特別編最終章「ダントツのその先へ」
フリップゴッドが向かった先はトルコにある人類最古の遺跡、ギョベクリテペだという情報を得たバン達は早速現地へ向かった。
ゆうは破損したフリックスを修理するために帰国したので、バン、リサ、ザキの3人パーティだ。
「ここがギョベクリテペか…!」
目の前に広がる広大な遺跡群に圧倒される。
「人類最古の遺跡…すごい迫力」
「けっ、そんな事はどうでもいい。ここに本当にフリップゴッドがいるんだろうな?」
「それはわかんねぇよ。あの教会に行った後にここに向かったってだけなんだから」
「ふん、まぁいい。ここにいても仕方ねぇ。とっとと中に入るぞ」
「え、で、でも、勝手に入っていいのかな……?」
「フリップゴッドが入ったなら俺たちが入っても問題ねぇだろ」
「うーーん、まだそうと決まったわけじゃ……」
バン以上にザキは短気で扱いが難しい。リサが苦戦していると、辺りを見渡していたバンが声をあげた。
「あ、おい!あそこ見てみろよ!!」
「え、なに?」
「ほら、あっちの方!なんかちょっと小さいけどこことよく似た遺跡っぽいのがあるぜ」
「ほんとだ……しかもちょっと人工物っぽい」
「もしかしたらフリップゴッドの住処かもしれねぇ!行ってみようぜ!!」
「…可能性はそっちの方が高いか」
こうして、バン達は本物の遺跡から少し離れた場所にある小さな遺跡レプリカのような場所に向かった。
その遺跡は近づいてみるとますます人工物感が溢れていた。
まるで、テーマパークのアトラクションのような印象を受ける。
「うーん、どうみてもこりゃ作りもんだな」
「うん、しかもどことなく生活感があると言うか、家みたい……」
「あ、これ見てみろよ!!」
バンは入り口っぽい穴の横を指差した。
そこにはいくつかのゴミ袋が積まれていた。
「ゴ、ゴミ出しされてる……!」
「遺跡にゴミ袋……場違い感半端ねぇな」
「あ、しかもこのゴミ袋!プラゴミがある!!これ、もしかしフリックスのパーツか……!?」
透明なゴミ袋の中には壊れたのかそれとも製作失敗したのかフリックスらしいものもある。
「これは、ビンゴだな。この中に奴がいる」
「でも、インターホンとか無いなぁ……」
「知るか。入るぞ」
「えぇ!?い、いいのかな……」
戸惑うリサを無視して、ザキはずんずんと中に入っていく。
「待てよザキ!リサ、俺達も行こうぜ」
「う、うん……」
3人は薄暗い階段を降りると、長い廊下に差し掛かった。
壁には淡く光る松明型の電気が照らしている。
「ちっ、いつまで続くんだこの廊下は」
「ほ、ほんとに勝手に入っちゃってよかったのかな?」
「悪い事しにきたわけじゃねぇし、怒られたらそん時謝ればいいや。とにかくここまで来たら行くっきゃねぇ」
慎重なリサに行動派のザキ、そしてリサを納得させつつ行動できるバン。この3人のパーティバランスは意外と良い。
「それにしても、遺跡を模してるだけあって造形も凝ってるね……」
「壁に書かれてる壁画とか化石とか、それっほいよなぁ。
とくにこの貝の化石!よく出来てるぜ」
バンが何気なくホタテのような化石に触れた。
その瞬間!地響きが鳴り、フィールドが出現した。
「な、なんだ!?」
「急にフィールドが!」
さらに、壁に埋もれていた貝の化石の周りがヒビ割れていき……バキィィ!と壁が割れてホタテ型のフリックスがバンめがけて飛び出してきた。
「おわぁ!ビートヴィクター!!」
バンはとっさにヴィクターをシュートする。
ガキン!
空中で激突する二台、その時ホタテの二枚貝が閉じてビートヴィクターに噛み付いてしまった。
「いぃ!?」
「殻が閉じた…!」
噛み付かれたままフィールドに落ちる。
「な、なんだこいつ……!」
戸惑ってる暇もなく、フリッカーもいないのにホタテが勝手に動き、いつのまにか設置してあったマインに当たる。
バンッ!マインで一ダメージ。
「こ、こいつ!一人でに!?」
「バトルしようってのか!」
「おもしれぇ!!だったらやってやるぜ!次は俺のターンだな…って、これじゃ機体回せねぇ!」
拘束されているため、向きを変えてはホタテの位置を変えてしまう事になる。
シュート前の変形や向き変えは敵機の位置を変えないようにしないといけない。
「へん!だったらやりようはあるぜ!フリップスペル!デスペレーションリバース!!」
自滅を無効にするスペルを使い、噛み付かれたまま場外する。
ヴィクターはスペルの効果でフィールドに戻り、ホタテはそのままフリップアウトしてしまった。
「へっへーん!俺の勝ち!」
まだHPは残ってるはずだが、ホタテはもう動かない。
「フリッカーがいないから、HPは普通より少ないのかな?」
「まぁ、これ以上襲ってこないなら構う必要はねぇだろ。行くぞ」
更に進むと今度はひらけた行き止まりの空間にフィールドが二つ設置してあり、そのフィールドにはそれぞれ海老の化石のようなものが描かれていた。
「貝の次は海老か」
「古代の遺跡らしい生物ではあるけど……」
描かれた化石からそれぞれテナガエビ型機体とロブスター型機体が出現する。
「次はこいつらを倒せって事か。分かりやすくていい」
ザキはロブスターがいるフィールドにセット。
リサはテナガエビのいるフィールドにセットした。
「アクティブシュート!」
まずはザキのバトル!
同時シュートでダークネスディバウアとロブスターが激突する。
するとロブスターのフロントプレートが前に伸びつつキックバネでディバウアを跳ねあげた。
「なに!?」
「カチ上げた!……伊江羅博士が試作してたブルコサミンみたいだ!」
回転しながら宙を舞うダークネスディバウア。このままでは場外だ。
「へっ、なかなかやるな。だが、その手の技はもう通じねぇ!ダークネスディバウア!アンデッドリバース!!!」
ガンッ!!
ダークネスディバウアは壁にぶつかった反動でフィールドに戻り、その勢いのままロブスターにぶつかって場外へ弾き飛ばした。
「ふん」
「やるな、ザキ」
そしてリサは……。
「プロミネンスウイング!」
プロミネンスウェイバーのサイドパーツを手動可動させてマインヒットしつつ、マインを遠くへ飛ばした。
「これなら反撃は出来ないはず……!」
しかしテナガエビは多関節のアームを自在に伸ばしてあっさりマインヒットした。
「す、凄い…!これならどこにマインがあってもヒットができる……でも、ならその変形を逆に利用すれば!」
バシュッ!
リサは力加減をコントロールしてテナガエビへ攻撃。
あまり飛ばなかった上にマインヒットもしなかったが……テナガエビのアームがフィールド中央のフリップホールの上で停止してしまいフリップアウトになった。
「よしっ!」
「リサもさすがだぜ!」
妨害を次々と突破して先へ進んでいく。
今度は鴨の壁画から現れたフリックス(マグレカナール)とバトルだ。
少し大きめのフィールドなので3人で相手にできる。
「今度は鴨かよ」
「鴨はいろんな遺跡の壁画に描かれる動物だから、モチーフにぴったりなのかも」
ともかくアクティブシュート!
ヴィクターと激突し、接触したまま停止し鴨型フリックスの先攻になった。
鴨型フリックスは、パーツの一部がはずれ、小さなクリップみたいなパーツをビートヴィクターのウイングに挟む。
「なんだ?なにやったんだ?」
そして、テナガエビのようにアームを伸ばしてマインの近くまで伸ばしてシュート。
プロミネンスウェイバーに接触した瞬間にフロントパーツでカチ上げてぶっ飛ばした。
「っ!ウェイバー!!」
しかし、上方向へは飛ばされたものの横への距離はさほどでもなく場外はしなかったが、ダークネスディバウアにぶつかり、弾かれたディバウアはマインに当たってしまった。
「くそっ!一ターンで俺たち3人にマインヒットしやがった!でも、今度は俺の番だ……って、あれ?」
バンはヴィクターの向きを変えようとするものの、動かせない。
「バン!そのウィングに取り付けられたクリップみたいな小型パーツのせいだよ!一応それも接触してる敵機の一部だから、向き変えするときに位置を変えられない!!」
「ま、マジかよ……!まるで毒針じゃねぇか」
「けっ、だらしねぇ奴だ」
バキィ!!
ダークネスディバウアがビートヴィクターを攻撃し、その衝撃でパーツを外した。
「さ、サンキュー!」
「けっ」
「テナガエビの変形アームにロブスターのカチ上げ、そしてさっきのは変則的だけどホタテみたいな拘束……今まで戦ったフリックスの機能のてんこ盛りだなんて」
「ふん、だが重量配分やバランスに問題があるな。アームの長さはテナガエビには及ばないし、カチ上げの威力もロブスターに劣る。拘束にしても相手に密着しないと出来ない。なにするにしても中途半端な鴨同然だな」
かなり辛辣だが言い得て妙だ。
歩く事も飛ぶ事もできるが、そのどれも中途半端なのが鴨の特徴でもある。
この機体は、強そうな機能をてんこ盛りしたところで最強にはなれないと言う事を暗示したものなのだろうか。
「一気に片付けるぞ!ダークホールジェノサイド!!」
「ビートインパクト!!」
「プロミネンスウイング!!!」
バーーーン!!
三体の必殺技を同時にぶつけ、鴨型フリックスは場外してしまった。
次にたどり着いたのは今までとは一転、近未来を思わせるコンピュータが敷き詰められた研究所のような部屋だった。
「ここは、さっきとは雰囲気違うな」
「なんだか、ディスティニーランドの冒険エリアから未来エリアに来たみたい」
今度はフィールドが三つ設置してあり、それぞれにフリックスが待機している。
「ま、でもやることは変わらないみたいだな」
3人はそれぞれのフィールドにつき、アクティブシュートをした。
そして、それぞれの敵機のターンになる。
「こいつらはどんな攻撃をするんだ!?」
まず、バンが対峙してるフリックスは離れた位置から導線を伸ばして先端にあるバネギミックパーツをヴィクターに近付ける。
ザキが対峙してるフリックスも有線式で同じような事をするが、その戦はゴムのポンプのような印象を受ける。
リサの方は何にも繋がれていない分離パーツのメカをマインに近づけた。
そしてシュート。
パンッ!
本体側のスイッチが押されたかと思うと、メカがバネを解放して攻撃を仕掛けた!
「なに!?本体から離れてるのにバネギミックが!!」
「なるほど、有線の電力、空気圧、無線電波……それを使って遠隔でバネギミックを発動させたか」
「まさに未来だぜ…!威力が出てないから助かったけど、これで威力があったらやべぇ」
「ふん、仮に出来たとして、こんなシュート準備に手間がかかる機体が強くなるとは思えんが……」
「そうだね、ちょっと効率悪いかも。それに見て」
リサに促されて敵機を見てみると、それぞれ煙を吹いていたり、空気が漏れていた。
「もう戦えそうにないね」
「だな」
その時、部屋にラフな格好をした一人の日本人男が入ってきた。年齢は20代後半くらいに見える。
「あっちゃ〜!ショートにオーバーヒートにパンクかぁ〜!!結構頑張ったんだけど、まだまだ実用化は難しいみたいだな」
いきなり現れた男に3人は唖然とする。
「え、えっと……?」
反応に困っていると、男はフランクに笑いかけた。
「あぁ、悪い悪い。久しぶりの客人で嬉しくなってな、つい手荒な歓迎をしてしまった」
「あ、はい、いえ、その、私達も勝手に入っちゃってごめんなさい!」
「あぁ、いいっていいって。それで、君達はなんの用があってこんなところまで来たんだい?」
「お、俺たち、フリップゴッドに会いにきたんだ!おじさんは何かしらないか?」
「お、おじさ…まぁ、僕ももうそんな歳か……それにしても、フリップゴッドとはまた懐かしい響きだなぁ」
「ってことは、知ってんだな?奴の居場所を」
「まぁね。知ってるも何も、僕がそのフリップゴッドさ」
男は得意げに答えた。
「へっ?あ、あなたが……!」
なんとなく想像は出来てたものの、そんな軽く答えられると拍子抜けしてしまう。
「で、フリップゴッドの僕に何の用かな?」
「はっ、愚問だ。俺はてめぇをぶっ潰すために……!」
「そ、そ、その前に!!」
リサは慌ててザキを遮って叫んだ。
「あ、あの!私達、遠山フリッカーズスクールの遣いの者で……!」
「遠山……ほぉ、あのじいさんの差し金か。で、今更俺に何があるってんだ?」
「その、フリックスの国際連盟の設立と世界大会開催を目指してまして……そのために、創始者であるフリップゴッドの許可が欲しいんです!」
リサは緊張しながらもやや早口気味に用件を伝えた。
「なるほどな……相変わらず律儀な人だ。運営権は譲渡したんだから、気にしなくていいのに」
「そ、それじゃあ……!」
その口ぶりから許可を得るのは簡単そうだ。そう思ったのもつかの間。
「知らない所で勝手にやる分には止めようがないが、僕の口から許可する事は出来ない」
「へ?」
予想外の返事だった。
「ちょ、なんでだよ!今の許可する流れだったじゃんか!!」
「……ここに来たって事は、ある程度の事情は知ってるだろう。僕は自ら生み出した子供を自分の手で殺めたも同然の罪を犯してしまった。そんな罪人がフリックス界の発展を望む事は許されないんだ。なによりも、僕自身が僕を許せない。だから懺悔として発展のしようがない人目のつかない場所でフリックスを作り続けている」
「そ、そんな……!」
「へんっ!だったらバトルしようぜ、フリップゴッド!!」
「え、バン…?」
「リサ、何びっくりしてんだよ。最初っから分かってたじゃねぇか。俺たちの力を見せつけなきゃ許可は得られないだろうって事は」
「あ……」
そうだ。ただ話すだけでは許可を得られないって事は出発前に予想していた事だ。
あっさり上手く行きそうだったのが裏切られたために忘れてしまった。
「バトルか……」
「フリップゴッド!お前さっき、自分の子供を殺したとか言ったけどな!フリックスはまだ全然生きてんだよ!それで俺たちはここまで強くなれたんだ!!お前だってここでめっちゃフリックス作ってたじゃねぇか!いくら神でも勝手な事言ってんじゃねぇ!!」
「……フッ、確かに僕の言い分は勝手だな。良いだろう、受けて立つ。僕の子供がまだ生きて成長してくれた事を証明してくれ」
「おう!」
「話は終わったようだな。俺にとって事情は関係ねぇ。とっととやるぞ」
元々バトルする気しかなかったザキは、バトルする流れになってようやく口を開いた。
そして、フリップゴッドとバンたち三人が対峙するようにフィールドに着く。
「なぁ、フリップゴッド!ほんとに俺たち三人を相手にするのか?」
「あぁ、まずは小手調べだ。僕に勝てたら一人一人相手をしてあげるよ」
「はっ、なんだっていい。とっととケリつけるぞ」
四人が機体をセットする。
「フリップゴッドのあの機体、バンキッシュドライバーじゃない……!」
フリップゴッドのセットした機体は今までに見たことがない大型の機体だった。
「僕が表舞台から姿を消して約7年…なんの進歩もしてないと思ったかい?」
「っ!」
「すごい、威圧感…!」
「はっ、くだらねぇ。それで俺たち三人がかりに勝てるつもりか」
「「「3.2.1.アクティブシュート!!」」」
「いけっ!ビートヴィクター!!」
「頑張れ!プロミネンスウェイバー!!」
「やれぇ!ダークネスディバウア!!」
「飛ばせ、バンキッシュドライバー・キャノン!!」
カッ!!
一瞬だった。
バン達三人のフリックスがバンキッシュドライバー・キャノンに接触した瞬間、一気に三体とも場外してしまった。
「え?」
「なんだ?何が起きたんだ?」
「バカな……俺達三人の機体を一撃で……!」
「これがバンキッシュドライバー・キャノンの力さ」
「そうか、あの機体はキックバネをロブスターとは逆の向きでつけてる……!それで、一旦掬い上げてからキックバネの力で斜め前に放り投げるように飛ばしてるんだ」
「斜め前に……!って事は、飛ばす距離的に考えたらロブスターやただのバンキッシュドライバーよりもずっと火力が高いって事か!」
「ちっ、キャノンの名は伊達じゃねぇって事か」
「ふっ、どうした?怖気付いたかい?」
「誰が!ますます燃えてきたぜ!!」
圧倒的力の差を見せつけてもまだ闘志を燃やすバン達にフリップゴッドは感心する。
「ほぅ……」
「相手がどれだけ強くても三人のこっちの方が有利ってことに変わりはない!」
「うん、三人で分散して狙いをつけなくすれば」
「ターンさえ来ればこっちのもんだ」
「悪くない考えだ。だが……!」
再びアクティブシュート。
三人はバラけるようにシュートした。
「いけっ!バンキッシュドライバーキャノン!!」
「っ!」
バンキッシュドライバーキャノンは真っ直ぐにプロミネンスウェイバー目掛けて向かってきて、あっさりとぶっ飛ばした。
「バラけても同じさ。一人一人確実に飛ばしていくよ」
「くっ!」
こんな感じで、どれだけ思考を凝らしてもアクティブで飛ばされてしまいダメージを削られて完敗してしまう。
「はぁ、はぁ……!」
「全然勝てねぇ!!」
「これでもう13勝。どうだい?まだやるのかい??」
「ったりめーだ!!」
「勝つまでやってやるぜ!!」
「なるほど……」
そして、何度も同じように飛ばされていき……。
何十回目ものアクティブシュート。
「いっけぇ!!」
「飛ばせ!!」
バンキッシュドライバーキャノンのフロントにウェイバーが乗った瞬間、ビートヴィクターがウェイバーを弾き飛ばした。
「なに!?」
ギミックは不発し、バン達の先手となる。
「おっしゃ!やったぜ!!」
「バン…!そうか、バンキッシュドライバーキャノンのギミックは一旦相手を掬い上げないといけないから接触から発動までに若干タイムラグがある」
「そ!何度か狙ってたけど、なかなか成功しなくてさ!やっと出来たぜ!!」
「ほぅ……」
「何にせよ、奴のギミックはチャージ状態だ!一気に決めるぞ!!」
「当然だぜ!!」
三人は必殺技の構えを取る。
「飲み尽くせ!ダークホールジェノサイド!!」
「駆け抜けろ!プロミネンスドリフト!!」
「カッ飛べぇ!ビッグバンインパクトォォ!!!」
バキィ!!!
三体もの日本トップフリッカーの必殺技に加えて、バンキッシュドライバーキャノン自らのバネの反動もあり、大きくぶっ飛ばされて場外してしまった。
「へっへーんやったぜ!やっぱり俺がダントツ一番!!」
「は、はじめてフリップゴッドにダメージを与えられた」
「けっ!ったく手間取らせやがって」
喜びに沸き立つ一同だが、フリップゴッドは不敵に笑う。
「ふっ、甘いね」
「へ?」
「よく見てみるんだ!」
フリップゴッドはビートヴィクターのフロントを指差す。
なんと、フロントの一部がほんの僅かに穴の上にかぶっていた。
「つまりこれは自滅。フリップアウトは無効さ」
「えぇーー!!」
「ちっ、バカが!」
「そ、そんなぁ!ほんのちょっとじゃん!!見逃してよ!!!」
「ダーメ!ルールはルールさ!」
「神様のくせにみみっちいぞ!!」
「ふっ、ははは!あっはっはっ!!!」
バンが文句垂れているとフリップゴッドは急に笑い出した。
「な、なんだよ?」
「いや……さぁ、続きだ!トコトンやろう!!」
「へん!あったりまえだぜ!!」
それから数時間、延々とバトルが続いた。
とは言え、同じような展開で全くフリップゴッドにダメージを与えられずに負けまくったが。
それでも四人とも楽しげだった。
「こ、これで……527敗目……!」
「くそっ、勝てねぇどころかダメージすら与えられねぇとは」
「へへっ、でもぜってぇ諦めねぇぞ…!」
疲労困憊になりながらもなお立ち向かう三人に、フリップゴッドは感慨深げな表情で笑った。
「ふっ……」
「さぁ、次だ!行くぜ!!」
「「「3.2.1.アクティブシュート!!!」」」
バーーーーーーン!!!!
力を振り絞った渾身のアクティブシュート!
フィールド中央で四機がぶつかり、その衝撃で全ての機体が場外へ弾け飛んでしまった。
「ど、同時、場外……?」
「へ、へへ、初めてドロー出来た……ぜ……!」
「けっ、ドロー程度で喜ぶ……な……!」
ドサッ!
力尽きたのか、三人はそのまま倒れ、気絶するように眠りについた。
「……ふふ。そうか、そうだったんだな……僕の子供は、生き続けていたんだ」
感慨深げにそう呟くフリップゴッド。
その時、後ろから足音が聞こえたので振り向くとそこには遠山段治郎が立っていた。
「派手にやったようじゃな。ゆうじよ」
「……父さん」
「どうじゃ?これがお前さんの子供が成長した姿じゃ。なかなかなものじゃろう?」
段治郎の問いに、フリップゴッドはしばらく沈黙した後に口を開いた。
「……僕は自分の罪を許す気はありません。ですが、償いの方法を改める必要はありそうです」
「そうか」
「それに、見てみたくなりましたよ。彼らの向かう、ダントツのその先を……」
……。
………。
そして、時は流れ……。
千葉県、幕張メッセ。
ここに数多くのフリッカーが集結し、それをバトルフリッカーコウがまとめていた。
『さぁ、いよいよ!フリックスアレイ史上初の世界大会!【フリックスアレイインターナショナルチャンピオンシップ】が開催されるゾォ!!!
まずはここ!日本の中心千葉県で、日本代表決定戦を行う!!!
全国から集まってきたフリッカーのみんな!気張っていけよぉ!!!』
ワーーーーー!!!
と、大きな歓声が湧き上がる。
『さぁ、この中から世界の戦いへ羽ばたくのは誰なのか!?そして、世界一のフリッカーへと輝くのは……!!』
バトルフリッカーコウの声に、バンが拳を握りながら叫ぶ。
「へんっ!そんなの決まってるぜ!!世界でも俺が!!!」
この時、世界中のフリッカー達の心が一つになったのか。
一斉に同じ言葉を叫んだ。
「「「ダントツ一番!!!」」」
完