弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第24話「龍虎覚醒!ライジングドラグナーVSブロッケンシェルロード!!」

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第24話「龍虎覚醒!ライジングドラグナーVSブロッケンシェルロード!!」

 

 赤壁杯準決勝、小竜隊VSインビンシブルソウルのバトルは中盤戦に突入。
 ナガトの活躍でリョウマを追い詰め、更にケツァルトルを撃沈するも、そのナガトはあえなく撃沈。ツバサとユウスケも満身創痍の状態でインビンシブルソウルからはあのホウセンが出てきた。
 早くもワイバーンへ強打を仕掛けるシェルロード、またしても残虐な殺戮ショーが展開されてしまうのか……!

「ワイバーン!!」
 シェルロードの攻撃を受けてワイバーンはフェンスに叩きつけられてしまい、片翼が折れる。

「あ、あいつ、いきなりやりやがった……!」
 控えにいるゲンジが顔を顰める。

「はっはっはっはっ!!まだまだこんなもんじゃないぜぇ!!」
「こ、こんにゃろ……!」
 反撃しようにも完全にバランスを崩されて上手くシュートできない。
「ツバサちゃん!!」
 ユウスケはアリエスをシュートしてシェルロードとワイバーンの間に割って入った。
「ユウスケ、そっちは任せた!いくぞ、ユニコーン!!」
 リュウジはトータスに向かってシュートし、ヒットアンドアウェイでマインヒットを決める。これでトータスは残りHP2だ。
「むっ」
 インビンシブルソウルのターン。
「次はテメェだ!オラァ!!」
 ホウセンは割って入ってきたアリエスに向かって攻撃を仕掛ける。
「うっ!」
 ボムッ!
 凄まじい衝撃を受けてフェンスに叩きつけられるアリエスだが、スポンジボディのおかげで破損はしない。
「ユウスケ!」
「だ、大丈夫、アリエスはこんな攻撃どうって事ないよ」
「思ったよりやるな。なら……タカトラ!」
「了解。フリップスペル【ストームグライド】」
 タカトラはストームグライドを使ってトータスを近くまで移動した。

 小竜隊のターン、ツバサとユウスケはトータスとシェルロードに阻まれて動けず、ユニコーンも標的にしていたトータスが大移動したために攻撃対象を失い、位置を移動するしか出来なかった。

「行くぜ、タカトラ。しっかり合わせろよ!」
「分かっている」
 バシュッ!
 ホウセンとタカトラが同時にシュートし、アリエスを挟み撃ちにする。
「っ!」
 ギュムッ、ベキィィ!!
 両側から来る強烈な圧力に、さすがのスポンジも力を受け流せずに内部に亀裂が走る。
「アリエス!?」
「中身は脆いみたいだなぁ!」
「ユウスケ!!」

 小竜隊ターン。
「くっ、いけ!ユニコーン!!」
 破損してしまい、完全に動きを制限されてしまったアリエスとワイバーンを助けに向かおうとするリュウジだが……。

 ゴッ!!
 シェルロードの、横に広がった変形尾と頑強なボディに阻まれ逆に弾かれてしまい近づけない。
「近づけない……!」
「へっ、お楽しみをそう簡単に邪魔されてたまるかよ!」
 ホウセンの容赦の無いシュートが再び襲いかかる。
 バゴォォォォ!!
 ワイバーンとアリエス二体を纏めて攻撃し、更に破壊していく。
「そんなっ!」
「も、もう堪忍やで……!」

「あの野郎、撃沈させようと思えばいつでも出来るのに……!!」
 ゲンジは奥歯を噛み締め、拳を強く握りしめる。
「落ち着けゲンジ、ここで怒ってもどうしようもない」
「分かってるけど、くそぉ……せめて交代出来れば俺が……!」
 味方がまだ撃沈していない以上、ゲンジは一切手出しが出来ない。その事がますます歯痒い。

「ツバサ、ユウスケ!自滅してバトルから離脱するんだ!!これ以上破壊されるよりはいい!!」
 相変わらずシェルロードとトータスに阻まれて助けにも向かえないリュウジが二人へ指示を出す。
「う、うん!」
「悔しいけど、背に腹は変えられんな」
 ユウスケとツバサはわざと場外する方向へシュートするのだが……。
「おっと、そうはさせねぇよ?」
 ガッ!
 ただでさえ機動力が大きく削がれている上にシェルロードとトータスにブロックされてしまい自滅も出来なかった。
「なんやねん!自滅くらいさせぇや!!」
「へっ、せっかくのバトルだ。もっと楽しもうぜ?」
 ドゴォォォ!!!
 再び襲いかかるシェルロードの一撃。
 ワイバーンもアリエスも修復不可能なまでに破壊されるのも時間の問題だ。

「……フリップスペル」
 そんな中、リョウマはポソりとスペルを発動させて行動を終了した。

「ま、まずいよ、このままじゃ……!」
「うぅ、どないせぇっちゅーねんもう……!」
 打つ手がない。このまま、愛機がなぶり殺しにされるのを黙って見ているしか出来ないのか……。
 小竜隊はまたも何も行動出来ずにターン終了する。
 その直後だった。

 ビィィィ!!
 どこからか、レーザービームのような攻撃が飛んできてワイバーン、アリエス、ユニコーンへヒット。それぞれに1ダメージ与えられた。

「「「なに!?」」」
 これによって、ワイバーンとアリエスは撃沈。バトルから離脱する事になった。

「な、なんや?何が起きたんや?」
「敵ターンになった瞬間にダメージを受けるなんて……まさか!」
 盤面をよく見てみる。自分達が小競り合いをしている場所から離れた反対側の陣地で、レジリエンスオーディンが二頭身の人形型で自立していた。

『おおっと!リョウマ君のレジリエンスオーディンの超自律兵器が決まりました!これによって、小竜隊の三体へ1度にダメージが発生!これは上手い!』

「リョウマのオーディン、超自律兵器が使えるように改良されていたのか……!」
 ナガトは、以前戦った時にはなかった機能に驚いた。
「それで遠距離からダメージを」
「なんにせよ、助かったで……って、撃沈されて安心するなんて変な感じや」
 妙な感覚を抱きながら、ツバサとユウスケは機体を回収する。

「リョウマ、てめぇ……!邪魔すんなっつっただろうが!!」
「倒せる相手を倒した。チームにとって不利益を与えた覚えはない」
「ぐっ……!」
「ホウセン、切り替えな。獲物はまだ残ってるんだから」
「ちっ!じゃあコイツは徹底的にぶっ潰す!!」
 ホウセンはユニコーンへ狙いを定めてシュートする。
「躱せ、ユニコーン!!」
 リュウジはステップで難なくシェルロードの攻撃を回避した。
「すばしっこい奴だ」
「お前の相手は俺だ!!」
 撃沈したツバサとユウスケに代わってゲンジがフィールド入りする。
「いけっ!ドラグナー!!」
 バーーーーン!!!
 ゲンジの怒りの一撃がシェルロードへ向かう。
「おっと」
 シェルロードを庇うようにステップで割って入ったトータスにヒットする。
「どけぇぇ!!!」
「なに!?」
 ステップを使ってバランスが崩れた上にバリケードも構えられないのでトータスはあっさりとフリップアウトしてしまう。
「へっ、やるじゃねぇか。わりぃな、タカトラ」
「気を付けろ。奴の攻撃、タツヤから提供されたデータよりも数段上だ」
 思わぬ所で撃沈されたタカトラは、トータスを拾いながらホウセンへ忠告する。
「どうって事ねぇよ」

「ゲンジさん、頑張って……!」
 ゲンジの登場を見て、観戦席でケンタはエールを送る。

 一方リュウジは自律兵器中のオーディンへ狙いを定める。
「いけっ、ユニコーン!!」
 バキィ!
 バリケードを構えられない状態のオーディンはあっさりと飛ばされて場外した。

『さぁ、これで小竜隊とインビンシブルソウルの撃墜数が並びました!両者ともに残りフリッカーは2人!ここからはタッグバトルです!』

 インビンシブルソウルの控えからギョウが現れる。
「この時を待ってたぜぇ、東堂ゲンジ!今度こそ引導を渡してやる!!」
「くっ、お前なんかに構ってる暇は無いのに……!」
 あからさまに敵意剥き出しの表情を向けるギョウに、ゲンジは身構える。
「ゲンジ、ここからは連携して戦うぞ!」
 オーディンを攻撃したユニコーンは、反射でドラグナーの近くまでたどり着いていた。
「あぁ!ユニコーンのスピードならあいつら撹乱出来るな!」
「そうはさせるかよ。おいてめぇ、まずはあの馬からだ。青龍はじっくりやろうぜ」
「……まぁいいだろう」
 バッ!
 ギョウはアラクネアをシュートしてユニコーンを拘束する。
「しまった!」
「よしいいぞ……そのまま逃すなよっ!!」
 ドゴォォォ!!!
 ホウセンは掴んでいるアラクネアごとユニコーンをぶっ飛ばして壁に激突させる。

「リュウジーー!!!」
 ホワイトホースの観戦席にいるイッケイが思わず叫んだ。

 直撃を喰らったユニコーンのボディにヒビが入り、アラクネアも多少破損してしまった。
「わりぃな、もうちっと我慢してくれや」
「あ、あぁ」
 ホウセンがギョウへ雑に詫びる。
(ちっ、雑な奴だ)
 ギョウは密かに悪態をついた。

 そして小竜隊のターン。
「抜け出せ、ユニコーン!」
 リュウジはどうにかアラクネアの拘束から逃れようとするが、抜け出せない。
「レースの時に散々掴んでたんだ。簡単に離すと思うなよ」
「ちぃ……!」
「リュウジ!」
 ユニコーンを助けようとするゲンジをリュウジは制した。
「大丈夫だ!奴らが俺に集中しているうちにゲンジは攻撃に専念してくれ!」
「わ、分かった!」
 ゲンジはシェルロードの横っ腹へ向けてシュートを放つ。
「ドラゴンヘッドブラスター!!!」
「効くかよ!」
 ガッ!!
 シェルロードのサイドテールによって衝撃が緩和されてあまり弾けない。
「くそっ!なんてフリックスだ!!」
「へっ!」
(どうする……!どうすればこんな機体を攻略出来るんだ?しかもギョウのアラクネアにも警戒しないといけない……)
 頭脳をフル回転させて攻略法を探す。
 すると、自然とゲンジの表情に変化が……。

 その変化は、周りで見ている人間も何人か気付く。
「ゲンジ、さん……?」

「ゲンジ、あいつ……」
「なんや、こんな時に」
「笑ってるの……?」
 特に、ゲンジをよく知る江東館や小竜隊のメンバーはその変化に敏感に気付いた。

「どうした?こんな状況なのに笑いやがって、気でも狂ったか?」
「へ?」
 ホウセンに言われて、ゲンジはハッと自分の顔を手を当て、口元が緩んでいた事に気付いた。
(俺、笑ってた……?)

「はっ、仲間がボコボコにされるのがそんなに楽しいのかよ!だったら望み通り見せてやるぜ!!」
 バゴォォォォ!!!!
 シェルロードの攻撃が再びユニコーンへヒット。
 ユニコーンは砕かれながらアラクネアのアームから離れ、壁を乗り越えて場外されてしまった。

「ユニコーーーーン!!!」
「ちっ、加減を間違えた。もっと痛ぶろうと思ったのによ」

『おおっと!ユニコーンも撃沈!これで小竜隊はゲンジ君1人を残すのみとなりました!!』

(なんて、パワーだ……凄い……!)
 ドクンッ!
 ゲンジの胸が高鳴り、拳に力が入って震える。
 この震えは怒りや恐怖ではない。
(こいつに、勝ちたい……!)

「ゲンジ?」
「おいおい、ほんとにどうかしちまったのか?お仲間の機体が破壊されたんだぜ、何嬉しそうにしてんだよ」
「え、あ、いや、ちが……!そんなわけないだろ!」
 ゲンジはキッとホウセンを睨みつける。
(そうだ、俺はこいつに負けるわけにはいかない!仲間を破壊し、ドラグナーを奪おうとするような奴に!!なのに、なんで笑ってるんだ俺は!しっかりしろ、俺!!)
 いや……とゲンジは思い直す。
(そもそも、なんで笑っちゃいけないんだ?これはバトルだろ、強い奴と戦えるのは嬉しい事じゃないか。こんな、楽しめる舞台なのに、なんで俺、こんなに楽しくないんだ……?)
 根本的な目的との矛盾点に気付いてしまい、ゲンジは自分の中にある理性と感情の相違に混乱してしまう。

 ガッ!
 そうこうしているうちにギョウがドラグナーを拘束する。
「今度こそ、お前は終わりだ」
「っ!」
「絶対に逃がねぇぞ……!」
 恨みの篭ったギョウの拘束は半端なくキツそうだ。このままではシェルロードに破壊されてしまう。そして、ドラグナーが奪われる……!

「違う……」
 ボソッとゲンジは呟いた。
「ああ?」
「俺は、こんな事しに来たんじゃない」
「何言ってんだ?」
 ゲンジは目に涙を浮かべながら顔を伏せ、ホウセンとギョウへ語りかけた。
「なぁ、相手の邪魔したり、壊したりするよりさ……勝つために戦った方が楽しくないか?」
「はぁ?」
「……俺は、ずっと自分が弱い奴だと思ってた。こんな大会の大舞台で、強いライバル達と戦うなんて遠い遠い別世界の事だって。だけど、仲間達が俺を強くしてくれて、ここへ連れてきてくれたんだ。いろんなライバル達と、勝つために本気でぶつかり合う、最高に楽しい世界へ!」
「何が言いてぇんだよ?」
「俺はっ!ライバル達とダントツ目指して本気で戦うために来たんだ!!妨害を警戒したり、機体を破壊する奴に怒ったり、開発者の都合に巻き込まれたり、そんな事をしに来たんじゃない!!!」

 ゲンジは力を込めてドラグナーを構える。

「俺はっ、お前達とも本気で楽しく戦いたいんだあああああ!!!!」
「っ!?」
 ズゴォォォォ!!!
 ゲンジの渾身のスピンシュート。
 その遠心力により拘束は外れ、吹っ飛ばされたアラクネアはマインにぶつかる。残りHP2だ。

「……」
 拘束を外されたギョウは呆然とした。
「ちっ、だったら本気をぶつけてやろうじゃねぇか!本気でぶっ潰してやる!!お前もこれで終わりだ!!!」
 頭に血が上ったのか、ホウセンは怒りで目を釣り上げながらシュートをぶちかます。
「っ!」
 ゴォォォォ!と唸りながら迫ってくるシェルロード。この攻撃を受ければいかにドラグナーとは言え無事では済まない。

 ガッ!
 しかし、その攻撃はドラグナーへ届かなかった。

「「「えっ!?」」」
 一同は騒然とする。
 何故なら、ドラグナーへ向かっていたシェルロードを止めたのは、アラクネアによる拘束だったからだ。

「なっ、てめっ!何しやがる!」
「ギョウ、なんで……?」
 ホウセンとゲンジの疑問に対し、ギョウは呆然と首を振る。
「わ、分からねぇ……なんで、おれ、こんなこと……!」
 ギョウ自身もその行動の理由が分からなかったらしく、激しく狼狽している。
「ギョウ……」
「俺、俺は……!」
 答えが見つからず、ギョウは俯いた。
「分からねぇで済むと思ってんのかよ!てめぇぇぇ!!!」
 ガッ!!
 怒り心頭のホウセンがギョウの胸ぐらを掴む。今にも殴りかかりそうだ。

「やめなホウセン!まだバトルは終わってないんだよ!!」
「ちっ」
 アスカに制され、ホウセンの手から力が抜ける。
「……るせぇんだよ」
 ギョウがボソッと呟く。
 そして、ホウセンの手を払い除けて叫んだ。
「うるせぇんだよおめぇらよぉぉぉ!!!!」
「ギョウ……」
「なんなんだよ!なんだってんだよ!!俺は、俺だって弱ぇんだよ!!何やっても勝てねぇし、こんな、クソ情けねぇ事しか出来ねぇ……なのに、何が俺とも楽しくバトルがしてぇだ!!そんなもん、出来るわけねぇだろ!!!これ以上、俺を惨めにするんじゃねぇぇぇぇ!!!!」
 涙ながらに叫び、肩で息をする。
「ギョウ、それでも俺は……」
「それ以上言うなっ!!!」
「っ!」
「とっととケリつけやがれ。お前は、弱くなんかねぇんだからよ」
 それだけ言って顔を背けるギョウ。完全にバトルを放棄するようだ。

「……」
「ゲンジ、とにかくこれはチャンスだ。逃す手は無いぞ!」
「あ、あぁ、分かってる!」
 リュウジに言われて気を取り直したゲンジは、シェルロードとアラクネアを見据える。

「おいおい、寿命が伸びた程度で粋がるなよ。シェルロードにお前の攻撃は通用しねぇ。しかも今はオマケまでしがみついてやがる。どう考えてもお前に勝ち目は無い」
(確かに、あいつの言う通りだ。シェルロード一体弾き飛ばす事もできなかったのに、アラクネアまでくっ付かれたらどうしようも無い。けど……!)
 ゲンジはゆっくりとシュート準備した。ドラグナーのサイドクローを展開し、そこにシャーシから取り出した何かを取り付ける。

「あ、あれは!」
 観戦席にいるケンタはゲンジが何をしたかいち早く気付いた。

 そして、シュート準備完了したゲンジは顔を上げて高らかに宣言した。
「面白い!絶対に突破してやる!!」
 心底楽しそうに笑いながら言うゲンジにホウセンは面食らう。
「っ!」
 アスカとタカトラもゲンジの態度に怪訝な顔をする。
「何あいつ」
「この状況で、何故笑う……?」

 そのゲンジの笑顔の意味は、小竜隊メンバーはしっかりと理解出来ていた。
「難しいが、決して不可能じゃ無い状況。それこそバトルの醍醐味だもんな」
「分かるで、その気持ち」
「うん、面白いよね!」

「ちっ、とっとと撃ちやがれ!」
「うおおおおお!!!」
 ドンッ!!!
 ホウセンに急かされるまでもなく、ゲンジはシュートを放つ。
 ガッ、バチイイイイン!!!
 ドラグナーのフロントがシェルロードのフロントにぶつかり、その衝撃でバネギミックが発動。お互いに弾かれる。

「シェルロードのギミックを利用すれば行けると思ったんなら甘いぜ!そのまま自滅しろ!!」
 攻撃したのに逆に弾き返されたドラグナー、このまま場外に向かうが……。

「堪えろ!ドラゴンクローディフェンス!!」
 ギュッ!!
 左右に展開したクローが地面を捉えた瞬間に急ブレーキがかかって停止した。

「なに!?」

「やっぱり!あれはバイフーのクロー!!」
 江東館の席でケンタが嬉しそうに叫ぶ。

「ほぅ、青龍に白虎のパーツを取り付けるとはね」
「元は一つの存在だ。相性が良いのは当然だな」
 レッドウィングスの席でコウとソウも感心する。
(だが、あれほどの力を発揮するとは)
 コウには余裕の表情を見せていたソウだが、密かにその瞳に影を落としていた。

 一方でシェルロードの方は……。
「やるじゃねぇか!だが、シェルロードもこの程度じゃやられねぇぞ!」
 宙を舞うシェルロード。だが、この勢いでは場外は難しい。着地の瞬間に勢いがなくなって止まるだろう。
 しかし……。
「なっ!」
 カッ、キュルルルル!
 シェルロードはマインの上に着地、そのまま場外へと滑っていった。
「踏ん張りが効かねぇ!」

『ブロッケンシェルロード、ナスティアラクネア、共にフリップアウト!これによってアラクネアは撃沈!シェルロードは残りHP1!ここまで劣勢だった小竜隊が大躍進です!!』

「やったぁ!!」
「いいで、ゲンジ!!」

 歓喜する小竜隊、それに対してホウセンはシェルロードをスタート位置に戻してゲンジへ凄んだ。

「舐めた真似するじゃねぇか……!調子に乗るなよ!」
 ドンッ!!
 ホウセンはお返しとばかりに即座にドラグナーへアタック。
「耐えろ!ドラゴンクロー……!」
「効くか!ブロッケンボンバー!!」
 バキィィィ!!
 防御力がアップしたはずのドラグナーをシェルロードの攻撃はあっさりとぶっ飛ばした。
「なに!?」

『やったらやり返す!!シェルロードも必殺の一撃でドラグナーをフリップアウト!これでお互いに残りHP1!大接戦です!!』

「……そうか、シェルロードは相手を掬い上げながら押し出すから、グリップ力を高めても突破されるのか」
 ドラグナーを拾いながら相手の攻撃力を分析したゲンジはまたも笑いながらホウセンを見た。
「やるな、ホウセン!」
「っ!この状況でなに笑ってやがる……!」
「こんな面白いバトルで笑わない方がどうかしてるぜ!」
「なんだと?」
「それに、この勝負は俺の勝ちだ!」
 そう言いながら、ゲンジはドラグナーを変形させてスタート位置にセットする。
 ドラゴンヘッドを展開し、ドラゴンクローを片側だけ出した状態で。
「なに?ここから何が出来る!?」
 シェルロードはギミックを展開した上にサイドテールをドラグナー側に向けて防御力が高い状態だ。
 マインも軌道上からはズレている。

「……」
 ゲンジはチラッと観戦席の方へ視線を移した。

「っ!」
 その先にいる、レッドウィングスのソウがそれに気づく。

「いくぞ……!」
 ゲンジは意を決してシュートする。
 バシュッ!!
 ドラグナーは、片側のクローをシェルロードの伸びたフロントに引っ掛けて、クローの摩擦力を活かしてスピンしながら軌道を変えつつ、スピンによって攻撃範囲を広げてドラゴンヘッドをマインに接触させた。
「ワンクロースピナー!!」
 これでマインヒット。シェルロード撃沈だ。

『き、決まりましたぁーーー!!!ゲンジ君、見事なマインヒットでシェルロードを撃沈!!これによって、小竜隊の勝利です!!!』

「バ、バカな……!」

「おっしゃああああ!!!」
「やったでゲンジ!!」
「ゲンジ君!!」
 ゲンジの元へ駆け寄る仲間たち。そこに江東館のケンタとサクヤもいた。
「ゲンジさん!」
「流石だ、小竜隊!」
「ケンタ、サクヤ!バイフーのパーツのおかげで勝てたぜ!!」
「うん!凄かった!ありがとう!!」

 レッドウィングスの観戦席。
「……見事に技を盗まれたね、ソウ」
 コウが揶揄うように言う。
「フン」
 ソウはくだらそうにそっぽを向いた。
(青龍のフリックスに白虎のパーツ、そして朱雀の技……四神のうち三体の力を一つにするとはな……)

 ソウは神妙な表情で勝利に浮かれる小竜隊を眺めながらカイザーフェニックスを持つ手に力を入れた。

 

   つづく

 

CM

 

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