洗濯バサミ!フリックス・アレイ 第6話「借金1億万円!?トオルの転落ポイント!」

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第6話「借金1億万円!?トオルの転落ポイント!」

 

 バクタンセ・サミンMkⅡを完成させたタクミは、翌日早速意気揚々と公民館で開催されるフリックス大会へ出場しました。

「いけぇ!バクタンセ・サミンMkⅡ!!」
 タクミは新型機の威力を見せてどんどん大会を勝ち抜いていきます。

「すっごいなぁ、タクミ」
「いつの間にそんな強いフリックス手に入れたんだ?」
「へっへっへ、頑張って作ったからね〜!」
 皆に持て囃されて、タクミは上機嫌です。しかし、ある違和感に気付きます。
「そういえば、トオルは今日参加してないのかな?」
 タクミが疑問を口にすると、皆顔を見合わせました。
「あいつ、最近連絡取れないんだよなぁ」
「学校も休んでたし」
「そっか、風邪でも引いたのかな……せっかくあいつにリベンジしてやろうと思ったのに」
 サミンⅡを作った最大の目的を果たせないまま、タクミはどこか物足りなさを感じるのでした。

 ……。
 ………。

 それから数日後。結局トオルには一度も会えず、リベンジを果たせないまま忙しい日々は続きました。

「いらっしゃい!まいど、1200円になります!おつりは……」
 センバ家は日に日に大繁盛。それもお客さんの中にはフリッカーと思われる男の子が増えてきています。

「すみませーん、バネが強い洗濯バサミってありますか?」
「俺、丈夫なやつが欲しい!」
「クールな色合いの洗濯バサミを売ってくれないか?」

 どれもこれも、本来の洗濯バサミの用途で使うとは思えない注文ばかりです。
「ふぅ、忙しすぎて目が回るや……それにしても、なんか強い洗濯バサミがやたら売れるなぁ」
「そりゃ、もうすぐグレートフリックスカップが開催されるからね。皆、バクタンセサミンみたいに強くなりたくてここの洗濯バサミを買ってるってわけさ」
 タクミがなんとなくボヤいていると、いつのまにか目の前にいたクラスメイトの男子に声をかけられました。
「へぇ、そうなんだぁ……ところで、グレートフリックスカップってなに?」
 間延びしたタクミの返事にクラスメイト男子はズッコケます。
「フリックスの全国大会だよ……。数年前にプレ大会が開催されてからついに第一回が開催されるんだって」
「ふーん、そっかぁ……って、全国大会!?」
 言葉の意味を理解したタクミは素っ頓狂な声をあげて立ち上がりました。

 その夜、店仕舞いを終えたタクミは早速パパへ懇願しました。

「ねぇ、いいでしょパパ〜、今度の週末幕張に行っても」
「う〜む……」
 タクミの懇願にパパは難しい顔で唸っています。
「しかし、週末は店の手伝いをしてもらわんとなぁ」
「そこをなんとか!帰ったらしっかり働くからさぁ〜!」
「そうはいってもな」
「まぁいいじゃないの、パパ」
 渋い返事のパパへ、ママが間に入ります。
「タクミのおかげでお店が繁盛したんだもの。タクミの好きなもの、少しは認めてあげてもいいんじゃない?」
「ふ、ふむ……」
 ママの言葉に、パパは渋々ながら頷いた。
「じゃあ!」
「だが、出るからには」
「もちろん、優勝するよ!」
「違う。店の宣伝もしっかりやるんだぞ!」
「あらら……はは、分かったよ」

 パパからの許可を得たタクミは自室に戻って機体のメンテに勤しみます。
「いよいよだ。ようやく僕の夢が叶うんだ……頼んだよ、サミンⅡ」
「ぶひ!ぶひ!」
 ケージにいるこころも応援してくれてるかのように鳴いています。
「よーし、がんばるぞー!!!」

 ……。
 ………。

 そして、あっという間に時間は過ぎていき……。
 ついに、大会当日の朝です!

「よーし、準備OKだ!」
「ほんとに大丈夫?忘れ物してない?ハンカチとティッシュ持った?水筒とお弁当もカバンに入れた?お弁当が足りなかったらおやつも持っていきなさいね」
 ママがパンパンに膨れ上がったリュックをタクミに持たせてきます。
「ママ、大袈裟だよ」
「でも、タクミにとっては初めての遠出でしょ?ママ心配で……」
「遠出って言っても千葉県内だし」
「ママ、男はいずれ旅立つ時が来るもんだ。黙って行かせてやるのが親ってもんよ」
「あら、最後まで反対してたのはどこの誰だったかしら?」
「わしは反対してたわけじゃない。店とタクミの将来を考えていただけだ」
「パパ……」
「タクミ、これはパパからの餞別だ。しっかりやってこい!」
 そう言って、パパは大量の紙束をタクミに渡しました。
「って!これ店のチラシとクーポンじゃん!!」

 パパやママの熱い激励を受けて、ついにタクミは出発しました。
「えっと、野田から海浜幕張に行くためには……」
 乗り換え案内を再度確認しながら進んでいると……。
「お、おお、お願いします……何か恵んでください……」
「もう何週間も、何も口にしてないんです……!」
 道中身なりがボロボロの親子に絡まれてしまいました。
「え?」
 そしてタクミはその中の一人の少年に見覚えがあります。
「トオル!?」
「タクミ……たすけ、て……」

 ……。
 ………。

「「「ガツガツガツ!!!」」」

 あまりにも見窄らしい姿に成り果てた琴井一家を哀れに思ったタクミは持ってきた弁当とおやつを彼らに与え事情を聞くことにしました。

「ああ、ありがとうございます!」
「貴方様は命の恩人です!」
「いえ、そんな……」
「うぅ、ありがとうなタクミ……僕、お前に対して嫌味な事ばかりしてきたのに……ううう……!」
「い、いいっていいって!それよりも一体これはどういう事なの?」
「実は、私の経営している会社が筆頭株主の岡部に乗っ取られてしまいまして……」
 トオルの父はゆっくりと事情を話してくれました。
 会社の株が筆頭株主によって全て買い占められて経営権を奪われてしまった事、もちろんそんな簡単に株を買い占める事なんて出来ないはずですが……。

「丁度我が社が、フリックス界の大手である遠山フリッカーズスクールと共同企画を進めるタイミングで……忙しくなった隙を突いて株主たちと結託したのでしょう。気づいた時には既に我が社の株がほとんど買い占められており」
「もちろん、私達は抵抗しました。しかし……」
「僕のせいなんだ……僕の……」

 買い占めた株を戻すよう交渉はしたが、岡部は『フリックスバトルで勝ったら』という条件を出した。

「フリックス関連の企画を運営する会社として、フリックスが強いほうが経営するのは理にかなってるって言われて僕が挑んだんだ、けど……」

 シールドセイバーはあっさり破れてしまい、琴井一家は全てを失ってしまった。

「あのシールドセイバーに勝つなんて……」
「なんでも、僕とトオルのバトルの中継を見てたらしくて、サミンを参考にしたフリックスを使ってた」
「うっ……」
(なんか責任感じるなぁ……)

 特に何も悪い事はしてないけれど、今の状況の遠因が自分にある事を感じて、人の良いトオルは心を痛めるのでした。

「シールドセイバーもあいつらに奪われちゃったし、僕にはもう何もないんだ……」
「……よし!」
 タクミは立ち上がりました。
「行こう、トオル!!」
「え、どこへ?」
「決まってるだろ!取り返しにだよ!」
「え、でも……」
「会社の権利というのはそう簡単に取り戻せるほど単純なものでは」
「会社の事はよく分からないけど……でも、大事な愛機を奪われたままにするのはよくないよ!」
「だけど、お前……」
「さぁ、早く!」

 タクミは有無を言わさずトオルの手を引っ張って琴井コンツェルン本社に向かいました。

 本社ビルでは何人ものガードマンが立っていて物々しい雰囲気です。
「ここか」
「おい、さすがにここを突破するのは無理じゃないか?」
「大丈夫。僕にはパワーアップしたサミンがいるんだ」
 タクミはサミンⅡを見せます。
「そ、そのフリックス……」
「君に勝つために作ったんだ。だから、シールドセイバーは絶対に取り返さないとダメなんだ!」

 バッ!
 タクミはサミンを門に向かってシュートします。
 ドゴオオオオ!!!
 衝撃波で埃が舞い、ガードマン達が怯みます。その隙を突いてタクミとトオルは駆け出しました。

「あっ、待て!」
 しかし、ガードマンも黙ってません。素早くフリックスを取り出してシュートします。
 戦艦をモチーフにした機体、黒いゴムシートを貼られた機体、電車モチーフの機体……様々な機体の攻撃が襲い掛かりますが……。
「いっけー!サミンⅡ!!」

 サミンⅡのスピンがそれを薙ぎ払い、二人はビルの中へ潜入する事に成功しました。

「す、凄い。いつの間にこんな力を」
「言っただろ、お前にリベンジするためだって」
「……こんなの見せられたら、僕も早くシールドセイバーを取り戻さないとな!」

 二人は薄暗いオフィスの奥へ駆け抜けていきました。

 

   つづく

 

 次回最終回『フリッカー伝説!誘われて洗濯バサミボーイ!!』

 

CM

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