爆闘アタッカーショウ!!2ndエディケイション 第2話

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爆闘アタッカーショウ!!2ndエディケイション
 
第2話「ライバル登場!マキシマム・ポリフェノール」
 
 
 
 
 第61回MTBバトルフェスティバルカップ会場は、参加者と出場者の熱気でむせ返っていた。
 
「いよいよだな……」
 その会場を見上げながら、一人の少年が仁王立ちしていた。
「この大会、俺が勝つ!!いくぞ、俺の愛機、フレイムブリンガー!」
 少年は、自分の愛機に跨って会場内へと漕いでいった。
 
 
 
 ちょうどその頃。極村原河家。
 
「僕は……お前を認めない!!!」
 僕は、はるばるやってきた目の前の少女に向かって痛烈な言葉を投げつけた。
「っ……!」
 
 外道だと思うかもしれない。
 非情だと思うかもしれない。
 でも、これでいいんだ……。
 さぁ、大人しく帰ってくれ。
 
「……」
「……」
 
 二人の間に沈黙が流れる。
 しかし、すぐに少女の方から沈黙を破ってきた。
 
「もう~ゆうくんってば少し見ない間に天邪鬼さんだねぇ~」
「はっ?」
 何を思ったのか、少女は僕の痛烈な言葉に笑顔で返してきやがった。
 そして、不意をつかれた僕をギューっとハグしてくる。
「そっかぁ、男の子はもうそういうお年頃だもんねぇ。ふふ、可愛い可愛い」
 どうやら、僕の言葉を思春期特有の反抗と解釈したらしい。
 でも、違うんだ。これはそういうんじゃなくて……!
 ってか、本当に反抗期だとしたらその行動は教育的に逆効果じゃないの?!
 いや、反抗期に対する教育の仕方とか知らないけどさ。
 って、そんなこたぁどうでもいいんだよ!!!
 
 なんだってんだよ!あんだけキツイ事言ったのに、なんでこいつはこんな平然と笑って、僕の事抱きしめられるんだよ!
 頭沸いてんじゃねぇのか!?
 
 僕がいろいろと混乱しているうちに、少女は僕を放してくれた。
 
「さてっ、ゆうくんが一人でちゃんと生活出来てたか、恒例のお姉ちゃんチェーック♪」
 弾む声でそういうと、少女は軽い足取りで家の中に入ってしまった。
 
「……」
 超展開に頭がついていかず、呆然と立ち尽くす僕だったが、事の重大さに気付き慌てて家の中に飛び込んだ。
 中に入ると、少女が居間やリビングを物色していた。
 
「うんうん、少し散らかってるけど、まぁ許容範囲かな。男の子の一人暮らしにしてはなかなかキレイにしてるみたいね」
 
「なんっだよ!勝手に入ってくんなよ!住居不法侵入で訴えるぞ!!」
「ゆうくん、それは間違ってるよ」
「なにぃ……!」
「ここは他の誰でもない、ゆうくんが住んでる家なんだよ」
 何を、当たり前の事を……。
「そして私はゆうくんのお姉ちゃん。ほらね?」
 何が、ほらね?なんだ……。
「お姉ちゃんが弟の住んでる家に来るのは合法でしょ」
「ぐ……!」
 確かにそうだ。
 でも、法律だかなんだかって言うのは、命が保障されてる時にのみ通用する事であり。
 命くらいは保障されてるであろう今は、恐らく通用するのだろうな。
「うるせぇ!法なんか関係ねぇ!!ここは僕の家だ!僕の城だ!ルールは僕が決める!僕が法だ!!」
 なんか、我ながらメチャクチャな事言ってるな。
「でも、正確にはお父さんの家だよね」
「ぐぐっ!」
 今までで最も正論な事を言われ、僕は口を閉じざるを得なかった。
 そうさ。この家はオヤジの金で買い、そしてオヤジに住まわせてもらってるに過ぎない。くそっ、すっかり忘れてたぜ。
 
「そ、それでも!それでも……!」
 形勢は完全に不利なのだが、僕は諦めずに反論の糸口を探ろうとする。
「それにお姉ちゃん。ここを追い出されたら、もう行く所がなくなっちゃうよ……」
「へっ?」
「お父さんにゆうくんの様子を見に行くよう言われて、イタリアからはるばる来たのに……。最初から家に留まるつもりだったから、余計なお金も持たされてないし、もう時間も遅いし……」
 チクショウ……なんて無計画な父親だ。
 いや、ある意味計画的なのか……?
 
「ゆうくんは、か弱いお姉ちゃんを一人路頭に迷わせて、平気なの?」
 僕よりも少し背の低い少女は、上目遣いになり涙を浮かべながら僕になにかを訴えるなまざし攻撃を仕掛けてきた。
「……」
 まなざし攻撃はともかく、確かに女の子一人を放り出すのはマズイ。
 オヤジの手中にハマってる感もあるが、ここは僕が折れるしか無いだろう。
「仕方ねぇ」
 僕は、力なく呟いた。
「ゆうくん……!」
 少女の顔がパァッと明るくなる。
 そしてまた僕に抱きついてきた。
「ふふっ、やっぱりゆうくんは優しいね~♪」
 僕は、少女の発する柑橘系の香りに鼻をくすぐられながら、口を開く。
「但し、一日だけだぞ!オヤジから金送ってもらって、オヤジのとこに帰る用意が出来たらすぐ出てってもらうからな!」
「え~」
 あからさまな不満の声が聞こえたが、無視した。
 とにかく、すぐにオヤジに連絡して帰してやる。
 
 
 ちなみにこいつは極村原河家の長女で、極村原河アイ。年齢は僕より二つ上だから現在は14か15歳くらいか?
 血は繋がってないが、戸籍上は僕の姉と言う事になっている。
 小さい頃から一緒に遊んでくれて、甘やかしてくれた彼女によって、あの頃の僕は立派なお姉ちゃん子になっていた。そう、あの頃は
 
 こいつのせいで、僕は中途半端な幸せを見せられ、その挙句にオヤジと一緒に僕を置き去りにした。
 だから、今更戻ってきてどういうつもりなんだよ……!
 
 とりあえず、僕はオヤジの携帯に電話してみる事にした。
「ちっ、繋がらねぇ……!」
 受話器からはツー、ツー、と言った無機質な電子音しか聞こえてこない。
「お父さん、今ジャングルの秘境でオフロード大会に出てる頃だから、多分出られないんじゃないかなぁ?」
「なんだとぉ……!」
「しかも三日三晩続けてのサバイバルレースって言ってたから、連絡取れるのは早くても一週間後くらいじゃないと」
「それを早く言えよ!」
 僕は乱暴に受話器を置いた。
 くそっ!オヤジはいつもMTBMTBって!そんなにMTBが大事なのかよ!僕も好きだけどさ!!
 けど困ったなぁ。さすがにオヤジの仕送りだけじゃこいつを帰すには足りないし……。なんとかオヤジにお金を工面してもらわないことには
 
「まぁいいや、とにかく飯だな。腹が減ってはイクサは着れずって言うし」
「イクサって何?」
「対ファンガイア用の強化スーツだ。昔は凄かったらしいぞ」
「ふ~ん。詳しいね」
「まぁ、あんたには一生縁の無い事柄だからな、別段知る必要もないと」
「あ~、すぐそうやってツンケンした事言う~!それに、私の事は『お姉ちゃん』って呼びなさい!」
「認めてないっつっただろ」
 そう吐き捨てて台所へと向かう。
 確か、材料はまだ買い置きがあったはずだ。米もある。
 二人分くらいの飯は楽勝で作れるだろう。
 
「何々?ゆうくんお料理できるの??」
 ねえ……げふんっ!あいつが、興味津々と言った風に身を乗り出してくる。
「当たり前だろ。何年一人暮らししてると思ってんだよ」
「へぇ~、楽しみ~♪ゆうくんの手料理♪ゆうくんの手料理~♪」
 何が楽しいのか、謎鼻歌を歌いだす。
 手料理って言っても、簡単なものしか作れないんだが……。
 
 とりあえず、簡単に作れる炊き込みご飯と、天ぷらでも作るか。
 僕は無洗米を2合と野菜を適当に炊飯器に入れ、醤油をかけてセットする。
 その間に、衣を作り、野菜に付けて、油で揚げる。
 うん、完璧だ。
 
 40分ほどでご飯も炊き上がり、食卓に並べた。
 うん、我ながら良い出来だ。
 
「うわ~、おいしそう~♪」
 見た目は、お世辞にも良いとはいえないが、こいつの目には『僕の手料理』と言う補正がかかってるのだろうな。
 まぁ、料理なんて見た目や味が多少悪くても腹さえ膨れればよいのだ。
「いただきます」
「いただきます♪」
 ガリッ!
 うん、天ぷら少し生焼けだったか。まぁ、食えん事は無い。野菜は生で食ってなんぼじゃい。衣もあまりついてなくて天ぷらと言うより素揚げみたいだけど、揚げる時にどうしても剥がれちゃうんだからしょうがないじゃない。まぁ、多分そういう仕様なんだろうと諦めて欲しい。
 炊き込みご飯も、なんか醤油臭いなぁ。
 昔お母さんに作ってもらった炊き込みご飯は、もっといろんな味がして美味しかったんだけど。でも作り方的に間違ってるとは思えないし……。
 ま、いいだろ別に。食えれば問題なし
 
「……う……」
 見ると、さっきまで笑顔だったあいつの顔が歪んでいた。しかも、口元を手で押さえている。悪阻か?
「どうしたん?」
「ゆうくん、何これ?」
「炊き込みご飯と天ぷら」
 
「……ゆうくん、炊き込みご飯作る時、ダシ入れた?」
「ダシ?醤油の事?ならたっぷり入れたぞ!」
「…………そう。じゃぁ、この天ぷら。衣まだ残ってる?」
「うん」
 僕は立ち上がり、キッチンにある衣の入ったボールを手に取る。
「何コレ……!」
 すると、背後から悲鳴のような声が聞こえた。
 振り返ると、そこにはあいつが立っていた。
「サラサラじゃない……!」
「あぁ、粉勿体無いから薄めにしたの」
 そう答えると、あいつは額に手をあてて、唸った。
「??」
 その行動の意味を理解できず、僕は首をかしげた。
「ゆうくん、どきなさい」
 その声は、今までの甘ったるいものではなく淡々とした事務的ボイスだった。
「え?」
「後はお姉ちゃんがやります」
「……」
 静かな圧力に押され、僕はスゴスゴとキッチンを去った。
 
 そして、数十分後。
 僕の目の前には、先ほどと同じように炊き込みご飯と天ぷらが並べられていた。
 ……ただし、見た目も香りもさっきとは段違いだったが。
「す、すげぇ……!」
 僕は思わず唸った。そんな、同じ材料、同じ料理なのに、作り手が違うだけでこんなにも変わるなんて!
「い、いただきます!」
 僕は早速、ジャガイモの天ぷらを口に運んだ。
「う、うまい……!」
 衣はサクサク。中はホクホク。そしてかみ締めるたびに甘みが口いっぱいに広がっていく……!
「な、なんだこれ。ほんとに天ぷらなのか!?」
 天ぷらってもっとガリガリしてるものだと思ったのに。
 そして次に炊き込みご飯に手をつける。
「うっ!」
 甘すぎず、辛過ぎず、それでいて口の中に広がる旨味成分。
 醤油臭かっただけのあの炊き込みご飯とは比べるのもおこがましい……!
 
「う、う、うーまーいーぞーーーーー!!!!!!」
 
 あまりの美味しさに、僕は口から薄桃色のエクトプラズムを放出せざるを得なかったのだった……。
 
 そして、あっという間に平らげてしまった。
 
「は~、美味しかったぁ~。ごっそうさん!」
「はい、お粗末さまでした」
 
「いやぁ、まさか天ぷらと炊き込みご飯がこんなに美味いものだとは思わなかった」
「ふふふ、これからは毎日作ってあげるね♪」
「いや、それは悪いよ。不本意とは言え、数日は一緒に暮らすんだ。こういうのはちゃんと当番を決めて……」
「わ・た・し・が!作ってあげるからね♪」
 何故か、僕の意見は却下されてしまった。
 
「男子厨房に立たずって言うでしょ」
「僕、一応厨房なんだけど」
 意味が違う。
 
「とにかく、帰ってきて正解だったわ。まさか毎日あんなもの食べてたなんて……。やっぱりゆうくんには私がついてないと、うん!」
 気合いを入れるあいつに対し、悔しい事に僕は何の反論も出来ないのだった。
 
 
 
 次回
 
「いつもの四人でいつもの空き地に練習に行く俺たち。
だけど、そこには俺達の知らないMTBライダー達がたむろっていた!
あいつらは不良MTB暴走族のトゥルーティアー団じゃないか!!
また悪い事考えてるな!俺たち四人でお前らをやっつけてやる!!
かくして、領土を賭けた戦いが始まる!

次回、爆闘アタッカーショウ!!2nd『俺達の土地!プレイス・プライベート・オプチカル』

熱き闘志を、ダッシュ・セット!」
 
 
 
  


 

 




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