弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第32話「新たなる戦い!トリニティカップ開幕!!」

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第32話「新たなる戦い!トリニティカップ開幕!!」

 

 遊尽コーポレーション。
 コウは社長室で資料のチェックをしながらも全く集中できておらず、上の空だ。

「……」

 その原因は、ここ立て続けに起こっている幼馴染達の奇行のためだ。
 ソウは禁断のフリックス【デザイア】を手に海外の大会を荒らし、そして情報を持っているであろうタツヤは病室で廃人化。
 あれから数週間経つが特に何も進展が無く仕事も手に付かない状態だ。
 もっとも、大きなイベントも終わり繁忙期は過ぎているので会社的には問題はないのだが……。

 コンコン、と控えめなノックが聞こえた。

「どうぞ」
 コウが言うと、ゆっくりと扉が開かれピシッとスーツを着こなしている秘書の女性が資料を片手に入ってきた。
「失礼します。社長代理、赤壁杯以降の売上高が出ましたのでご一読ください」
「あぁ、ありがとう」
 秘書から資料を受け取り、サラッとグラフや数字の表記された紙を興味なさげに眺める。
「赤壁杯以降、我が社の利益は20%アップしています。この分だと来月は更に大きな利益が期待出来るかと……」
「あぁ、まぁ当然だよ」
 凛としながらもどこか浮き足立つ秘書の声音に対して、コウは軽く流す。あれだけ策を講じたのだから売上が上がるのは当然だ。
 そんな事にいちいち一喜一憂などしてられない。今はそれよりも考えたい事があるのだ。
 早いとこ一人になりたいと、ザッと資料に目を通して秘書を帰らせようとするのだが……。

「それと」
 秘書はまだ何か伝えたい事があるようだ。
「なにかな?」
「先程、社長から連絡が入りまして、深夜の便で日本へ戻られるそうです。明朝、直接ホテルより社へ向かうので迎えは不要との事ですが……」
 その言葉を意味を理解した瞬間、コウは思わず立ち上がった。
「なんだって……!」
 ただでさえ考え事が多いと言うのに、よりによってこのタイミングで父親が戻って来るとは……コウはさすがに苦い顔を隠せずにいた。

 ……。
 ………。
 そして、翌日。

「久しぶりだな、我が息子よ」
 コウとよく似た顔つきだが、身体は筋骨隆々な男が馴れ馴れしく話しかける。
「えぇ、海外勤務お疲れ様でした。社長」
 コウは、何か探りを入れるかのように慎重に父親・キンジロウへ挨拶するが、それを見てキンジロウはフッと笑った。
「そう硬くなる事はないだろ。久しぶりの親子の対面なんだ、フレンドリーに行こうじゃないか」
「親子とはいえ、僕らは社長とその代理。公私混同しては社員に示しがつきませんよ」
「ふっ、一丁前の口を。まぁ、あれだけ派手に社長業をこなせば、代理と言えど役職が板につくと言うものか」
 キンジロウの皮肉混じりの言葉に、コウの眉がピクリと動く。
「派手に、とは大袈裟な言い方ですね。僕は与えられた職務を全うしただけですよ」
 コウは極めて冷静に返すが、キンジロウは見透かすような表情で間を取り、続けた。

「私が苦労して凍結させたプロジェクトをわざわざ再開させた挙句、反対勢力となった潁川とバチバチに抗争、挙句一般フリッカーをモニター依頼と言う建前で使役し、既存大会を乗っ取りコンペの場として利用……なかなか真っ当な仕事ぶりだったな。どうやら、社長代理のビジネス書にはリスク管理という言葉が載ってないらしい」
 息子の行動など全てお見通しだと説教じみた事を言ってくるが、それでもコウは平静を崩さない。
「僕は会社の利益とフリックス界発展のために尽くしただけですよ、何か問題でも?」
「いや、問題はない。むしろ、想定以上だ」
 キンジロウは満足げに笑みを見せた。
 その反応はコウにとって予想外だったのか、初めてポーカーフェイスが崩れて怪訝や表情になった。
「想定……?」
「力を持つと言う事は、それだけ多くの火薬を保持するようなものだ。それ故、私に出来るのは火種を取り除くまでだった。しかしコウ、まだ恐れを知らぬお前に力を与え泳がせればどうなるか……」
 その言葉の意味を察したコウは不機嫌そうにぼやいた。
「気に入らないな。僕は掌の上で踊らされていたと言いたいのですか?」
「いいや。言っただろう、想定以上だと。この成果は私では不可能だった。本当によくやった」
「……」
 父からの混じり気のない賞賛に、コウは面食らって言葉を失った。
「だが、まだまだ詰めが甘い」
「え?」
「お前の働きぶりを評価し、褒美に優秀な部下をつけてやろう。……入ってきたまえ」
 扉の向こうへ声を掛けると、静かに扉が開き秘書の女性と小太りのおっさん、そしてガタイのいい少年が入ってきた。
「き、君達は……!」
「紹介しよう。この度我が社の新しい仲間となった潁川トウマ君と武北ホウセン君だ」
 ついこの間までバチバチに対立していた張本人たちだった。
「潁川君には我々の補佐を、武北君には製品のテストプレイヤーをお願いしようと思っている。まぁ、彼は学生だから正式な雇用ではなく少し特殊な契約になるがね」
「あ、あの、社長、本当に僕なんかがこの会社の敷居を跨いで良かったのでしょうか……?」
 さすがに気まずく肩身を狭くしている潁川がおずおずとキンジロウへ尋ねる。
「当然だ。君のような優秀な人材を路頭に迷わせておくなど、貧乏性の私には出来ない。武北君、それは君も同じだ。どうか気負いなく勤めてもらえると助かる」
「……はい」
「うぉぉぉん!!ありがとうございます!!!坊ちゃん!どうか、どうかよろしくお願いしますううう!!」
 涙と鼻水の混じった奇声を発する潁川に若干引きながらもコウは頷いた。
「え、えぇ、こちらこそ」

「さて、顔合わせも済んだ所で、業務はまた後日だ。二人には社員寮でゆっくり休んでもらおう。君、後は任せた」
「はい。では、こちらへ」
 キンジロウに命じられ、秘書は潁川とホウセンを連れて退出した。

 再び父と二人きりになる。
「父上、なぜあの二人をわざわざ雇ったのですか?」
「抗争というのは、敗者へ手を差し伸べるまでが本当の勝利だ。よく覚えておくと良い」
「……」

「それと、もう一つ面白い知らせがあるんだが……その前に」
 そう言いながら、キンジロウは懐から金色のフリックスを取り出した。
「せっかくの親子水入らずだ。久しぶりにどうだ?」
「……まったく、父上も好きですね」
 そう言いながらコウもセイントアルトロンを取り出した。

 そして、二人は簡易フィールドを用意して機体をセットし構えた。

「「3.2.1.アクティブシュート!!」」

「いけっ!レジェンドアルトロン!!」
「セイントアルトロン!!」

 ……。
 ………。

 一方ホウセンは、秘書に案内された社員寮の一室で荷物の整理をしていた。
 さすが遊尽コーポレーションの寮だけあり、内装はなかなか立派なもので一人で暮らすには十分な設備が整っている。

 ピンポーン!

 整理もひと段落し、休憩しようかと思ったところでインターホンがなった。
「ホウセン、いるー?」
 扉の外から見知った少女の声が聞こえる。
 モニターを見ると、アスカとタカトラが両手にレジ袋を下げて立っていた。
「おう、今開ける」
 ホウセンはボタンを押して寮の鍵を開けた。

 しばらくするとアスカとタカトラが部屋の前まで来たので招き入れ、片付いたばかりの部屋のテーブルにお菓子やらジュースやらの山が乱雑に置かれた。

「どうしたんだ、急に」
「決まってんでしょ、ホウセンの就職祝い」
「まさかあの諸星家に拾われるとはな」
「けっ、こいつを管理出来る範囲に置いときたかっただけだろ」
 手に持ったシェルロードを見ながらホウセンはぶっきらぼうに言った。
「それでも、ホウセンに居場所が出来てよかった。ほんと、良かったよ……」
 目を細めてしんみりと言うアスカにホウセンは照れ臭そうに目を逸らした。
「まぁ、あのクソ親父と離れて暮らせるだけマシだな。……悪かったな、いろいろ心配かけちまった」
「気にしないで。あたしはただ恩を返したかっただけだから」
「恩?」
「……昔、女子だけでチーム組んでた事あったでしょ、あたし。女子の中では強い方だって自信あったんだけど、でもどうしても鍛えてる男子フリッカーに勝てなくてさ。それで、落ち込んでた時言ってくれたじゃん。『女子だけで勝てない競技ならとっくの昔に男女分かれてる』って」
「あーー……」
「それで今の闘い方を身に付けられたんだ」
「別に、大した事言ってない気がするけどな」
 ホウセンの言葉は一見ただの感想だ。アドバイスでも慰めでも激励でもなんでもない。そこから何かを見出したとしても、それはアスカ自身の成果のはずなのだが……。
「そう思われたくて、わざとああいう素っ気ない言い方したんでしょ」
「分かったような事いいやがって」
「分かるよ、ホウセンの事なら大体ね」
「……」
 図星だったのか、ホウセンは誤魔化すようにズズッとジュースを一口飲んだ。
「それに、あたしの心配だって大した事じゃないし。おあいこだよ」
「……それならそれで、別にいいけどな」
 なんとなく目を合わせて、少し照れたように目を逸らす二人。

「……爆発しろ」
 それを見て、タカトラはボソッと呟いた。

「何か言ったタカトラ?」
「いや」
「そういやタカトラ、お前の方は最近どうなんだよ?」
「……知り合いのツテでジムを経営している人に厄介になっている。今はプロの格闘家目指して修行中だ」
「そうか、おめぇも頑張ってんだな」
「じゃあフリッカーは辞めちゃうの?」
「辞めると言うと少しオーバーだが、今はトレーニングで忙しい」
「まぁ、タカトラは根っからのフリッカーってわけじゃないしね」
「アスカの方はどうなんだ?」
「あたし?……実は、さっきも言った女子チームのメンバーから連絡が来てさ。もう一度あのチームで一からやり直そっかなって思ってるんだ」
「……そうか、って事は本格的にインビンシブルソウルは解散って事だな」
「なんだホウセン、寂しいか?」
 なんともなしに言ったホウセンの言葉に、タカトラが揶揄う。
「誰が」
「ホウセン。あんたもさ、せっかく生活に余裕出来そうだし、好きな事やってみたら?」
「好きな事だと?」
 予想外のアスカの言葉に、ホウセンは怪訝な顔をした。
「気になってんでしょ、あいつの事……」

「……さぁな」
 そっぽを向いてポテチを齧るホウセンへ、アスカは微笑んだ。
「分かるよ、大体ね」

 ……。
 ………。
 それから数日後の成都小学校。
 赤壁杯が終わってからも小龍隊は放課後空き教室で集まり練習をしていた。

「うおーーーい!!」
 そこへ黄山先生が乱暴に扉を開けて入ってきた。
「ど、どうしたんですか先生!?」
「ビッグニュースじゃ!!新しい大会に我が小竜隊が招待されたぞ!!しかも主催は遊尽コーポレーションの社長、諸星キンジロウじゃ!!」
「新しい大会やて!?」
「諸星キンジロウって、コウの父親だっけ?そういや、日本に戻ったってネットニュースで見たなぁ」
「それで、どんな大会なんですか?」
 ユウスケが問うと、黄山先生は資料を広げて説明しはじめた。

「その名も『トリニティカップ』じゃ!」

「「「トリニティカップ!?」」」

「個人戦の最高峰GFC、チーム戦の赤壁杯。そして海外の大会と三つの舞台から優秀な成績を残したフリッカーやチームを招待してダントツ1番を賭けて戦うんじゃ!」

「GFCや赤壁杯!?」
「海外からも来るんか!」
「まるでFICSみたいだ……」

「個人戦やチーム戦、国籍の枠を超えて戦うアマチュア最高規模の大会を目指す……と書いてあるのう」
「でも、個人戦やチーム戦のフリッカーがどうやって同じ大会で戦うんですか?」
「どうしても不公平になるよな」
「その件についても書いてあるが……わしにはよく分からん」
 専門的な話になると匙を投げる黄山先生に一同はズッコケる。
 すると、リュウジが前に出て黄山先生から資料を受け取った。
「ここからは俺が説明しよう。招待されるのは『チームとして』か『個人で』かのどちらかだ。
チームとして招待された場合はそのチームから三人までを登録出来る。
個人での場合は、一人で出ても良いし、二人までメンバーを登録してもいい」

「でも、それって結局人数が多いほど有利になるのは変わらないんじゃ」

「いや、そうとも言えない。大会のルールはHP6をチームで共有し、試合毎に各メンバーに振り分ける形を取る。そして登録したメンバーは全員出場が絶対条件。増やす事も減らす事も変更も禁止だ」

「つまり、人数が多いとそれだけ一人あたりのHPは減るって事か」
「そういえば、赤壁杯でも似たようなルールのバトルがあったね」
「って、ちょっと待てや!?小竜隊のレギュラーは5人やで!3人選ばなあかんのか……!?」
「そこは恨みっこなしで選抜戦でもするしかないよな」
「カーッ、これは負けられんでぇ!!」
「……その事なんだが」
 ナガトが少し覚悟を決めた様子で切り出した。
「どうしたんだよ?」
 ゲンジが聞くと、ナガトはおずおずと一枚の紙を取り出した。それはトリニティカップ個人部門での招待状だった。
「過去のGFCでの成績を評価されて、個人部門で招待状が来たんだ。少し悩んだが、俺はそっちで出ようと思う」
「ナガト……」
「ゲンジ、トリニティカップではライバルだ!」
「あ、あぁ!負けないぜ!!」
「そうか、ナガトもか」
 ナガトの告白に便乗するようにリュウジも口を開いた。
「え、まさかリュウジも!?」
「……あぁ、イッケイから誘われてな。俺はホワイトホースとして出ようと思う」
「そんな、リュウジさんまで……」
「なんや寂しくなるな」
「いや、俺達は小竜隊として一緒に戦った仲間だ!それはチームから離れてライバルになっても変わらない!」
「あぁ!ゲンジの言う通り、俺は例え個人で小竜隊と戦う事になっても皆の事は仲間だと思っている。だから全力で勝ちに行く!」
「その通りだ。チームから離れた程度で仲間の絆は消えやしない。赤壁杯でその確信を得たから、俺は今一度ホワイトホースで戦うと決めたんだ」
 確かな決意と確かな絆を感じ取ったメンバー達は頷き、誰からともなく機体を取り出して円陣を組んだ。

「俺達小竜隊の絆は不滅だ!」

「「「ダントツの誓いに懸けて!!」」」

 ……。
 ………。
 そして、再び月日が流れ……。
 いよいよトリニティカップ開催当日となった。
 開催地は千葉県の幕張メッセ。グレートフリックスカップ決勝大会が開かれる地でもある由緒正しき場所だ。
 その会場の外では数多くのフリッカーが集まっていた。

「うっひょ〜!いよいよやな!トリニティカップ!!」
「あぁ!出来る事は全てやった!後は全力でやるだけだ!!」
「うん、頑張ろう!」
 開催日までの間しっかりと特訓と機体整備を万全にしてきた。まだ緊張はあるが、それ以上に自信がある。
 確かな手応えを胸に秘めながら辺りを見回してみると……。
「おっ、あいつら……」
 見知った顔を見つけたようだ。

「ケンタに、サクヤ!」
「あ、ゲンジさん!」
「やぁ、やはり君達も招待されていたか」
 そこにいたのは、西嶋兄弟。恐らく他の江東館メンバーもいるだろう……。
「やっぱり江東館も出るんだな。で、後の一人は……」
 と、3人目であろう2人の後ろにいる人物へ視線を移してゲンジ達は目を丸くした。
「お、おまっ!」
「よぉ」

「「「ホウセン!?」」」

「な、なんでお前が……あ、そうか!インビンシブルソウルも出場するんだな」
「いや、インビンシブルソウルは解散した。俺は、江東館のメンバーとして出場する」

「「「江東館に!?」」」

 声をハモらせながら驚く小竜隊へサクヤが説明する。
「驚くのも無理はない。数週間前にホウセンがウチの門を叩いた時は俺達も同じ反応したからな」
「い、一体どう言う風の吹き回しなんだ……」
「別に。ただ、本気でフリッカーの頂点を極めるのも悪くないと思ってな」
 ホウセンは手にしたシェルロードを見つめながら言った。
「ケンタ、お前良いのか……?」
 ホウセンに酷い目に合わされたのはケンタだ。まだ蟠りは残っているだろう。
 しかし、ケンタは曇りの無い瞳で頷いた。
「うん……ホウセンくん、あの時の事凄く反省してるみたいで、入門する時真剣に謝ってくれたんだ。それに、江東館に入ってからも『俺は下っ端だから』って言って雑用や掃除も一生懸命やってくれて……」
「バ、バカ!余計な事言うなよ……!」
 顔を赤くするホウセンを他所にケンタは続けた。
「だから僕は、お兄ちゃんとホウセン君となら絶対に勝てると思うんだ!!」
「……そっか。へへ、なんかまた強敵の登場って感じだな」
 自信に満ちたケンタの様子に、ゲンジ達はホッコリするのだった。

「よっ、久しぶり!元気してたか?」
 と、そこへ今度は正本ハジメがやってきた。
「ハジメ!」
「なんや、引退は延期かいな」
「当然だろ、こんな招待状が来て出ない訳がない!これが俺にとって本当の引退試合になる!お互い、全力を尽くそうぜ!」
「あぁ、もちろん!!」
「そっちがチャンピオンならウチらもチャンピオンなんや!覚悟しぃや!!」
「望む所!……それと、前に言った事覚えてるよな?」
「え、あ、あぁ……」

 ハジメの弟子にならないかと言う話だ。
 あの時は保留したが、今も答えは見つかっていない。

「……」
「ぼ、僕は、やっぱり江東館で訓練する方が……」
 ケンタは遠慮がちに断った。
「そうか、まぁそれもそうだな。江東館なら優秀な指導者も設備もある。……ホウセンにとってもその方が合っていそうだ」
「さぁな」
 ホウセンはそっぽを向いた。
「俺は……」
 あとはゲンジの返事だが、ゲンジは言い淀んでいた。
 良い提案なのは分かるのだが、受けるにしても断るにしても、妥当な考えは一切浮かばない。
 まさにビュリダンのロバだ。
「まぁ、迷ってるならそれでもいい。けど、出来ればこのトリニティカップの後にでも結論を出してくれると有難い」
「……あぁ、うん。とりあえず今は大会に集中したいし」
「せやせや!大事なのは大会や!!」
「それもそうだな。じゃ、君らと戦うの楽しみにしてるぜ」
 爽やかに言うと、ハジメは歩いて行った。

 ……。
 ………。
 そして、いよいよ大会が始まる。
 会場に出場フリッカーが集まり、ステージにはバトルフリッカーコウが立っている。

『さぁ皆!トリニティカップが始まるぜ!!個人戦、チーム戦、そして海外のアマチュア大会から選抜されたフリッカー達で争うこの大会は、まさにアマチュア最強決定戦だ!!
集まったのは総勢64組!大会形式はトーナメント方式で行い、試合毎に1週間のインターバルを挟む形になる!
組み合わせは毎回くじ引きで決定するぞ!!』

 モニターにズラッとチーム名や個人名が並ぶ。
 64組となると数が多すぎてどこに誰の名前が書かれているか判別が難しい。

『それでは早速最初の試合の組み合わせを発表だ!記念すべき第一試合を戦うのは……第7回GFCで準優勝に輝いた豊本鳳梨君!愛機はナップルセイバーだ!!』

「あ、どーも」
 豊本鳳梨と呼ばれた少年はステージに上がり、一礼する。
「いやぁ、久々のフリックス大会緊張するなぁ」

『対するは去年のGFC準優勝者南雲ソウ君!!ここ最近は海外での活躍も目覚ましいぞ!愛機はデザイアフェニックス!!』

「……」
 ただならぬオーラを放ちながら、ソウが壇上に上がった。

「南雲ソウ……!」
 ゲンジは観戦席でソウのこれまでとは違う佇まいに息を呑んだ。

『二人ともパートナーのいない個人部門としての参加だ!故にHPはどちらも6で戦う!
それでは準備が出来たら始めるぞ!!』

 鳳梨とソウがフィールドに機体をセットする。

『3.2.1.アクティブシュート!!』

「いけっ!ナップルセイバー!!」
「やれぇ!デザイアフェニックス!!」

 バキィィィ!!!
 初っ端、正面からの激突でナップルセイバーはまるで木の葉のように吹き飛んでしまった。

「うわああああ!!!」

『な、あ、ナップルセイバー場外!何だこのパワーは!?デザイアフェニックス、圧倒的すぎるぞ!!』

 観客席のゲンジ達も騒然とする。
「なんや、ホンマにあれが南雲ソウかいな!?」
「今までの、カイザーフェニックスとは比べ物にならないよ……」
「あ、あれが、デザイアの力……!」

 驚愕するゲンジの顔をチラリと確認したソウは不敵に笑う。
「まだまだこんなものじゃない。俺の欲望は、これからだ……!」

 

  つづく

 

 

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