弾突バトル!フリックス・アレイ FICS 第78話「七夕の夜に大バトル!FICSフリッカー大集合!!」

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第78話「七夕の夜に大バトル!FICSフリッカー大集合!!」

 

 千葉市美浜区いなげの浜。
 デザートハンターズVSインテリジェンスの試合後、バン達はインテリジェンスと監督のゴタゴタを目撃。
 なんやかんやあってインテリジェンスの監督と交流する事になった。

「そうだ!!君達に折り入って頼みがあるんだが、聞いてくれるかい!?」

「いぃ!?」
 グイグイくる監督にバンは思わずたじろいだ。
「お願いだ!あの子らと友達になって欲しい!そして、フリックスの楽しさを教えてやって欲しいんだ!!」
 ガシッと手を掴んで懇願する。
「いや、急にそんな事言われても」
「分かりマシタ!マカセテクダサイ!!」
 戸惑うバンに対して、マルコは二つ返事でOKした。
「おまっ、そんな安請け合い!」
「安くないデス!ボクもインテリジェンスの皆さんとは仲良くなりたいと思ってマシタから!」
「うおおお!ありがとうマルコ君!!……チラッ」
 監督はマルコへ大袈裟に礼を言った後、わざとらしくバンをチラ見した。
「だぁぁぁもう分かったよ!俺も協力するよ!!」
 周囲の圧力に負けて、バンはそう答えざるを得なかった。
「バン……」
「この忙しいのに余計な仕事受けやがって」
「お、俺のせいか!?」
「さっすがバンデス!でも、具体的にはどうしましょうカ?」
「お前なぁ……俺だってそんなアイディアあるわけ……あ、そうだ!遠山のじいさんに相談してみよ」

 ……。
 ………。
 と言うわけで、早速バン達はフリックス国際連盟の本部へ赴き段治郎へコンタクトを取った。

「ふむ、イベントか……」
「そうそう!せっかく世界中からフリッカーがこの千葉に集まってるんだし、ただ試合するだけじゃなくてなんかお遊びイベントとか盛り上がるんじゃないか?」
「なるほど親善イベントか。たしかに、その方がより集客を望めそうじゃな。よかろう、本部も全面的に協力する。が、具体的にはどうするんじゃ?」
「へっ、い、いやぁ、えっと、それはこれから……」
 そこまでは考えてない。
 と、そこへ突如よく見知った声が聞こえてきた。

「話は聞かせてもらったよ!」
「面白そうな事考えるのぅ!」
 入ってきたのは、レイジと剛志だった。
「レイジ、剛志!?なんでお前ら……」
「ふっふっふっ、我が藤堂家だってFICSのスポンサーだからね!それなりの権限があるのさっ!」
「それよりもこの話、ワシらも一枚噛ませてもらうぞ!次のGFCまで時間も空いて退屈しとった所じゃ!!」

 今年はFICSに集中するためにGFCの開催はお休みになっているらしい。

「問題は会場だよね。せっかくだし、デスティニーランドでも貸し切っちゃおうか?」
「それもええが、時期的には七夕じゃしな……千葉みなとのポートタワーに短冊飾り付けるのとかどうじゃ!?」
「いいね、さすが剛志!さっそく貸し切れるように手配するよ!」
「力仕事ならワシに任せろ!タワーに昇って飾り付けするくらい、崖上りするのと同じじゃからな!ガッハッハッハッ!!」

 なんだかトントン拍子で話が進んでいく。

「ど、どんどん話が大きくなっていくぞ」
「おー、これがジャパニーズ企画力!」
「違う違う……」

 ……。
 ………。

 そして、七夕の夜。
 千葉みなとは見事にFICS主催のお祭りとして設営されており、ポートタワーもまるで笹の木のようなイルミネーションへと変貌していた。

「な、な、なんか、凄い事になっちゃったぞ」
 思わぬ事が思わぬ結果になってしまい、バンは戦々恐々とする。
「さすが藤堂家……やる事が派手……」
「あいつ、本当に生身でポートタワーを飾りつけやがった……」
 久々に見せつけられたレイジと剛志の超人っぷりに唖然とした。

「いぇーい!お祭り楽しいです!皆さんも楽しみマショウ!!」
 依頼を引き受けた一人であるはずのマルコは出店で買った食べ物を片手に大はしゃぎだ。
「マルコ、お前今日の目的分かってるのか?」
「もちろんデース!皆さんと一緒に楽しく遊ぶ事デース!!」

「ちーがーうーだーろー!!」
「ま、まぁ、それも一応は結果につながると思うけど」

「たまには良いものだな。こう言う場で交流すると言うのも」
 と、ユーロフリッカー騎士団に声を掛けられた。
「あ、お前らも来てくれたんだ!意外……ってほどでもないか」
 佐原では和服着てたし、意外と祭り好きな一面があるのかもしれない。
「本日はお招きありがとうございます」
「こう言う息抜きもたまには必要だからな」
「戦うだけでなく、親睦を深めるのもフリッカー騎士道さ。……だが」
 アドルフは周りを見回したあと言った。
「さすがに、奴らは来ていないようだ」
 奴ら、とはデウスリベンジャーズの事だろう。
「さすがにガラじゃねぇだろ」
(まぁ正直、来られても扱いに困る)
「ガラじゃないといや、そもそも本命の奴らは来てんのか?」
「あ、あぁ、さっき監督から連絡あった。そろそろ来るみたいな……」

「おーーーい!!」
 と、この喧騒の中でもよく聞こえる声が届いた。
 見ると、TSインテリジェンスを監督が引率してこちらへ近づいてきていた。
「いやぁ、凄いイベントだ!今日は楽しませてもらうよ」
 監督が挨拶をすると、リーダーのデイビットも続けて社交辞令的に挨拶をした。
「本日はお招き感謝する。出場チームが一堂に会する機会はなかなかない。良いデータが取れそうだ」
「おう!もちろんバトルイベントもあるからな!負けないぜ!!」

「ったく、データがどうとかじゃなく純粋に楽しめってのに。まぁいい、とにかくよろしく頼む」

 一頻り挨拶も終えてイベントが始まる、
 特設されたステージの上にバトルフリッカーコウが上がり、司会を務めている。

『さぁみんなーー!!七夕の夜にようこそ!!今回はFICS出場チーム勢揃いのお祭りだぁぁぁ!!!』

 ワーーーーー!!

『一年に一度しか会う事の出来ない織姫と彦星!しかし、フリッカー同士の出会いは一生に一度あるかどうかも分からない奇跡!そんな世界各国のフリッカーが集い、鎬を削りあうこのFICSはまさに奇跡の賜物!!だからこそ、その奇跡に感謝し親睦を深めようではないか!!』

 ワーーーーー!!

『もちろん、ただ遊ぶだけじゃないぞ!今回は特別なルールを設けたフリックスバトルも行う!腕試しにもピッタリなイベントだ!!』

 こうして、イベントは筒がなく進行していく。
 ビンゴ大会、笹団子大食い大会、コスプレコンテスト、フリックスと関係あるものから全く関係ないものまで、多種多様なアトラクションで参加者を楽しませている。
 そして、いよいよメインイベントだ。

『さぁ、宴もたけなわと言ったところで、バトルイベントを始めるぞ!!!今回来てくれたFICSフリッカーで大トーナメント大会だ!!』

 バトルという事で最高潮に盛り上がる。

『今回はチーム戦ではなく、個人戦!そして、抽選で一般参加者もトーナメントに参加出来るぞ!フリックスを持ってなくても大丈夫!!扱うフリックスはくじ引きで決定するんだ!!』

 ステージの上にずらっと多種多様な機体が並ぶ。

「へぇ、面白いな!」
「うん、これなら平等に戦えるね」
 普段ではありえないルールに参加者はワクワクする。
 ただでさえFICS開催されてから個人戦からはご無沙汰だし、普段使わない機体を使うのも面白そうだ。
 勝ち負けを気にせずに遊べるのも良い。

 しかし、インテリジェンスはこれに不満の意を示した。
「時間の無駄だ」
 そうつぶやいて会場を後にしようとする。
「待て、どこいく!」
 監督が慌てて引き止める。
「我々が参加したのは、今後のFICSのために有益なデータを得るためです。しかし、チーム戦でもなければ、ましてや使う機体も違うものとなってはデータを取る意味がない」
「……それは、AIの判断か?」
「当然です」
「だとしたら、AIも大した事ないな。この分じゃ、シンギュラリティは夢のまた夢」
「どういう事です?」
「いいか?普段と違う状況に陥った方が人間の本質って奴が現れるんだ。フリックスなら尚更だ。チームメイトの助けもない、使い慣れた機体もない。そんな状況でこそフリッカーの実力が露わになる。そのデータを欲しないなんてどうかしてる」
「……」
 監督の言葉を聞いて、デイビットのゴーグルが激しく点滅する。
「……なんだって?」
 どうやら、今の言葉でプログラムがアップデートされたようだ。
「参加した方が優勝出来る確率が上がった……バカな……」
 そう呟くデイビットに、監督はドヤ顔した。
「AIは人間を超えるかもしれねぇが、それを育てるのは人間だってのを忘れんな」

 こうして、インテリジェンスも参加を決めてバトル大会が始まる。

『それでは、第一回戦はバン君VSデイビット君だ!』

 ステージにバンとデイビットが上がる。

「こないだの借りを返してやるぜ、デイビット!!」
「条件が違いすぎるバトルに、貸しも借りもないだろう」
「そ、そうだけど……!ノリが悪いな……!」

『まずは、使用する機体を決定だ!武山剛志君、よろしく!』

「任せるんじゃ!!」

 剛志は笹の木へと変貌を遂げたポートタワーの下に立ち、グランドギガをぶつけた。
 すると、ポートタワーが大きく揺れて、飾ってあった短冊がまるで落ち葉のようにヒラリと落ちてきた。

「決まったぞ!バンはトウヤクビン、デイビットはナマココブシを使うんじゃ!」

 トウヤクビンは、液体の入った瓶をボディにしたフリックス。
 ナマココブシは、ナマコのような食感の軟体フリックスだ。

「おお、中に液体入ってる!こんなフリックスもあるのか」
「なんだ食感は……こんなものを素材に使うとは理解不能だな」

『それでは、いよいよ始めるぜ!3.2.1.アクティブシュート!!』

「いけっ!トウヤクビン!!」
 バシュッ、ブヨン!!ガンッ、ゴンッ、ガンッッ!!!! 

 トウヤクビンとナマココブシはぶつかった衝撃で不規則に動きながら、ぶっ飛び……。

 トウヤクビンは蓋が開いて液体をぶちまけながらバンへヒット。
 ナマココブシは、ベチャッとデイビットのゴーグルにへばりついた。

「どわぁぁ!!!」
「うぉ、なんだこれは!!!」

「うわ、クサッ!病院の匂いがする……!何入れてんだよこれ!」
「ぐっ、へ、へばりついて取れな、ぐぉ!!」
 ゴッツン!!
 前が見えずにふらついていたデイビットとバンが激突、お互いに尻餅をついた。

「プッ、はははは!何やってんだお前!!」
 普段見せないみっともない姿のデイビットにバンは爆笑する。
「そっちこそ、酷い姿だぞ……と言うか、クサッ!近寄るな!」
「う、うるせ!お前から来たんだろうが!!」

『あー、残念ながら両者ともにダイレクトヒットで撃沈!勝者無しだ!』

「これ上級アクティブだったの!?なら最初から言えよ!!」

「ふ、ははは。ははははは!!!」
 突如、デイビットが笑い出した、

「お前……」
 意外そうにするバンへ、デイビットはハッとして笑いをやめた。
「あ、いや、違う。どう言う事だこれは」
 デイビットはゴーグルでコンピュータ分析をする。
 すると、ゴーグルの点滅が不規則に激しくなっていた。
 それは、まるで……。
「まさか、バカな……」
「へ?」
「AIが、笑っている……この馬鹿馬鹿しいバトルに……」
「AIが、笑う?」
 デイビットがさっき笑ったのも、AIの判断だったと言うのだろうか。
「それだけじゃない。AIが笑った事で、ブレインレベルが飛躍的に上がっている!どれだけ強い機体データを与えて、バトルに勝利しても、ここまでのレベルアップはなかったはずだ」
「……??」
「まさか、そう言う事だったのか……シンギュラリティへ近付く道は」
「な、何言ってんだ?」
 デイビットは立ち上がるとバンへ手を差し伸べた。
「礼を言う、バン・ダンダ。我々のオーナーの目的はAIを育てシンギュラリティを超える事。そのためにフリッカーとAIをシンクロさせる事が近道だと判断してこの大会に参加した。今、最も有益な方法が判明した」
「お、おう、良かったな?」

「大したフリッカーだ。日本の諺に『バカと天才は紙一重』とあるようだが、バカが頭脳を育てる事もあるらしい」
「い、いやぁ、そんなに褒めんなよ。へへへ……って、んん??」

 デイビットの態度からバンを誉めているのかと思ったが、その単語をよく思い出すと……。

「って、それって俺がバカだって言いてぇのか!?」
「さぁ、早くこのデータをチームメンバーと共有しなければ」
 憤るバンをよそに、デイビットはマイペースに歩いていく。

「ちょ、待てよ!俺は別にバカじゃねぇ!!」

 

   つづく

 

 

CM

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