兄ちゃんが片手を上げて入ってきた。

「おいっす〜!おー、ほんとに集まってる!凄いなぁ、さすが遊尽コーポレーションの人脈だ!!」
 一同、『なんだこの軽いあんちゃんは……』と言った感じの冷ややかな視線を送るが、その中でリュウジ、ツバサ、ナガト、サクヤは目を丸くする。

「ま、まさか……」
「あなたは……!」

「「「GFCチャンピオン、正本ハジメ!?」」」
 見事に声がハモった。
 ハジメはその反応にニカっと白い歯を見せた。
「おっ、知っててくれたのか!嬉しいなぁ!」

「え、正本ハジメって、あの正本ハジメ!?」
「初めて見た……」
 姿形は見た事なくともその名前は知っているのか、ゲンジ達も驚きを見せる。
「そっ!GFC史上初、3年連続チャンピオンの正本ハジメとは、俺の事さ!」
 親指で自分を指し自画自賛する。
「な、なんでそのチャンピオンが俺達を……!」
「そりゃ、戦うために決まってるだろ?」
「チャ、チャンピオンがうちらへ直々に挑戦やて……!?」
「あぁ!赤壁杯の本戦見たぜ!ああ言う世界もあるんだなって思ったら、なんかウズウズしてな!それに……」
 ハジメがコウをジト目で見る。
「日程が赤壁杯と被ったせいで、今年のGFCは例年より規模が小さかったからな」
「これが経営戦略ですよ、チャンピオン」
 ハジメの嫌味に怯まずコウは言い返す。
「まぁ良いけどさ。とは言え、せっかくの引退試合だってのに去年からの因縁の相手が軒並み出てこないのはさすがに物足りないだろ?って事で、せっかくだから赤壁杯の強豪を集めてもらったってわけさ」
「な、なるほど……」
「でも、南雲ソウが来てないのは残念だな。一番会いたかったんだが」
「それは申し訳ない。僕も八方手は尽くしたんだが、何せ気まぐれな奴でね」
「まぁいいや、他の興味深いフリッカーは大体揃ってるし……当然、俺の挑戦受けてくれるよな?」
 ゲンジ達を一人一人見回しながら、ハジメは口元を緩ませた。
「はっ、面白いやないか!」
「あぁ!チャンピオンと戦えるなんて、こっちからお願いしたいくらいだ!!」
「俺も異存はない!」
 全員ハジメの挑戦を受ける返事をした。
「嬉しいねぇ!それじゃ早速指名させてもらうかな……関ナガト!最初は君とタイマンがしてみたい」
 ハジメが早速指名したのはナガトだった。
「っ!俺……?」
「GFCでも何度か戦った事はあったが、赤壁杯ではあの時よりもっと強くなってたからな。手合わせしてみたい」
「あぁ!望むところ!!」

 と言う事で、会議室の机を全て片付けて中央にフィールドを設置しバトルの準備をした。

「では、僕がレフェリーを務めよう」
 コウが対峙する二人の間に入り、スタート合図をした。
「3.2.1.アクティブシュート!!」

「行くぞ!マイティオーガ!!」
「さぁぶっ飛ばそうぜ!エンペラーガルディオン!!」

 ドンッ!!
 ハジメの放った黄金の鳳凰、エンペラーガルディオンが一瞬でマイティオーガの正面を塞ぎ、弾き飛ばしてしまった。

「なっ……!」

「マイティオーガ場外!残りHP2だ」

 一瞬の出来事に周りは騒然とする。

「なんだ、何が起こったんだ……?」
「ナガト君のオーガが、一瞬で……!」
「これがチャンピオンの力……!」

 ナガトはオーガを拾ってフィールドについた。
「相変わらず、凄いパワーだ」
「どうだ!恐れ入ったか!!」
「もちろん、ずっと恐れ入ってるさ」

 仕切り直しアクティブ。
「3.2.1.アクティブシュート!!」

「もう一度行くぜ!エンペラーガルディオン!!」
「恐れ入って、もう対策は考えてあるさ!!」
 バシュッ!!
 ナガトは重心をややズラしてシュート。
 カッ!
 オーガのサイドの角にガルディオンがヒットし、衝撃をいなす。そして、そのまま先手を取った。

「マイティオーガ先攻!」

「いくぞ!鬼牙二連斬!!」
 バキィ!!!
 ナガトの必殺技炸裂。あっさりとガルディオンをフリップアウトさせてしまった。

「エンペラーガルディオンフリップアウト!残りHP1!!」
 チャンピオン相手にダメージを与えた事で一同は沸き立つ。

「おぉっ、すげ!チャンピオン相手にダメージ与えた!!」
「やるやん!さすがナガトや!!」
「このまま行けるよ!ナガトくん!!」

 しかし、ナガトは緊張を解かない。
(いや、ハジメは圧倒的力で勝利する無敵のチャンピオンじゃない。どんな相手とも良い勝負した末に勝利する、まるで主人公みたいなフリッカーなんだ……!)

「いやぁ、まいったまいった!やっぱバリケード苦手なんだよなぁ」
 ガルディオンを拾ったハジメはピンチにも関わらずヘラヘラと笑う。
「でも、そうこなくっちゃ面白くない!」
 ギンッ!と一瞬でハジメの目付きが鋭くなった。
「……!」

 仕切り直しアクティブ。
「3.2.1.アクティブシュート!!」

「いけっ!マイティオーガ!!」
「追え!エンペラーガルディオン!!」
 ガッ!!
 今度はエンペラーガルディオンがマイティオーガを捉える。
「躱しきれなかった!?」
 ガッ、ガッ!!
 マイティオーガは弾かれながらもフィールド端で堪えた。
「威力を抑えれば、その分狙いに集中出来るからな」
 ハジメは人差し指をヒラヒラさせながら言う。
「そういう事か」
 普通は中指の方がパワーが出るのだが、敢えて人差し指を使ってパワーを抑える事で回避しようとするオーガを狙い撃ったのだ。

「でもどうにか耐えたぜ、ナガト!!」
「まだまだナガトの有利や!!」

(いや、違う。ハジメは敢えて俺を場外させなかったんだ……来る!)
 ナガトは気を引き締めてバリケードを構えた。

 ハジメは、スッと腕を引きながら構えた。
「それじゃ、俺も見せてやるかな……はぁぁぁぁ!!」
 気合を込めて、腕を突き出しながらシュートする。

「ブースターインパクトォォォォ!!!!」

「なに!?」
 バゴォォォォ!!!
 伝説の必殺技!その威力には耐えきれずオーガはフリップアウトしてしまった。

「マイティオーガ撃沈!正本ハジメの勝利だ!!」

「よっしゃ!俺の勝ち!!」
 無邪気に勝利を喜ぶハジメに、一同は呆然とした。
「い、今の技って、伝説の……あんなに使いこなしてる人初めてみた……」
「あっ!そう言えば思い出したで!確か正本ハジメって、段田バンの一番弟子だったやん!!」
「マジか!?それでブースターインパクトを!!」
「いやぁ、一番弟子って言ってもアレだけどな。FICS休止期間中にバン師匠が気まぐれで開いたフリックス教室の生徒に一番で登録されたってだけだけどな」
「それでも、段田バンの指南を受けてその技を使いこなしてるのは事実だし!3年連続チャンピオンになるのは納得って感じがするなぁ」
「まぁそれほどでもあるかなぁ〜、はははは!」
 そしてハジメのこの軽いノリにも納得がいく。十中八九バンの影響だろう。

「対策はしたつもりだったが、俺もまだまだだな」
「いや、良いバトルだった!それに、怪我も完治してるってのがハッキリして安心したぜ」
「え?」
「オヤジの腕もなかなかなもんだろう?」
「オヤジの腕って、まさか……」
「え、気付かなかったか?ナガトが入院した病院、俺のオヤジが経営してるんだぜ」
 衝撃の事実にゲンジ達は驚愕する。
「マジか……」
「世間って狭いんやな……」
「俺も一回は見舞いに行きたかったんだけど、あの時はGFC予選前で忙しかったからさ。でもこうして戦えてよかった」
「ハジメ……」

「さて、どんどんやろうぜ!次は、そうだなぁ……あ、そうだ!四聖獣フリックスっての気になってたんだよなぁ!ソウがいないのほんと残念だけど、他の三人でまとめて来てくれ!!」

「うぇ、3vs1!?」
「さすがにそれは不利なんじゃ……!」
「随分と舐めた事言うな、チャンピオン」
「あ、いや、さすがにそのまま3vs1は俺もキツいって!ハンデとして、俺はHP6でやるってのはどうだ?君らはHP3でターンはチームメンバー共有って事で」
 HPの数値を弄れば人数による不公平さは無くなる。
「うーん、それでもまだ俺たちの方が有利なような」
 HPの合計値で言えばハジメの方が少ない
「細かい事は気にしない気にしない!赤壁杯で培ったチーム戦の強みってのを見せてくれ!」
「まぁいいか。フリーバトルみたいなもんだし。ケンタ、ホウセン、頑張ろうぜ!」
「うん!」
「へっ、足引っ張んなよ!」

 早速四人がフィールドにつき、バトルスタート。

「3.2.1.アクティブシュート!」
 四体のフリックスが入り乱れるように放たれる。

「ブチかませ!ブロッケンシェルロード!!」
 血の気の荒いホウセンが真っ先に飛び出してエンペラーガルディオンを狙う。
「甘いっ!」
 ガッ!
 エンペラーガルディオンは真っ向からシェルロードの攻撃を受け止め、逆に弾き飛ばしてしまった。
 シェルロードはそのまま場外。ルールはチーム戦なので、ホウセンはシェルロードをスタート位置に戻して復帰する。

「バカな……!」
「シェルロードと真正面からやり合って、打ち勝つなんて」
「ふぅ、凄いパワーだ。驚いたな」
 さすがのハジメもホウセンのパワーには苦戦していたようで一息ついた。
「もしかして君は格闘技か何かやってる?」
 ハジメがホウセンに聞いた。
「は?あ、あぁ、なんで分かった……!」
「やっぱり。その腕の使い方からまさかと思ってさ。でも、格闘技の殴打は基本回転運動だから、シェルロードみたいな機体を使う時はもっとストレートを意識した動きの方が良いぜ!」
「余計なお世話だ」

 先攻はバン達だ。
「いっけぇ!バイティングクロー!!」
 ケンタは必殺技でガルディオンへアタック。そこそこ弾き飛ばせるが、場外には至らない。
「惜しい!」
「ごめんゲンジさん届かなかった!」
「いや、あとは俺に任せろ!!」
 バシュッ!
 今度はゲンジがスピンシュートしてマインヒットを決めた。
「やった!」
「ケンタがあそこまで弾き飛ばしたおかげだぜ」
「けっ」
 ホウセンは機体を中央まで移動させてターン終了。

「なるほど、ケンタは力の出し方が上手いな。けど、まだ身体が成長途中だからあまり無理すると骨を痛めるぞ。カルシウムはしっかり取った方がいい」
「え、あ、はい……」
「ゲンジは、バランス良く鍛えられてる。自己流じゃこうはいかないから、トレーナーに恵まれてるな?」
「はは、まぁね」
 ゲンジはチラッとリュウジを見ると、リュウジもふっと微笑んだ。
「それにしてもシュート見ただけでここまで分かるなんて」
「これでも医者の息子だからな!人体の構造はお見通しさ!」

「なるほど、それで段田バンの指導も効率よく自分のものにしていけたのか……」
 リュウジはハジメの強さに合点がいった。フリッカーとして頂点に立った段田バンの直接的な指導に、人体への深い造詣が加わる事で、凄まじい相乗効果を発揮したのだ。

「そんじゃ、次は俺の攻撃だ!」
 バキィ!!
 ハジメは迷わずドラグナーを狙い場外へぶっ飛ばす。
「うわっ!くそぉ、いきなりフリップアウトかよ……!」
「悪く思うな!多人数相手には数を減らすのが鉄則だ!優勝者の君は真っ先に潰れてもらう!」
「そうは行くもんか!」
 ゲンジはドラゴンヘッド、ドラゴンランス、グリップ、クローを全て展開させた。

「いっくぞぉ!!ドラゴントリニティフルバースト!!!」
 全ての力を解放させた大技を放つ。
「っ!これは……!」
 バキィィィ!!!
 そのパワーに、エンペラーガルディオンは大きく飛ばされて場外する。
 が、勢い余ってドラグナーも自滅してしまった。
「あーーー!!!!」
「はははは!パワーは凄いけど、自滅しちゃ意味ないぜ!」
「くぅぅ、まだ完全に使いこなせてないか……。悪い、二人とも」
「何やってんだよ」
「ううん、ゲンジさんはマインヒット決めてくれたし!あとは僕らで頑張ろう、ホウセンくん!」
「まっ、負けるのは性に合わねぇしな!」

 ガルディオンはまだ場外から復帰していないので、ケンタとホウセンは機体を防御しやすいよう移動させた。

「防御フォーメーションか……こりゃ、厄介だな」
 ハジメはとりあえずマインを弾き飛ばしながらバイフーを攻撃。マインヒットは決まるものの、ビクともしない。

「いくぜ、ケンタ!」
「うん!」
 バッ!
 ホウセンとケンタは縦一列のフォーメーションでシュートした。

「喰らえぇぇ!ブロッケンボンバー!!!」
 バゴォォォォ!!!シェルロードのバネギミックが発動する。
「受け止めろ!タイガークローディフェンス!!」
 ガッッッッッ!!!
 バイフーがシェルロードの反動をグリップクローで受け止める事でシェルロードのパワーを相手へ伝える。
「なんて息の合ったコンビネーションアタックだ……!」

 バキィィィ!!
 エンペラーガルディオンはあっさりと場外してしまった。
 これで残りHP3だ。

「ちぇ、こりゃこっちもアレ使わないと厳しいかな」
「?」
 ハジメのターン。スタート位置に機体を復帰させてシュートの構えを取る。
「フリップスペル!『エクステンド』発動!」
 そして、スペルの発動を宣言した。
 敵機へダメージの発生しないシュートをした後に30g以下の追加パーツを装備できるスペルだ。

「エクステンド!?って、バッフローが使ってた奴か!」
「でも、ハジメはこれまでの大会で使った事ないぞ……!」

「これが俺のとっておきさ!」
 バシュッ!!
 まずは通常シュートで距離を離す。
「キングアーマー装着!!」
 エンペラーガルディオンにパーツが追加され、更に強固な形状になる。攻撃力も防御力も格段に高そうだ。
「な、なんて機体だ……!」
「ただそこにあるだけで神々しいオーラを感じる……!」
「こんな隠し球があったなんて」

「まぁ、とっておきすぎて出す前に引退しちまったんだけどな!出す機会があって良かった」

「それがどうした!ぶっ飛ばすぞ、ケンタ!!」
「うん!」
 再び先程と同じような縦列フォーメーションで攻める。
 バキィィィ!!
 息の合ったコンビネーションアタック。しかし、そこそこしか弾き飛ばせなかった。

「っ!硬い!!」
「ちぃ!」

「それじゃ、決めるぜ……キングブースターインパクト!!!」
 増加した重量をものともしないブースターインパクト!
 100g近い機体が猛スピードで迫り、シェルロードとバイフーをフリップアウトした。

「くっ!」
「そんなっ!!」

「シェルロードとバイフー同時に撃沈!勝者は正本ハジメだ!!」

「くぁぁ〜!3人がかりでも勝てないのかぁ!!!」
「さすがチャンピオン……」

 バトルが終わり、四人は機体を回収してフィールドを離れる。
「いやぁ、いいバトルだった!さすがは遊尽コーポレーション製の機体だ」
「けっ、嫌味ったらしいな」
「マジだって!ゲンジの大技は凄かったし、ホウセンとケンタのコンビネーションにも驚いた!ってか、二人が違うチームなのが不思議なくらいだ!」
ハジメにコンビネーションを褒められ、ケンタとホウセンは顔を見合わせた。
「でも、まだまだ伸び代はあるって感じだな。特にホウセン、君は我流が強すぎるから、一度ちゃんとした組織で訓練した方がいい」

「冗談じゃねぇ。そんな金ねぇし、やる気もねぇよ」
 今ホウセンは絶賛失業中だ。生活の余裕はない。
「別に今すぐってわけじゃないんだ。それに、ホウセンだけじゃない、えっと、つまり……」
 ハジメは少し間を置いて言った。
「皆、俺の弟子になる気はないか?」
 その言葉に、一同一瞬思考が停止し、そして素っ頓狂な声を上げた。

「「「はぁぁぁぁ!!!??」」」

「ちょ、え、どう言う事!?」
「で、弟子!?あのチャンピオンの弟子になれるんか!?」
「ちょっと、詳しく説明をお願いします!」

「あぁ、悪い悪い!えっ、とだな……俺、今年でジュニア部門は引退になるだろ?んで、プロ目指そうにも、親から病院継ぐように言われててさ。それで、なら病院をフリッカー専用のスポーツ外科にしちまおうと思ってさ。そこに医療方面からフリッカーを強化する訓練場も併設させる予定なんだ」
「え、そんな親の病院を勝手に」
「継げば俺のものなんだから、好きにしたっていいだろ。な、社長代理さん?」
 ハジメがコウヘ同意を求めると、同じような立場であるコウは頷いた。
「まぁね」
「それに、3年連続チャンピオンになって思ったんだ。自分が頂点に立ち続けるよりも、より多くのフリッカーを頂点へ育てた方がフリックス界への貢献度は大きいって。バン師匠が自分にしてくれたように」
「な、なるほど」
「スポーツ外科に関してはまだ難しいけど、医大に受かる成績を維持するって条件で訓練場は作ってもらえることになった。んで、その最初の生徒に君達を勧誘したいんだ」
 ハジメの思想の素晴らしさは分かるし、悪い話ではないのも確かだ。
 しかし、ゲンジ達は素直に頷けなかった。

「うーん、いきなり言われてもなぁ」
「せ、せやな、悪い話やないんは分かるけど」
 答えを出し渋っている事を察し、ハジメはフォローした。
「まぁ、いきなりってわけじゃない!頭に入れておいてもらえればいいさ。それよりもっとバトルしようぜ!次は、誰がいいかな……!」

 と、話は一旦保留となり、ハジメとのバトル会は大いに盛り上がり幕を閉じた。

 ……。
 ………。

 それから更に数週間後。
 成都小学校は朝の喧騒に包まれていた。

「た、た、た、大変や〜!!!」
 そこへ、ツバサがスマホを片手に教室に入り、屯しているゲンジ達へと駆け寄った。
「なんだよツバサ、朝からうるさいな」
「これが静かにしてられるかい!見てみぃ!!」
 ツバサはゲンジの顔へ押し付けんばかりにスマホ画面を見せつけた。
 そこにはフリックス関連のニュースが載っている。

「なんだこれ?海外のフリックス大会?」
 どうやら、海外で行われているフリックス大会のニュースらしいが……。
「よう見てみぃ!!」
「なになに……なに!?」

 そのニュースは、音信不通となっていた南雲ソウが海外の大会に突如現れ、荒らしまくっていると言うものだった。
 彗星のように現れた一人の日本人が圧倒的な力で各国の大会を優勝しまくっている、と言うだけでも十分なニュースなのだが。
 それ以上に、相手の機体を破壊しまくって勝利していると言うのが物議を醸しニュースになっているらしい。

「ソウが、海外で、相手の機体壊しまくってる……?」
 情報量が多過ぎて訳が分からない。
「バトル動画もあるで!」

 スマホに動画を映す。
 そこには、これまでのソウの戦い方とは明らかに違う、猛々しい乱暴な戦いで難なく敵の機体を破壊しまくるソウの姿があった。

「そんな、ソウがこんな戦い方をするなんて……!」
「しかし、カイザーフェニックスにここまで破壊力があるのか……?」
「待って!ソウ君の使ってる機体、カイザーフェニックスじゃない……!」
 ユウスケが画面端に映っているソウの機体を見て言う。
 そのフォルムはフェニックスのようだが、それとは違う禍々しい形をしていた。
 そしてそれは、ゲンジとナガトにとって見覚えのあるものだった。

「ゲンジ、これは……!」
「あ、あぁ……!」

「「デザイア……!」」

 同じ頃別の場所。
 ゲンジと遊尽コーポレーションにいるコウの台詞が被った。
 コウもこのニュースに驚愕している。
「何故ソウがデザイアを……!まさか、タツヤが……!」
 危機を察したコウは立ち上がり、外出した。

 ……。
 ハジメの父が勤める病院の一室。
 そのベッドで神宮タツヤが虚な瞳で上半身を起こして窓の外を見ていた。

 コンコン……と優しいノックと共に扉が開かれる。
「神宮君、お友達が面会に来ましたよ」
 若い看護婦さんがコウを連れて部屋に入った。

「タツヤ……ずいぶん探したよ。まさかここに入院していたとはね」
 コウがベッドへ近づくと、タツヤはゆっくりと首を向けた。
「コウ……」
「病人に負担はかけたくないが、いくつか聞きたい事がある。ソウとデザイアは……」
 その名を呟いた途端、タツヤは大きく取り乱した。
「違うううう!!!」
「っ!」
 頭を抱え、何度も首を振る。
「違う!ちがうちがうちがう!!!」
「な、なんだ!?どうしたタツヤ!!」
 コウが必死に宥めるが、タツヤの興奮は収まらない。
「あんなものは!あんなものはデザイアではない!!違う!ちがうちがうちがう!!!」
「神宮くん!落ち着いて!」
 コウを押し退け、看護婦さんがタツヤの介抱をする。
 その姿を側から見る事しかできず、コウは困惑した。

「い、一体、何が起こってるんだ……!」

 

   つづく

 

CM

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