第3話「コンボを決めろ!」
とある雑居ビルの地下。
埃っぽく薄暗い不気味な雰囲気の通路をダストのメンバーが周囲を警戒しながら進んでいた。
コウキ「ここが、凄いフリックスを研究してるって噂のビルか」
タイラ「な、なんか出そうっすね……」
ケイ「なに、あんたビビってんの?情けないねぇ」
タイラ「び、びび!ビビってねぇよ!!」
コウキ「バカやろう大声出すな!見つかったらどうすんだ!」
タイラ「す、すいやせん……」
ケイ「コウキの声も十分でかいよ」
コウキ「うっせぇ、悪かったな」
タイラ「でもコウキ様、本当にこんな所で強いフリックスが手に入るんですかねぇ?」
コウキ「んなもん分かるかよ。可能性があるなら賭ける、無いなら撤退する、それだけだ」
タイラ「そういうもんっすか」
コウキ「そういうもんだ。おっ、ここの扉怪しいな、チェックしてみるか……」
コウキは重厚な防音扉を見つけ、慎重に開いた。
コウキ「……げぇ!?」
素っ頓狂な声を上げるコウキ、その視線の先にあったものは……!
巨大な障害物コースで特訓しているダンガと播磨親子の姿だった。
播磨「それじゃ、いくよダンガ君!この超ロング障害物コースをキメラビーストのコンボチェンジを駆使してクリアするんだ!」
ダンガ「腹の足しにもならなそうだが、いいだろう」
ダンガはコースにキメラビーストをセットした。
アキラ「行くよ!3.2.1.アクティブシュート!!」
ダンガ「いけぇ、キメラビーストォォ!!」
播磨「第1セクションは振り子ストレート!一定間隔で設置した丸太付きの振り子を突破して駆け抜けるんだ!」
ダンガ「ふん、遅い!!」
アキラ「凄い!イシャパコンボのパンサーリアを使った急加速で突破していく!」
播磨「やるね、でも最後の振り子はタイミングが違うぞ!」
アキラ「あぁ、ぶつかる!!」
ダンガ「甘い!!」
ガッ!
播磨「ほぅ、丸太にぶつかった勢いを利用して更に加速して突破したか」
ダンガ「さぁ、次はなんだ?」
播磨「第二セクションはメニーターゲット!フィールド上のターゲットを一撃で全て倒すんだ」
ダンガ「ならこいつだな」
ダンガはタイガーセンターをセットした。広範囲攻撃が可能なセンターアーマーだ。
ダンガ「タイガークロー!!」
サイドいっぱいに広げたクローであっさりとターゲットを撃破。
播磨「いいぞ!次はプッシングウォール。壁を端まで押し込むんだ!」
ダンガ「押し込む、か。だったらこいつだな」
ダンガがライオンフロントを手に取るとアキラが叫んだ。
アキラ「あ、それはダメ!」
ダンガ「なんだと?」
アキラ「色合わせのコンボは負担が大きいんだ。慣れるまでは色違いの組み合わせにして!」
ダンガ「ちっ、めんどくさい奴だ。なら適当にこいつを付けるか」
ダンがはシャークセンターとライオンフロントを取り付けた。
ダンガ「喰らい付け!!」
バキィ!!
播磨「さすが、一撃か。よし、じゃあ最後のセクションはそり立つ壁だ!」
ダンガ「こいつは楽勝だな」
ダンガはホッパーリアを取り付けてあっさりと壁を飛び越えてみせた。
播磨「全セクションクリア!凄いな、まさかこの短期間でここまで使いこなせるようになるとは」
ダンガ「ふん、そんな事よりそろそろ腹が減ってきたな、飯はまだか?」
アキラ「え、昼ごはんならさっき食べたよね?」
ダンガ「違う、俺が食いたいのはバトルだ」
アキラ「あ、そっちね……」
ダンガ達の様子をダストのメンバー達は戦々恐々として覗いていた。
コウキ「す、すげぇ、なんてフリックスだ……!」
ケイ「あんなに対応力のある機体、あたい見た事ないよ」
タイラ「でも、さすがはコウキ様!あそこまで強いってのを見越して、狙ったんですよね!!」
コウキ「ま、まぁな!そのくらい当然だぜ、はっはっはっ!!」
ドンっ!
高笑いするコウキの背中にスーツを着た長身の男がぶつかってきた。
白井「おっと、失礼」
コウキ「何しやがる……って、なんなんだあんたら!?」
喧嘩を売られたと思ってガンつけようとしたが、スーツの男の後ろに複数人のガタイのいいSPが控えているのを見てコウキはたじろいだ。
アキラ「え、なに?」
コウキの出した大声に気づいてダンガ達は入り口の方を見る。
コウキ達は気まずそうに目を逸らした。
ダンガ「お前らは、確かゴミクズ、だったか?」
コウキ「ダストだダスト!空に輝く一等星だ!!」
ダンガ「なんでもいい。丁度腹が減ってた所だ、俺と戦え!」
白井「待ちたまえ。それよりも私の用件が先だ」
播磨「……白井、所長」
ダンガを制して白井が前に出ると、播磨は苦々しい顔をした。
白井「お久しぶりです、播磨博士。まさかこんな所で研究を続けていたとは、さすがですね」
播磨「お陰様で、ね」
白井「しかし困りますねぇ。そのキメラシステムに関連する権利は私のラボが独占している。いくら生みの親とはいえ、勝手に持ち出して開発されては困るのですよ。まぁ、ラボに戻っていただけるのなら話は変わりますが」
播磨「私も、出来ればあなたのラボで開発を続けたかったですよ」
白井「では」
播磨「ですが、技術者にとって開発した機体は子供も同然。その子供を捨て駒の生贄にされると知っては、大人しくは従えませんね」
白井「……人聞きの悪い。より強い機体、強いフリッカーを生み出すための必要な工程ですよ。なんにせよ、従っていただけないのでしたらその機体はこちらへ返却願います」
ダンガ「おい、勝手に話を進めるな。こいつは持ち主から直々に俺が預かったものだぞ」
白井「あぁ、それはカイヤが勝手に言っただけだ。あいつにも困ったものだ」
ダンガ「俺からすれば、お前も勝手に言ってるだけだ。そんな奴に渡す気はない」
白井「……もちろんタダでとは言わない。ここまで預かってもらった礼だ、何か一つ欲しいものをあげようじゃないか」
ダンガ「なら……今すぐ俺とバトルしろ」
白井「なに?」
ダンガ「いい加減腹が減ってしょうがない。面倒な話はその後だ」
白井「ふっ、ははははは!面白いジョークだ。いいよ、乗ってあげよう。君、手持ちで何か使えそうな機体はないか?」
白井は後ろで待機していたSPへ話しかける。
SP「今は、未発表のトリプルファングしかありませんが……」
白井「それでいいよ、出したまえ」
SPはカバンからトリプルファングと呼ばれた機体を取り出して白井へ渡した。
白井「引退しているが、私もかつてはフリッカーでね。ラボ所属のフリッカーのスパーリング相手も務めている。カイヤほどでないにせよ、簡単に勝てると思わない方がいいよ?」
アキラ「ダ、ダンガ君、大丈夫なの?」
ダンガ「知らん。だが、美味そうだ」
白井「ふっ、君の面白さに免じて、私に勝てればその機体は正式に差し上げよう」
アキラ「ほ、ほんとに!?」
白井「まぁ、無理だと思うがね」
そして、2人は機体を構えてセットした。
播磨「それじゃ、いくぞ。3.2.1.アクティブシュート!!」
ダンガ「喰らい尽くせ!キメラビースト!!」
白井「パワーはなかなかだな」
バキィ!!
正面衝突し、キメラビーストが弾かれてしまった。
ダンガ「なに!?」
白井「単純な機体スペックではこちらの方が上。万に一つも君に勝ち目はないよ」
ダンガ「くっ!」
白井「しかも」
更に畳み掛けてくる。
白井「キメラビーストは私も開発に立ち会っている。当然、弱点も知り尽くしているよ」
ダンガ「ちぃぃ!!」
ダンガはマンティスセンターを取り付けて広範囲攻撃でマインヒットを決める。
白井「苦し紛れのマインヒットかい?でも、それじゃ状況は変わらないよ!」
白井があっさりと反撃してダンガを追い詰める。
タイラ「な、なんか凄いバトルですね、コウキ様」
コウキ「あ、あぁ、あの機体強いじゃねぇか……!」
アキラ「ダンガ君……!
ダンガ「あぁ〜。思った以上に美味いぞ、お前とのバトル」
白井「強がりかい?」
ダンガ「だが、少し味に飽きてきた」
言いながら、ダンガはライオンフロント、タイガーセンター、パンサーリアをセットしていく。
白井「ん、そのコンボは……」
アキラ「ダンガ君っ、それはダメっっ!!」
白井「ははは!良いじゃないか!どうせ負けるんだ、例え不可能でも試せる事はやり尽くした方が後悔も少ないだろう!」
ダンガ「負ける?不可能?後悔?……知るか、俺は美味いバトルをより美味くして喰いたいだけだ!」
アキラ「そんな、ラーメンの味変じゃないんだから……」
黄色いアーマーを全身に纏い
キメラビースト・ラタパンサーコンボ完成!
ダンガ「行くぞ……っ!」
バチッ!!!
ダンガがシュートポイントに触れた瞬間に静電気が走った。
ダンガ「ぐっ!!」
バチバチバチバチ!!!!
更に力を込めると、ダンガの全身に電撃が走る。
ダンガ「ぐああああああ!!!」
アキラ「ダンガ君!手を離して!!」
播磨「これ以上は危険だ!!」
白井「ふっ、あっけない最後だったな」
ダンガ「あああああぐおおおおお!!!!」
ダンガはそれでも歯を食いしばり、指を動かし、シュートを放った!
白井「なに!?この状態で撃った!?」
ダンガ「ビーストサンダーーーーー!!!!」
キメラビーストは雷を纏ったまま突進し、トリプルファングをぶっ飛ばして撃破した。
白井「ま、マジ……?」
ダンガ「はぁ、はぁ……!」
アキラ「か、勝っちゃった……」
播磨「まさか、コンボを使いこなした……?」
白井「……なるほど、そう言う事か」
白井は機体を拾って、踵を返した。
白井「約束は約束だ。その機体は君が使いたまえ……その方が、こちらとしても美味しい事になりそうだ」
ダンガ「お前のバトルも、美味かったぞ」
白井「それはどうも」
そう言って、白井はSPを引き連れて帰っていった。
コウキ「トリプルファングか……必ず手に入れてやるぜ、どんな事をしてでもな……!!」
つづく
CM