弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第19話「勝利を望む者 仲間を求む者」

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第19話「勝利を望む者 仲間を求む者」

 

 赤壁杯決勝大会。
 Aブロックはレッドウィングスが圧倒的な強さを見せつけて会場を騒然とさせたが、それ以降は平和ながら熱く激しい戦いで盛り上がり無事終了。
 そして、Bブロックの試合になる。

『さぁ、続いてはBブロックの試合になります!
対戦カードは、ホワイトホースVSトライビースト!』

 ホワイトホースとトライビーストがステージに上がる。
 ホワイトホースリーダーのイッケイはチラリと小竜隊のいる観戦席へ視線を向けた。
「……リュウジ」
 その席にいるリュウジの顔を確認してイッケイは呟き、思いに耽った。

 ……。
 ………。
 今から半年ほど前、リュウジが地元北海道から関東へ引っ越す直前の事。
 ホワイトホースの練習場で、リュウジは引っ越す事とチームを脱退する事をイッケイへ告げた。

「チームを、脱退……!?」
 信じたくない言葉を聞き、イッケイはその言葉を繰り返した。
「あぁ、親の仕事の都合でな。関東の千葉に引っ越す事になったんだ。それで、悪いんだが……」
「ま、待ってくれ!引っ越しは仕方ないが、チームを辞める事はないだろう!今はリモートでもやりとりは出来るし、違う地域同士で組んでいるチームだっている!赤壁杯まで何回か遠征して合同練習すればチームワークだって鈍る事は……!」
 必死にリュウジを引き止めようとするイッケイに対して、リュウジは毅然と言い放った。
「イッケイ、俺は……ホワイトホースだからフリックスをやってるんじゃない。フリッカーだからバトルをしてるんだ」
「っ!?」
 突き放すような言い分にイッケイはそれ以上何も言えなかった。
「じゃあな、次会う時はライバルだ。楽しみにしてるぜ。俺がいないからって腑抜けて退屈なバトルになる事だけは勘弁してくれよ」
 もう伝える事は伝えたと、リュウジは冗談混じりに笑いながら片手を上げて去っていった。

 ……。
 ………。

(何故リュウジがホワイトホースを去ったのか、その理由を見つけるために俺は死に物狂いでチームの強化に努めた。そして今、俺は……)

 考え事をしている間にも真島アナウンサーの進行は続く。

『トライビーストは第一回赤壁杯の覇者でもあります!そして、ホワイトホースも歴代の赤壁杯で何度も入賞している強豪!これは素晴らしいバトルが期待出来ます!!』

「……強豪、か」
 トライビースト、第一回優勝、何度も入賞……その言葉を聞いて、イッケイは更に思いに耽った。

 ……。
 ………。
 第一回赤壁杯決勝戦。ホワイトホースVSトライビーストの試合。
 イッケイとリュウジは見事なコンビネーションで敵機を撃破していき、残るはリーダーの若生ジュンの駆るヒドゥンスネーカーを残すのみとなった。
 しかし、防御と受け流しに特化したこの機体へトドメを刺すのは難しく、そして相手も攻撃力が低いためお互い決め手に欠けるままこう着状態が続いていた。

「ぐっ!」
 その戦いの最中、リュウジがシュートした瞬間に顔を顰める。
「どうした、リュウジ!?」
「……いや、大丈夫だ」
 そう言うリュウジだが、その右手は赤く腫れていた。
「どこがだ。もうお前は無理をするな。あとは俺に任せて棄権するんだ」
「冗談じゃない……!あともう少しで優勝なんだ……この腕を犠牲にして勝てるなら、安いもんさ」
「お、お前……!」
 リュウジの勝利への執念、その気迫にイッケイは飲まれてたじろぐ。
 ジュンのターン。
「そこです!」
 ジュンは決め手に欠けるながら、徐々に自分が有利になるような位置になるように機体を移動させている。
 それはさながら、囲碁で布石を打つ事を彷彿とさせた。

(さすが天才戦略家と噂されるフリッカーだ……常に自分が有利になる立ち位置、盤面を構築していく。俺達が最適解を取れば取るほど、相手に飲まれていくのが分かる)

 今、ヒドゥンスネイカーは穴を挟んでホワイトホースと対峙、手前にはやや離れた場所にマインがある。
 バリオペガサスの変形翼ならマインヒットは狙えそうだが、あまりにもあからさまだ。

「イッケイ、ここは俺のユニコーンであのマインを落とす。一旦盤面をリセットした方がいい」
「バカな事を言うな。そんな事してもバトルが長引くだけだろ。それよりも俺のペガサスならマインヒットできる」
「そっちこそ冗談はよせ。あんなあからさまな誘い、気付いてないとは言わせないぞ」
「だが、これ以上は負担が……!」
「踏ん張ってみせるさ……ユニコーーーーン!!」
 気合を振り絞ってのシュート。ユニコーンは真っ直ぐにマインへと向かっていくが……。
 ガッ!
 その途中、横から割り込んだバリオペガサスによって弾かれて軌道が変わる。
「なに!?」
 重量のあるペガサスはユニコーンとの接触でも軌道をさほど変えず、そのまま変形させた脚と翼を使ってマインヒットを決めるが、スネイカーと接触した直後に停止してしまった。
「……かかった。しかもユニコーンまで付いてくるとは僥倖!」
 面積の広がったペガサスとそれに引っ付いてきたユニコーンをスネイカーが狙う。
「食らいつけ!ヒドゥンスネイカー!!」
 こうなるともうパワーはいらない。ジュンは押し出すようにそっとシュートして二機同時に穴の上で停止させて撃沈した。
 これによって、トライビーストの勝利になってしまった。

「イッケイ、なぜっ……!いや、俺のせいだな。すまん……」
 イッケイを責めようとしたリュウジだが、その悲しくも優しげな目を見た瞬間どうしようもないくらいにイッケイの真意を察してしまいリュウジは目を逸らして謝った。
「いや、俺達よく頑張ったじゃないか。準優勝だって、立派なもんさ」
 イッケイの言葉に、リュウジは一瞬目を見開いた。
 その意味は、この時のイッケイには測りかねていた。

 ……。
 ………。

(思えば、あの時から既に兆候はあったのかもな……)
 回想し終わって呆けた頭に真島アナのマイク音声が響く。
『それでは、ルールの説明をします!今回は5VS5でバトルをし、先に相手チームの機体を2体撃沈させた方の勝ちとなります!では、作戦タイムスタート!』

 両チーム控えエリアへ戻り作戦会議をする。

「先に2体撃破した方の勝ち……裏を返せば、どれだけ攻めていても2体撃破されたら負けるって事か」
 ホワイトホースの控えエリア。
 イッケイは顎に手を当て、どうしたもんかと思案する。
「攻めよりも守りの方が重要そうだね……」
「苦手な分野じゃい」
「ぼ、僕、足手纏いにならないようにしなきゃ……」
「でもさ、そっこーで相手を倒しちゃえばいいんじゃないの?」
 いかにも単純そうな少年、ヤスオが軽く言う。
「いや、それで隙を突かれたら……」
 当然そんな単純なやり方は賛同しかねるイッケイだったが、ユズルが何か思いついたように声を出す。
「あ、そっか、これなら」
「どうしたんじゃい?」
「ユズル姉ちゃん、何か良い案でもあるの?」
「う、うん、上手くいくかは分からないけど」
 ユズルは遠慮がちにチームメンバーに自分の考えを伝えた。

「……なるほど、大胆な作戦じゃい」
「でも、上手くいく気がする!」
「ああ!さっすがユズルさんだ!俺は乗ったぜ!!」
「だが、この作戦は2人にかなり負担を掛ける事になる……」
 他のメンバーが賛同する中、イッケイだけが難色を示す。
「イッケイ君、私達なら大丈夫だから、信じて……?」
「僕だって!」
 普段は控えめなのに、珍しく引かないユズルやゼンの目を見て、イッケイはかつてのリュウジの姿をダブらせた。
「……分かった」
 覚悟を決めたのか、イッケイは重々しく頷いた。

 そして作戦タイムが終わり、ホワイトホースとトライビーストが対峙する。

「行くんやホワイトホース!いてこましたれ〜!!」
 小竜隊の観戦席からツバサが大声でエールを送った。
「ツバサ……」
 ホワイトホースへ嫉妬していたツバサが応援するのが意外だったのか、リュウジは思わずツバサを見つめる。
「何ボケっとしとんねん!夢を叶えるために今出来る事は応援するくらいやろ!」
「……そうだな」
「ツバサがホワイトホース応援するなんて、意外だなぁ」
「へへ、リュウジの夢はうちら小竜隊皆の夢でもあるんやからな!」
「あぁ、サンキュ」
「よーし、皆!声出していこうぜ!!」
 ゲンジの合図で皆一斉にホワイトホースへエールを送った。

「……リュウジ、見ててくれよ」
 そのエールを受け取り、イッケイは気を引き締めて機体をフィールドへセットした。

『それでは行きます!3.2.1.アクティブシュート!!』

 バシュウウウウウ!!!
 フィールド上で計10機のフリックスが中央へ向かって放たれる。
 否、ユズルのアンカースタリオンとゼンのライナースタリオンは、緩いシュートであまり進まなかった。

『さぁ、合計8台のフリックスが先手を取るために突進!!対して、アンカースタリオンとライナースタリオンはシュートしてすぐに止まりました!攻撃力でやや劣る2機は後方で守りに徹する作戦でしょうか!?』

「先手を取るぞ!オフロードスタリオン!!」
 乗り越え性能を駆使して敵機を飛び越えようとするヤスオのオフロードスタリオンだが……。
「させない!レイダーレザード!!」
 同じく乗り越え性能を有しているケンシンのレザードがそれを止める。

「行くんじゃい!バスタースタリオン!!」
「ぶちかませ!クロームリノセラス!!」
 突進力に定評のある2機もぶつかって停止。

「バリオペガサス!!」
「止めろ!コンバットスティングル!!」
 重量を活かした慣性で突っ込むペガサスだが、大型面積とグリップ力を持つスティングルに止められる。

「がんばれ!シュトルムスワロー!」
「いけっ!ヒドゥンスネイカー!!」
 邪魔になる機体を全て足止めしつつ、機動力で勝る2機がフィールドの奥へ行き、先手を取った。

『トライビースト!見事なシュート配置で先手を取りました!!』

「……やられたな。俺達とタイプの近い機体同士をぶつけて足止めして、機動力で勝る2機で確実に先手を取る……さすがだ」
「まだまだ、布石はこれからですよ。マサノリ、キョウジ。作戦通りの立ち位置へ」
「「了解!」」

 バシュッ!!
 マサノリはスティングルのヒレを畳んで、ペガサスを躱して前に出るようにシュート。
 キョウジは、バスタースタリオンを押し退けて、スティングルの後ろにリノセラスを付けた。

「ケンシンは、守りに」
「分かってる」
 ケンシンのレザードはオフロードスタリオンを飛び越えて攻撃を喰らいにくい位置へと逃げた。

「セイ、いきますよ」
「はい!」
 シュンッ!バンッ!!
 スワローが近くにあったマインをスネイカーの前に弾き、スネイカーはそのマインに触れながらアンカースタリオンとライナースタリオンへアタックしマインヒットする。

『さぁ、守りに徹するはずだったアンカーとライナーが早くもダメージを受けてしまいました!これはホワイトホース、かなりピンチです!!』

 2体撃破されたら負けになるルールでいきなり2体ダメージを受けてしまうのはかなり苦しい。
 ここは少しでも挽回したい所だが……。

「この陣形……流れは奴等に傾いているな」
「とにかく、攻撃あるのみじゃい!」
「攻めるしか無いよ!」
「そうだな……バリオペガサス!!」
 バシュッ!
 まずはバリオペガサスがスピンシュートでマインを動かす。
「バスタースタリオン!!」
 そしてバスタースタリオンがオフロードスタリオンを弾き飛ばして、オフロードスタリオンの先にトライビーストの2機、そしてマインがある位置に付けた。

「いっけぇ!オフロードスタリオン!!」
 ヤスオはオフロードスタリオンをシュートしてリノセラスとスティングルを乗り越えてその先にあるマインに触れる。
 これで2体に1ダメージ入り、ダメージレースで追いついた。

「ゼンくん」
「うん!」
 一方のユズルはアンカースタリオンのアンカーを外してライナースタリオンの前に置いた。

 トライビーストのターン。
「では、作戦通りに!」
「了解!コンバットスティングル!」
 ジュンの指示でマサノリはコンバットスティングルを変形させてシュート。アンカースタリオンとライナースタリオンに接触するように目の前につけた。
「ごっつぁん!!!」
 そこへ、リノセラスがスティングルのリアへ突進!
 バゴォォーーーン!!!!
 スティングルはリノセラスのアタックをヒレのグリップで耐え、そして受けた衝撃をそのまま目の前で接触していた機体へと伝え、弾き飛ばした。

 二つの物体が宙を舞い、そして場外する。
「よし、これで我々の勝ちですね」
 ジュンが勝ちを確信する。しかし……。

『フリップアウト!これでアンカースタリオンが撃沈!さぁ、ホワイトホースはあと一体撃沈されたら負けとなってしまいます!!トライビースト、勝利までリーチをかけました!!』

「なに!?」
 真島アナの実況はトライビーストの優位を伝えるものではあった。しかし、既に勝利を確信していたジュンにとっては真逆の意味に聞こえてしまう。

「良かった、成功して」
「うん、冷や冷やしたよね」
 ホッとするユズルとゼン。よく見ると、2体飛ばしていたと思ったもう一つの物体はアンカースタリオンのアンカーパーツで、ライナースタリオンはローラーによって飛ばされたアンカーパーツを受け流して耐えていたのだった。
「くっ、傀儡だったとは……!」
 ジュンは悔しげに拳を握るが、残った機体ではもう攻撃手段がない。
 このままホワイトホースのターンになる。

「よし、奴らはフィールドの角付近でこちらに背を向けている!今がチャンスだ、いくぞツナヨシ!」
「おう!!」
 イッケイとツナヨシはこの好機を逃すまいとしっかりと狙いを定めてシュートする。
 バシュ!!!

「バリオペガサス!」
「バスタースタリオン!」
 ホワイトホースの重量級2体の同時アタック。如何に重量とグリップ力を備えたリノセラスとスティングルとは言え、たまらずに吹っ飛び、さらにその先にいるライナースタリオンがローラーで受け流す事で軌道を変えてそのまま場外してしまった。

『決まりました!!トライビーストの2体が撃沈!これによって勝者はホワイトホースです!!』

 ……。

 バトルが終わり、ホワイトホースはステージから観戦席へ戻る廊下を歩いていた。
「いやぁ、さっきのバトルはユズルの作戦勝ちじゃい!」
「天才戦略家に作戦で勝てたなんて凄いよユズル姉ちゃん!」
「えへへ。たまたまだと思うけど、上手くいってよかった」
「だが、アンカースタリオンに負担をかけすぎたな。大丈夫か?」
 ユズルの手にあるアンカースタリオンはかはりボロボロに破損してしまっていた。
「さすがにあの必殺技を1人で受けるのはキッツイよなぁ」
「……でもこのくらい、皆で勝つためなら平気だよ!」
「……!」
 ユズルの言葉にハッとするイッケイ。
 そして同時に、目の前から小竜隊メンバーが歩いてきてるのにも気づいた。

「よっ、一回戦突破おめでとう」
「リュウジ」
「でもらしくないじゃないか。お前があんな囮作戦を実行するなんて」
「……そうだな、確かに。俺は、仲間を犠牲にしてまで勝利したいとは思わない」
「……」
「ただ、勝利のために犠牲を買って出る仲間の気持ちを無碍にするべきでもない。今は皆からそれを教わったような気がする」
「そうか」
 リュウジは少しだけ嬉しそうに頷くと、歩き出した。そしてすれ違いざまに言う。
「待っていろ。俺たちは必ず勝ち上がる。楽しみにしてるぜ」
「ああ……!」
 言い終わる頃には既に遠ざかった背中へ、イッケイは振り向きもせずに力強く返事をした。
 2人のただならぬ雰囲気に他のメンバーは空気を読んで黙っていた。

 ……。

『それでは次の試合は小竜隊VSノースアマゾン!ルールは、【3.2.1バトル】!1試合目は3VS3で戦い、2試合目は残りの2VS2でバトル。1勝1敗の場合は代表者を選出して1VS1で決着をつけます!』

「あ、親善試合でやったルールだ」
「公式で採用されるとはなぁ」
「これも諸星コウの仕業やろな」
「慣れてるルールの方が、四神フリックスを勝たせやすいって事か」
「まさか……」
「まっ、それで俺達が絶対有利ってほどでもないし。全力で戦うだけだ!」

 そして、作戦タイムを経て試合に移る。
 最初に出たのは、ゲンジ、ツバサ、ユウスケ。
 ノースアマゾンからは、アントソルジャーを使うユウキとコウタ、そしてホッパソルジャーを使うシュンだ。

「……あれ?その黒い機体って三つなかったっけ?」
 直接戦ったわけじゃないが、サバイバルバトルでは確かに三つ見かけたはずのアントソルジャーがここでは二つしかない。
 そして、控えにはヴァーミリオンを手にする見たことのない少年がいた。
 ゲンジの疑問にリーダーの城島アキラが答えた。

「サバイバルバトルでは敵を撹乱するために敢えてメンバーを変えていたのである!この朱野レイこそ、真のレギュラーメンバーなのだ!!」
 アキラが自慢げに紹介すると、レイも大袈裟な身振りで口を開いた。
「本来ヴァーミリオンは二刀流の片割れなんかじゃなく、れっきとした一体のフリックスなのさ。もちろん、サンダークラップ共々重量はギリギリまで調整しているよ」
「更に、第一試合に出るアントソルジャーとホッパソルジャーは集団戦のエキスパート!某のチームに死角はないのである!」
 得意げに高笑いするノースアマゾンに負けじとゲンジも声を上げる。
「俺達だって、チームワークなら負けないぜ!な、ツバサ、ユウスケ!」
「うん!」
「もちろんや!」

『さぁ、軽く言葉のジャブを交わした所でそろそろ始めましょう!
3.2.1.アクティブシュート!!』

 バシュッ!!ガキンッッ!!!
 6台のフリックスが一斉に放たれて中央で激突する。

「いっくで!うちらのパワーみせたる!!」
「背中は僕が守る!」
「三位一体攻撃だ!!」
 まずはドラグナーとワイバーンが2機並んで先頭を走り、敵機とぶつかり、後ろから追いついたアリエスが2機の反動を支える事でより衝撃を相手に伝えやすくする技だ。
 これによって、ノースアマゾンの3機が一気に場外した。

「う、うそ!?」
「バカな!?」
「パワーが違い過ぎる……!」
 狼狽えるソルジャー達。しかし、そこへアキラが一喝する。
「落ち着くのである!一体一体の力で劣っていても、集団で圧倒するのが群勢というもの!!得意のかっこいい戦い方を見せてやるのだ!!」
 アキラの言葉で合田シュンはハッとする。
「確かにその通り……!真のカッコ良さはパワーじゃないってのを見せつけないとな!いくぞ、ユウキ、コウタ!」
「「ああ!」」

 アキラの一喝で戦意を取り戻したソルジャー達を見て、リュウジは感心する。
「ノースアマゾン、深く関わった事はなかったが。リーダーの城島アキラ、たった一喝でメンバーの士気を高めるカリスマ性は大したもんだ。トライビーストの若生ジュンとは違うタイプだな」
 的確な判断で指示を出すリーダーもいれば、メンタル面を強化するリーダーもいる。チームによっていろいろである。
(イッケイもリーダーとして成長していた……果たして俺は、どこまで出来ているか)
 チームの創設者として、ふとそんなことを考えてしまった。

『それでは、ノースアマゾンは機体をスタート位置へ戻してください。』

 チーム戦なので場外による仕切り直しは無しでスタート位置に置き直して小竜隊のターンになる。

「よし、ツバサ!畳み掛けるぞ!」
「当然や!!」
 バッ!
 ドラグナーとワイバーンはスタート位置に固まっている三機を同時攻撃で沈めようとするが……。

「同じ手は効かない!!」
 アントソルジャーはステップで左右に分かれて回避、ドラグナーとワイバーンは自滅してしまった。
「なに!?」
「しもたっ!」
 自滅したドラグナーとワイバーンは1ダメージ受けてスタート位置へ、そのままノースアマゾンのターンになった。

「これが俺たちの戦い方さ!」
 バッ!
 ソルジャー達はアリエス一体に狙いを定めてシュートした。
 アントソルジャーが纏わりついてアリエスのステップ回避を封じ、ホッパソルジャーがジャンプしてアリエスにのしかかる。宛ら大量の虫にたかられているようだ。

「き、きも……!」
「このカッコ良さが分からないとは。まぁいい、これでスタンだ!」

 【スタン】……敵機の攻撃によって転倒したり、シャーシ上部に敵機のシャーシが乗ると次のターン何も行動出来ずにターン終了する。

「しまった!」
「一体ずつ確実に潰す。これが群勢のやり方だ!」
「こんなの、引き剥がすだけだ!」
「いいのか?このままだと仲間を攻撃することになるぞ」
「ぐっ!」
「卑怯な…!」
 ソルジャー軍団を攻撃してしまうとアリエスに攻撃が当たってしまう。しかしこのままでは……。
「いいよ。ゲンジ君、ツバサちゃん、攻撃して!」
「ユウスケ、でも……!」
「この先にリュウジさんの夢があって、そして僕らの夢があるんだ!だから……!」
 ユウスケの訴えにゲンジとツバサは頷く。
「よ、よし」
「いくで……!」
 ゲンジとツバサはアリエスを挟み撃ちにするようにドラグナーとワイバーンを放った。

 バーーーーーーーーーン!!
 挟み撃ちにされた事でアリエスのスポンジが弾け、ソルジャー軍団は全部場外した。

「「「なにぃ!?」」」

『決まりました!!お互い見事な連携でしたが、ここは小竜隊の勝利です!!』

「よしっ!」
「やったで!」
「アリエスは大丈夫か、ユウスケ?」
「うん。スポンジでショックは吸収したから」
 勝利の余韻に酔いしれつつも試合は進行していく。次は第2バトルだ。

『それでは第2バトルは2VS2です。両者準備を!』

 リュウジ、ナガト、アキラ、レイがフィールドにつく。
「見事な勝利であった!が、ここからはそうはいかないのである!」
「ノースアマゾンの真の力、見せてあげるよ」
 カブトムシ型のサンダークラップ、クワガタ型のヴァーミリオン……見るからにタッグの連携が得意そうなモチーフだ。
「……リュウジ、ノースアマゾンは赤壁杯出場経験はあるのか?」
「去年から出てるが、直接対決した事は無い。悪いがロクな情報はない」
「なら全力で行くだけだな」

『それではいきます!3.2.1.アクティブシュート!!』

 バシュッ!!
「とにかく、まずは俺が先手を取る!」
 スピーダーとしてソニックユニコーンが前に出るが……ヴァーミリオンの2本顎に掴まれて止まる。
「おっと、そうはさせないさ!」
「しまった!」
「先手は貰ったのである!」
 サンダークラップはマイティオーガを避けて遠くへ行き、先手を取った。
「しっかりと捉えとくのだぞ!」
「当然さ」
 バキィ!!
 ヴァーミリオンに抑え込まれているユニコーンをサンダークラップが攻撃し、ユニコーンを場外させた。
「は、早い……!」
「なんて連携だ、反応出来なかった」
 ユニコーンをスタート位置に戻して小竜隊のターン。
「とにかく少しでもダメージを与えるしかない!」
 バシュッ!
 マイティオーガはスピンとその反射でヴァーミリオンを、ユニコーンは機動力を活かしてサンダークラップへマインヒットを決める。
 しかし敵機から上手く離れたユニコーンと違い、オーガはヒット&アウェイ失敗し、ヴァーミリオンの反撃で穴に落とされやすい立ち位置に着いてしまった。
「くっ!」
「ナガト!すぐにサポートに行く!」
 フリップアウトを覚悟したナガトだが、ヴァーミリオンはオーガを無視してステップで近づいてきたユニコーンを狙い、角パーツを変形させてシュート、ギリギリマインヒット成功して撃沈した。そして、サンダークラップと接触して停止する。
 リュウジはナガトを助ける事に集中したため、この攻撃を回避出来なかった。

『ソニックユニコーンマインヒットで撃沈!さぁ、小竜隊あとがありません!』

「しまった……!」
「確実に狙える俺を無視して……!」
「オーガをフリップアウトするよりもユニコーンを撃沈した方が戦いやすくなるからね」
「多少無理してでも大きな成果を選ぶ。これがバトルである!」
「くっ、くそ、完全に判断をミスった……!」
「だが、オーガはまだ無傷!ここから挽回する!!」
 サンダークラップからオーガまでの距離は遠い、攻撃を受ける事は無いはずだから次のターンから体制を立て直せばまだ挽回のチャンスはあるはずだ。
「そうはいかぬ!レイ、ユニオンだ!」
「ふっ、そうこなくちゃ」
「ユ、ユニオン……?」

 チーム戦では向き変え変形時に接触している味方機を自機の別部位へ接触させ直す事が出来る。

 そのルールを利用し、サンダークラップはヴァーミリオンを機体の上部に取り付けて合体した。カブト型機体の一本角、クワガタの二本顎が合わさりコーカサスのような三本角になる。

「「合体!エンダーコーカサス!!」」

「フリックスが、合体した……!」

    つづく

 

 

CM

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