弾突バトル!フリックス・アレイ 第48話

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第48話「己の行く手を導く者!」

 

 バーーーーーーン!!!!
 準決勝第一試合、バンVSザキの試合は最初のアクティブシュートから凄まじい激突。
 衝撃波で埃が舞い上がり、会場が揺れる。

『初っ端から激しすぎるアクティブシュート……!衝撃波で前が見えないぞ……!!』

 しばらくして、埃が晴れて視界が回復する。
 そこには、場外している二機があった。

『これは同時場外だ!!よって、ダメージはお互いに無効!!!』

「ほぉ、デカイ口叩くだけはあるな」
 ザキはなんともないような表情でシェイドディバウアを拾う。
「はぁ、はぁ、くそっ…!」
 対してバンは既に若干息を乱している。
 たった一度のシュートでここまで消耗するほどの本気を出したのだ。

(初っ端から全力で行ったのに、余裕なあいつに対して引き分けが精一杯か……!やっぱりまともにやってたらこっちの身体がもたねぇ……!)

「どうした?ギブアップには早いぞ」
「へっ、誰が!この結果は狙い通りなんだよ!!」
 そう言いながら、バンはディフィートヴィクターのボディをバラし、右サイドのパーツを外してフィールドの端に置いた。

『おおっと!?バンくんは何故か機体のパーツを外した!!レギュクリア形態でシュートするのは最初のアクティブシュートだけなので、このタイミングで変形や分離をするのはルール上問題はないが……この行為に何の意味があるのか!?』

「何のつもりだ?」
「この大会で、俺もパワーアップしてるってとこを見せてやる!」
「おもしれぇ……じゃあ見せてもらうか」

『それでは二人とも準備はよろしいな!?
いくぜ!3.2.1.アクティブシュート!!』

「おらぁ!!」
「いっけぇ!!!」

 先ほどと同様にスピンシュートするザキに対し、バンもスピンで対抗した。

「うおおおおおおおお!!!!」

 ガッ、キュルルルルルルルルルル!!!!!

 激突した二機は密着したまま猛回転し始めた。

『こ、これは!一回戦で操くんが行ったシェイドディバウア攻略法か!?』

「FXシステムの構造を利用して、あの時と同じ条件にしたんだ!」
「けっ、バカかてめぇ?あの時どうなったか、忘れたのか!」

 キュルルルルルルルルルル!!!
 回転は一向に尽きずにどんどん速度が上がっていく。

(いくらFXシステムでも、これ以上は危ねぇ!けど、あともう少し耐えてくれ!ディフィートヴィクター!!)
「潰れたいなら望み通り潰してやるよ!ダークホールディメンション!!!」

 バッ!
 シェイドディバウアのウイングが開き、更に回転力が上がる。

『で、出たー!!シェイドディバウアのダークホールディメンション!!このままディフィートヴィクターは潰されてしまうのか!?』

「あっけない幕引きだったな」
「今だ!ディフィートヴィクター!!」
「なに!?」

 バシッ!
 バンの合図と同時にディフィートヴィクターのフロント剣が伸びた!
 そして、その剣がシェイドディバウアのウイングに当たり、ウイングが閉じた。

「なんだと!?」
 ウイングが閉じた衝撃と遠心力が下がった事でシェイドディバウアの回転が徐々に下がっていき、ついに止まってしまった。

『な、なんとなんと!絶対無敵と思われたザキくんの必殺技が破られた!!回転が失速し、停止!先手を取ったのはディフィートヴィクターだ!!』

「てめぇ……!」
「予選で、似たような方法で回転力上げる奴と戦ったからな!対策はバッチリだぜ!!」
 右回転ブレイカーとの戦いを思い出しながらバンは言う。

 バトルの様子を別室で見ている伊江羅博士。
「なるほど、ディフィートヴィクターの剣をシェイドディバウアのウイングに合わせて発動するようにセットしていたか。回転が同調している状態なら、ウイングを閉じさせるくらいは容易に可能だ」

 客席でバンを応援しているリサ達。
「す、すげぇ!あのザキのスピン攻撃に耐えた!」
「ドライブヴィクターの仇は取れそうだね、バン」
「でも、まだ油断は禁物……!」

『さぁ、先手を取ったバンくんはどう行動する!?』

「出し惜しみしてられねぇぜ!フリップスペル!ライトニングラッシュ!!」

 ライトニングラッシュ……3秒間、1回だけ変形向き変えした後に何度でもシュートできる。

「いっけええええ!!!」

 シュンッ!シュンッ!ガンッ!バキィ!!!

 ディフィートヴィクターの猛烈な連続攻撃を受け、さすがのシェイドディバウアもフリップアウトしてしまった。

『フリップアウトーーー!!!!なんと先制ダメージを与えたのはバンくんだ!!!!
一気にザキくんのHPを1にまで追い詰めたぞ!!このまま、押し切る事は出来るのか!?』

「おっしゃああああ!!!」

 バンの快挙に会場は騒然とする。

「やった、バン!」
「あぁ!この調子ならもしかするかも!」
「バンー!一気に攻めろー!!!」

 運営側で見ている段治郎も意味深に頷いた。
「ふぉっふぉっふぉ!!さぁ、ここからどう出る?ザキよ」

 ザキはポリポリと頭を掻きながら機体を拾った。
「そういや、遠山カップでもお前に先手を取られたんだったな」
「……」
「なら、この後の展開もキッチリ再現してやるか」
「そうは行くか!このまま押し切ってやるぜ!!」
「へっ!」

『そんじゃ、仕切り直しアクティブ行くぜ!
3.2.1.アクティブシュート!!』

「いけっ!ディフィートヴィクター!!」
「やれぇ!!」

 バシュウウウウ!!

『両者、先ほどと同じようにスピンシュート!!再び密着するか!?』

 回転する二機が接触する……!

 バチンッ!!

 接触した瞬間、ものすごい勢いでディフィートヴィクターが弾かれてしまった。
「なに!?シェイドディバウアの回転方向がさっきと違う……!!」
「バカかてめぇ?そっちは外したパーツで回転方向が丸わかりなのに対して、こっちは幾らでも変えられるんだよ!!」
「くっ!耐えろヴィクター!!!」

 何度もバウンドしながらフィールド端へと飛ばされていくヴィクターだが、どうにかフロントパーツの一部を迫り出しながらも停止することが出来た。

「ふぅ……!」

『セーフ!間一髪でヴィクターは場外を免れた!!』

「違うな」
「なに!?」
「耐えたんじゃねぇ。飛ばさないでおいただけだ」
「っ!?」
「アクティブシュートじゃ、フリップアウトにならねぇからな!」

 ザキのターン。
 グッと力を込めてシェイドディバウアをシュートする。

「喰らえ!!」
「た、耐えろ!!!」

 パキィィン!!!
 バンのバリケードを破壊しながら、シェイドディバウアの攻撃によりディフィートヴィクターはあっさりフリップアウトしてしまった。

「そ、んな……!」

『フリップアウト!!やられたらやり返す!!
これでお互いにHPは1!!後がないぞぉ!!』

 別室で観ている伊江羅博士。
「さぁ、ここからが本番だ。どう出る?段田バン」

 震えながらバンはディフィートヴィクターを拾う。
「ザキ……!すげぇ奴だぜ……小細工なんかじゃやっぱり勝てねぇ……!あいつに勝つには、真正面から超えるしかないんだ」
 ザキに勝つための方法はほぼ不可能だが、簡単だ。
 戦略を練って対策するなんてまどろっこしい手では勝てない。
 単純に、力で勝るしかない。
(剛志と戦った時もそうだった……本当に相手に勝つためには、ただ試合に勝つだけじゃダメなんだ……相手の力を、真正面から超えて初めて勝てるんだ!)
 バンはパーツを元に戻し、精悍な顔でザキを睨みつける。
「へっ」
(あの時と同じように、もっともっと上の力を出すしかない!!)

 決意を固め、バンは機体をセットする。

『さぁ、そんじゃ行くぜ!3.2.1.アクティブシュート!!』

「オラァァ!!」
「ブースターインパクトォォ!!」

 バーーーーーーン!!!

 お互いの全力シュートが激突し、同時場外する。

『なんと同時場外!!
仕切り直しいくぜ!3.2.1.アクティブシュート!!』

 バーーーーーーン!!!
 再び同じように同時場外する。

 そんなアクティブシュートを何度も何度も繰り返した。

『再び同時場外!これで何十回目だ!?既に数十分もアクティブシュートを繰り返しているぞ!!』

「はぁ、はぁ……!」
「なかなかしぶといな」
「まだまだ、これからだぜ!」
「上等だ」

『二人の闘志はまだまだ尽きない!行くぜ!
3.2.1.アクティブシュート!!』

 バーーーーーーン!!!

『またも同時場外!!一体、いつになったら決着がつくんだ!?』

「はぁ、はぁ、へへへっ……」
 バンは息を切らせながらも笑っていた。その姿をザキは気味悪げに見る。
(なんだあいつ、何笑ってやがる……っ!)
 その時、シェイドディバウアを拾おうとした手の甲に何か雫が落ちた。
 ピチョン……!
 それは、額から流れ落ちたザキの汗だった。
(汗、だと……?この俺が、この程度のバトルで……!)

『さぁ、さすがにお互いに疲労困憊か!?息が上がっているぞ!?』

「な、んだと……!」
 微かにだが、ザキの呼吸も早くなっている。
「へへ、ははは…!」
 対して、ザキなんかよりもよっぽど体力消耗しているように見えるバンは笑みを見せていた。
(やべぇ……酸素が全然足りねぇし、腕も痺れてきた……でも、不思議だぜ、まだまだ全然戦える……いや、戦い足りねぇ!!)
「ちっ、ふざけやがって!次で終わらせる!!」

『3.2.1.アクティブシュート!!』

 バーーーーーーン!!!
 力むザキに反して、結果は先ほどと変わらない。

「くっ!」
「へへへ……!」
 焦りが見えるザキと楽しげなバン。
 体力的な優劣に反して、精神的にはバンの方が優勢に見える。

『アクティブシュート!!!』

 バーーーーーーン!!!

『アクティブシュート!!!』

 バーーーーーーン!!!

『アクティブシュート!!!』

 バーーーーーーン!!!

 何度も何度も繰り返す。

「はぁ、はぁ、ちく、しょう!ふざけやがって!!」
 いつのまにか、ザキもバンと同様に汗だくになり息を乱していた。

 その様子はスクール生達にとって新鮮な光景だった。
「おれ、ザキ様があんなに息切らしてるの初めてみた」
「あぁ、たかが1時間程度アクティブシュート繰り返しただけであのザキ様が疲れるなんて…」
「それより、ザキ様についていけてるあいつは一体なんなんだよ!?」

 伊江羅博士の視点。
「バン、そろそろ開けそうだな……ザキ、よく感じるんだ。ここから先の瞬間を!」

 ザキは苛立ちを抑えきれずに叫んでしまった。
「てめぇなんなんだ!!なにそんなヘラヘラ笑ってやがる!!!」
「ザキ……お前のおかげだ」
「なん、だと……?」
「普通だったら俺、とっくの昔にぶっ倒れてる……!もう、頭フラフラするし、力も入んねぇ……でもさ、お前とのぶつかり合いが楽しくてしょうがねぇんだ!
お前のすげぇ力が、衝撃が、全身を貫く度に力が湧いてくるんだ……!!」
「俺の力が、お前の力に……?」
「だから俺は、戦ってられるんだ……!ザキ、お前が強ければ強いほど、俺はいつまでだって戦える!戦いたいんだ!!!」
「っ!」

『3.2.1.アクティブシュート!!』

 バーーーーーーン!!!!

『またも同時場外!!決着がつかない!!!』

「くそっ!」
「へへ……いいぞ、ヴィクター……!」
 意識が朦朧としながら愛機を拾うために屈むバン。
 ドックン!
 その時、頭の中に電流が走った。それは神の天啓か?
 その電流は無意識にバンの身体を動かした。

「なんだ?なにやってんだてめぇ……!」
 バンはフラフラとフィールドから離れた。
「わかんねぇ」
「は?ふざけてんのかてめぇ!!」
(わからねぇ……でも自然と身体が動く……あの時と、ブースターインパクトの時と同じだ……限界を超えられた、あの時と……!)

『バンくんはフィールドから離れてしまったが、その位置からシュートして大丈夫なのか?』

「あぁ、大丈夫!合図してくれ!!」

『りょ、了解だ!そんじゃ行くぜ!3.2.1.……!』

 ダッ!バンはフィールドに向かってダッシュした。
「うおおおおおおおお!!!!」

『アクティブシュート!!!』

 その合図と同時にバンはフィールドにつき、ダッシュした勢いのまま腕を突き出しながらシュートした。
「いっけえええええ!!!ビッグバンインパクトォォォォ!!!!」

 バシュウウウウウウウウウウ!!!!!
 放たれたその勢いはまさしくビッグバンと称するにふさわしい。
「くっ!ダークホールディメンション!!」

 負けじと超スピンで対抗するシェイドディバウアだが、所詮はブラックホールがビッグバンに叶うはずもなく……。

 バゴオオオオオオオオオン!!!!!

 ついに、シェイドディバウアが宙を舞い……場外へ転落した。

 しばらく、会場が静まり返る。

『こ、れは……シェイドディバウア……撃沈……!か、勝ったのは、ディフィートヴィクター!!!バンくんだああああ!!!!!』

 バトルフリッカーコウの判定により一気に会場が沸き立った。
「やった!マジか!!」
「あの、ザキに勝った……!」
「ついに勝ったね、バン……」
 ホッとしたようにつぶやくリサ。
 キュン……。
 その胸に何か温かいものを感じた。
(……なんだろう、この感じ?ただ嬉しいのだけとも違う……)

 宿命の敵であるザキをついに倒す事が出来た。
 バンは残った力を振り絞ってありったけの喜びを表現した。
「やったぜええええ!!!」
 バッ!と飛び上がり、そして倒れる。
「へへ、ははは!勝った!勝った!勝ったんだ!!!」

 対照的に、ザキはシェイドディバウアを拾い、押し黙っていた。
「……」
 その表情は悔しさや疑問ではなく、何かを抑え込んでいるような、未知の感覚に戸惑っているようなものだった。
(なんだ……この感情は……!何かが、身体の底から溢れ出てきやがる……!!)

 ドックン……!
 その時、ザキの中で何かが切れた。

「がっ、ぐ、ううう!!!ぐああああああ!!!!!!」

 抑え切れずにザキは雄叫びを上げる。
「な、なんだ?」

 戸惑う場内。しかし、一人だけまるでこれが予定調和であったかのような表情をする男がいた。
 伊江羅博士だ。
「ようやく、始まったか」

 ザキの雄叫びはしばらくつづく。
「ああああああああああ!!!!!」
 そして、据えた目で突如シェイドディバウアを構え、未だにフィールドに残っているディフィートヴィクターに狙いを定める。

「ダークホールディメンション……!」

 ゴオオオオオオオ!!!!!
 さきほど戦っていた時とは比べ物にならないほどのスピンがディフィートヴィクターに襲いかかる。

 バキイイイイイ!!!!
 ディフィートヴィクターは凄まじい勢いで吹っ飛ばされ、バンは反射的にそれを掴んだ。
「ぐっ!」
 掴んだバンの手から摩擦熱による煙が上がる。
「ふー、ふー…!」
 オービーヒートした機械のように何度も空気を吐き出した後に、ザキはバンを見据えて言った。
「段田バン」
「っ!?」
「命令だ……次に会う時までに、もっと強くなれ……今のままじゃ、弱過ぎる」
 負けたものとは思えないセリフを吐いた後、ザキは身体の疼きを抑えながらゆっくりと去って行った。

「……」
 バンはしばらく呆けていたが、ふと我に返りザキに言われた言葉を受け止める。
「へ、へへへ……なん、て奴だ……勝ったのは俺のはずなのに……全然ダントツな気がしねぇ……!」
 ブルブルと震える。これは武者震いだろうか。

「待ってろよザキ!!次こそは絶対、もっともっとダントツでお前に勝ってやるからなああああああ!!!!」

 

   つづく!

 

 次回予告

「次の試合はリサと剛志のバトルだ!
自分の気持ちに迷いながらも今のバトルに集中するリサに対し、剛志はハッキリと俺へのリベンジを目標に挑んできた!

次回!『リサの想い リベンジの意味』

次回も俺がダントツ一番!!」

 

CM

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