弾突バトル!フリックス・アレイ第27話


第27話「甦れヴィクター!Mr.アレイ最後の試練!!」
  
  
 
 
 ヴィクター復活をかけて、Mr.アレイの誘いでとある廃ビルの中へ入ったバン達。
 そこでは、フリックスを使ったさまざまな試練が用意されていた。
 第1の試練、第2の試練を突破したバンは、さらに上の階へ進み、第3の試練にチャレンジしていた。
 
「いっけぇ!」
 バンは数メートル先に設置されているターゲットへ向かってフリックスを放った。
 バンの指力を受けてフリックスが真っ直ぐに滑っていく。
 ターゲットまでの道のりは幅2㎝程度の細い板でつながっており、そこから外れれば床に落ちてしまう。
 
「くっ!」
 勢いよくブッ飛んでいったフリックスだが、徐々に軌道がそれてしまい、ついにバランスを崩して板から落ちてしまった。
「あぁ、くそっ!失敗したっ!!」
 力なく地面に伏したフリックスを見たバンはうがーーーと頭を抱えて唸った。
「全然狙いが定まってない……」
 リサは諦観めいた顔でため息をつきながらフリックスを拾ってバンへ手渡した。
「バンは元々、パワーシューターだからこういう精密シュートは向かないんだよなぁ」
「リサちゃんの方が向いてるんだろうけど、他の人がやったんじゃ試練にならないしね」
 オサムとマナブも呆れ気味にバンとリサを交互に見ながら言った。
「あったりまえだ!これは俺がクリアしなきゃ意味ねぇんだ!くっそぉ、やってやるぞぉ……!」
 バンは諦めじと再びフリックスをスタート位置において構えた。
「あ、待ってバン。これを使ってみたら?」
 そういって、リサは青色のパーツをバンへ差し出した。
「こいつは、さっきの試練で手に入れたパーツ……」
「多分、形状からリアにつけるパーツっぽいよね」
 そのパーツをマジマジと見つめながらマナブが言う。
「っても、何か特別な機能があるように見えないしなぁ」
「でも、少しでもヴィクターに近づくんだから付けるだけ付けてみればいいんじゃないか?」
 オサムにそういわれ、バンはうなずいた。
「まぁ、そうだな。ヴィクターに近付くのは良い事だ」
 何も解決しそうにないが、とりあえずリアパーツを交換した。
 
 そして再びチャレンジ。
「頼むぜ……いっけぇ!!」
 ドンッ!!
 バンが力強くシュートする。その時、明らかにさっきとは違う手ごたえを感じた。
「っ!(指にフィットする!?)」
 そのシュートを受けたフリックスは軌道を変える事なく見事ターゲットを撃破した。
 バチコーーーン!!
「おっしゃぁ!」
「やったね、バン!」
 試練の成功を見て口々に快哉を叫ぶ一同だが、オサムが一つ疑問を呟いた。
「でも、なんで急に成功したんだ?ヴィクターのパーツだからってだけじゃ納得いかないぜ」
「いや、むしろヴィクターのパーツだからだろうね。リアパーツはシュート時に指に当たる部分だから、精密なシュートを打つにはやっぱり慣れてるパーツの方が良いんだ」
 マナブがその疑問に答えると、バンもその答えに納得したのか頷いた。
「そっか。そういや、なんかすごい撃ちやすかったんだよな……。へへっ、なんかちょっとずつヴィクターが帰ってきてくれてるみたいだ」
 バンは嬉しそうに口元を緩めた。
「あ、バン。あそこ……!」
 リサが床の一部分を指差した。
 そこには小さな穴が開いており、またもプラスチックの欠片が入っていた。
「おっ、今度のパーツはこれか!」
 バンがさっそくそれを拾う。今度のパーツは、細長い棒のようなパーツで、左右反転したものが二つ入っていた。
「今度は二つ入ってる」
「左右反転してる形状……もしかして、横につけるんじゃないかな?」
 マナブの言う通り、そのパーツは横についているパーツとサイズ的にも同じだった。
「よし!」
 バンはさっそく分解してパーツを付けた。
「おぉ、ピッタリだ!さっすがマナブ、よくわかったな!」
「まぁ、左右対称に二つのパーツなら、普通は横につけるだろうしね」
 マナブは自慢するでもなく言った。
「でも、今度はどんな効果なんだろうな?」
「何でもいいぜ!次の場所に行くぞ!」
 バンは次なる試練へと足を進めた。
 
 次の階にあったのは、少々大きめのフィールドだった。
 今までと同じようにフィールドの端にスタート位置、その反対側にターゲットが置かれてあるが、そこまでの間にはいくつもの紐で吊るされた丸太が振り子のように揺れて行く手を阻んでいる。
「な、なんだこりゃ!?」
「すごい、大掛かりな仕掛けだね……!」
「こりゃ、一筋縄じゃいかないぜ!?」
 その大掛かりな装置に、一同は一瞬たじろいでしまった。
「バン、大丈夫?」
 リサが心配そうにバンを見るが、バンはすぐに気を引き締めてフリックスをスタート位置に置いた。
「このくらい、どうって事ないぜ!俺には、ヴィクターがついてんだ!」
 勇ましくそう返事をしたバンは、さっそくフリックスをシュートした。
「頼むぜ!いっけぇぇぇ!!」
 バシュッ!!!
 フリックスが左右に揺れる丸太の隙間を掻い潜るながら突進する。
「やった、いけるぜバン!」
「うん、タイミングはバッチリだ!」
 どんどんターゲットへ迫っていくバンのフリックスだが……。
「あ、ダメ!」
 最後の丸太だけ微妙にタイミングがズラされていたのか、ちょうどフリックスの横腹へぶつかろうとしていた。
「やべぇ、バン!避けろ!!」
「いや、無理でしょ(汗)」
 自走機能のないおはじきがシュートの途中で任意的に軌道を変える事は出来ない。
 と、そうこうしているうちに、丸太は今にもフリックスの横っ腹をブチ殴ろうとしている。このままでは吹っ飛ばされる。
「ヴィクター……耐えろぉぉ!!」
 ガッ!!
 ついに、丸太がフリックスへヒットした。
 バーーーン!!
 しかし、吹っ飛ばされたのは丸太の方だった。フリックスはぶつかってきた丸太を返り討ちにしたのだ。
「う、うそだろ……!」
「まさか、あのサイドパーツの効果……?」
「ううん。きっと今まで手に入れてきたヴィクターのパーツ一つ一つが、バンの想いに答えたんだ」
 そして、フリックスは見事ターゲットを撃破した。
「おっしゃぁ、やったぜ!!!」
 腕を振り上げる勢いで大ジャンプする。
 着地すると、先ほど撃ったスタート位置からゆっくりと箱がせり上がってきた。
「おっ!今度のパーツはこれか!」
 箱の中に入っていたパーツを取り出す。
 そのパーツは、車のライトみたいに黄色く目のようなものが描かれたパーツだった。
「なんだか、顔みたいだね」
「ああ。でもこの顔、懐かしいぜ……」
 バンは慈しむ表情で、最後のパーツをフリックスに組み込んだ。
 すると、そのフリックスの形は、まさにヴィクターを進化させたような力強い形状になった。
 その姿は神々しく、まるで不思議な力を宿しているかのように光り輝いてみえた。
「こ、これが、新しいヴィクターか!?」
「すごい、こんなフリックス、見たことがない……!」
 その輝きに、オサムとマナブは少し後ずさった。
「やったね、バン」
「ああ。ついに完成したんだ……俺の、新しいヴィクター……ディフィートヴィクターが!」
 ギュッとバンはディフィートヴィクターを強く抱きしめた。
「バン……?」
 リサがバンの顔を覗き込むと、バンは目を強く瞑り、涙を堪えているように見えた。
「おかえり、ヴィクター……!もう絶対、お前を離さないからな……!」
 涙で震えそうな声で、バンはしっかりとヴィクターに語り掛けていた。
「バン……」
 そんなバンを、リサは優しい瞳で見つめた。
「あ、そうだ」
 と、バンが何か思いついたように懐から何か取り出した。
「バン、それって」
 それは、バンがヴィクターの代わりに購入したフリックスだった。
「ああ。こいつも、ちょっとの間だったけど俺のフリックスだったからな」
 そういって、バンはそのフリックスのシャーシをヴィクターに組み込んだ。
「お前も、俺と一緒に戦ってくれ」
 壊れたヴィクターの代わりとは言え、自分のフリックスに変わりはない。ヴィクターが蘇ったからと言って、お役御免にするのは嫌だったのだ。
「全く、バンらしいぜ」
「うん。これで一件落着なのかな」
 
 その時だった。天井からMr.アレイの声が響く。
『随分と時間がかかったが、ようやく完成したようだな』
 その声を聴いて、バン達は顔を見上げた。
「Mr.アレイ!」
 
『ふん。感動の再会にはまだ早い。最後の試練が残っている。屋上へ来るがいい』
 バンの気持ちなどおかまいなしに、Mr.アレイの口調は冷たい。
「な、なんだよ!ディフィートヴィクターは完成したってのに、まだ何かやんのかよ!?」
 戸惑いながら反抗するバンに、Mr.アレイは淡々と告げる。
『新たなヴィクターは完成はしたが、それだけだ。お前自身が完成していない』
「俺、自身……?」
 言われた意味が分からず、バンはMr.アレイの言葉を反復した。
『無理に来る必要はない。二度と手放したくなければ、そいつ持って逃げ帰っても構わん。ヴィクターのフリッカーとして自信がないのならな』
 煮え切らないバンに、Mr.アレイは追い打ちをかけた。
 こんな風に言われれば後には引けない。
「だ、誰が行かないっつったよ!俺はヴィクターを信じてんだ!!お前が何を考えていようが、ヴィクターとはもう離れない!!」
 啖呵を切って屋上へ通ずる階段へ向かうバンをマナブがとめた。
「ちょ、バン!そう簡単に挑発に乗らない方が……!」
 マナブに言われ、バンは振り返った。が、その顔は啖呵を切った割には落ち着いていた。
「挑発されなくたって、俺は行くぜ。じゃなきゃ、なんかヴィクターが本当に帰ってきてくれる気がしないんだ」
「バン……」
 ちょっと意外な反応に、マナブは言葉が出なかった。
「うん、そうだね。バン、ここは行くべきだよ」
 リサは静かにバンを後押しした。
「だな!ここまで来たらもう行くっきゃないな!」
 オサムもリサに続いて賛成のようだ。
「……まぁ、バンが冷静なら、止める理由はないよ」
 マナブも、バンの態度を見て考えを改めたようだ。
「おう!」
 バンはそんな皆に力強く返事した。
 
 屋上は風が強く、汗ばんだ体には心地よかった。
 古いコンクリートの路面。その中央にフリックスのフィールドが設置されており、その反対側でMr.アレイが腕組をし、マントを風に靡かせながら立っていた。
「待たせたな、Mr.アレイ!」
 Mr.アレイと目が合うと、バンは不敵に笑いながら言った。
「……悪くない目だ」
 そんなバンを見て、Mr,アレイはぽそりと呟いた。
「?」
 予想外なMr.アレイの態度にバンは首をかしげるが、そんなことはおかまいなしにMr.アレイは口を開いた。
「では、最後の試練を始める。……その前に、返してもらうぞ」
 Mr.アレイがそういうと、バンの懐がポォ……と輝きだし、そこからさきほどまで使っていたフリックスのパーツが飛び出した。
「うわぁ、なんだぁ!?」
 そのパーツはMr.アレイの手に届く。
「こいつは元々俺のものだからな」
 そういって、Mr.アレイはパーツを組み立ててフリックスを作り上げた。
「最後の試練、ルールは簡単だ。この俺とフリックスバトルをしろ。このプロトアレイFXを倒せば、新型ヴィクターはお前のものだ」
「へっ、やっぱそういう展開かよ!」
 前にも似たような事はあった。十分予想の範疇だ。
 バンは慌てる事無くフィールドについた。
「バン、気を付けてね」
「ああ!絶対に負けねぇ!」
 バンVSMr.アレイのバトル開始だ。
 
 まずはアクティブシュートで順番決めだ!
 バンが先手を取った。
「へっ、一気にフリップアウトさせてやるぜ!!」
 バンは前方にいるプロトアレイFX目掛けてディフィートヴィクターをシュートした。
 ガッ!
 強い当たり。マインヒットは出来たものの、重心がずれていたのか、ヴィクターとプロトアレイは左右にV字に移動し、停止した。
 プロトアレイはややフィールドの端に近付いているが、ヴィクターはフィールド端からは遠い。
「その程度か?」
「くっ!ブッ飛ばせたと思ったのに……!」
 感じた手応えに結果が伴っていなかったのか、バンは悔しそうな顔をする。
「あれぇ?今のすげぇパワーが出てたのに、あのプロトアレイFXっての防御力がすごいのかぁ?」
 見た目のパワーに反して結果が伴わなかったことに対して、オサムは疑問を口にした。
「いや、多分プロトアレイFXの防御力はそんなに高くないはずだけど……」
 マナブも、今の状況の原因がわからないようだ。
「ヴィクターが、強すぎるのかも……」
 リサが、ポソッと呟いた。
「え?」
「今のヴィクターは確かにヴィクターなんだけど、でもドライブヴィクターじゃない。だから……」
「そうか……!」
 リサの要領を得ない言葉を聞いて、マナブは何かを察したようだ。
 そして、そんな会話をしている間にもバトルは進む。
 次はMr.アレイのターンだ。
「ふっ、甘いな。新しいヴィクターを手にしてもその程度か」
「くっ!」
「今度はこちらからいくぞ!」
 Mr.アレイがプロトアレイの向きを調節する。
 ディフィートヴィクターからはやや距離が離れているが、それでも狙えない距離ではない。
「はぁぁ!!」
 ドンッ!!
 Mr.アレイのシュートでブッ飛んできたプロトアレイが見事ヴィクターに激突する。
 当たり所が良かったのか、プロトアレイはそのままその場にピタリと止まり、ヴィクターだけがぶつかられた方へと飛ばされる。
「堪えろ!ディフィートヴィクター!!!」
 バンの願いが通じたのか、それともプロトアレイの攻撃力がそれほどでもなかったおかげか、ディフィートヴィクターはフリップアウトせずにストップした。
「くっそぉ……!だったら今度は必殺技だ!!」

 バシュウウウウウウウ!!!
 ブースターインパクトを繰り出すバンだが、上手く攻撃力が伝わらない。

「必殺技に頼って力押しか。その程度ではディフィートヴィクターは使いこなせん!!」
 ドンッ!!
 Mr.アレイのアタック。フリップアウトされるほどの大きな攻撃ではないが、それでも徐々にバンが追いつめられている。
「くそっ」
 バンのターンだが、状況は芳しくない。
 位置的に、さっきのシュートを考えるとこの一撃でフリップアウトを狙えるとは思えない。
 そして、上手くこの場を移動しなければ次のターンでこっちがやられてしまう可能性もある。
「ディフィートヴィクター……俺は、お前にふさわしくないのか……?」
 ヴィクターを構えながらも、なかなかシュートが打てず、バンはヴィクターへ悲痛に語り掛けた。
「バン!自分を信じて!!」
 その時、リサがバンへ声をかけた。
「リサ……」
「バンはヴィクターのフリッカーだよ!他の誰でもなく、バンだけが!」
「俺だけが、ヴィクターのフリッカー……」
「そして、今のヴィクターともっと向き合って!!」
「今の、ヴィクター……」
 リサに言われるがまま、バンはヴィクターの姿を凝視する。
「バン、ディフィートヴィクターはドライブヴィクターとは違うフリックスなんだ!パワーも攻撃力もドライブヴィクターよりも格段に上がってる!でも、だから強すぎてパワーが相手に上手く伝わってなかったんだ!」
 マナブの声がバンに届く。
 それを聞いたバンは、ハッとした。
「力が強すぎて……そうか。だからあの時プロトアレイをふっ飛ばせなかったのか」
 その言葉は、バンにとって最大のヒントだった。
 力が強すぎて力が伝わらない。だったら、やることは一つだ。
「頼むぜ、ヴィクター」
 バンはそうつぶやくと、すぅ……と息を吐いて全身の力を抜いた。
 力が強すぎて空回りするのなら、無駄な力を省くしかない。
 そして、バンはキッと狙いを定めて構えた。
「何かを掴んだようだな。さぁ、ぶつけてみろ!」
 そんなバンの様子を見て、Mr.アレイは満足げに微笑すると両手を広げてバンのシュートを受ける体勢をとった。
「いっけぇぇ!!」
 ドンッ!!
 それは、力強さと落ち着きの両方を兼ね備えたシュートだった。
 ディフィートヴィクターは寸分の狂いもなく、真っ直ぐにプロトアレイへ向かってスッ飛んでいく。
 バキィィィ!!!
 それは見事プロトアレイの重心を捉えた。そして、しばらく押し込んだ後にフロントの剣先が伸びてプロトアレイを弾き飛ばす。
「むっ!!」
 バシュウウウウウ!!!!
 ものすごい勢いでプロトアレイがフィールド端へと飛ばされていく。
 ガッ!!
 しかし、どうにかフィールド端の手前で踏みとどまった。
「かぁ~、おっしぃ!!でも、次で決めてやるぜぇ!」
 勝負は決まらなかったものの、この位置はかなり良い。プロトアレイFXの攻撃力でこの位置からヴィクターを狙ったところで大した挽回はできないはずだ。
 下手に逃げようものなら、それこそ今のバンとディフィートヴィクターの餌食になるだけ。
 だが、Mr.アレイは追いつめられているというのに不敵に笑った。
「見事だ。だが、甘い。ここで勝負を決めておくべきだった」
「なんだとっ!こんだけ追いつめられてんのに、よく言うぜ!」
「ああ。かなり追いつめられてしまった。だが、どうせならあともう一歩追いつめておくべきだったな」
「ど、どういう意味だ……?!」
「ふっ」
 Mr.アレイのシュート。ヴィクターの剣先にヒットするとものすごい勢いでヴィクターが飛ばされてマインヒットしてしまった。
「なに!?」
「攻撃力は諸刃の剣。逆に敵に利用される事もある」
「く、くそっ!」

「バン…!」
 
「へへ……」
 と、みんながバンを心配している中、バンの口元が緩んだ。
「何がおかしい?」
「いや、なんかさ。すっげぇピンチだけど、すっげぇ楽しいなって。これから先もずっとこいつとこんなすげぇバトルが出来るんだろうなって思ったら、なんか楽しみでさ」
「楽しい、か。だが、ここで負ければその楽しみはなくなるぞ」
「なくならねぇよ!俺はこいつを手にした瞬間に決めたんだ!何があってもずっと一緒にいるってな!ここで勝たなきゃ一緒にいられないってんなら、絶対に勝つんだ!!」
 バンは真っ直ぐな瞳でMr.アレイへ啖呵を切った。
「ならば見せてみろ!お前の決意の全てを、俺にぶつけろ!!」
「言われなくてもやってやるぜぇ!!」
 バンは、ディフィートヴィクターの向きを調整し、そして自分の右腕を引いた。
「うおおおおおお!!!!」
 そして、右腕を突き出しながらヴィクターをシュートした。
「ブースターインパクトォォォォ!!!!」
 バンの必殺シュートだ。
 すさまじい運動能力を得たヴィクターはプロトアレイへ突っ込む。
 そして、剣先をプロトアレイのボディへ突き刺したままフィールド端へ向かってどんどん押し込んでいく。
「こ、このパワーは……!!」
 さすがにMr.アレイも防御しきれないほどの攻撃力らしく、プロトアレイはなすすべなく押されていく。
「す、すげぇ!この勢いならフリップアウト出来るぞ!」
 興奮気味に叫ぶオサムの言う通り、ヴィクターとプロトアレイの勢いは衰える事無く場外へと向かっていく。
 しかし……。
「い、いや、これはまずい!」
「勢いが強すぎる……」
 リサとマナブは今の状況の危険性に気づいた。
 プロトアレイを場外させられそうなのは良いのだが、ヴィクターも剣先が刺さったまま一緒に動いている。
「このままじゃ、同時場外して、バンの負けになる……!?」
 そう。フリックスのルール上、同時場外は撃った側の負けとなる。自滅引き分け覚悟のシュートが出来ないからこそ、フリックスのバトルはテクニックが必要なのだ。
「バン!ブレーキしろ!!」
 いや、無理だから。
 そのまま、プロトアレイとディフィートヴィクターは一緒にフィールドの外へと飛び出していく。
「ふっ、俺の勝ちだな、バン」
 だが、バンの表情は勝利を確信していた。
「ディフィートヴィクター……俺はお前を信じてるぜ!!」
 バンがヴィクターへ叫ぶ。
 すると、ヴィクターは突き刺さった剣先をバシュッ!と伸ばし、プロトアレイを突き飛ばした。
「なにぃ!?」
 そしてその反動で、ヴィクターは反対方向へと弾かれて、どうにかフィールドギリギリへと着地した。
「やったぜヴィクター!!!」
 ディフィートヴィクターの着地とプロトアレイの落下を確認したバンはガッツポーズをした。
「バ、バンが……勝った……!」
「ああ、やりやがったぜ、あいつ……!」
「バンっ!」
 リサがバンの元へ駆け出す、オサムとマナブもそれに続いた。
 
「バン、やったね!これで、ディフィートヴィクターは本当にバンのものだよ!」
「ああ、サンキューリサ!みんな!お前たちの応援のおかげだぜ!」
「いやぁ、でもハラハラさせられたぜ」
「でも本当によかったぁ……」
 みんなが口々に祝いの言葉をバンへ贈っていると、Mr.アレイがプロトアレイを拾ってからバンの前に立った。
「Mr.アレイ……」
「見事だった、段田バン。ディフィートヴィクターのフロントギミックをあのような形で利用するとは、お前は正真正銘ディフィートヴィクターのフリッカーだ」
 それだけ言うと、Mr.アレイは踵を返して歩いていく。
「Mr.アレイ!」
 その背中へ向かって呼びかけると、Mr.アレイは足を止めた。
「えっと、ありがとな!俺に、ヴィクターをくれて!その……」
 上手く言葉が出てこないが、バンはディフィートヴィクターを託してくれたことへのお礼を告げようとした。だが、帰ってきた返事は冷たいものだった。
「勘違いするな。お前のためではない」
「え?」
「お前はヴィクターを手に入れたのではない。手に入れてしまったのだ。もう後戻りは許されない。それだけは覚悟をしておけ」
 厳しい口調でそういうと、Mr.アレイは再び歩き出し、フッと一瞬で姿を消した。
 
「……手に入れて、しまった?」
 バンはMr.アレイの言葉の意味が分からずに首を傾げた。
「どういう意味なのかな」
 リサもバンと同じく首をかしげる。
 そんな二人の疑念を、オサムが明るい口調で破った。
「まっ、なんでもいいじゃねぇか!とにかくバン!お祝いだ!ヴィクター復活の記念パーティしようぜ!!」
 オサムがそう言うと、バンも乗り気になった。
「おっ、いいねぇ!パーッと盛大にやろうぜ!!」
「そうと決まれば、早速駄菓子屋行ってお菓子いっぱい買うぞ!奮発奮発!!」
「おう!!」
 バンとオサムは意気揚々と走り出した。
「あ、ちょっと待ってよ!」
「バン~!」
 マナブとリサも慌ててその後を追いかけていった。
 
 
 
 
        つづく
 
 次回予告
 


 

 




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