第54話「代表を掴み取れ!VS洗濯バサミ!!」
FICS日本代表選抜戦大会。
バン達は順調に勝ち上がっていた。
「いけっ!レッドコーパスルR!!」
「ぶっ飛ばせ!ビートヴィクター!!」
「プロミネンスドリフト!」
「かわしてくれ!ブラックグース!!」
「ウィザード!爆裂魔法!!」
「耐えるんや!プロトドラグセイバー!!」
「スイフト!」
「スカーレッドスネーク!!」
様々な強豪フリッカー達が鎬を削っている。
その中で注目度の高い一戦があった。
レイジと操の戦いだ。
「ファントムレイダー!!」
「カラミティデスガラン!」
受け流し形状でどうにかデスガランの攻撃を回避しようとするレイダーだが、デスガランの不規則な動きに対応しきれず、ついにマインヒットして撃沈。
「あぁ、躱しきれないなんて!」
「フッ、悪いな。カラミティデスガランの動きは俺ですら予測不可能だ」
様々な機体を乱雑に取り入れている上に、ザキに壊されてから修復したばかりだ。動きはより不規則になっているだろう。
「僕の負けだ、強いね」
「いや、今回はたまたまだ。またバトルしよう」
「うん!」
レイジと操は固く握手をした。
次なる注目の一戦はバンとゆうのバトルだった。
「いっけぇ!ビートヴィクター!!」
「受け流せ、シュレッドサタン!!」
アクティブシュートで激突する二機。
『シュレッドサタン、見事な受け流しで先手を取りました!』
「このバトルに勝って、必ずリサ先輩やザキ様と世界に行く!イービルスライサー!!」
シュレッドサタンは全身掬い上げボディを活かしてビートヴィクターへアタックする。
「堪えろ!!」
ガッ!
しかし、バンはこれをバリケードで耐えた。
「た、耐えられた!?」
「いっくぜぇ!ブースターインパクト!!」
バキィ!!
必殺の一撃でシュレッドサタンを難なくフリップアウトさせた。
『決まったぁ!バン君の凄まじい一撃によってシュレッドサタンは撃沈!!』
「おっしゃぁ!!」
「……さすが、GFC優勝者。僕もまだまだか」
「へへっ、けどお前も強かったぜ!さすがリサの後輩だ」
「……バンくん、リサ先輩やザキ様と必ず世界の頂点を勝ち取ってください!」
「ああ!あったりまえだぜ!!」
思わぬ対戦もあった。
それは剛志と琴井トオルのバトルだ。
「砕け!グランドギガ!!」
「シールドセイバー、シールドスルー!」
剛志の強烈な攻撃をシールドセイバーが受け流しで自滅させる。
『おおっと!琴井トオル君、GFC準々優勝の武山剛志君の自滅を誘って撃沈!見事に勝利だ!!』
「な、バカな……!」
「ふふん!これが有名デザイナー、ユウメイジ氏のデザインしたフリックスの力さ!」
トオルは気障ったらしく髪をかき上げるとそのまま去って行った。
「剛志〜、残念だったね……」
敗北した剛志の所へ、レイジがやってきた。
「おう、レイジ。世界へ行くどころか、日本の広さを改めて思い知った感じじゃな」
「剛志と一緒にFICSに出たかったけど、そんなに甘くなかったね」
「まぁ、ここで勝ち上がった所でザキ様に勝てるとは思えませんが」
と、剛志とレイジへ話し掛ける声が聞こえ、その方を向いたら3人の少年がやってきた。
「お前らは」
「三武将……」
スクール三武将のユウタ、ゲンゴ、イツキの三人だった。
「やっ、久しぶりだね」
「しかし、さすがは琴井コンツェルンの御曹司。ただの金持ちのボンボンではなかったようですね」
「オデもあいつにやられたんだな」
「ゲンゴは僕やイツキより勝ち上がったんだから、やられてほしくなかったんだけどなぁ」
「悪かったんだな」
ベノムエロシオンもグランドギガも受け流し能力の高い機体は大の苦手だ。それが初見の相手ともなれば尚更相性の悪さが響く。それが今回の敗因だろう。
「ガハハハ、まぁお互いフリックスの奥深さを思い知ったっちゅうことじゃ!FICS以前に、もっと強いフリッカーと戦って腕を磨かんとな!」
「そうだね。そうだ!どうせもう負けちゃったんだし、このあとみんなでバトルしようよ!」
「いいね!やろう、剛志!」
「じゃな!」
しがらみもなくなりすっかり仲良くなった5人。まだ決勝までは時間があるしと会場を出てフリーバトルコーナーへ向かった。
そして、更に大会は進み……。
『さぁ、いよいよAブロックの決勝戦だ!勝ち上がったのは、やはりやはりこの男!GFC優勝者の段田バン君!対するは、千葉県野田市に店を構える由緒正しき洗濯バサミ専門店センバ屋の後継者!仙葉タクミ君!!』
バンと、ウサギを頭に乗せた少年タクミが対峙する。
「タクミー!頑張ってーー!!」
「センバ屋の名に恥じない戦いをするんだぞーー!!!」
観客席からタクミの両親と思われる二人の男女のけたたましい声援が聞こえる。
「パパ、ママ、張り切りすぎだよ……恥ずかしいなぁもう。でも、初めての大舞台なんだ!頑張るぞぉ!」
「ぶひ!ぶひ!」
『決勝戦は上級アクティブバトルで行う!精魂尽きるまで存分に戦ってくれ!!』
ドローンが飛んできて、バンとタクミに特殊な光学アーマーを装着させる。
「あれか……!上等だぜ!」
「僕だって、上級アクティブはトオル達と散々練習したんだ。負けないぞ!」
既に上級アクティブは一般層にも知れ渡ってはいるようで、タクミも問題なく了承した。
『では、二人とも準備はOKだな?』
フィールドにマインと機体をセットし、準備は万端だ。
『そんじゃいくぜ!3.2.1.アクティブシュート!!』
「いけっ!ビートヴィクター!!」
「頼んだよ!サミン!!」
ストレートに突っ込むヴィクターに対して、サミンはそれを躱し、フィールドの端へ着地した。
「げぇ!?かわされた!!」
バンもさすがに学習したのか、初見相手に無闇に全力シュートはしなかったので自滅はしなかったが、先手はタクミだ。
「よーし、練習どおりだ!いっけぇ!!」
バシュッ!
サミンの一撃がヴィクターへヒット、そのままバウンドしてマインに当たった。
『マインヒット3ダメージ!ビートヴィクター残り12だ!』
「このっ!」
バシュッ!
バンも反撃してフリップアウトを狙うが……。
「受け流せサミン!」
距離が遠すぎたせいで威力が落ちたのもあり、サミンは洗濯バサミの弾力で攻撃を受け流しで衝撃を減らす。しかし、それでもマインには当たってしまった。
『タクミ君もマインヒット!これでお互いに残り12!このままダメージレースになってしまうのか!?』
「あの洗濯バサミ、戦い辛れぇ!!」
「当然!なんたって、僕のパパ特製の洗濯バサミなんだから!」
観客席ではパパとママがチャッカリ宣伝活動していた。
「私どもは、由緒正しき本物の洗濯バサミを取り扱っております!」
「お求めはセンバ屋にてよろしくお願いします〜!」
商魂逞しい両親をちょっと恥ずかしく思いながらも、タクミは自信を持ってバンを見据える。
「いけっ!」
タクミは再び難なくバンをマインヒットする。
これで残り9。
「おもしれぇ!絶対にぶっ飛ばしてやるぜ!!」
バンも負けじと反撃するが、それでもマインヒットが精一杯。
『さぁ、ジリジリとダメージレースが続いて、お互いにHPは9!ここから大きな展開は起こりうるのか!?』
「ここだ!」
バッ!
タクミはビートヴィクターの横っ腹へ攻撃。
フロントを伸ばしていたヴィクターは、その先端を穴の上に被せながら停止した。
「なっ!」
『おおっと!ビートヴィクターがフリップホールに落ちた!!一部場外なので5ダメージ!ここで一気に展開が動いた!!』
これで残り4。いきなり大ピンチだ。
バンのターン。ヴィクターは場外したためアクティブシュートになる。
「くっそぉ、やられた……!でもまだまだ逆転出来るぜ!!」
「あともう少しだ。頑張るぞ、サミン!」
『そんじゃ、仕切り直しいくぜ!3.2.1.アクティブシュート!!』
「いけぇ、ビートヴィクター!!」
「跳べっ!サミン!!」
場外させてやろうと勢いよく突っ込むヴィクターに対して、サミンはジャンプでそれを躱した。
「げぇ、飛んだ!?」
「よしっ!」
『なんとぉ!ビートヴィクター自滅で2ダメージ!!残り2!後がないぞバン君!』
「くっ!」
『さぁ、驚きの展開となりました!GFCに優勝し、問題なく日本代表に選ばれると思われた段田バン君ですが、まさかまさかの大ピンチ!大番狂わせは起こってしまうのでしょうか!?』
「くそぉ、こんな所で負けてたまるか!」
『それでは、いきます!3.2.1.アクティブシュート!!』
「いけっ!」
「翔べぇ!!」
再びジャンプするサミンだが、さすがにバンも学習し、適度な力でシュートして先手を取った。
「しまった!けど、まだHPには余裕がある!」
「フリップアウト狙うしかねぇ!でも、それだけじゃ勝てねぇ……!」
『さぁ、フリップアウトを狙う位置的にはベストだが、まだまだタクミ君有利な状況!ここから逆転は可能なのか!?』
「勝ってやる!!」
「ここを耐えればいける!」
タクミはバリケードを構える手に力を込めた。
「いっけぇ!ビートインパクト!!」
バシュッ!!
バンの渾身の一撃。
バーーーーン!!!
サミンにクリティカルヒットし、ぶっ飛ばす。
「こ、堪えろおおお!!!」
ガガガガガ!!!
外に飛び出そうとする力を必死で押さえつける。
そして、その勢いもついに収まった。
「よし、耐え切っ……!」
タクミが安心したその瞬間。
ッパーーーーン!
と、サミンの洗濯バサミパーツが分離して飛び出した。
「っ!パーツが!!」
そのパーツは勢いよく場外し、タクミの胴体へヒット。
『な、なんとなんと!サミンの分離パーツがタクミ君の胴体へ当たったーーー!!!これによって欠片ダイレクトヒット成立!ダメージ9でバン君の逆転勝利だぁぁぁぁ!!!』
「おっしゃぁぁぁ!!!」
この勝利に、バンは飛び上がって喜びを表現した。
「……負けちゃったか」
「ぶひ、ぶひぃ」
頭の上のうさぎが、タクミを慰めるように鳴く。
「こころ、良いんだよ。精一杯戦えたんだから!僕は満足さ」
出場すらできなかったGFCと違って、今回はしっかりと戦うことが出来た。タクミにとってはそれが何よりの喜びだったらしい。
「なぁ、タクミ、だっけ?お前強かったな!負けるかと思った!」
「いやぁ、でもやっぱりGFC優勝者は凄いや。全力で戦えて本当に良かった!」
「へへ、俺もだ!」
「世界大会、頑張ってね」
「おう!!」
ガシッとバンとタクミは固く握手をした。
『さぁ、ついに日本代表最初の一人決まった!やはりと言うかこの男、段田バン君は世界でも熱きフリックス魂を見せてくれるのか!?』
「よーし、世界でも俺がダントツ一番だあああ!!!」
つづく
CM