弾突バトル!フリックス・アレイ キメラ 第4話「コウキの覚悟」

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第4話「コウキの覚悟」

 

 ある昼下がり、ダンガとアキラは二人並んで商店街を歩いていた。

アキラ「えっと、あと必要な材料は……」
ダンガ「おい、いつまでこんな所を歩かせるつもりだ?良い加減バトルさせろ!飯の時間だ!!」
アキラ「ダメだよ。お父さんから頼まれた買い出しまだ終わってないんだから。言う事聞かないとダンガ君追い出されちゃうよ?」
ダンガ「ちっ、とっとと終わらせるぞ」

 悪態をつきながらダンガはアキラの後をついて歩き、とある店の前にたどり着いた。
アキラ「あとは、ここかな」
 店の看板には『洗濯バサミ専門店センバ屋二号店』と書かれていた。
ダンガ「洗濯バサミ専門店?フリックスとどう関係がある?」
アキラ「センバ屋は元々野田市の洗濯バサミ専門店だったんだけど、19代目社長がトップフリッカーでお店の方もフリックスに使える洗濯バサミも取り扱うようになったんだ」
ダンガ「なるほど。意味は分からんが、ここの洗濯バサミは美味いって事か」
アキラ「……ダンガ君の言ってる意味の方が分からないよ」

 ダンガにツッコミを入れつつ、二人は店内に入った。

アキラ「うわぁ、さすが専門店!いろんな洗濯バサミがあるなぁ」
ダンガ「あまり美味そうじゃないな」
アキラ「そんな事ないよ!この素材にこの構造……新しいコンボは拘束ギミックって言ってたからきっと役立つはず……」
 アキラは夢中で洗濯バサミを物色する。

ダンガ「ふん、くだらない……ん、あっちから美味そうな匂いがするな」
 ダンガは鼻を鳴らしながら店の奥に行くと、棚に沢山のフリックスが展示してあるのを見つけた。
 どれもこれも洗濯バサミを使っている機体ばかりだ。

ダンガ「これは、なかなかだな」
アキラ「どうしたのダンガ君?って、うわぁ凄い!洗濯バサミフリックスがいっぱいだ!」
ダンガ「腹ごしらえできそうだな」

 ダンガが舌舐めずりすると、更に店の奥からヌッと店長らしきエプロンをつけた男が現れた。
 そのエプロンには『荒井』と名札がつけられている。
 ボサボサ髪の陰気臭そうな男だ。

荒井「あ、いらっしゃい」
アキラ「ど、どうも。……このフリックスって、売ってるんですか?」
荒井「あ、展示してるだけだよ。全部僕が作ったんだ、凄いでしょ。フヒッ」
アキラ「そ、そうですね」
荒井「特に傑作なのがこのクリエイガーかな。色合いも工夫したし、洗濯バサミ発射ギミックに超自律兵器に変形も……」

 オタク特有の早口語りがはじまりそうになったところでダンガが口を挟む。

ダンガ「どうでも良い。そんな事よりもバトルだ。これだけフリックスがあって戦わない手はない」
荒井「あ、僕バトルしないんだ。壊れちゃうし、作って飾れれば満足さ」
ダンガ「なにぃ?」
荒井「洗濯バサミはいいぞぉ、君もどう?」
ダンガ「……ちっ、戦えないなら意味がない。行くぞ」
 バトル出来ないなら一瞬で興味が失せたのでダンガは店から出ようとする。
アキラ「あ、待って!買い物はしなきゃだから!!」
 アキラは慌ててカゴに入れていた洗濯バサミを店長から購入し、店から出て行ったダンガを追いかけた。

 一方その頃。
 ダストは河川敷の橋の下で集会していた。

ケイ「ちっ、それにしてもムカつくねぇ!カイヤにしてもダンガって奴にしても!!」
タイラ「あんな奴ら!ほんとだったらコウキ様の足元にも及ばねぇってのに!!」
コウキ「……あぁ、でもあいつらの機体性能は本物だ。俺にもあんな強い機体があれば……!!」

タイラ「なんかどっかに強い機体売ってないっすかねぇ。そうだ!フリマアプリで出品してないからネットで見てみよう!」
ケイ「そう簡単にあるわけないでしょ」
 タイラがポチポチとスマホを弄る。
タイラ「あっ、これ!コウキ様!!」
 タイラがスマホ画面をコウキに見せる。そこにはネットニュースが映っていた。
コウキ「こ、これはあの時の……!」

 ……。
 ………。
 幕張メッセ展示場。
 ここではビッグなイベントが開催されており多くの人が集まっていた。

真島アナ「えー、本日はこの『新型フリックス展示会』へお集まりいただきありがとうございます!
本イベントでは様々な企業の新製品が展示されておりますので是非ともお楽しみください!
特別アトラクションとして、なんと幻の第0回チャンピオンへの挑戦コーナーもあるので腕に自信のあるフリッカーは奮ってご参加ください!」
 真島アナウンサーがステージでイベントの説明をすると、その隣に中年の温和そうな男性が現れて一礼した。
カケタ「どうも、寺宝カケタです。皆さん、お手柔らかにお願いしますね」

 会場ではいろんな企業が出展しており、ショーケースの中に新製品を展示している。

タイラ「うおおお!このイージスセイバーとアシュセイバーって機体凄いっすよ!!変形やばっ!!」

 『吉永研究所』のブースにあるショーケースを見てタイラがはしゃぐ。
 すると白衣を着た男が笑いながら話しかけてきた。
 名札に『吉永ワタル』と書かれている。

ワタル「ははは、ありがとう。でも実はその機体、型は古いんだよね。新作発表しようと思ったんだけどイベント日に間に合わなくてさ」
タイラ「古い型なのにこの出来栄え……コウキ様!いいっすよこれ!!」
コウキ「アホ!こんな複雑な機体が俺に扱えるか!!目的はあっちだ!」
 コウキはタイラを引きずって別のブースへ向かう。
 そのブースはこのイベント1番の目玉、白井の運営する『フロンティア』のブースだった。
 1番人気らしく、ブースは人並みでごった返している。

タイラ「こ、これじゃ近付けないっすよ……」
コウキ「けっ、このくらい関係ねぇよ!いけっ、グランドファング!!」

 バシュッ!ドゴーーーン!!!
 コウキはショーケースに向かってグランドファングを叩き込み、その衝撃で爆発が起こる。

「な、なんだ!?」
「爆発!?」
「誰かが強力なフリックスでも撃ったのか!?」
「こんな威力でないだろフツー!!」

 突然の爆発に会場は騒然。
 その隙をついてコウキはショーケースに飾られていた機体、トリプルファングを手にして走りだした。

コウキ「よし、ズラかるぞ!」

 ダッダッダ!!
 会場を出て薄暗い廊下を走るコウキ達。
 しかしその前に、大柄で眼光の鋭い用心棒風な男が立ちはだかった。

用心棒「おっとそこまでだ」
コウキ「な、なんだてめぇ!」
用心棒「俺は白井所長に雇われた用心棒。大人しくその機体を、トリプルファングを渡せ。痛い目に遭いたくなかったらな」
コウキ「けっ、冗談じゃねぇよ。せっかく手に入れた力だ、ここで試してやる……!」

 コウキはトリプルファングを用心棒へ向かって構えた。

用心棒「愚かな子供だ」

 用心棒も機体を構える。その機体はまるで血の着いた刀のような見た目をしていた。

コウキ「いくぜ!トリプルファング!!」
用心棒「皆殺しスラッシュ!!」

 バーーーーン!!!
 二機のフリックスが激突し爆発!そして用心棒が吹っ飛ばされる。

用心棒「ぐっ、まさかこれほどとは……!」
コウキ「すげぇ、すげぇぜトリプルファング!こいつがあれば、俺は誰にも負けねぇ!!」
ケイ「やったね、コウキ!」
タイラ「これでコウキ様の天下っすよ!!」
コウキ「へっへっへ!」

 用心棒を倒して得意になっているコウキの前に見知った少年が現れる。

カイヤ「新製品を盗んだのは君か」
コウキ「カイヤ……」
 カイヤは無言で倒れている用心棒を見た後にコウキへ視線を移した。
カイヤ「……量産用デチューンを施す前のそれを良く使いこなせたね」
コウキ「あぁ?何言ってんだか知らねぇが、こいつは渡さねぇぜ!!」

 コウキはトリプルファングをしっかりと手に持ち、カイヤを睨みつけた。
 カイヤはそんなコウキをジッと見つめ、少し考えた後にこう言った。

カイヤ「……いいよ、その機体は君にあげよう」
コウキ「なに……?」

 怪訝な顔をするコウキを無視し、カイヤは歩き出す。

コウキ「ま、待てよ!どういうつもりだ!!」
カイヤ「……その代わり、強くなってくれよ。期待している」

 振り向きもせずにそう言って、カイヤはゆっくりと遠ざかっていった。

 

   つづく

 

 

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