爆闘アタッカーショウ!!2ndエディケイション第4話

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爆闘アタッカーショウ!!2ndエディケイション
 
 
 
「お姉ちゃんクーイズ!
ここに、崖っぷちのお姉ちゃんと崖っぷちのストームランサーがあるとします。
どちらか一つしか助けられないとしたら、ゆうくんならどっちを助ける?」
 
 
「ストームランサー」
 
 
「そ、即答!?酷いよ、ゆうくん……」
「当たり前だろ。僕はお前を認めてないんだから」
 
「むぅ。それなら、崖っぷちの極村原河アイと崖っぷちのストームランサーがあるとしたら
どっちを助ける?」
「お前に決まってんだろ。MTBと人の命は天秤にかけられねぇよ。全く、常識のない奴だ」
 
 
「……お姉ちゃん、基準がよく分からないよぉ」
 
 
「ってか、その一人称ヤメロ!
せめて、『私』か『あたし』か『おいどん』にしろ!!」
 
「おいどんは……やだなぁ」
 
 
 
 
第4話「勝負の行方!ビクトリー・オア・ルーズ」
 
 
 
 昼の弁当騒動をなんとかくぐり抜け、僕は無事帰宅した。
 
「おい、お前!!」
 そして、僕は帰ってくるなりあの女を呼びつける。
「なぁに~?」
 キッチンから、エプロン姿のあいつが現れる。どうやら水仕事をしていたらしく濡れた手をエプロンで拭き拭きしている。
「これ!!」
 僕は、カバンから立方体の箱を取り出して、突き出す。
 あいつは、きょとんとした顔でそれを受け取り、パカッと蓋を開けると、顔を綻ばせた。
「あ、キレイに食べてくれたんだね~。どう?美味しかった」
「うん!特に甘く焼いた焼きビーフンの塩加減が最高……ってそうじゃねえええええ!!!!」
 あぶねぇあぶねぇ!危うく奴の話術に引っかかって本題を忘れるところだった。
 恐ろしい奴だ。
「なにっ考えてんだよ!わざわざ学校に乗り込んでくるなんて!!」
「だって、お弁当忘れてるから……」
 
 まぁ、忘れ物を届けに来るのは正当な理由ではあるが
 
「作るなら作るで予め言ってくれよ」
 そう、こればっかりはあいつに非があるだろう。
 僕は元々購買派の人間なのだ。
 だから、弁当を持っていかなきゃならないと言うノウハウはない。
 忘れるな。と言う方がドダイ無理な話なのである。
 
「ゴメンなさい。ちゃんと言わなかったお姉ちゃんが悪かったね」
 ちゃんと理解してくれたようで、素直に謝ってくれた。
 そういうところは憎めないんだよな。
 
「じゃ、明日からも作るから、ちゃんと忘れないで持っていくんだよ」
 そうそう、そうやって告知してくれれば僕だって。
 
 あ、だけど……。
 
「あ~、でも早速で悪いんだが、僕は弁当を持っていけない事情があるんだ」
「???」
「ほら、登校中さ。MTBバトルするから、弁当なんか持ってった日には、悲惨な目に……」
 
 僕だって最初は自分で弁当を作っていた。所謂弁当男子って奴だったさ。
 だけど、登校中に激しいバトルなんかしてるから、カバンの中にある弁当が、寄り弁どころの騒ぎじゃなくなるんだよな。
 一回それやって、もう二度と弁当なんか持って行くか!って思ったものだ。
 
「そっか。じゃやっぱり私が持って……」
「だからダメなんだって。基本的に部外者は立ち入り禁止だし。
お前みたいな美人さんが私服着て学校内なんかに入ったら目立って目立ってしょうがないだろ」
 僕の言葉に、何故かこいつは頬を染めて、クネクネとくねくねみたいな動きをした。
「そ、そんな美人さんだなんて、もうゆうくんってば、そんな風に私の事を……」
 やべっ!失言だったか!
 僕は両手を振って慌てて否定した。
「あぁあぁ!一般論だ一般論!!クラスの奴らがそう言ってたから!僕は別に……」
 
「でも、やっぱり購買パンだけだと栄養が偏っちゃうと思うな」
「大丈夫だって。今流行りのもずくパンはMTBライダーにとって栄養バランスが良いって自称してんだぜ」
「そっかぁ……じゃぁ大丈夫なのかなぁ?」
 こいつは、首を捻りながら、納得してんだかしてないんだかよく分からない仕草をする。
 
 
「……う~ん、でもやっぱりパンだけだとなぁ……。かと言ってゆうくんは持っていけない。部外者の私も学校に入れない……う~ん……」
 
 一人ブツブツ呟いている。
 変な事企んでなけりゃいいんだけどな。
 
 一抹の不安を抱きつつも、特に何も問題は起きずに翌日は訪れた。
 いつものようにMTBバトルしたのちに学校に辿り着く。
 何か企んでるかとも思ったが、特に何も無かったので人安心だ。
 MTBバトルにも集中できて、今回は権兵衛に勝てた。
 
「負けたああああ!!!」
「やったぜ!!」
 頭を抱える権兵衛と、ガッツポーズを決める僕との対比が激しい。
「チクショウ……でもまっ、ようやくいつものユウジに戻ったって感じだな」
「あぁ、心配かけたな」
 
「気にすんな。あれだろ、昨日学校に来てたお姉さんの事について悩んでたんだろ?」
「あ、姉とは認めてない!」
 ……っと、こんな意地張ってたらまた昨日の二の舞だぞ。
「はぁ、じゃ、姉(仮)って事で」
 気を利かせた権兵衛が、(仮)をつけてくれた。
「お、おう。それならいいや」
 まだ嫌悪感はあるものの、耐えられるレベルだ。
「で、結局なんなんだ?お前、一人暮らしだったんじゃなかったっけ?」
 
 ……こいつになら、事情を話してもいいかもしれない。
 何より、僕はこいつに迷惑を掛けた。
 本気でバトルをしなかった。と言う迷惑を。
 その責任は果たさなければならないだろう。
 
「実は、かくかくしかじかで」
 
 僕は、権兵衛に洗いざらい全て話した。
 家の事情。僕の気持ち。そして、今の状況……。
 
「そっかぁ」
 それら全てを聞き、権兵衛は何度もうなずいて唸った。
「ま、頑張れや」
 それだけ言うと、校門へと足を進める。
「そ、それだけ?」
 全ての事情を話したってのに、反応があっさり過ぎて拍子抜けしてしまう。
「なんだ?他に何か必要か?別に、何か答えを求めてたわけじゃねぇんだろ」
「そりゃ、そうだが……」
「お前の中で気持ちがハッキリしてる以上、俺からは何も言えねぇよ」
 そして、権兵衛は今度こそ口を閉じ、足を速めた。
「……そう、なのかな?」
 僕も、首をかしげながらその後に続いた。
 
 
 
 そして、待ちに待った昼休みがやってきた。
「う~ん!よく寝た!!」
 僕は大きく伸びをする。
 
 午前中の4時間ってなんか眠くなるよね。
 まぁ、午後の2時間はもっと眠くなるんだけどね。
 
「ユウジ!購買行こうぜ!!」
 いつものように権兵衛が誘ってくる。
「おう」
 僕も、いつものように立ち上がる。
 
 が、そのいつも通りの行動に対して疑問を抱く奴が現れた。
 
「あれ、あんた購買行くの?」
 郷田山が、購買に行く僕を目敏く見つけて声をかけてきた。
「あ、あぁ?」
 めんどくさいので適当に返事する。
「ふ~ん……」
 何故か、含みのある『ふ~ん』だった。
 気になった僕は足を止めて郷田山に向き直る。
「なんだよ、いつもの事じゃんか。言いたい事があるなら、ハッキリ言えよ」
 聞き返す僕に対し、郷田山は何故か顔を赤らめ、歯切れが悪くなる。
「ん、あの、い、一緒に住んでるって言う、あの女の人にお弁当、作ってもらったんじゃ……?」
「あぁ」
 別にこいつが気にする事じゃないと思うのだが……まぁ、クラスメイトの一員として気になるのだろう。学級委員長だしな。
 
 僕は、簡単に事情を説明した。
 
「……と、言うわけで僕はこれからも購買生活と言うわけだ」
「そっかぁ……」
 ちゃんと説明してやったにも関わらず、郷田山は天を仰ぎ、何か考え事をしているっぽい。
「そういうわけだから、僕は購買行くわ」
 一人ブツブツ呟いている郷田山を置いて、僕は購買へと急いだ。
 
 あれ?似たような光景をどこかで見たような……。
 まぁいいか。もずくパン美味しいし。
 
  
 ……。
 …………。
 
 
 今日も一日、楽しい学校生活だった。
 そして、午後の授業も無事睡眠学習を終え、僕は家に帰った。
 
 
「ただいま~」
 
 ほんの数日前までは、返事を期待しない『ただいま』だった。
 ただ、惰性で発するだけの『ただいま』だった。
 だけど今は、返事がある。
 だから、同じ言葉を発してるのに、最近はなんだか気恥ずかしさを感じるようになった。
 
「……?」
 
 のだが、今日はその返事がない。
 疑問に思っていると、奥の方からドドドと足音が聞こえてくる。
  
「ゆうく~んっ!お~か~え~り~!!!」
 
 しまっ!時間差攻撃か!!
 油断した!と思っているもつかの間、あの女が両手を広げ、全身からハートマークを発しながら迫ってきた。
 
「うおっと!」
 
 間一髪で、その抱擁をかわす。
 
 うん?かわす……かわす。
 
 避けたんだよ!
 
 ゴンッ!
 と、勢いあまってそいつは玄関に顔をぶつけた。
 まぁ、自業自得だ。
 
「うぅ、ゆうくん酷い~」
 赤くなった鼻の頭を摩りながら涙目になっている。
「アホな事してるからだろ」
 僕はため息をついて、そのまま玄関を上がった。
 
「あ~、喉渇いた~」
 僕は、牛乳を飲むために、冷蔵庫を設置しているキッチンへと向かう。
「あ、待って!」
 ガシッ!と、後ろから抱きつかれた。
 背中に柔らかい感触が当たり、何かが起き上がる気配を感じた。
「離せよ」
 前屈みになりたくなる衝動に耐えながら、僕は言った。
「あ、あのね!喉乾いたらね、お姉ちゃんが、美味しい飲み物ついであげるからね!だからソファで待っててね!」
 
 なんか、日本語が不自由な人みたいになってるぞ。
 それに、お茶とかコーヒーじゃないんだから、誰が用意した所で味は変わらないんだが……、
 何か隠してるか?
 
 まぁ、キッチンで何か隠すって、どうせ夕飯を手の込んだものにして、びっくりさせようとかそういう魂胆だろう。
 
 ぶっちゃけ、大歓迎だ!
 
 そんなわけで、ネタバレして楽しみがなくならないよう僕はこいつの言うとおりにする事にした。
「じゃ、牛乳。お願い」
「……」
 僕の注文を聞くと、そいつはいそいそと服をまさぐり始めた。
「何してる?」
 その行為が完了しないうちに僕は素早く突っ込んだ。
「ミルクの準備を」
「僕が欲しいのは、高脂肪の牛の乳だあああああああ!!!!」
 言い切る前に僕は力の限り怒鳴った。
 ほんとに、油断も隙もないやっちゃ。
  
 ってか、出ねぇだろ!出るわけねぇだろ!!
 
 あいつは、口を尖らせながら冷蔵庫へと向かった。
「もう、冗談なのに」
 
 目がマジだったぞ。
 
 
 そして、夕食の時間になった。
 献立は、シーフードカレーだった。
 海の具がふんだんに使われており、ルーにも米にも海の旨味が染み渡ってとても上手かった。
 だけど、期待していたほどのサプライズは特に無かった。
 
 
「じゃ、結局何隠してたんだ?」
 
 結局その日は、何も分からないまま過ぎていった。
 
 
 
 そして翌日の昼休み。
 
 
「さて、今日ももずくパンが楽しみだな~っと!」
 僕はいつものようにもずくパンを買うために購買に向かおうとする。
「ま、待ちなさいよ!」
 教室を出ようとすると、後ろから郷田山が声をかけてきた。
「あんだよ。早くしないと人気のもずくパンが残り一個になっちまうんだよ!」
「その……」
 郷田山はごそごそとポケットをまさぐると、そこから立方体の箱を取り出した。
「これ……」
 それが何で、どういう意図で取り出したのかを頭の中で理解した直後、僕の耳に黄色い声が突き刺さった。
 
「ゆうく~んっ!」
 
 悪寒を感じ、声のした方へと視線を向けると、僕は言い知れぬ恐怖を感じた。
「んなっ!」
 あいつが、この学校の制服を着たあいつが、にこやかに立っていた。
 突然の出来事に、頭が真っ白になる。
「ゆうくんっ!一緒にお弁当食べよう!」
 呆然としている隙に、こいつに捕まり、そのまま連行されてしまった。
 
 やってきたのは屋上だった。
 なるほど、ここなら誰もいないからゆっくり出来ると言う訳だ。
 考えたな。
 
「ってか、なんでいるんだよ……!」
「今日転校してきたから。これならお弁当持ってこれるでしょ?」
「……」
 頭痛くなってきた……。
 なんで学校に来てまでこいつの相手せにゃならんのだ……。
 これから先、昼休みになる度にこうなるのかと思うと、もう骨が折れそう。
 
 まぁでも、弁当はうまかったからいいんだけどさ。
 
 そして、放課後。
 僕は、ちょっとした気まぐれで焼却炉前を通って家に帰る事にした。
「ん?」
 と、その焼却炉前によく知った顔がいる事に気付いた。
 そいつは、目に涙を浮かべていて、なんだか話しかけるのを躊躇ってしまう。
 僕が躊躇していると、そいつはおもむろにポケットから立方体の箱を取り出し、中身を焼却炉の中に……。
 
「ちょっと待ったぁぁああああああぁぁあああ!!」
 そいつが何をしているのかを悟ると、僕は大声でそれを制した。
「きゃっ!……ご、極村原河」
 そう、そいつは郷田山だった。そして、今捨てようとしてたのは……。
 
「はぁ……はぁ……」
「な、何よ?」
「い、いや、腹、減ったなって思ってさ。それでちょっと大声出してみたら余計腹減ったんだ」
 どういう理屈だ。
「バカじゃないの?ってか、お姉さんと一緒にお弁当食べたんじゃないの?」
「いやぁ、アイツの弁当美味過ぎてさ。逆に腹減るんだよ。はははは」
 腹が減るというより、食欲が収まらなくなる。といった方が正しいかもしれない。
「ふ~ん」
 郷田山は興味なさそう風を装いながらも、どこかソワソワしている。
「あ~、腹減ったなぁ~。どっかに、まだ手付かずだけどどうせ食べないから捨てようとしてた弁当とか無いかなぁ?」
 僕はワザとらしく視線を彷徨わせる。
 すると、郷田山は無言で手に持っていた箱を僕に差し出す。
「お?」
「か、勘違いしないでよね!あんた、汗臭いから。それでよ!」
 全く、素直じゃない奴だ。
 僕は苦笑しつつ、それを受け取る。
「あぁ、サンキュ」
「残したりしたら、承知しないからね」
「任せろ。僕の胃袋は宇宙だ」
 
 あぁ、フードファイト続編出ないかなぁ?
 満の妹が気になる!!
 
 
 次回
 
「彼女が見せた涙。いつも笑っている、彼女が見せた。
いつも?僕は、本当に笑っている姿しか見た事無かったか?
その、涙を、僕は……拭ってあげたいと思った。
 
次回!爆闘アタッカーショウ2nd!『真実の涙!トゥルー・ティアーズ・カミング』
 
熱き闘志をダッシュ・セット!」
 

 
  
 

 




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