ごろくーさんへ3

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弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第36話「それぞれのプライド」

 

 トリニティカップ三回戦。
 会場の巨大モニターには次の対戦カードが提示されていた。
 それは、小竜隊VS馬場長超次郎と言う名の少年だった。

「ば、馬場やてぇ!?」
 その名を見て、ツバサは素っ頓狂な声を上げた。
「なんだよ、知り合いか?」
「知り合いも何も……」
 ツバサがゲンナリしながら説明しようとする前に声をかけられた。
「おっ、なんや張本やんけ!」
 髪を金髪に染めたチャラそうな少年だった。
「馬場……」
「えらい久しぶりやないか!なんやお前も参加しとったんか!少しは強ぅなったか?」
「……試合見とけば分かるやろ」
「生憎ワイは目の前のバトルにしか興味がないんでな。誰が参加しとるのかも分からん!」
「相変わらずやな……」
 馬場はあのツバサがタジタジになるほどに態度がデカい。
「なぁ、お前ら、どう言う関係?」
 置いてけぼり喰らったゲンジが聞いてみる。
「……前の学校の先輩や。卒業と同時に海外留学したって聞いたけど、招待されとったんか……」
「海外枠でな。それにしても懐かしいな、ワイと張本は学校でもトップ2のフリッカーだったんやで!まぁ、ワイの方がちょいとばかし強かったけどな!」
「99連勝しといてよう言うわ」
「しかしまぁ、100連勝目は厳しいやろなぁ」
 とても謙遜とは思えないような態度で言う。
「何が言いたい?」
「赤壁杯優勝チーム、小竜隊の噂は海外にいても届いとる。強い奴とチームを組めば、実力と関係なく勝てるからな。考えたやないか、張本」
「な、なんやて……!」
「せいぜい警戒するでぇ。特に東堂ゲンジ、お前は相当腕が立つみたいやからな」
「え、あ、あぁ……」
 突然話を振られて、ゲンジは間抜けな返事しかできなかった。
 片手を上げて去っていく超次郎の背中を見ながら、ツバサは地団駄を踏んだ。
「かーっ!あいっかわらず嫌味なやっちゃでホンマ!!!」
「ははは、なんか癖の強そうな奴だったな」
「昔っからああなんや!!けど、強さはほんもんやから余計ムカつく!!!」
 一頻り唸ったあと、ツバサはため息をついた。
「はぁ、せやけどあいつの言う通りや……うちは結局フリッカーとして大した事ないのかもしれん。赤壁杯かて、ゲンジ達と同じチームになれたから勝てたようなもんやしな……」
 ツバサは珍しく自虐的に凹んだ。
「何言ってんだよ、らしくないぞツバサ!」
「そうだよ!ツバサちゃんがいたから小竜隊は優勝出来たんだよ!」
「せやろか……あぁ、いやすまん。どうもあいつは苦手でな。負けた事ばかり思い出して自信がなくなるんや」
「そっか……苦手なのはしょうがないよね」
「次の試合、ウチのHP減らしてゲンジかユウスケのHPを増やしてくれ。ウチはサポートに回る」
「ツバサ……」

 “お前は、フリッカーの弱さに寄り添える優しさと、それを脅かすものへ立ち向かえる強さを持ってる。だから皆が力を託してくれる。それは大きな才能だ”

 不意に、ゲンジの脳裏にリュウジの言葉が浮かんできた。
「ツバサ」
 そしてゲンジは懐からグリップシュートポイントを取り出してツバサに渡した。
「な、なんや?」
「お前は大した事ないフリッカーなんかじゃない!ツバサがいたおかげで俺とドラグナーは強くなれて、だからこそ小竜隊は優勝出来たんだ!だから、今度は小竜隊がツバサの強さを証明してやる!」
「な、なんや急に……」
「次の試合、俺はツバサのサポートに回る!HPはお前に託すぜ」
 ゲンジの言葉にユウスケも頷いた。
「うん、僕もツバサちゃんにHPを渡すよ」
「な、なんや!話聞いとったんか!うちはあいつに勝った事ないんやで!相性最悪や!!」
「相性が悪くてもなんでも、馬場超次郎の情報を1番持ってるのはツバサなんだ。あとは、それを元にして対策すれば絶対に勝てる!そのために俺達がいるんだ!!」
「そうだよ!昔は勝てなかったかもしれないけど、今のツバサちゃんは僕達がいるんだから!」
「二人とも……おおきにな」

 そして、試合時間となり小竜隊と馬場超次郎がステージで対峙した。

「勝負や、東堂ゲンジ!」
 超次郎は相変わらずゲンジだけしか相手にしていない。
「お前の相手は俺じゃない。小竜隊だ!」
「同じやろ。一番強い奴を倒す、勝負の鉄則や!」

『さぁ、続いては小竜隊VS馬場超次郎君のバトルだ!おおっと、小竜隊はゲンジ君とユウスケ君のHPをツバサ君へ振り分けている!これがどうバトルに影響するのか!?』
 小竜隊のHP振り分けを見て、超次郎は鼻で笑う。
「なるほど、ワイがあからさまに東堂ゲンジ意識しとるから裏をついたか。いや、それともただのブラフか……どちらにしても仇になるで!」
「お前こそ、俺達を甘くみたら痛い目に遭うぞ!」

 小竜隊と超次郎が機体をセットする。
『さぁ、そろそろ始めるぞ!3.2.1.アクティブシュート!!』

「やれやぁ!インパクトラオン!!」
「ライジングドラグナー!!」
「レヴァントワイバーン!!」
 バキィ!!
 インパクトラオン一体に対してドラグナーとワイバーンの息の合った同時攻撃で押し込み、先手を取る。
「どや!」
「はっ、二人がかりで先手取った程度でいい気になんなや!」
「それだけやない!ゲンジ、分かっとるな?」
「あぁ、もちろんだ!!」
 ゲンジはドラグナーの翼を変形させた。
「ドラゴンウイングランサー!!」
 ヘッドは出してないので上部の突き出た翼のみがインパクトラオンのフェイスに突き刺さり、吹っ飛ばされる。

『インパクトラオンフリップアウト!残りHP4!!』

「よし、ツバサの言う通りだ!」
「当然!インパクトラオンは重心が高い、せやから低い位置に攻撃するワイバーンと相性最悪やったんや」
「ユウスケのアイディアでドラグナーのウインクランスだけを変形させてみたらドンピシャだぜ!」
 浮かれる小竜隊へ、超次郎は不敵に笑いながら機体をスタート位置にセットした。
「なるほど、伊達に99連敗しとるわけやないなぁ。せやけど、これはどうや!フリップスペル【ラピッド】!!」

 ラピッド……ガンナー専用スペル。3秒間エジェクタを連射できる。

「オラァァ!!!」
 ドンッ!ドンッ!ドンッッ!!
 インパクトラオンからキャップが超速で三発放たれた!
 一つはマインへ、そしてもう二つはドラグナーとアリエスへそれぞれヒットした。

『おおっと!インパクトラオンの必殺ショット炸裂!!スタート位置から動かずにドラグナーとアリエスを同時に撃沈!!』

「当然、ガンナーの事も把握済みなんやろうが、知っとってもどうにもならんやろ!」
「た、確かに」
「こりゃ避けられねぇ……」
 射出されるキャップの速度は凄まじい。それが連射して来られるともうどうにもならない。
「せやけど、これも狙い通りや!」
「なんやて?」
「これで、うちと馬場の一対一!HPも同じや!!」
「お前、条件を同じにするために……!」
「うちは今日、あんたを乗り越える!!」
 ツバサのターン。
「いっくでぇ!ピットイン!」
 ツバサはレヴァントワイバーンのバウンドパーツを外し、代わりにウィングを換装した。その姿はかつての前機、ウィングワイバーンを彷彿とさせた。
「換装した……!」
「飛べ!ウィングワイバーン!!」
「効くかぁ!!」
 ツバサの一撃はあっさりと防がれてしまう。
 しかし、そのおかげでワイバーンは反射し、マインに接触。
「なに!?」
「うちの攻撃が効かんのは承知済みや!せやったら無理にフリップアウト狙わんでええ」
「今のワイバーンは軽量化してかなり機動力が上がってる!これならいけるよ!」
「ユウスケの改造のおかげや、おおきにな!」
「あれだけフリップアウトに拘っとった張本が……」
「このウィングワイバーンは元々あんたを倒すために作ったものなんや!負けへんで!!」
「おもろいやないか!張本!!」
 ツバサの思わぬ作戦に笑う超次郎。今お互いがライバルとして視線をぶつけ合った。

「撃てぇ!インパクトラオン!!」
「決めるんや!ウィングワイバーン!!」

 そして、お互い一回ずつマインヒットを決め合い。
 ツバサHP3、超次郎HP2となり、超次郎のターンだ。
 超次郎はギシギシ……とインパクトラオンのホールドパーツをシメつけた。
「このままやとジリ貧やな……こいつを使うか。獅子破砕弾!!」
 ドンッ!!今までとは比べ物にならない強力なショットが襲いかかる!
「っ!」
 いくら軽いキャップとは言え、速度の乗った一撃には耐えきれずワイバーンは場外してしまった。
「なに!?」
「エジェクタの射出でフリップアウトするなんて……!」
「やるやんけぇ……!」
 機体をスタート位置に戻してツバサのターン。
「せやったらこれや!ピットイン!!」
 ツバサは再びワイバーンにバウンドグリップを取り付ける。
「お前の攻撃はインパクトラオンには通じんで!!」
「それはどないやろな……いくで!レヴァントワイバーン!!」
 シュン!!
 ツバサはワイバーンをスピンさせながら、ラオンではなくマインに向かってシュートした。
「お返しっちゅーんはこうやるんや!」
 ガッ!
 弾かれたマインがラオンへ向かってかっ飛び、フェイスに激突!その衝撃でフリップアウトしてしまった。
「マインでフリップアウトさせた!?」
「そうか、ガンナー機体は軽量になるから、マインでも十分攻撃が通じるんだ」
「飛び道具には飛び道具!名付けて、飛竜爆撃弾や!」

『見事な飛び道具返しでツバサ君がフリップアウトを決めた!よって勝者、小竜隊!!』

「おっしゃ!やったぜツバサ!!」
「すごいよツバサちゃん!」
「二人のおかげや!」
 喜びを分かち合う小竜隊を眺めながら、超次郎はニヤリと笑った。
「張本!」
 超次郎の呼び掛けに、ツバサが反応する。
「ええバトルやった!またやろうや!!」
「次もまた、うちが勝つで」
「アホ抜かせ」
 ツバサと超次郎は強く握手を交わした。

 ……。
 …。
 そして、大会は進行していく。

『続いては遠近リョウマ君VS西郷シモン君のバトルだ!!』

「いくでごわす!ロデオボルケーノ!!」
 ロデオボルケーノは敵機を抱え込むようなフロントと内部のマスダンパーが特徴の機体だ。
「ハンマードライブ!!」
 マスダンパーを利用した必殺の一撃が決まる。
「やるな……だが!神裁二連戟!!」
 が、リョウマも必殺技を繰り出してロデオボルケーノに勝利した。

 ……。
 …。

 続いてはハジメVSユーロフリッカー騎士団のバトルだ。

「フォーメーションアタックだ!いくぞ、サイア、トリトン!」
「了解、ガーシャ!」
「任せろ!」
 騎士団の三機が編隊を組んでガルディオンへ攻め立てる。
「エーデルリッター!!」
「アロンダイト!!」
「トライデント!!」
 バシュウウウウウ!!!
「受け止めろ!イントゥ・ザ・キングエンパイア!!」
 ガッッッッッ!!
 ガルディオンは大きく広げた翼とフロントのツノを使って三機を全て受け止めてしまった。
「「「なに!?」」」
「からの〜、ガルドライドブレイク!!」
 バキィィィ!!
 受け止めたまま三体同時に場外させ、ハジメの勝利だ。

「くっ、やはりまだまだアドルフ先輩達のようにはいかないか」
「いやでも俺も危なかったぜ。さすが、FICSで活躍するフリッカー騎士団のユースチームだ。引退前にお前らと戦えてよかった!サンキュ!」
「こちらこそ!FICSフリッカーになる前に良い経験ができた」

 ……。
 …。
 そして、次の試合は……。

『さぁ、第三回戦もこれが最後の試合だ!南雲ソウ君VSアメリカ代表ミコット・ヒース君!これまで圧倒的な力で相手をねじ伏せて来たソウ君に対し、ミコット君の妖術がどこまで通じるのか!?』
 金髪に青い眼をしていながら巫女装束を見事に着こなしている少女とソウが対峙する。
「ソウ・ナグモ、あなたとのバトル楽しみにしてましたわ。ワタシとサイキックフォックスの妖術、とくとご覧遊ばせ」
「くだらない。俺にまやかしは効かない」

『それでは行くぞ!3.2.1.アクティブシュート!!』
 バトルスタート。
 ソウは当然のように先手を取り、そして必殺技を繰り出す。
「クレイビングルイネーション!!」
 バキィ!!
 早くもフリップアウト。
 そしてミコットの反撃を耐えて再び必殺技を繰り出す。
「クレイビングルイネーション!!」
 バキィ!!
 九尾の狐型フリックス、サイキックフォックスは九本の尻尾を駆使してショックをいなして破損は免れているがそれもいつまでもつか……。
「オー、イッツアクレイジー!ベリベリーストロング!荒々しいですわね〜クォンクォン♪」
 しかし、当のミコットはどこか余裕そうだ。
 それはセコンドのアツシも感じているようだった。
「気を付けろソウ!相手は何か企んでいるぞ!!」
 と、アドバイスを投げかけるが……。
「貴様は黙っていろ!はあああああ!!!」
 ソウはアツシの忠告を反故にし、再びクレイビングルイネーションを繰り出す。

「クレイビングルイネーション!!」
 ポニュンッ!
 しかし、その手応えはなく、何か柔らかなものに埋没するような、そんな違和感があった。
「っ!」

『おおっと!デザイアフェニックスのフロントがサイキックフォックスのもふもふテールに捕らえられた!!必殺技は不発だ!!』

「なんだと……!」
「ふふふ、かかりましたわね……ゴッドコンシール!!」
 ミコットはサイキックフォックスの尻尾を2本外した。その先端はクリップになっており、デザイアフェニックスの分離パーツへ取り付けてしまった。
「これで、そのパーツは使えませんわよ!」
 そう言ってシュートし、マインヒットを決める。
『出たぁぁぁぁ!!サイキックフォックスの毒針妖術!取り付けられてしまうとそのパーツはシュート準備時に動かせなくなってしまう!分離パーツを駆使するデザイアフェニックに対しては効果抜群だ!!』

「舐めるなぁぁ!!」
 ドゴォォォ!!
 ソウは取り付けられた毒針を外すために分離パーツへ攻撃するが、デザイアシステムによって強固に吸着している事が仇となって分離パーツはピクりともしない。
「無駄ですわ」
 そんなことをしてる間にもミコットはじわじわとソウのHPを削っていく。

「ふざけるなぁぁぁぁ!!!!」
 ソウはより一層気合を込めてデザイアシステムを可動させる。
 それによって、徐々に分離したパーツが遠隔で動き出す。
「薙ぎ払ええええ!デザイアアアアアア!!!!」
 シュートすると同時に、分離パーツも可動し、取り付けられたクリップを薙ぎ払う。
「そんな!ゴッドコンシールが……!!」
 外されたパーツはそのまま場外し、ソウの勝利となる。しかし……。
「まだだぁぁぁ!!!」
 ソウの気は治らなかったらしく、そのまま分離パーツをデザイアシステムを使って移動させ、サイキックフォックスの後ろにセットした。
「そんな、バトルはもう……!」
「うおおおおおお!!クレイビング……!」
 シュンッ!
「よせ、ソウ!」
 デザイアフェニックスが放たれた瞬間、場外からワンサイドウルブスがスピンしながら飛んできてフェニックスの軌道を逸らした。
「アツシ、貴様……!」
「バトルはもう終わった。お前の勝ちだ、ソウ」
「勝ちだと……?こんなものは、こんな、もの、は……!」
 アツシを睨みつけていたソウだが、フッと力が抜けて倒れ込む。それをアツシが抱えて退場する。

「アツシ、ソウ!」
 歩いていくアツシの前に小竜隊が駆け寄って来た。
「だ、大丈夫なのかよ……!」
「あぁ、問題ない」
「どこがや!?」
「問題大有りだろ!」
「今のバトルもソウ君も、普通じゃないよ!」
「……お前達と話してる時間はない」
 アツシは小竜隊の横をすり抜けて歩いていく。
「なんでだよ……なんでそこまでして……ソウ……!」

 ……。
 こうして、トリニティカップ三回戦は終了した。
 準々決勝大会が開かれるまでの1週間、再びいつもの学校生活が始まる。

「いよいよ次は準々決勝やな!ナガト、覚悟しぃや!」
「ああ!お前達と戦えるのを今から楽しみにしてる」
「でもナガトくん、マイティオーガは大丈夫なの?」
「天領ガンのツテで正本クリニックが経営してる研究所を使わせてもらっているから次の試合までには間に合わせるさ。ただ、素体がもうかなりガタが来ているから、作り直した方がいいかもしれない」
「そっか……僕も協力したいんだけど」
「俺のことはいいさ、それより問題はあいつだ」
 そう言いながらナガトはゲンジへ視線を移す。
 ゲンジは席に着いてボーッと教室の喧騒を眺めていた。
「ゲンジの奴、大会終わるたびにこんな調子やな」
「無理もないよ、昨日のソウ君はこれまで以上におかしかった」
「……変わり果てたライバルにショックを受ける気持ちは俺も分かる。だが、解決するにはバトルしかないからな」
「うん……」

 ガララ、とまだHRでも無いのに黄山先生が教室に入って来た。
「あれ?先生来るの早くない?」
「あぁ、HRではない。小竜隊宛に海外から荷物が届いたから、持って来たんじゃ」
「うちらに?」
 黄山先生が運んできたダンボールの周りに小竜隊が集まる。
「誰から来たんです?」
「モルト・カークスじゃ」
「モルトって、僕らが一回戦で戦った!?」
「おう、手紙も届いとるぞ」

 一同、モルトの手紙に目を通す。そこには拙い日本語で小竜隊への感謝と地元でフリックスが普及していること、そして遊尽コーポレーションにマグナムエレファントを量産してもらった事が書かれていた。
 そして送られた荷物はその量産エレファントのお裾分けだそうだ。
 ダンボールを開けるとそこには数百個のマグナムエレファントがギッチリと詰まっていた。

「こ、こんなに……」
「こないぎょうさん送られてもなぁ……」
 あまりの量に一同引き気味だが、ゲンジはモルトからの手紙を読みながら想いに耽っていた。
「ゲンジ君?」
「なんや、ボケっとして」
「え、あぁ、なんか、俺たちのバトルでこうやって知らない世界が広がってるんだなって思うと、嬉しくなってさ」
「ゲンジ君……」
「バトルして、仲間が増えて、一緒に強くなって、世界が広がる……ソウにも、伝わればいいんだけどな」
「せやな……」
「うん……」
 ゲンジの言葉にしんみりと頷くユウスケとツバサ。
「それはそれとしてこの大量のマグナムエレファントはどうするんじゃー?」
「ま、まぁ、皆で山分けすればいいんじゃないかな?あって困るもんじゃないし、なぁナガト……ナガト?」
 今度はナガトが、手に持ったマグナムエレファントをいじりながらブツブツと思案していた。
「そうか、バネとロック機構でセンターパーツをY軸方向に上から叩きつけるように前方へ展開してるのか……これを応用出来れば……」
「おいナガトどうしたんだ?」
「あ、すまない!これ、一つ俺にくれないか?」
「え、あぁ、そもそも俺たちに送られたもんだしこんだけあるんだから一つと言わずいくらでも良いと思うぞ」
「サンキュ!」
 ナガトはマグナムエレファントを手に席に戻って何やら設計図を描き始めた。

 ……。
 そして放課後、ナガトはHRが終わると同時に駆け出した。スマホを耳に当てて話しながら。
「あ、ガン?これから研究所の使用は大丈夫かな?……あぁ分かった、ありがとう!」
 スマホを切って嬉々と走り出すナガト、そんなナガトの前に一人の人物が現れたので立ち止まった。

「……久しぶりだな」
「遠近、リョウマ……!」

 突如現れたリョウマの手には装飾の施されていないフリックスが握られていた。

 

   つづく

 

 

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