第35話「三武将出現!決戦へのカウントダウン!!」
バン達の前に現れたユウタ、ゲンゴ、イツキ……三人はスクールでトップクラスの成績を収めたフリッカー『三武将』だった。
「三武将……?そのお前らが俺達に何の用だ!」
バンがイツキをにらみつけると、イツキは侮蔑の視線を向けた。
「分かりませんか?あなた方が対立している組織のトップ三人がこうして現れたんですよ。目的は一つしかありえないでしょう」
イツキが意味深にそう言うとユウタとゲンゴは口元に笑みを浮かべた。
「つまり、ここで決着を付けるって事か……!」
「……我々の挑戦、受けますよね」
「当然だぜ!!」
「そうじゃな、わしらとこいつはまだ決着がついとらんかったからな!」
「うん!」
剛志とレイジはユウタを見る。
「あはは、そういえばそうだったねぇ!楽しみだなぁ!」
「今日はオデもいるから、公平にチームバトルが出来るんだな」
と言うわけで早速対戦カードが決まった。
剛志&レイジVSユウタ&ゲンゴだ。
二組がバトルフィールドに付く。
(ふふふ、見させてもらいますよ。あなた方の力を……)
イツキは密かにほくそ笑んだ。
チーム戦のルールは、基本は通常と同じだが
ターンがチームごととなっており、アクティブシュートでより進んだフリッカーの所属するチームから先攻。
チームのターンになったら、チームから一人だけシュートする。
シュートが終わったら相手チームのターン……と言う具合だ。
四人がフィールドの中央付近にマインをセットする。
「それじゃいくぞ!」
「「「「アクティブシュート!!」」」」
バッ!!
フィールドの中央で、ベノムエロシオンとタイダルボアがグランドギガと激突するが、グランドギガは二機の攻撃を受け止めた。
そしてファントムレイダーはこの三機を後ろから飛び越えて相手側の陣地へ機体一個分進んだ。
「よし!」
「よくやったぞレイジ!わしらの先攻じゃ!!」
「剛志が攻撃を受け止めてくれたおかげだよ!」
一方後攻になってしまったユウタは悔しそうに地団太を踏んだ。
「くっそー!ファントムレイダーがいなかったら僕たちの先攻だったのに!!」
「ファントムレイダーも凄いけど、オデ達のシュートを二つ受け止めるグランドギガもなかなかなんだな……!」
「グランドギガのハンマーは、ハンマーギガの二倍じゃからな!」
剛志&レイジのターンだ。
「剛志、レイジ!一気に決めちまえ!」
バンが外野から応援する。
「剛志、お願い」
「おう!」
位置的に剛志の方が攻撃に適している。
まずはグランドギガをベノムエロシオンの方へ向けた。ベノムエロシオンの後ろにマインがあったからだ。
「まずは確実に……いくぞ!!」
ドンッ!!
剛志が強めにグランドギガをシュートする。この勢いなら、フリップアウトは無理でもマインにぶつける事は可能なはずだ。
しかし……。
ぶよんっ!
柔らかい音がして、グランドギガのハンマーがベノムエロシオンに飲み込まれてしまった。
「な、なんじゃと?!」
「剛志のアタックが吸収された!?」
「オデのベノムエロシオンは防御型。摩擦力の高いシャーシとスライム状のボディで、どんな攻撃も受け止めるんだな!」
ゲンゴが自分のフリックスの解説をした。
「あのボディは、スライムじゃったんか……!」
「それで前にディフィートの攻撃も受け止めたのかよ!」
エロシオンの防御力にバン達は戦慄した。
そして今度はゲンゴとユウタのターンだ。
「よーし、ゲンゴやっちゃえ!」
「じゃ、いくんだな!」
ゲンゴは、グランドギガと密着したままのベノムエロシオンの向きを変えてマインへ照準を合わせた。
「喰らうんだな!!」
バシュッ!!バーーーン!!
そのままシュートしてマインにぶつける。マインは弾かれてその場から離れる。
グランドギガにマインヒット1ダメージ。
「くっ!」
「剛志!!」
次は剛志&レイジのターンだ。
「よくも剛志を……!」
レイジがファントムレイダーのボディを掬い上げモードに切り替えてからベノムエロシオンに狙いを定める。
「落ち着くんじゃレイジ!その位置からベノムエロシオンを狙ってもどうにもならん!ワシの事はええから、タイダルボアを狙うんじゃ!!」
「剛志……分かった」
剛志に諭され、レイジはレイダーを乗り上げモードに戻してタイダルボアに狙いを定めた。
レイダーとタイダルボアの間にはマインがある。これをぶつければマインヒットだ。
「いけっ!」
カンッ!
レイダーがマインを弾き飛ばしてタイダルボアにヒットさせた。
タイダルボアに1ダメージ与えるが、レイダーは勢い余ってフィールドの端まで進んでしまった。
「やるじゃん。でもこの位置なら!」
ユウタが反撃にとレイダーに向かって強烈なシュートを放つ。
「た、耐えろレイダー!」
「無駄だよ!」
バキィ!!!
タイダルボアの一撃でレイダーは場外してしまう。
これでファントムレイダーのHPは1だ。
そして再びアクティブシュート。
「いけっ、ファントムレイダー!!」
「甘いんだなっ!」
ファントムレイダーで先攻を取ろうとするものの、先読みされてベノムエロシオンで受け止められてしまった。
「そんなっ!」
「レイジ、ワシに任せろ!」
グランドギガがタイダルボア目掛けて突き進み、先攻を取ろうとするのだが……。
「同じ事繰り返すわけないでしょ!」
タイダルボアはグランドギガとはギリギリぶつからない軌道でシュートされていた。
「なにっ!?」
グランドギガはフィールド中央よりやや相手側で止まったが、タイダルボアはそのまま突き進む。
「あの勢いじゃ、場外するぞ!」
しかし、その前にマインにぶつかってブレーキが発動しストップした。マインは場外だ。ゲンゴのマインだったらしく、場外した後マインはゲンゴの手に回収された。
「あいつ、マインでもアタックブレーキシステムを発動できんのかよ……!」
「えへへ、僕たちのターンだね!頼むよ、ゲンゴ!」
「よくやったんだな、ユウタ!」
ゲンゴはファントムレイダーと密着させたままのベノムエロシオンをフィールド中央側にあるマイン目掛けてシュートした。
バーン!!!
ベノムエロシオンは難なくマインヒットして、ファントムレイダーを撃沈させた。
「そ、そんな……!」
「レイジ!」
「ウソだろ、レイジが負けちまうなんて……!」
外野でバンも愕然とする。
「それじゃ、マインを置くんだな」
ゲンゴは、ベノムエロシオンとグランドギガの対角線上の先へマインを置いた。
「くっ!」
剛志のターンだが、この位置からではベノムエロシオンを倒せない。
一か八かタイダルボアを狙う。
「いくぞ!!」
バシュッ!!
しかし、タイダルボアとグランドギガは同時に場外してしまった。
「くっ……!」
「はい、これでグランドギガは残りHP1だね」
シュートしたフリックスが場外した場合は、シュートしたフリックスのみに1ダメージ入る。マインヒットもフリップアウトも全て無効だ。
外野のバン達。
「つ、剛志!何やってんだしっかりしろぉ!!」
「剛志、がんばって!」
必死に声援を送るが、剛志の表情から焦りは消えない。
「ふふ、これで終わりですね」
イツキが言う。
「何言ってんだ!まだ勝負は……!」
「あの二人はチーム戦のエキスパートです。それも、最後のアクティブシュート時に最も力を発揮する」
「っ!」
仕切り直しのために三人がスタート位置に機体を置く。
「それじゃ、そろそろ決めようか、ゲンゴ」
「んだな」
ゲンゴとユウタが目線で合図をする。
「「「アクティブ、シュート!!!」」」
「いくぞ、グランドギガ!!」
剛志は渾身の力を込めてグランドギガをシュートした。
「いくよゲンゴ!フォーメーションシュートだ!」
「だな!!」
バシュッ!!
シュートしたタイダルボアとベノムエロシオンは、二列になる。そしてベノムエロシオンがタイダルボアのリアに食らいついたまま突進した。
「な、なんじゃそのシュートは!?」
「必殺の合体シュートさ!ベノムエロシオンの粘着性を利用して、タイダルボアに食いつかせる事でシュートの直後、二つのフリックスがくっついたまま突進する!」
「二機分の重量でアタック出来るんだな!!」
バーーーン!!
ベノムエロシオン分の重量とグリップ力を得たタイダルボアのアタックを受けたグランドギガは、たまらずスッ飛んでしまった。
「ぐぅぅ……!」
力なく、グランドギガは地面に伏した。
これで剛志&レイジの負けだ。
「そんな、僕と剛志が負けるなんて……」
「なんて技じゃ……そんな力があるなら、なんで最初から使わんかった」
「奥の手は最後までとっとくものだからね」
「それに、この技は躱されると逆にこっちが不利になるんだな」
もし、味方二機がくっついたままフィールドに残った場合、仮に先攻を取れてもシュートがしづらいし
逆に先攻を取られたら、マインヒットで、一気に二台ダメージを受けてしまう可能性がある。
「だから、確実にとどめをさせるタイミングで使うのがベストだったんだな」
「くっ……テクニックやパワー、機体性能だけじゃなく、戦略も一流じゃと言う事か……悔しいが完敗じゃ」
「剛志……」
剛志とレイジは悔しげにうつむいた。
「さて、これで我々の一勝ですね」
イツキが余裕の表情で言う。
「くっそぉ!まだ俺達がいる!負けねぇぞ!!」
「では、私の相手はあなたが?」
「おう!俺がブッ飛ばしてやる!!」
「待って、バン」
勢いよく駆け出そうとしたバンの裾をリサが引っ張る。
「な、なんだよ?」
「私にやらせて」
リサは力強い瞳でバンにそう申し出た。
「え?」
そしてリサはゆっくりとイツキを観る。静かだが、視線に強い怒りが込められている。
「ふふふ、やめておいた方が良いと思いますよ。私も実力ではユウタやゲンゴに劣りません。素直に新型を使う段田バン君に任せた方が……」
「私は、フレイムウェイバーを信じてる!新型じゃなくても、負けない!!」
リサはハッキリと断言した。
「リサ……分かったぜ。お前に任せる」
リサの決意を感じたバンは、バトルを譲った。
「でも、絶対に負けんなよ!」
「うん!」
リサとイツキがフィールドについた。
マインをセットして、機体を構える。
(相手の機体性能は分からないけど、フレイムウェイバーじゃきっと力負けする……ここは軌道をズラして先攻を狙って……!)
リサはフレイムウェイバーの向きを、イツキからの対角線上から若干外した。
「「アクティブ・シュート!!」」
バシュッ!
二人が同時に機体をシュートする。
リサの狙い通り、フレイムウェイバーはイツキのシュートした赤いフリックスにぶつからないような軌道でまっすぐ進む。
「リサ得意の狙い撃ちじゃな!」
「まずはぶつからないように、確実に先手を取ってダメージレースに持ち込むんだ!」
「さすがだぜリサ!」
「甘いですよ」
イツキがニヤッと笑う。
「食い止めなさい、フロードダズラー!!」
キュッ!
突如、フロードダズラーが軌道を変えてカーブした。
「なにっ!?」
「カーブするフリックスじゃと!」
「そんなの、聞いた事ないよ……!」
「あっ!」
「フロードダズラーからは逃げられませんよ」
ガッ!!
フロードダズラーはフレイムウェイバーにヒットし、フレイムウェイバーは弾かれてしまった。
「くっ!」
それによって、先攻はフロードダズラーが勝ち得た。
「私もあなたと同じくマインヒットを重視するフリッカーなのでね。先手を取ってしまえばあとはダメージレースで私が完全有利」
「……!」
しかし、マインの位置はフロードダズラーとフレイムウェイバーの線上からは完全に外れている。
「へんっ、その位置からじゃ、マインは狙えないぜ!!」
外野のバンが煽る。しかしイツキは動じない。
「それは、どうでしょうかね?」
そう言って、イツキはフレイムウェイバーから狙いを外して、マインへ狙いを定める。
「マインにだけぶつけたってマインヒットにはならねぇぞ!?」
「ふふふ」
そして、イツキはマインに向かってフロードダズラーをシュートした。
カッ!
フロードダズラーはマインにぶつかると、そのまま方向転換してフレイムウェイバーへ向かってきた。
「え!?」
「また、曲がった!?」
「フロードダズラーのシャーシはステアリングシャーシ。シュート前にタイヤの向きを調節する事でカーブシュートを撃つ事が出来るんですよ」
イツキがそう説明するのと同時にフレイムウェイバーがマインヒット。1ダメージだ。
「これで1ダメージ」
「っ!」
リサのターン。
フロードダズラーの位置はフレイムウェイバーから近いが、マインが線上にない。
「ヤバいぜリサ。これじゃマインヒット狙えねぇ……」
「フリップアウトもこの位置からじゃと難しいな」
リサは真剣に自分と相手の位置関係を見極めた。
集中して、ベストのラインを探す。
(……フレイムウェイバーはカーブは出来ない……けど!)
そして、意を決してフロードダズラーに向かってシュートした。
「いけっ!」
「マインは狙わないのか!?」
カッ!
フレイムウェイバーはフロードダズラーにかすめるようにヒットすると、その反射で方向転換してマインにぶつかった。
フロードダズラーに1ダメージだ。
「そうか!リサにはこのヒット&アウェイ戦法があったんだ!」
「ほう……」
その後も、フロードダズラーとフレイムウェイバーは互角の立ち合いで、互いにマインをヒットさせていった。
そして、互いにHPは1の状態。バトルは終盤戦だ。
「凄いぜリサ!相手に一歩も引いてねぇ!」
「ふふふ、さすがです。ですが、忘れていますよ」
「……」
リサはイツキが何を言いたいのか理解しているようだ。
「先攻を取った私に対してダメージレースを仕掛けても勝ち目はないと」
「あぁ、そうだったぁ!」
バンが頭抱えて叫ぶ。
「……」
「どうやら、あなたは承知の上だったようですが」
「……悔しいけど、これが私とフレイムウェイバーのベストだから」
「勝ち負けよりもベストを尽くす。素晴らしい心掛けです」
チャキ……!
イツキがフレイムウェイバーへ狙いを定める。
「ふふふ」
ドンッ!!
そしてシュート……したのだが、フロードダズラーはカーブしてフレイムウェイバーから逸れる。
「え?!」
そしてそのまま場外してしまった。
自滅1ダメージでフロードダズラー撃沈。フレイムウェイバーの勝利だ。
「おめでとうございます。あなたの勝利ですよ、リサさん」
「てめっ、どういうつもりだ!わざと自滅したな!!」
「そうカッカしないでください。ささやかなお礼のつもりですから」
「お礼……?」
「ゲンゴ。撮れましたか?」
イツキが言うと、ゲンゴは懐から小さなビデオカメラを取り出した。
「バッチリなんだな!」
「それは!」
「良いデータを撮らせていただきました。これで最強のフリックスが完成する」
「じゃあ、お前らは最初からそのつもりで勝負を挑んできたってのか!?」
「えぇ。大事なのはバトル内容であって結果ではない。どちらにしてももう我々が一般人のフリックスを破壊する必要はないのですから」
「なんだと!?」
「僕達がフリックスを壊してたのは、スクールの授業の一環だったんだよ」
「破壊したフリックスに応じて、成績が決まるんだな」
「ですが、それも終わり。我々三人が成績上位になり『三武将』のランクを得ました。三武将としての最初の任務が、このデータ収集のためのバトルだったわけです」
「じゃあ、もうお前らとの戦いは、終わったのか……?」
バンが釈然としない表情で呟く。
「何言ってんのさ。これから始まるんだよ!本当の戦いがね」
「本当の戦い?」
「うん。大事な大会が近いってのに、ザコなんか相手にしてられないもんね!あぁ、楽しみだなぁ」
「大会だって?」
「グレートフリックスカップ。フリッカー日本一を決める大会ですよ。直に正式な告知があるでしょう。そこですべての決着がつけられます」
「……」
もうスクール生は破壊活動をしない。そして、近いうちに日本一を決める大会が始まる。……更に、スクールでは最強のフリックスを作るためのデータを集めていた。
一気にいろんな情報を得て、バン達は混乱していた。
「では、失礼します」
「大会、楽しみにしてるからねー!それまでフリックス壊さないでよー!」
「なんだな!」
三人は踵を返して去って行った。
つづく
次回予告
「ついに!ついに来たぜ!日本一を決める大会、グレートフリックスカップ!
絶対に勝って、俺がダントツ一番だ!!
次回!『群雄割拠!グレートフリックスカップ開催!!』
次回も俺がダントツ一番!!」