弾突バトル!フリックス・アレイ 第50話


第50話「恋い焦がれていたバトル!」

 

 準決勝が終わり、バン、リサ、剛志、レイジ、オサム、マナブの6人が観客席に集まり、他の観客と同様神妙な面持ちでステージのモニターへ注目していた。
 モニターにバンとリサの顔とそれぞれの機体が映し出され、バトルフリッカーコウの声が響き渡る。

『さぁ、これで日本一を決めるための役者が揃った!!
段田バンくんと遠山リサくん!果たして、優勝するのはどっちだ!?』

「リサ……ついにこの時が来たんだな」
「うん」

『決勝戦は3時間後に行う!それまでは昼休憩とフリーバトル、そして少し変わった遊び方もできるアトラクションを多数設置するぞ!存分に楽しんでくれ!!』

「3時間!?随分長いなぁ」
 時間の多さにバンは素っ頓狂な声をあげた。
「いや、でも妥当な時間かもね。最初の2時間で昼食と休息して完全に体力を回復させて、残りの1時間でウォーミングアップや最終調整をする」
 マナブがそう解説するとリサも頷いた。
「うん、ベストな試合をするための時間配分だと思う」
「なるほどな、おっしゃ!オサム、剛志!!残り1時間になったら最終調整付き合ってくれ!!」
「OK!」
「当然じゃ!」
 剛志とオサムが頷くと、レイジとマナブが顔を合わせる。
「じゃあ僕らは……」
「リサちゃんの最終調整に付き合うよ」
「ありがとう、二人とも」
「よし、それじゃあそれまで、バンとリサはしっかり休憩を取ってもらおう!!……あ、もしもし」
 レイジはいきなり携帯電話を取り出してどこかに連絡し始めた。
「うん……そう、大至急で……あ、もう取れた?ありがとう」
 話は終わったのか、レイジは電話をしまった。
「どうしたんだよ?」
「この近くの幕張サンクチュアリホテルを二部屋借りられたから、そこで昼食と休憩をしっかりとってよ」
「うぇっ!?」
「そ、そこって超高級ホテルなんじゃ……!」
「予約も無しにいきなり取れるもんなのか……?」
「ちょっと料金は上乗せしたけど、二人の決勝戦を最高の形で見るためだから、惜しんでられないよ!それから、それぞれの部屋に機体調整用の機器を運び込ませておいたから、身体だけじゃなくてフリックスもベストな状態に仕上げられるよ」
「ガッハッハ!見事な力の使い方じゃな、レイジ!」
「そ、そっか、レイジが味方にいると頼もしいんだったな……」

 バン達がレイジの財力とその使い方に改めて度肝を抜かれている頃だった。
 伊江羅は会場近くのカフェでコーヒーを飲みながら暇を潰していた。
「相席、よろしいかな?」
 そんな伊江羅の席に、他にも空いている席があるにも関わらず一人の老人が勝手に腰をかけてきた。
 少々鬱陶しいが無下にするほどではないと伊江羅は顔を上げると、その老人の顔を見て驚愕した。
「遠山、段治郎……!」
「まぁ、そう身構えるでない。何もとって食うわけではない。ワシはただ純粋に話がしたいと思っただけじゃ」
「……」
 伊江羅は警戒の姿勢を崩さずにとりあえず段治郎の言葉を待った。
「今回の大会、想像以上の成果が得られた。主催者冥利に尽きるというものじゃ。お前さんの影ながらの労力の影響も強いじゃろう。まずは礼を言っておく」
「フッ、強がりのつもりか?決勝を目前にスクール生は全滅、更に花形フリッカーであるザキを失い、スクールは大打撃を受けたはずだ。それでよく見栄を張れたものだ」
 皮肉のようだが、実際に伊江羅の言う通りだろう。
 スクール運営という視点では、今回の大会はスクールの評価を下げてしまう結果の方が大きかった。
 しかし、段治郎は強がりでもなんでもなく微笑しながら答えた。
「そんな事、真の目的を考えれば瑣末な事だ。いや、むしろ計画通りと言える」
「なんだと?」
「ワシの真の野望はようやくこれでスタートラインに立ったのじゃ……今日はそのことをお前さんにも話しておこうと思ってな」
「真の、野望……?」
「お前さんにとっても決して悪い話ではない……いや、恐らくはこの世全てのフリッカー、全てのフリックスに関わる人間達にとっての夢じゃろうな」
「随分と大きく出たな」
 今までの段治郎は自分のスクールをフリックス界の頂点に君臨させる事を目的に動いていたように思える。つまりは私利私欲だ。しかし今の口ぶりは、そんなものとは正反対のように聞こえる。

「お前さんは、フリップゴッドという人物を知っておるか?」
 静かに発したその言葉に、伊江羅は強い反応を示した。
「フリップ、ゴッド……!?」
「野望達成の最後の鍵じゃ。現在、あるルートを使って捜索をしておる……そして今、このデータの発掘に成功した」
 段治郎はタブレットを取り出し、画面を伊江羅に見せた。
 そこには、とある機体が映し出されていた。
「バンキッシュ…ドライバー……!」
 伊江羅は画面と段治郎の顔を交互に見る。
「悪い話ではないと、言ったじゃろう?」
 段治郎はしたり顔でそう言った。

 そして、しばらくは話をしたのち、二人は共に立ち上がり店の外へ出て行った。

 会場内では、フリーバトルや特殊なアトラクションで盛り上がっていた。

『さぁ、決勝が始まるまでのインターバルだが、会場は大盛り上がりだ!!
まずはフリーバトルスペースをみていこう!!』

 道着を着た少年と着物を着た女性のバトルだ。
「喰らえ!アイアンパンチャー!!」
「受け止めよ!ラストローズV!!」
 巨大な拳型機体の攻撃をラストローズVは花弁型のアームを変形させながら受け止めた。
「なに!?俺の拳を……!」
「うふふ、いきますわよ!」
 密着した状態でターンが来れば、敵機と接触している自機のパーツを入れ替えても良い。
 ラストローズは花弁を変形させてシュートポイントにし、それをアイアンパンチャーに密着させた状態でスピンシュートした。
「舞え!ラストローズ!!」
「なっ!シュートポイントで投げ飛ばしやがった…!!」
「これなら非力な女性でも十分なパワーが得られますのよ!」

 次のバトルは攻撃型機体といくつもボディベースを取り付けた群体のような機体のバトルだ。
「ぶち飛ばせ!ラースパイルV!!」
「ひょひょひょ!札束で殴るのはいい気分じゃ!グリードレギオン!!」
「かー!相変わらず悪趣味な機体だぜ!!」
「悪趣味なだけじゃないぞよ!」
 群体故に様々な形に変形して巧みにマインヒットする
「やるな!こっちもぶちかませ!!」

 こちらは、どうやら同じモチーフの機体同士のバトルだ!
「存分に喰らえ!グラトニードレイク!」
「こっちも貪れ!グラトニーファング!!」
 片や大型の攻撃型、片や牙を振り下ろして拘束するタイプだ。全く違う性能タイプだが、モチーフが同じというだけでライバル関係にあるらしい。
「真の暴食フリッカーは俺だ!」
「いや、おれだっての!!」

『フリーバトルスペースでは、七つの大罪をモチーフにした機体製作を得意とするフリッカーチーム[ギルティーズ]のメンバーが大活躍している!!
嫉妬と傲慢と怠惰のフリックスは果たして現れるのか!?』

 別のスペースでは比較的軽量なフリックスがバトルではなくスピードを競っていた。
『こちらはフリックスレースエリアだ!!
ルールは簡単、スタートからリアルタイムで何度でもシュートが出来る!そして先にゴールしたほうが勝ちだ!!フリッカーはスケートボードにうつ伏せに寝そべった状態でフリックスを追いかけるぞ!!』

「いけ!ターンコートバルチャー!!」
「ドリフティングリモラ!!」
「バイティングハイエナ!!」

 レース用にチューンされたフリックス達が爆走する。

「かっ飛べ!RS-F!!」

『おおっと!超高速仕様のRS-Fがトップに躍り出た!!しかし、上り坂で減速!!そこをフライホイールのトルクでフルスロットルラミューロが抜いていく!!』

「パワーアップしたラミューロの力を見せてやる!!」

『先頭グループはトンネルコースに突入!暗くてクネクネしたワインディングだ!注意してくれ!!』

 ピカッ!その時、まぶしく光るフリックスと淡く光るフリックスの姿があった。

『ダガー・ルミネッジとダカール・ヴィレッジ!!暗闇のセクションで光るフリックスとしての本領発揮だ!!
そしてトンネルを抜けるとそこは……雪国だった!』
 摩擦の低い氷のセクションだ。
『のおっとここで!コメットウルカヌスとシャイスコjr.がいつのまにか怒涛の追い上げ!!まだまだレースは分からないぞ!!!』

 

 こちらはフリップビリヤードのエリアだ。
『フリップビリヤードはその名の通りフリックスでビリヤードのような競技をするステージだ!』

「いけぇ!スピンパニッシャー!!」
「ガトリングジャイロ!」
「アリスピナー!!」
 ハンドスピナーを搭載した機体三体が一気に球を弾き飛ばし、全て四隅の穴に落とした。
「よしっ!」

『これは素晴らしい!!軽くて数の多いターゲットを弾き飛ばすにはスピンが有効とされるが、ハンドスピナーを武器として扱う機体は、そのスピンの特性を最大限活かしていると言えるだろう!』

 他にもリアルタイムでフリックスをシュートし、パックを押し付け合うフリックスホッケーのブースもある。

「頑張れブラックグース!」
「スカーレットスネーク!!」

 造形気で頑張ってパックを押し合う中、凶悪な機体を提げる輩もいる。
「やれぇ災!!フィールドに災害を起こせ!!!」
 災の伸びるメタルスティックがパックだろうと相手機体だろうとなぎ飛ばしてしまった。
「きんもちいい!!!」

『公式戦ではないが、熱く、個性豊かな機体達がそれぞれの強さを発揮している!!
惜しいのはこれが公式戦ではないということだ!どの機体も決勝に上がる可能性を秘めていながらも、残念ながら日の目を見なかった……しかしだからこそ、その中で頂点へと上り詰めんとする二人のフリッカーのバトルはきっと素晴らしいものになるはずだ!!!』

 今更ながら熱く激しい戦いを繰り広げる個性豊かなフリッカー達。
 それを嬉しく思いながらも、その活躍を正式な場に出すことができなかった事が悔やまれる。

(まだまだ、フリックス界は発展途上だ。すごい機体も、強いフリッカーも、無数に眠っている。
彼らを発掘し、正式に活躍できる場を与える事が、今の我々の使命なのかもしれない……。
そのためにも、今はこの大会を成功させなければ……バンくん、リサくん、最高のバトルを期待しているよ)

 バトルフリッカーコウは強く想うのだった。

 レイジが借りてくれたホテルの一室。
 そのユニットバスのシャワーでリサは汗を流していた。
「……」
 暖かいお湯を浴びながら、気分をリフレッシュさせていく。
「ついに…バンと戦う……」
 ポショリと呟く。
 バンとはいろんな事があった。いや、そんな言葉が陳腐に聞こえるくらい、いろんな事が。
「最初は、ただ、楽しいフリックスバトルを……ううん、ただ悲しい想いから逃げたいだけだった」
 自分が勝ち上がる事で誰かが傷付く。そんなスクールの制度に心を痛め、なんの解決にもならないのにただ逃げただけだった。
「あの時のバンとのバトル……フリックスが心から楽しいと思えたのは、あれが初めてだったのかも」
 それまでだって、楽しいと思ったことはあったはず。でも、心の底から純粋に全力を出し切って楽しめたのはバンとのバトルが初めてだった。
「刷り込み……なのかな。バンと一緒にいると、凄く楽しい。対戦しても、協力しても、特訓しても……たまに、ついていけない時もあるけど、だけどそれもやっぱり楽しかったのかも」
 トクンッと、リサの小さな胸が高鳴る。湧き上がった温かな感情を逃さないよう、両手で優しく包み込んだ。
「上手く言葉に出来ないけど、この気持ちがきっと私の答え……だから私は、バンと戦う!」

 一方のバンもホテルの一室で十分休息を取ったのか、ディフィートヴィクターのメンテをしている。
「決勝戦は頼むぜ、ディフィートヴィクター」
 大事に丁寧に、作業を進めている。
 作業しながら、バンは想いを馳せた。
「ついにまた、大会で戦える時が来たんだな、リサ」
 思い出すのは、初めてリサと戦ったあの大会。
「今まで深く考えなかったけど、なんでだろうな……あの後だって、強い奴はいくらでも現れたし、すげぇ戦いだっていっぱいして来た……なのに、なんであんな店舗大会のたった一回の決勝戦がいつまでも頭から離れねぇんだろうな」
 今まで戦ってきたライバル達の顔を思い浮かべる。
「操にザキに剛志も……みんな、すっげぇ強かった。あの時のリサと同じくらい、こっぴどく負けちまう事もあったのに……」
 バンもまた、リサと同様にハッキリとした答えを持っているわけではなかったのだ。
「でも、なんかわかんねぇけど、リサとのバトルは特別なんだ!それだけはハッキリしてる」
 ディフィートヴィクターを強く握りしめる。
「だからこそ俺は、リサを倒す!!」

   つづく

 

 次回予告

「リサ……お前とのバトルが俺に新しい世界を見せてくれた!過ごしてきた日々が、俺を強くしてくれた!
だからこそ俺は、お前を超える!!いっけぇ!ディフィートヴィクター!!

次回最終話『弾突!一番の勝利者(ヴィクター)!!』

次回も俺がダントツ一番!!」

 

CM

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