弾突バトル!フリックス・アレイ キメラ 第2話「キメラビースト、始動!」

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第2話「キメラビースト、始動!」

 

 『バトルは食事』を信条として美味いバトルを求めて旅をしている美食家フリッカー、ダンガ。
 彼は謎の機体を手にし、チャンピオンである氷刃カイヤに戦いを挑んでいた。

ダンガ「お前のダントツを喰わせろ……!」
カイヤ「さて、喰われるのはどちらの方かな?」

コウキ「ちょ、ちょっと待て!!カイヤを先にぶっ倒すのは永遠のライバルであるこの俺だ!抜け駆けはさせねぇぜ!!」

 対峙するダンガとカイヤの間にコウキが割って入る。

カイヤ「……すまない、誰だ君は?」
コウキ「なっ!昔スクールで同期だっただろうが!!前回の大会でも対戦しただろ!!」
カイヤ「悪いが、倒した相手の事をいちいち覚えてられないんだ」
コウキ「カイヤ、てめぇ……!」
タイラ「チャンピオンとは言え、コウキ様を侮辱するなんてとんでもねぇやろうだぜ!」
カイヤ「リベンジしたいならやめておいた方がいい。さっきのバトルを見てたけど、きっとまた僕に負けるよ?」
コウキ「ぐっ……相変わらずいけすかねぇ野郎だぜ……!」
ケイ「話に聞いてた以上に鼻持ちならない奴だね。どうするコウキ、あたいら全員でこいつボコッちゃう?」
タイラ「全員でかかればいくらチャンピオンでも!」
コウキ「そんなみっともねぇ真似出来るかよ……悔しいが、こいつが言ってる事は事実だしな」
タイラ「コウキ様……」
コウキ「負けるために戦う気はねぇ。だがな、俺は必ずお前を超える。俺が戦うのは勝つためだ!覚えとけよ」
カイヤ「あぁ、強くなってくれるのなら、覚えておくよ」
コウキ「ちっ、いくぞおめぇら!」

 コウキは部下達を連れて去っていった。

ダンガ「余興は終わったか?」
カイヤ「ああ。時間を取らせたね。いくよ、エクスカリバーゼノ」

 カイヤが自機を呼びながら構えるのを見て、ダンガはハッとした。

ダンガ「……おい、名前はなんて言うんだ?」
アキラ「え、僕は播磨アキラ、だけど」
ダンガ「お前じゃない。この機体の名前だ」
アキラ「あ、……キメラビースト イシャパコンボ」
ダンガ「長ったらしいな。まぁいい。どうせこのバトル限りの付き合いだ」
カイヤ「そちらの準備もいいかな?」
ダンガ「あぁ、問題ない」

 改めて二人は機体を構えて対峙し、シュートした。

ダンガ「喰らい尽くせぇ!キメラビーストォォ!!!」

 キメラビーストが風を切り裂きながらカイヤに向かって飛んでいく。

アキラ(す、すごい!キメラビーストでまともにシュートするなんて!)

カイヤ「いいシュートだ。だが、このエクスカリバーゼノには……通用しないな!!」

 バキィ!!
 エクスカリバーゼノは、向かってきたキメラビーストをいなすように切り払って場外させた。

ダンガ「ぐっ……!」

 たった一度シュートしただけなのに、ダンガは腕を押さえて顔を顰めた。

ダンガ(なんだこの機体は……たった一度のシュートでこの反動……!そのシュートを涼しい顔で受け流したあの野郎……このバトルは、俺が今まで喰ってきたものと次元が違う!)

カイヤ「どうしたんだい、そんなに震えて。怖気付いたかい?」
ダンガ「あぁ、恐れ入ったぞ……こんなに美味いバトルが存在するこの世界にな!」
カイヤ「そうか。でも君は完食できない」
ダンガ「喰ってやる……この腹が裂けようともなぁ!!」

アキラ(もしかしたらこの人なら、キメラシステムを使いこなせるかもしれない)

ダンガ「さぁ、やるぞ……!」
アキラ「待って!このアーマーを使って!!」

 アキラは緑色のパーツをケースから取り出してダンガへ投げ渡した。

ダンガ「なんだこれは?」
アキラ「ホッパーリアアーマー!それを機体のリアアーマーと交換して!」
ダンガ「……こうか?」

 アキラに言われるまま、ダンガはリアアーマーを付け替えた。
 その時、ダンガの脳内にこのリアアーマーを使ってシュートする映像が流れた。

ダンガ(っ!なんだ、頭の中に使い方が流れてくる……俺は、戦い方を知っている……?)
カイヤ「へぇ、それがキメラビーストの換装機構『キメラシステム』か。でも素人に使わせるなんて随分酔狂な真似をするね」
ダンガ「酔狂かどうか、試してみれば分かる」
カイヤ「あぁ、見せてもらうよ」

 再び二人は真正面から同時シュートした。

カイヤ「薙ぎ払え!エクスカリバーゼノ!!」
ダンガ「飛べ!ホッパージャンプ!!」

 ガッ!
 キメラビーストはリアのホッパーアーマーのバネを利用してジャンプし攻撃を躱す。そしてエクスカリバーゼノは勢い余って転倒した。

カイヤ「なに!?」
アキラ「す、凄い……!」
ダンガ「なるほど」

 転倒した隙にダンガが攻撃体制に入る。

アキラ「次はこのアーマーを!」

 またもアキラがアーマーを投げ渡す。

ダンガ「っ、またか」
アキラ「今度はセンターに取り付けて!」
ダンガ「忙しないやつだ」

 言われるままにダンガは黄色いアーマーをセンターに付けた。

アキラ「出来た!これがキメラビースト イタホコンボ!!タイガーサイドのクローを展開して!!」
ダンガ「こうだな」

 ダンガはキメラビーストのクローを展開して広範囲攻撃し、マインヒットを決めた。

アキラ「やった!ダメージを与えたぞ!!」
ダンガ「悪くないな、この機体」

カイヤ「……アーマーを付け替えるだけでここまで戦術を変えられるとは、面白い」

 カイヤの雰囲気が先程と違って緊張感が高まる。

カイヤ「でも、そろそろ終わらせるか。氷刃流剣技……飛燕斬!」

 まるで一流の剣士のような太刀筋でエクスカリバーゼノを振るい、一瞬でキメラビーストを吹っ飛ばして撃沈してしまった。

ダンガ「な、なに……!」
アキラ「そんなっ、たった一撃で……!」
カイヤ「なかなか興味深いバトルだったよ。けど、君のセリフを真似るなら『喰い足りない』かな?」
ダンガ「貴様……!!」
カイヤ「でも、収穫はあった。その機体は君に預けておく。しっかり使いこなせるようになってくれ」
ダンガ「なんだと!俺に情けをかけるのか!?」
カイヤ「情け?違うね……これは命令さ。勝者としての、ね」

 それだけ言うと、カイヤは去っていった。

ダンガ「ぐ、ぐおおおおおおお!!!!」

 よほど悔しかったのか、ダンガは咆哮する。

アキラ「ダンガ、くん……」
ダンガ「おおおおおおおお……腹減った……!!!」

 ぐーーーーー!!と盛大に腹の虫がなった。

アキラ「へ?」
ダンガ「俺にとっては、バトルは飯だ。だが、飯も飯だ!……何か、食わせてくれ」
アキラ(普通に食べるは食べるんだ)

 アキラはダンガを連れて、少し離れた場所にあるビルの地下へ案内した。
 そこは、居住空間と工房が一緒くたになったような隠れ家を思わせる部屋だった。

ダンガ「ガツガツガツ!!!」

 ダンガはテーブルに着き、用意された大盛りのご飯を遠慮なくガッついていた。
 その様子をアキラとその父と思われる男が向かい側に座って眺めている。

播磨「どうだい?我が播磨家特製の七味醤油ご飯は口に合うかな」
ダンガ「最高だ!鋸山で食った熊やムカデの活け造りよりもずっと美味い!!」
アキラ「熊!?ムカデ!?」
ダンガ「なんだ、ムカデ食った事ないのか?世話になった礼に今度ご馳走してやる」
アキラ「い、いや、いいよ……」
ダンガ「遠慮するな。マズイ汁の詰まったビニール袋を噛み潰しているような食感で、なかなか美味いぞ」
アキラ(マズイって言っちゃってるじゃん)

播磨「ははは、礼を言うのはこちらの方だよ。息子とキメラビーストを守ってくれたようで感謝する」
ダンガ「何の事だ?俺はただバトルを喰おうとしただけだ。……喰いっぱぐれたがな、くそっ」
播磨「それでも、君の介入に助けられたのは事実だ。……申し遅れたが、改めて自己紹介しよう。
私はアキラの父で、キメラビーストの開発者『播磨』だ」
ダンガ「……こいつの、開発者」

 ダンガは食事の手を止めて、キメラビーストを取り出した。

播磨「キメラビーストは、フロント、センター、リアの三パーツを組み替えてあらゆるフォームに変形するフリックスだ。無限の可能性を秘めていると言ってもいい」
ダンガ「無限の可能性か……確かに、面白い機体だったな」
アキラ「でも、汎用性が高すぎて誰にでも扱える機体じゃないんだ。ただでさえ三分割のボディは癖があるし、フォームチェンジするたびに特性が変わるから」
播磨「一つの機体を使うのに複数人フリッカーが必要なんて、本末転倒な皮肉を言われた事もあるもんな。でも、そんな機体を何故使いこなせたんだ……?」
ダンガ「知らん。ただ、勝手にイメージが湧いてきた。それだけだ」
播磨「イメージが?……君はまさか……」
アキラ「お父さん?」
播磨「いや、なんでもない。そうだダンガ君、家の連絡先は分かるかい?今日の所はウチに泊まってもらうとして、一応御家族に連絡した方がいい」
ダンガ「そんなものはない。家も家族もな」
アキラ「え?」
ダンガ「俺は物心がついた頃から一人で山にいた。そこで出会った武山剛志と言う男にフリックスやサバイバル術を教わってからは、全千葉中を旅している。美味いバトルを求めてな」
アキラ「武山剛志……それでハンマーギガを……!」
播磨「そうか……なるほど……。なら、こういうのはどうかな?」
ダンガ「なんだ?」
播磨「ダンガ君さえ良ければだが、ウチに住まないか?その代わり、キメラビーストの使い手として私の研究に協力する」

 播磨の誘いにダンガは一瞬考える素振りをするが、すぐにニヤリと笑った。

ダンガ「……悪くない提案だ。こいつといれば美味いバトルにもありつけそうだしな」
播磨「決まりだな。よろしく、ダンガ君」

 

   つづく

 

 

 

CM

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