第31話「剛志&レイジ 友情の大特訓!」
徳川ゲンゴと名乗るフリッカーがホビーショップに屯する子供達のフリックスを破壊してしまった。
立ち向かったオサムとマナブだが、二人のフリックスも破壊され……。
バンが到着した時には時すでに遅し、フリックスの残骸が散らばる地獄絵図となっていた。
「くそっ、あの野郎……!」
ゲンゴをブッ倒す事が出来ずに取り逃がしてしまったバンは悔しげにテーブルを叩く。
「バン……あいつは、スクールの特待生って言ってた。Mr.アレイが言ってた奴かな?他にも、こんな奴がいるのかな……」
フリックスを破壊された悲しみを堪えながら、マナブはバンに聞いた。
「分からねぇ……けどあいつはここに来る前に公園でもフリックスを破壊してやがった……くそっ!ふざけた事しやがって!!」
「……」
「バン、落ち着いて」
体が震えるほどに拳を握りしめるバンをリサが諌める。
「これが、落ち着いてられっかよ!ディフィートの攻撃も通じねぇし、なんなんだよあいつは!」
「……」
「バン、こういう時こそ冷静にならなきゃ」
「リサは平気なのかよ!あんな奴が現れて!」
「平気じゃないよ、でも……」
「あぁもうちくしょう!!!」
「バンっ!」
スッ……とリサがバンの頭に手を添えてなでなでした。
「なっ、ななななにすんだよ!!」
びっくりしたバンが手を払いのけて後ずさる。
「落ち着いた?」
「おちつ……びっくりしたわっ!……けどまぁ、ちょっとは頭冷えた」
思考が別の方向へブッ飛んだおかげで、ゲンゴへの怒りが多少収まったのだろう。バンは落ち着きを取り戻したようだ。
「そうだよな。ここで怒っててもしょうがないもんな」
バンはいつもの悪い癖を恥じ、その照れ隠しをするように頭をガシガシ掻いた。
「うん」
それを見たリサは安堵の表情をした。
「あれ、そういやオサムの奴、さっきっから黙りこくってるけど、どうしたんだ?」
そういえば、さっきからオサムはずっと黙っている。
気にかかったバンがオサムの肩に手を置くと、オサムはそのまま力が抜けて倒れてしまった。
「おわぁぁ!大丈夫かオサム!!」
慌ててオサムの肩を抱えて揺さぶるが、返事が無い。
「気絶、してる……」
オサムの目は見開かれたまま、瞳孔まで開いていた。
「無理も、無いよ。大事なフリックスが壊されたんだから……僕だって……」
マナブも、言葉が喉に詰まっている。
「ごめ、ちょっと僕……!」
言い切る前に、マナブは歯を食いしばって、黙ったまま店を出ていった。
「マナブ……」
これ以上ここにいたら泣いてしまうと判断したのだろう、マナブは涙を流す前に撤退したようだ。
そんなマナブへかける言葉も思い浮かばず、バンとリサはその後ろ姿を眺め続けた。
一方、剛志の住んでいる山小屋では……。
濡れタオルを目元に乗せられ、横になっている剛志をレイジが看病していた。
「……ん」
タオルを再び濡らそうと、レイジがタオルを取ったところで剛志が目を開いた。
「剛志っ!気が付いたんだね!!」
レイジが顔をほころばせる。それを見た剛志は、ゆっくりと言葉を発した。
「レイジか……すまんな、迷惑をかけたようじゃ」
「ううん。僕のほうこそ、剛志に守ってもらってばかりで、何も出来なかった……!」
「何も出来なかったのは、ワシも同じじゃ。全く歯が立たんかった、あのフリックスに」
前回、織田ユウタとタイダルボアに剛志とレイジはボロボロにされてしまった。
「レイジが倒れたワシをここまで運んだのか?重かったじゃろう……」
「介抱してくれたのは平井だよ。僕もあの後気絶したから、一緒にここまで運んでくれたみたい……」
平井とはレイジのボディガードの事だ。
よく見ると部屋の隅でジッと立っている。
「そうか。手間をかけてしまったな、平井さん。礼を言うぞ」
剛志が部屋の隅の平井へ視線を移して礼を言うと、平井は軽く頷いた。
「僕は、結局何もできない……」
レイジがポソッと呟いたのだが、剛志は上手く聞き取れなかった。
「ん、なんか言ったか?」
聞き返すと、レイジは慌てて首を振った。
「ううん、なんでもない」
「そうか。……よ、っと」
剛志がゆっくりと上半身を起こす。
「だ、大丈夫?」
「おお、これだけ休めば全快じゃ。それに、ジッとしとるわけにはいかんからな」
「え?」
剛志の言葉の意味が分からず、レイジは首を傾げた。
「あれだけなすすべなくボコボコにされたんじゃ。借りは必ず返さんといかん。じゃがそれ以上に、あんな危険なフリッカーを野放しにするわけにはいかん。
特訓して、次こそ倒すんじゃ!」
「そんな、危険だよ!もう関わらない方が良いよ!!」
「じゃから特訓するんじゃ!今は負けていても、次は必ず勝つ!それがフリッカーってもんじゃろ!!」
「それは、そうだけど……」
それだけ言うと剛志は立ち上がった。
「世話になったな、平井さん。今度お礼に熊鍋でもご馳走するぞ」
平井へ会釈して、剛志は小屋を出ようとする。平井は密かに『それは遠慮します』と言っていた。
「待って、剛志!」
そんな剛志をレイジは呼び止めた。
「なんじゃ?お前も傷が癒えてないじゃろう、早く帰って治療をした方が……」
「僕も、剛志と一緒に特訓する!」
レイジは真っ直ぐな瞳で剛志を観ながら言った。
「な、なんじゃと?」
「僕も悔しいんだ!何も出来なかったことが!!だから、強くなりたい!!」
剛志は真剣な表情でレイジを観た。
レイジの言葉に嘘もいい加減な気持ちも無いようだが……。
「ワシは、遊び半分の生半可な特訓をするつもりはない。覚悟はあるか?」
剛志が問うとレイジは強く頷いた。
それを見た剛志は、それ以上何も言わず小屋を出ていく。
レイジもその後に続こうとすると、同時に平井も動いた。
ボディガードとして、危険な行動をさせられないと判断したのだろう。
「平井は家に戻って。ここからは僕一人で大丈夫だから」
そんな平井へ、レイジは淡々と告げた。
「しかし……!」
「いいから!これは、命令だよ」
平井とレイジ、立場はレイジの方が上だ。そんなレイジの命令とあらば、引き下がらざるを得ない。
「……でしたら、私は小屋へ残ります。特訓の邪魔は致しません。何かあればすぐに連絡をください。それが最大限の譲歩です」
さすがにボディガードとしての仕事を放棄するわけにはいかないらしい。特訓へはついていかないが、近い場所で待機するようだ。
「分かった。それでいいよ」
平井の意見を受け入れ、レイジは剛志の後を追った。
……そして、剛志とレイジの特訓が始まった。
「はっ、ほっ、ぬぅ!!」
剛志とレイジは、そびえ立つ崖をひたすらに登っていた。
「つ、剛志ぃ~!なんでいきなり崖登りなの~!!」
剛志よりも遥か下で、レイジが涙目になりながら登っていた。
「フリックスバトルに勝つには、まずは身体を徹底的に鍛えんとな!クライミングは全身運動じゃ!バランスよく筋力が鍛えられるんじゃよ!!」
そう豪語する剛志の腰にはロープが巻き付けられており、それはレイジの腰へ繋がっている。
一応命綱のつもりらしい。
「そ、そうなのかなぁ……」
「それに、これを登った先に丁度いい特訓スポットがあるんじゃ!!」
「う、うん……」
レイジは恐る恐る下を観る。
高い……さきほどまで自分たちがいた場所が、遠く小さく映っている。
「ひぃ!」
「下を見るな!上だけを見るんじゃ!!それとも、もう帰るか?」
「だ、大丈夫!こわくなんか、怖くなんかない!!」
レイジは気合いを入れ直し、グッと力を込めて岩のコブを掴もうとする。
「はっ、レイジダメじゃ!そこは脆い!!」
「え?」
剛志が気付いた時には遅かった、レイジが掴んだコブはボコッと砕け、身体が傾いていく。
「う、あ……!」
「ぬ、おおおおお!!!!」
剛志は力を込めてロープを引っ張り、レイジの姿勢を元に戻した。
「大丈夫か、レイジ!」
「あ、うん……ありがとう……」
「なに!これもいい特訓じゃ!!」
顔を歪め、脂汗を掻きながらも、剛志は気丈に笑って見せた。
(やっぱり、剛志は強いな……)
だが、しばらくすると剛志は立ち往生していた。
この先の崖には掴まれそうな凹凸が無かったのだ。
「どうしよう、剛志?」
「なに、大したことは無い」
剛志は予備のフリックスを取り出して、それをロープに巻き付けた。
「いけっ!!」
バシュッ!!
ロープを巻き付けられたフリックスをシュートし、崖の上にある木へめり込ませた。
「よし、これで登れるぞ!!」
「うん!」
そして、二人は苦労しながらもどうにか崖を登り切った。
「はぁ、はぁ、はぁ……!」
レイジは、いくら息を吸っても足りないようで、仰向けに倒れて出鱈目に息を吸い続けている。
「よし、行くぞレイジ」
そんなレイジへ、剛志は厳しい表情で立ち上がる事を促す。
「え、もう……?」
休み足りないレイジは意外そうな顔をするが、剛志の厳しい表情は崩れない。
「言ったじゃろう、生半可な事をするつもりはないと。何、これから行く場所は、せめて水分補給くらいは出来る」
そういって、剛志が案内した場所は……。
轟々と大量の水流が地面へと叩き落ちている滝壺だった。
剛志は屈み、片手で水を掬って一口啜る。
「ふぅ、生き返るようじゃ」
「……」
レイジもそれに倣って恐る恐る水を口にした。
「おいしい……」
「じゃろ?さぁ、次の修行じゃ!」
言って、剛志は轟音を立てながら落ちる滝を指さした。
「ま、まさか……!」
言うが早いか、剛志は水に浸かって滝へと歩いていく。
「お前も早く来い!修行と言えば、滝行じゃ!!」
「やっぱり~!!!」
そんな感じで特訓は続き、そろそろ夕方になってきた。
「はぁ、はぁ……!」
「ふぅ、そろそろ飯にするか。レイジ、薪を拾いにいくぞ」
「え、小屋に戻らないの?」
「こんな時間に戻ってたら、暗くなるからな。ここで野宿した方が安全じゃ」
「ひぃ……」
剛志に連れられてレイジは薪を集めた。
二人はとりあえず雨が降っても大丈夫そうな大きめな樹の下でたき火をかこった。
「でも剛志、ご飯は……?」
「おう、ちょっと待っとれ……」
そういって、剛志はフリックスを構えて草むらをジッと見つめる。
「そこじゃっ!!」
ガッ!!
と素早く草むらへフリックスを打ち込んだ。
バゴォォ!!
確かな手ごたえを感じ、剛志は手を伸ばした。
「おお!!上物が取れたぞ!!」
その手には、トカゲと蛇がうねうね動いていた。
「う、うわあああ!!!」
それを見たレイジが腰を抜かして叫んだ。
「どうした?」
「つ、つよし、も、もしかして、それ、それ……!」
「おう、すぐに捌いちゃるから待っとれ」
そういって、剛志は木の幹を睨み付け、手に持った蛇やトカゲを振りかざす。
「はぁぁぁ!!!」
そして、蛇とトカゲの頭を木の幹へ叩きつけた。
「ひぃぃ!!」
バチーーーン!と気持ちの良い音が鳴ったと思ったら、先ほどまでうねうね動いていた蛇とトカゲはぴたりと動きを止めた。絶命したようだ。
「よし、あとは……」
動かなくなった蛇とトカゲを地面に置いて、今度は手ごろな石を拾って叩き割る。
すると、石はナイフのように鋭くなった。
「まぁ、十分じゃな」
そして、手早くトカゲの腹へ即席ナイフを突き立てる。
ナイフが腹へ突き刺さり、そこから血が垂れる。剛志は構わずに力を込めて線を描くようにナイフを動かす。
腹が開いたら内臓を取り出し、皮を剥いで、食べられる肉の部分を切り落としていく。
トカゲが終わったら次は蛇も同様に捌いていった。
「まっ、こんなもんじゃろ」
あっという間に、トカゲと蛇はその原型を失い、『食肉』へと形を変えた。
そして、素早く木の枝に刺して、たき火で炙っていく。
すると、すぐに焼けた肉の香ばしいにおいが漂ってきた。
「おっ、良い具合に焼けてきたのう」
舌なめずりをしながら、剛志が豪快にその肉にかぶりつく。
「うん、美味い!この山で採れるトカゲの肉は絶品じゃな!!」
「……」
そんな剛志の様子を、レイジはおっかなびっくり観ている。
「レイジ、ボーっとしとらんでお前も食え。腹へっとんじゃろ」
「で、でも……」
目の前の肉はおいしそうだ。しかし、それが肉へと変えるまでの過程を見ている。
生々しく動いていた爬虫類が、息絶え、そして捌かれていく過程を……。
腹を切られ、血が抜かれ、内臓を抉り出され、皮を剥がれ……。
それが脳裏に焼き付いてしまい、どうにも食欲がわかない。
「……」
グゥゥゥ……。
静かにレイジの腹が鳴った。食欲がわかなくても、空腹には耐えられないようだ。
レイジは意を決して(胃だけに)剛志から串を受け取って一口かぶりつく。
「おいしい……チキンだ」
思わず、そんな言葉が漏れた。
それを聞いて、剛志は嬉しそうに笑った。
「がっはっはっは!!確かに、鶏肉に似てるかもしれんな!!!」
一線を越えたおかげか、レイジからためらいが消えて、肉をどんどんがっついていった。
食事を終えた二人は、大木を背もたれにして脱力している。
「ふぅ、食った食った……うっぷ」
「おいしかったぁ……。すごいなぁ剛志は、何でもできて」
満たされたお腹をさすりながら、レイジは感慨深げにつぶやいた。
「そうか?」
「うん。僕にできない事を何でもできるし、いつも助けてもらってる」
「何を言うとるか。そんなのお互いさまじゃろ。レイジにはレイジにしかないものがある。両親を亡くして一文無しになったワシがこうして暮らせとるのも、レイジのおかげじゃぞ」
「こんな山の一つや二つ、剛志が僕にしてくれた事と比べれば何もあげてないのと同じだよ。それに僕としては、屋敷で暮らしてもらってもよかったんだけど」
「がっはっは。ワシにはここの暮らしの方が性にあっとるからな!とにかく、ワシはレイジに感謝しとるってこった!」
あっけらかんと笑う剛志だが、レイジの顔は晴れない。
「それも、僕の力じゃない。お金があるのも土地を持ってるのも、全部親の力だから……僕は、ただ与えてもらってるだけ」
その言葉を聞いて、剛志は笑うのをやめて、真剣な表情になった。
「お前、まだそんな事気にしとんのか?」
「……」
「前にも言ったじゃろう。人にないものを持っている事は、悪い事じゃない。それが例え他人から与えられたものであってもじゃ。大事なのは、それをどう使うかじゃろ?」
「っ!」
その時、レイジの脳裏にある情景が浮かんだ。
“やーい!お前の父ちゃんお金持ち~!!”
それは、5年前の夏。まだレイジが小学低学年の頃だった。
通っている小学校のグラウンドで、レイジが複数人の同級生たちに囲まれて罵倒されていた。
「お前、ちょっと金持ちだからって生意気なんだよ!」
「毎日毎日お車で送ってもらってよ!」
「そのくせ、ケチくさいよなぁ!俺達にもちょっとくらい金よこしてくれてもいいじゃねぇかよ!!」
同級生の一人がレイジを小突くと、レイジはしりもちをついた。
「で、でも、お父さんから誰かにお金を貸しちゃいけないって……」
「はぁ?そこがムカつくんだよ!!金持ちで良い思いしてるくせに、友達には全然金出さないなんて、お前なんの役にも立たないじゃねぇか!!」
「そうだそうだ!この役立たず!」
「「役立たず!役立たず!!」
一人が罵倒すれば、それが一人、また一人へと連鎖し、集団の力となる。
異物は排除される。
それが例え優れている存在であっても。
自分たち集団にとって益になるものでなければ、容赦はしない。
子供の国の残酷なルールだった。
その中で、レイジは泣きじゃくりながら何の抵抗も出来ずにいた。
「なにやっとるんじゃお前らはぁ!!」
そこへ、小学生にしては異様に野太い声が響き渡った。
いじめっ子集団はその声が聞こえた方向へ視線を送る。
そこにいたのは幼き頃の剛志だった。
「一人に寄ってたかって卑怯な奴らじゃ!そんなに一人をいじめたいなら、ワシをいじめんかい!!」
剛志が堂々とした態度で迫ると、集団はたじろいでしまう。
所詮は弱者しか攻撃できない人間の集まりだ。数が集まろうと、強者には敵わない。
「げっ、こいつは相手が悪いな」
「逃げるぞ……!」
蜘蛛の子を散らすように集団は駆けていく。
「へーーんだ!お前なんかの相手してたら貧乏が移るぜ!!」
捨て台詞を残して、集団は去って行った。
「大丈夫か、レイジ?」
剛志はレイジへ手を差し伸べる。
「ありがとう、剛志……僕なんかのために」
泣きながらレイジはその手を取って立ち上がった。
「もう泣き止まんかい。あいつらの言う事なんか気にするな」
「でも、僕なんか、役立たずだし。お金なんか持っててもしょうがないし」
「しょうがなくなんかないじゃろ!持ってる物があるのは、それだけで凄いんじゃ!ワシはお金は無いが、体力だけは自信があるからの!それだけは自分でも凄いと思っとる!!
その代わりに、お前はお金って言う力を持ってるって事じゃ!」
剛志は自慢げに胸を張った
「だけど、お金だって、お父さんがくれるだけだし。僕の力じゃ……」
「その金で何を買うかを決めるのは、お前の力じゃ!」
「え?」
「親に言われた事を守って、あいつらに金を渡さないと判断したのはお前の力じゃ。次は何に使うかを考えればええ」
「剛志……」
……。
………。
「がぁ~~~ぐお~~!!!」
隣から聞こえるいびきで、レイジはハッと我に返った。
(昔の夢を見てたのか……)
レイジはゆっくりと気持ちよさそうに眠っている剛志を眺める。
(与えられたものをどう使うか考える……それが、僕の力)
レイジは無意識に拳を握りしめた。
(だったら、僕は……!)
翌朝。
チュンチュンと小鳥のさえずる音が聞こえてくる。
「剛志、起きて!朝だよ!」
レイジが横たわる剛志を揺さぶる。
「ん……もう朝か?」
眠気眼を擦りながら、剛志は大きく伸びをした。
「行こう剛志!山を下りるんだ」
それを聞いて、剛志は完全に目が覚めた。
「は?何言っとるんじゃお前は、もうギブアップか?」
「そうじゃないよ!僕は今度こそ、僕の力で戦うんだ!剛志、君と一緒に!!」
そう答えたレイジの顔は決意に満ちていた。
「……なんか分からんが、特訓の成果はあったようじゃな」
そう確信した剛志はレイジに言われた通りに立ち上がった。
「ええじゃろう。お前の考えに乗ってやる」
剛志はニカッと笑った。
そして数時間後。
剛志とレイジは、藤堂家の所有する巨大な研究施設の中に入った。
「はぁ~すごいのぅ。こんな研究所まで持っとったんか」
「普段は、いろんな企業から依頼される研究のために使っていて僕ですら入れないんだけど」
「なに?じゃあ、ワシらが使うのはまずいんじゃないのか?」
「もちろん、タダじゃすまないよ。今日だって、大事な実験の予定をズラしてもらったんだから」
「ええのか?」
「その代わり、僕達がこれから開発するもののデータが、その実験で得られるデータの代わりになればいい。
それだけ有益な事をすれば向こうだって文句は言えない。そういう条件で貸してもらったんだ」
そう答えたレイジの顔はたくましかった。
「強くなったな、レイジ。で、これからワシらがやる事は、その大事な実験に匹敵するような事なのか?」
「分からない。けど、成功さえすれば問題は無いはず」
「なるほど」
「莫大な資金を駆使して手に入れた、様々なデータ。そして、設備、人材、その全てを使って、僕と剛志の新たなフリックスを作るんだ」
「面白い!ハンマーギガとミラージュレイダーを超えるフリックスか!ワシとレイジの力なら、必ず作れるぞ!」
「うん!!」
つづく
次回予告
「俺達の前に現れた新たなスクール生、織田ユウタ!こいつもフリックスを破壊するだって!?
くっそぉ!これ以上スクールの好きにはさせないぜ!!俺がブッ倒してやる!
しかし、立ち向かおうとした俺の前に新型フリックスを引っ提げて、あの二人が現れた!!
次回!『共同戦線 剛志とレイジ!』
次回も俺が、ダントツ一番!!」