第73話「迫り来る刃!デウスリベンジャーズの恐怖」
研究所。
ダントツウィナーズは伊江羅博士を前にしてミーティングをしている。
「次の対戦チームが決まった」
「おっ、どこだどこだ!?」
「……デウスリベンジャーズた」
伊江羅博士は少し間を置いて言った。
「デウスリベンジャーズ……」
そのチーム名を聞いてあからさまに雰囲気が緊張感のあるものに変わった。
「あいつらか」
「謎の多いチーム……気を付けないとね」
「予選からこれまでの、奴らの対戦した試合の動画を入手した。少しでも参考になればいいが」
伊江羅博士はモニターに動画を映し出す。
南アメリカ予選、そしてFICSでのこれまでの試合。
勝敗は別としてデウスリベンジャーズの試合は何かしらトラブルが発生している。
しかし、デウスリベンジャーズ自体が何か不正をしたようには見えない。
「……やっぱり、破損してる機体は多いね」
「でも、あいつらがなんかしてるようには見えねぇよな」
「まぁ、動画を見ただけで分かれば、とっくの昔に出場停止処分は受けている。ここまで参戦出来ていると言う事は、そう言う事だ」
「それは、まぁ……」
「そうだ!ザキだって昔いろんな機体ぶっ壊して来たんだし、なんか分かんねぇか?」
少々無神経な質問だが、ザキは全く気にせずに答える。
「俺のとは違うだろ、ああいうのは」
「そっか、ザキのはあくまで力が有り余った結果って感じだもんなぁ」
「とにかく、我々も目を光らせるが、奴らの不正発覚は期待出来ない。そのつもりで挑むんだ」
「はい」
「まっ、やるしかねぇよな」
……。
………。
そして、試合当日。千葉市緑区昭和の森。
森林浴にぴったりなこの広大な公園が今回の舞台だ。
隣にはホキ美術館が隣接しており、美術館で芸術的インスピレーションを得たのちに散歩をするのに適している。
芸術の生まれる地、千葉にふさわしい名所である。
「う〜ん!気持ち良いとこだね、バン」
木漏れ日を身体いっぱいに浴びながらリサが大きく伸びをする。
「そうだな!……これで相手がデウスリベンジャーズじゃなかったらもっと楽しめるのになぁ」
「なんだ、一丁前にビビってんのか」
「しょ、しょうがねぇだろ!相手は何してるのか分からない奴らなんだぞ」
「関係あるか。先にぶっ潰しちまえば何してこようが同じだ」
「そ、そりゃそうだけどさぁ!」
そんな言い合いをしているところへ数人の少年たちが近づいてきた。
「相変わらず賑やかだな、ダントツウィナーズ」
「お、お前ら!」
ユーロフリッカー騎士団とデザートハンターズだった。
「バン!応援に来マシタ!」
「分かっていると思うが、デウスリベンジャーズはまだ謎が多い。気をつけるんだ」
「なんだぁ?敵に塩を送る気か?」
「フッ、君らは敵ではない、ライバルだ。だが、奴らは……」
アドルフは遠くにいるデウスリベンジャーズを見て神妙な顔になる。
「ともかく、健闘を祈っている」
「絶対に勝ってくだサイ!!」
エールを送り、ユーロフリッカー騎士団とデザートハンターズは去っていった。
……。
………。
そして、試合開始時間となる。
『さぁ、芸術の地!この昭和の森で行われる戦いは、ダントツウィナーズVSデウスリベンジャーズだ!!』
「良いバトルをしようぜ、ダントツウィナーズの皆」
アルベルトがわざとらしい笑みで手を差し出す。
「誰が握手なんかするかよ!お前らには絶対に負けねぇ!!」
「そうか。ホームなんだから心象は良くしたほうがいいぞ、日本代表さん」
バッ!
リサが横からアルベルトの手を取る。
「……私達は、どんな手にも屈しないからね」
「せいぜい頑張りな」
そして、両チーム準備を整える。
『では、始めるぞ!3.2.1アクティブシュート!!』
バシュウウウウウ!!!
フィールドで複数の機体が激突する。
『先手を取ったのはダントツウィナーズだ!!』
「先手必勝で行くぞ!ダークホールジェノサイド!!」
ザキが初っ端必殺技を繰り出し、一気に敵機をフリップアウトさせようとする。
しかし……。
シャキンッ!!
鋭い金属音が聞こえたかと思ったら、ダークネスディバウアのアームの一部が切り取られ、場外してしまった。
「なんだと!?」
『おおっと!アクシデント発生!攻撃を仕掛けたはずのダークネスディバウアが逆に破損して自滅!!メンテ不足が祟ったのか!?』
「ザキ!」
「ちぃ……!」
「バン、ここは迂闊に手を出せないよ」
「くそ、あいつらいきなりやりやがった!」
バンとリサは派手に動く事が出来ずちょん押しする。
そして仕切り直しアクティブ。
『3.2.1.アクティブシュート!!』
「切り裂け!イービルリッター!!」
「くっ、躱せ!ヴィクター!!」
心理的に攻め込めなくなったのか、バンとリサは相手から避けるようにシュートする。
「やれぇ!ディバウア!!」
ザキは気にせず強シュートするが、破損によってバランスが崩れてうまく進めない。
『さぁ、今回先手を取ったのはデウスリベンジャーズだ!』
「おらぁ!!」
カーーン!
アルベルトは破損してフィールドに置いたディバウアのカケラを容赦なくフリップアウトさせる。
「てめぇ……!」
「何か問題でもあるか?」
「へへへ」
「俺たちも行くぜ」
シュンッ!シュバァ!!
他のメンバーもバン達を攻撃する。
「ヴィクター!」
「ウェイバー!!」
攻撃された部分にクッキリと切り傷が付いている。
「くっ!よくも……!」
「俺達が何かしたか?お前らと同じフリックスで攻撃しただけだぞ」
「それでこんな傷がつくわけ……!」
「言っておくが、俺達はちゃんとオフィシャルのチェックを受けて参戦してるんだ。運営を信頼してるなら変なイチャモンはよすんだな」
「ぐっ!」
「バン。バンは下がってて」
「リサ」
スッとリサが前に出てシュートする。
シュンッ!バチィン!!
フリップマインを弾いてアルベルトのイービルリッターへダメージを与えた。
「てめっ、何しやがった!?」
「直接触れなくても攻撃はできる。それがフリックスだよ」
「は?そうかよ。だったら次はお前だ!」
リベンジャーズのターン。
三人は一斉にリサへ狙いを定める。
「オラァ!!」
シュバァァァ!!
「きゃああああ!!」
一人目の攻撃、クッキリとウェイバーへ深い切り傷が残る。
「うぅ……」
「いくぜぇ!!」
バキィィィ!!
二人目の攻撃でウェイバーの片側のウイングが折れる。
「あぁぁ!!」
「リサ!!」
「はははは!!これでトドメだ!!」
「いやああああ!!!」
アルベルトの攻撃が迫る。これを受けてはひとたまりもないだろう。
「やめろおおおお!!!」
シュン!!
バンが咄嗟にステップでウェイバーの前にヴィクターを移動させる。
バキィィィ!!!
二人で攻撃を受けたため、破損はだいぶ和らいだがそれでも一気に2機ともフリップアウトしてしまった。
『決まったああああ!!!圧倒的強さを見せつけて、勝ったのはデウスリベンジャーズだ!!!』
「ひゃはははは!焦らなくてもじっくり料理してやるってのによ、無駄な事したな!」
「無駄な事してんのは、お前らなんだよ……!」
「なに……?」
バンとアルベルトが睨み合う。
「覚悟しとけよ。散々フリックス舐めてきた事、後悔させてやるからな」
ザキも凄みを効かせながら脅しを入れると、アルベルト達はフンと鼻で笑った。
「負け犬の遠吠えはみっともないぜ」
そして、高笑いしながら去っていった。
「あの野郎……!」
「バン、ありがとう。さっき守ってくれて」
「あ、あぁ。当たり前だろ。次は絶対勝とうぜ」
「うん……!」
つづく
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