第8話「カイヤの渇望」
ある日の播磨家。
アキラ「お父さん、グレートフリックスカップの日程が決まったみたいだよ!」
アキラがスマホ画面を見ながら言った。
播磨「そうか、もうそんな時期か」
ダンガ「グレートフリックスカップ?なんだそれは?」
アキラ「フリックスアレイの全国大会だよ!日本中から強いフリッカー達が集まってくるんだ!」
ダンガ「なるほど、そいつは美味そうだ。今すぐ行くぞ」
アキラ「ま、待って!大会は一週間後だから、まだだよ!?」
ダンガ「なら、大会に向けてフリッカー達が練習してるはずだな。そいつらを食いに行くぞ」
切り替えの早いダンガは目標を定めて飛び出した。
アキラ「あっ、ちょ、ちょっと待ってよ!!」
アキラもその後を追いかける。
播磨「ははっ、相変わらずまだなぁ!
播磨はそんな二人を微笑ましく見送った。
……。
グレートフリックスカップ開催の知らせはあらゆるフリッカーの耳に届いた。
当然、路地裏のアジトで屯っている『ダスト』の連中もこの話題で持ちきりだ。
タイラ「いよいよっすね!コウキ様!!」
コウキ「あぁ、腕が鳴るぜ!!」
ケイ「今年こそ、優勝間違いなしだね」
コウキ「当然よ!このトリプルファングにも大分慣れてきたからな……今度こそカイヤの息の根を止めてやるぜ」
タイラ「やっちゃってくだせぇ!ほんっと、カイヤのヤロウはムカつきますよねぇ。正本ハジメがアマチュア引退したおかげでやっとコウキ様の天下になるはずだったのに……!」
コウキ「馬鹿野郎、あいつを悪く言うんじゃねぇ!それに、俺は繰り上げなんざ望んでねぇ……プロ入りしたらハジメの奴もぶっ潰すつもりなんだからよぉ!」
タイラ「さっすがコウキ様!!」
ケイ「やっぱ男だねぇ、あんた!!」
コウキ「カッカッカッ!さぁ、ウダウダしてる暇はねぇ!特訓すんぞお前ら!!」
「「「おっすっっ!!」
……。
白井研究所。
白井所長がトレーニングルームに入ってる。
白井「カイヤ!今年のグレートフリックスカップの日程が決まったぞ!……って、カイヤ?」
トレーニングしているはずのカイヤの姿が見えない。
黒服「所長!大変です、これを!」
黒服が慌てた様子で所長へ手紙を渡した。
白井「これは……!」
そこにはカイヤの文字が書かれてあった。
〔申し訳ありません、しばらく留守にします。グレートフリックスカップには出場するのでご心配なく〕
白井「カイヤ……」
黒服「まったく、なんて勝手な!所長、今すぐ捜索へ向かいます!」
白井「ふ、はは、はっはっはっ!」
憤る黒服に対し、白井は愉快に笑い出した。
黒服「所長?」
白井「いや、すまない。カイヤは大丈夫だ、放っておきたまえ」
黒服「い、いや、しかし……」
困惑する黒服を無視して白井は部屋を出て歩き出す。
白井「カイヤの奴め……これは、面白くなりそうだ」
…。
……。
とある山奥。人気のない鬱蒼とした木々の中を、レイガがふらつく足取りで死に場所を求めるかのように彷徨っていた。
そしてついにその場所を見つけたのか、それとも単に力尽きたのか、レイガは大木を背もたれに座り込んだ。
レイガは安息の闇を享受するかのように安らかに目を閉じる。
しかし、それを許さぬ者がいた。
カイヤ「待て」
カイヤの、氷のように鋭い声が響く。
カイヤ「キメラシステムを、よこせ……!」
つづく