弾突バトル!フリックス・アレイ FICS 第82話「急げ!新ヴィクター開発!!」

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第82話「急げ!新ヴィクター開発!!」

 

 デウスリベンジャーズとの試合で傷ついたヴィクターを抱えて、バン達は研究所へ駆け込んだ。
 伊江羅はヴィクターを機械にセットして分析をする。

「ど、どうだ伊江羅博士?ヴィクターは直りそうか??」
「少し静かにしていろ」
 伊江羅は真剣な表情でキーボードを叩き、作業を続ける。
 しかし、暫くして手を止めて息をついた。
「……これは酷いな。外から見える傷だけじゃなく内部にも亀裂が無数に走っている。ここまで破損しては、修復は難しい」
「そんなっ……」
 まさに死刑宣告にも等しい伊江羅の言葉に、バンは絶望する。
「無茶するからだ」
「でも、バンは私達を守って勝つために戦ったんだよ」
「だが、それで再起不能になってちゃ世話ないだろ。何か手は無いのか?」
 ザキは悪態を吐きながらも心配はしているようで、伊江羅へ話しかけた。
「……無い事はない」
「ほんと!?」
「あぁ、修復ではなく新型を開発する。それしか手はない」
「新型か……」
「だが、ビートヴィクターは元々ヴィクターの持つポテンシャルを最大限活かして開発した機体だ。それを超えるとなると、そう簡単にできる物ではない」
「へっ、やってやる!!ヴィクターを甦らせるためならな!!」
「でも、次の試合までに間に合うかな?」
「ギリギリだろうな」
「それでもやるしかねぇ!!皆、手を貸してくれ!!」
「うん!」
「仕方ねぇ」

 こうして、ダントツウィナーズは新ヴィクターの開発に勤しんだ。
 ビートヴィクターの魂を受け継ぎつつ、更に進化させた機体。
 並大抵のものではないが、皆でアイディアを出し合ってようやく設計が完了。
 開発スタートしてから数日後。ようやく試作品の完成に漕ぎ着けた。

「これが、新しいヴィクター」
 まだ未塗装の新機体を手にするバン。
「形はそこまで変わってないね」
「あぁ、元々ビートヴィクターは完成度が高い。改めて設計を見直し、徹底的にブラッシュアップしたのがその機体だ」
「へへ、すげぇ力を感じるぜ!」
「おい、いいからとっととテストするぞ。さっさと完成させねぇと、試合に間に合わねぇ」
 フィールドの前でザキがイラついている。
「あぁ、わりぃわりぃ」
 ザキに急かされて、バンもフィールドについた。
「いくぜ、新しいヴィクター……」
 バンとザキがシュートの構えを取る。

「「3.2.1.アクティブシュート!!」」

 バシュッ!!
 二つのフリックスが正面衝突する。
 バキィィィ!!!
 ダークネスディバウアが一撃で吹っ飛び、場外する。
「なに!?」
「す、すげぇ……!」
「いままでのヴィクターよりも、数段上の攻撃力……!」
「ブラッシュアップするだけでここまで性能を引き出せるのか……!」

 新ヴィクターの性能に感動する一同だが……。
 ピシピシ……パキィィン!!!
 ヴィクターから亀裂が走り、粉々に破裂してしまった。

「あぁ、ヴィクター!!」
 慌てて欠片を拾うが、もう遅い。
「……失敗か。出力を高めた分、素材が持たなかった」
「じゃあ、素材に合うように設計を見直せば……」
「さすがにその時間はない。それに下手にデチューンすれば、ビートヴィクターよりも性能が下がる危険性もある」
「俺も、今のシュートで確信した!こいつは絶対に最強のフリックスになる!絶対に完成させるんだ!」
「だがどうする?何か手はあるのか?」
「それは、無いけど……」

 手詰まりだ。
 一同、しばらく思案するが良い案は出てこない。
 その時、コンピュータのモニターが歪み、人の顔が映された。
 映っているのは藤堂レイジだった。

「話は聞かせてもらったよ、ダントツウィナーズの皆!」
「れ、レイジ!?なんでお前……!」
「え、ハッキングしたの……」
「正確にはクラッキングだよ☆と言うか、藤堂家もFICSに関わってるからクラウド共有されてるだけなんだけど……ってそれよりも、素材に困ってるみたいだね」
「あぁ、そうなんだ。なんか良い素材ない?」
「もちろん!そのために連絡したんだ!」
「マジか!」
「早速、汚れても良い格好でこの場所に来て!」

 ……。
 ………。
 レイジに指定された場所、それは千葉県市原市田淵1898だった。
 ここはチバニアンが発掘された歴史的に超スゴい場所である。

「おっ、やっと来たか!待ちくたびれたぞ」
 その場所にはレイジだけじゃなく、剛志と、そしてユーロフリッカー騎士団もいた。

「剛志!……はともかくとして、ユーロフリッカー騎士団までいるのか!?」
「我々も、機体の修理に手間取っていてね。そんな時、レイジに素材発掘を提案されたのだ」
「素材発掘?」
「そう!ここはチバニアンが調査された場所ってのは知ってるよね?ここの地層な特殊な磁場を纏っているみたいで、それをフリックスに応用すれば凄い素材になる事が判明したんだ!」
「それで汚れても良い格好って……」
「とは言え、良い素材になる土はごくごく限られてるから、精査するのが大変なんだけど」
「なんだって良いぜ!とりあえず、掘って集めて調べりゃ良いんだろ!ヴィクター開発のためだ!なんだってやってやる!!」

 バンは早速バケツとスコップを手にして土の採集を始めた。
「さすがバン。それじゃあ、採取した土はこの機会に入れて。素材になるものとならない物が振り分けられるから」
「おう!!」

「……重機じゃダメなのか?」
 ザキが最もな疑問を抱く。
「フリックスの素材に使える磁場を纏った土はかなり繊細で、あまり強い負荷を与えると効力が減っちゃうんだ」
「仕方ないね。私たちも頑張ろう」
 リサ達もバンに続いて採集を続ける。

 しかし、どれだけ採集しても振り分けられる量はほんの僅かだ。

「くぅぅぅ!こんだけやってこれっぽっちかよ!!ケチくせぇな、チバニアンは!」
 チバニアンに文句言っても仕方ない。
「弱音を吐くなんてらしくないな、段田バン」
 そんなバンへアドルフが話しかけた。
「別に弱音ってわけじゃ。ってか、らしくないって言えば、ユーロフリッカー騎士団も土いじりするイメージないよな」
 騎士団と言えばもっと華やかなイメージだ。顔を泥だらけにして作業するのはどうも違和感がある。
「フッ、騎士はそんなに綺麗な物じゃないさ。血と汗と泥に塗れ、命を守るために命を奪う……そんな戦いの歴史から存在するものだからな」
「まぁ、それもそうか」
「それに、我が魂とも言えるフリックスを蘇らせるためならどんな事も耐えられる。君もそうだろう?」
「当然だぜ!ヴィクターのためだったらなんでもやってやる!!うおおお!!絶対に蘇らせてやるからな、ヴィクター!!」

 アドルフとの会話で俄然やる気が出たのか、バンは気合を入れ直して作業を進めた。
 その時、バンとリサの持っていた勾玉が仄かに輝き出した事には気づかなかった。

 

  つづく

 

CM

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