第47話「バンVSザキ!運命の戦い!!」
『さぁ、大盛り上がりだった第一回グレートフリックスカップも1日目の工程を終えて折り返し地点だ!
残す準決勝と決勝は、明日行うぞ!今日のところは家に帰ってゆっくり休んでくれ!!』
「ひゃ〜、それにしても濃い1日だったぜ!」
「うん、まるで何年も経ったみたい」
「予選から考えると結構バトルしたもんなぁ」
バンとリサが話しながら会場外へ向かっていると、一人の小柄な少年が目の前に現れた。
「リサ先輩」
「ゆう、くん……」
「知り合いか?」
「うん、スクールにいた頃の後輩……」
ゆうはバンには構わずリサにのみ話しかける。
「準決勝進出おめでとうございます。リサ先輩なら必ず勝ち上がると思っていました」
「うん、ありがとう」
「僕はもう一度スクールで鍛え直してきます。いつか必ず、あなたと並び立てるように」
ゆうはチラッとバンを一瞥した。
「……?」
バンはその意図がわからずに首をかしげる。
「うん、楽しみにしてるよ。頑張って」
「はい!…では」
ゆうは一礼して去って行った。
その後、歩いていると剛志レイジと合流できた。
「おう、さっきぶりじゃな!」
「剛志にレイジ!お前らの試合凄かったぜ!!」
「当然じゃ!バンにリサも無事勝ち上がれてよかったわい!」
「それこそ当然だぜ!俺とリサが簡単に負けるわけねぇだろ!」
「うん!」
「でもここからはそうはいかないよ!優勝するのは剛志だからね!」
「じゃな!覚悟せぇよ、まずはリサじゃ!」
「わ、私だって負けないよ!」
「へんっ!ダントツで優勝すんのは俺に決まってるぜ!!」
「明日が楽しみじゃな!」
話しているうちに会場の外に出た。
「それじゃあ僕と剛志は迎えの車で帰るから」
「お互い、良きバトルをしようぞ!」
「おう!じゃな!!」
「また、明日」
剛志レイジと別れ、バンとリサは京葉線の電車に乗った。
蘇我行きの電車はそれなりに空いていて、運良く座る事が出来た。
「は〜今日は戦った〜!明日も楽しみだな、リサ!」
「うん……」
「俺はザキに、リサは剛志に勝って、絶対に決勝で戦おうぜ!!」
「……」
「リサ?」
急に黙りこくったリサの顔をバンは心配そうに覗き込む。
「ううん、とにかく目の前のバトルを戦うだけだから」
リサの返答はどことなく的を射ていないような気がしたが、
「ん、あぁ、まぁ、そうだな」
バンはなんとなく頷いた。
そうして、蘇我で外房線に乗り換えてバン達は自分達の住む街へ戻った。
最寄駅から十数分ほど歩き、自宅に辿り着く。
「ただいま〜!」
パパパーーーーーン!!!
玄関を開けた瞬間、クラッカーの音が三つけたたましく鳴り響いた。
「!?」
「な、なんだ!!」
「「「準決勝進出おめでとうーーー!!!!」」」
バンの父、マナブ、オサムの3人がクラッカーを持って一斉に祝いの声を上げていた。
よく見たら家の中が即興で飾り付けられている。
「び、びっくりしたぁ……!って、父ちゃんにオサムマナブ!お前ら何やってんだ!?」
「なにって、決まってるだろ。鈍い奴だな」
「バンとリサちゃんの祝勝会だよ!」
「祝勝、会…?」
「って、気が早くねぇか?まだ明日もあるんだぜ??」
「まぁこまけぇ事はいいじゃねぇか!」
「決勝への激励会も兼ねてるって事で」
「まぁいいけどさ…あ、もしかして今日二人と予選の後全然合流出来なかったのって!」
「おじさんに連絡して、先に帰って準備してたんだ」
「二人なら絶対に勝ち上がるって信じてたからな!」
「なんだよ、一言言ってくれればよかったのに」
「まぁいいじゃねぇかバン!こうやって親友の勝利を信じてお祝いまでしてくれるってんだ!ありがてぇ事だぞ!」
「まぁな、そりゃめちゃくちゃ嬉しいよ。ありがとな」
「うん、私からもありがとう」
バンとリサに礼を言われオサムとマナブは照れ笑いした。
「さぁ、状況も把握したところで早く中に入れ!ご馳走いっぱい用意したからよ!!」
「ご馳走!?やったーー!!!」
ご馳走という言葉を聞き、目を爛々に輝かせてリビングへ向かう。
言葉に偽りはなく、テーブルの上には所狭しと美味そうな料理が並べられていた。
鯵のなめろうにさんが焼き、クジラのタレにはかりめ丼、味噌ピーにゆでピーの盛り合わせ、佐倉豚を使った佐倉丼、そして……。
「父ちゃん特製!千葉県産ヤマニ大豆を使った味噌汁ぶっかけ丼もたんとあるぞ!!」
「うおおおお!!!食い尽くしてやるぜ!!!」
バンは飛びかかる勢いで料理を食い始めた。
「バン…昼間も売店であれだけ食べたのに」
「はっはっは!心配ない!今日の料理は全部由緒正しき千葉県産だからな!いくら食べても身体に害はない健康食品そのものだ!」
「そ、そういう問題なのかな……」
リサは呆れながらも、楽しげなバン達の様子を微笑ましく見つめていた。
「リサもボーッとしてねぇで一緒に食おうぜ!伊勢海老あるぞ伊勢海老!!」
両手に伊勢海老持って、バンがリサを誘う。
「う、うん……!」
リサもぎこちないながらもみんなの輪に入っていく。
(バン、私はここにいられて本当に良かった……ありがとう)
そしてその頃、遠山フリッカーズスクールの練習場ではザキが何十人ものフリッカーを相手にバトルしていた。
「撃ち砕け!!シェイドディバウア!!!」
シェイドディバウアのスピンが何体ものフリックスを弾き飛ばしていく。
「ぐっ!TOKKANの掬い上げフロントでも受け流せないなんて!!」
「俺のアングリフの鉄の装甲が……!」
さまざまな個性豊かな機体が為すすべなくやられてしまう。
「キモールのハリガネが受けきれなかっただと!?」
「ハニカムケトンの柔軟性も無駄なのか…!」
なるべく防御力の高い機体を選んで練習相手にさせてるのだろうが、それでもシェイドディバウアの前には無力のようだ。
「オラァどうしたぁ!そんなもんかスクールの力は!!!」
その様子をユウタとゲンゴが部屋の隅から眺めていた。
「ザキ様、準決勝を前に気合いが入ってるんだな」
「うん……僕らに矛先行かないよう逃げようかな」
「さすがに今のザキ様の相手はしたくないんだな」
ユウタとゲンゴは情けなくもそそくさと練習場を出ようとする。
と、同時に扉が開いてゆうが現れた。
「うわぁ!ビックリしたぁ」
「あ、す、すみません!今ザキ様が練習相手を求めていると連絡が入ったものですから……」
「そ、そうなんだな!ぜひ相手するといいんだな!!」
ゲンゴとユウタにとっては生贄は多い方が逃げやすい。
快くゆうをザキへと差し出した。
「ザキ様!」
「なんだぁ?今度はてめぇが相手か??」
「はい!ぜひとも1vs1で相手をお願いします!!」
「ほぉ、俺様相手に肝が座ってるじゃねぇか。良いぜ、かかってきな」
「ありがとうございます!……頼むぞ、オルカシャークNEO」
ゆうは新調したばかりの新型機、オルカシャークNEOを手にザキへと挑んだ。
結果は描写するまでもなくザキの圧勝。
しかし、ザキの反応は他のフリッカーと違っていた。
「やはり、敵いませんでした……!」
「だが、シェイドディバウアの攻撃を受けて傷一つ付かないとは大したもんだ。新型か?」
「はい。新素材を使って、剛性が高まるように3Dプリンターで精密にハニカム構造に仕上げました」
「なるほどな……悪くねぇ。てめぇ、これからもたまに俺の練習相手なれ」
練習相手と言う名のサンドバッグであろうが、ザキがこうして格下の人間を認めるのは今までになかった事だ。
ゆうは面食らいながらも嬉しそうに頭を下げた。
「は、はい!光栄です!!」
その時、スクールのスタッフと思わしき男が部屋に入りザキへ声をかけてきた。
「ザキ様、校長がお呼びです」
「あん?」
ザキは渋々といった感じで了承し、校長室へ向かった。
校長室。
「ザキよ、準決勝進出おめでとう…と、言うまでもないか」
「へっ、祝われるほどのもんじゃねぇよ」
「だろうな……お前達のおかげでワシの野望も着実に達成へと近づいておる。優勝した暁には褒美を与えようではないか」
「けっ。なんの用かと思えばそんなことか」
「何が良い?強制進化装置の性能アップ、シェイドディバウアの強化…欲しいものはなんでもくれてやるぞ」
「くだらねぇ……今のてめぇらから得られるものはねぇよ。時間の無駄だ」
ザキは段治郎を一蹴し、挨拶もせずに部屋を出ていった。
それを見届けた段治郎は、何故か嬉しそうに笑うのだった。
「ふぉっふぉっふぉ!良い傾向じゃ、確実にワシの望みに近づいておる!ふぉーっはっはっはっ!!!」
……。
………。
そして、翌日。選手達は再び会場に集結した。
『さぁ、二日目に突入だあああ!!!昨日以上の熱いバトルを期待してるぜえええ!!!』
バトルフリッカーコウのマイクパフォーマンスに会場が湧く。
『本日行われるのは、一回戦を勝ち上がったフリッカーによる準決勝!そして、ナンバーワンを決定する決勝戦だ!!
いよいよ、グレートフリックスカップも大詰めだ!最後の最後まで気張っていけよおおお!!』
「へっ、俺がダントツ一番だぜ!」
『それでは早速初めて行こう!!本日最初の試合は、この戦いだ!!!』
ステージにバンとザキが上がる。
『目指すはダントツ一番!ガッツとパワーで攻めまくる!熱血フリッカーバンくん!
対するは、対戦相手を暗黒の底の底へと突き落とすブラックホールフリッカー!ザキくん!!
二人とも並々ならぬパワーの持ち主!激戦になるのは必至だぁ!!!』
フィールドにマインと機体をセットし、二人が対峙する。
「逃げずによく勝ち抜いてきたな?またぶっ潰してやるよ」
「何度も同じ展開になると思うなよ!今度こそ、勝つのは俺だ!!」
『さぁ、お互いに気合いは十分なようだ!そんじゃ、そろそろ始めるぜぇ!!』
ドクンドクンドクン……!
バンは高鳴る鼓動を抑えながら、ザキを見据えて機体を構えた。
「けっ」
ザキは余裕の表情で構えている。
(あのザキとやり合うには、出し惜しみしてる隙はない!自滅覚悟で、最初から本気出すしかねぇ!!)
『いくぜ!3.2.1.アクティブシュート!!』
バシュウウウウ!!!!
合図とともに二人が力を込めてシュートする。
「砕け!シェイドディバウア!!」
「うおおおおお!!!アンリミテッドブースターインパクトォォォ!!!」
バーーーーーン!!!
二機の激突で凄まじい衝撃波が発生し、会場内を轟かせた。
つづく
次回予告
「ザキ……お前はすげぇ奴だぜ!勝てる気が全然しねぇ!でも、だけど……どんどん力が湧いてくるんだ!
お前の強さが、俺を導いてくれる!だからこそ俺は、限界を超える!!
次回!『己の行く手を導く者!』
次回も俺がダントツ一番!!」