第67話「世界の壁!再戦 ユーロフリッカー騎士団!!」
千葉県香取市佐原。
小江戸情緒の残る街並みをバン、ザキ、伊江羅の三人が歩いていた。
「いやぁ、それにしてもFICSはいいなぁ。試合に出るために千葉の世界中を旅出来るし!」
千葉の世界中とは。
「ちっ、呑気な奴だ。おい、本当にこんな田舎に試合会場があるのか?」
佐原は情緒溢れる観光地としての印象はあっても、競技ができる場所というイメージはない。
「問題ない。FICS用に運営が特設会場を用意している」
「ちゃんとしたスタジアムでやるのもいいけど、こう言うとこでやるのもいいよなぁ!……って、そういやリサのやつはどこ行ったんだ?」
いつもなら一緒に行動しているはずのリサの姿が見えない。
「駅着いた時は一緒にいたのになぁ」
「それも問題ない。そろそろ着替え終わる頃だろう」
「着替え?」
伊江羅の言葉にバンが首を傾げていると、後ろから聞き慣れた少女の声が聞こえてきた。
「ごめん、お待たせ」
振り向くとそこには、赤を基調にした艶やかな着物を召しているリサの姿があった。
「着物だ……」
いつもと違うリサの雰囲気にバンは面食らった。
「ど、どうかな……?」
「あぁ、いいんじゃないか。良く似合っている」
伊江羅はさすが大人の対応としてリサの着物姿を褒める。
「あ、ありがとうございます」
「って、なんだよその格好!?いつの間に……!」
「佐原と言えば小江戸だ。小江戸といえば着物だろう。貸し出しサービスくらいはある」
相場は8時間3500円くらいだ。
「いや、そうじゃなくて!そんな格好で試合すんのか!?」
「問題ない。これはフリックス国際連盟の監修した特注品。フリックスバトルにも対応できる構造になっている」
「うぇ!?フリックスの国際連盟って、そんなのまで作ってんのか……!」
「もちろんお前達二人の分もある。着てみるか?」
「はっ、冗談だろ」
「お、俺もいいや……着替えるの面倒だし」
やはりと言うか、男子二人は拒否した。
「郷に入りては郷に従え。ドレスコードを意識するのも騎士の務めだぞ、ダントツウィナーズの諸君」
と、そこへ三人の着物を着た男に声をかけられた。
「お、お前ら……!」
良くみると、それは着物を着たユーロフリッカー騎士団だった。
いつもの騎士のような格好と違い、ギャップがある。ぱっと見、日本観光に来ただけのただの外国人って感じだ。
「ユーロフリッカー騎士団!次の対戦相手はお前らか……!」
「君らとの対戦、楽しみにしていた」
「それはこっちのセリフだ。今度こそてめぇらぶっ飛ばしてやる」
「良く言うぜ。此間みたいな不甲斐ない戦いは勘弁してくれよな」
「へん、俺たちはあれからすっげぇ強くなってんだぜ!!」
「ふっ、それはこちらも同じですよ」
「なにぃ!?」
「とにかく、また騎士道精神に則った良いバトルをしよう。では失礼」
騎士団は紳士的に一礼して歩いて行った。
……。
………。
次のFICS本戦リーグの会場は、忠敬橋のど真ん中に設置された特設フィールドだった。
普段はそこそこ交通量の多い橋だけに住民の方達が何事かと物珍しげに集まっている。
『さぁ、FICS本戦リーグ!今回は小江戸の情緒溢れる街、佐原で行われるぞ!!この千葉の偉人伊能忠敬の名を冠している由緒正しき橋の上で神聖なるバトルを行うのは、ダントツウィナーズとユーロフリッカー騎士団だ!!!』
ダントツウィナーズとユーロフリッカー騎士団が一列に並んで対峙している。
『今回のバトルは特殊な方式で行う!名付けて『コリジョンアクティブ方式』だ!』
「コリジョンアクティブ?」
『アクティブシュートの後、先攻のターンが終わったら強制的に仕切り直しアクティブシュートをするんだ。また、アクティブシュート中に場外が発生しても仕切り直しアクティブになる』
「って事は、マインヒットやフリップアウトは先手を取らないといけないんだ」
「じゃあリサには不利だな」
「ううん、マインヒット型はむしろ先手を取りやすいから、返しのターンで反撃を喰らわなくなる分逆に有利だよ」
「そっか、じゃあとにかく先手狙いで行こうぜ!ザキもそれで良いよな?」
「当たり前だ。向こうだってそのつもりだろうよ」
お伺いを立てるバンに対して、ザキはフリッカー騎士団の方へ目配せする。
視線に気づいた騎士団は不敵な笑みを見せた。
両チーム、軽く作戦会議したのちに機体をスタート位置にセットする。
『さぁ、準備は万端だな!?そんじゃ、行くぜ!3.2.1.アクティブシュート!!』
「先手はもらったぜ!いっけええええ!!」
ビートヴィクターが前に飛び出す。
「させるかっ!エクスカリバー!!」
ガレスのエクスカリバーがビートヴィクターの道を塞ぐように真正面から立ち塞がる。
「ぶっ飛ばしてやるぜ!!」
ガッ!
2機がぶつかる瞬間。
「ジークボルグ!」
エクスカリバーの後ろへジークボルグが突っ込み、カチ上げによってエクスカリバーを弾き飛ばし、ヴィクターを乗り越えてフィールド奥へ着地した。
「げぇ!?」
「相変わらず、凄い」
「ちっ、味な真似を」
『さぁ、先攻はユーロフリッカー騎士団だ!』
「決めるぜ!ダブルインパクト!!」
エクスカリバーの刺突+バネギミックの衝撃がビートヴィクターを襲う。
「そのくらい、耐えてやるぜ!!」
バリケードで耐えようとするバンだが……。
「トライアンフアッパー!!」
「いぃ!?」
ジークボルグが横から突っ込んできてビートヴィクターを弾き飛ばす。
予想外の方向へ飛ばされてヴィクターはフリップアウト。
「しまった!」
「何やってんだバカが」
「あんなん防げるか!!」
「相変わらず、すごい連携……!」
異なるタイプのバネギミック機の連携プレイに驚愕する。
「驚いている暇はありませんよ!ロンギヌス!!」
今度はロンギヌスの遠距離攻撃がマインを弾き飛ばし、マインはダークネスディバウアとプロミネンスウェイバーにヒットした。
『さぁ、いきなりダントツウィナーズは大ダメージ!挽回はできるのか!?』
「あんな遠距離攻撃を正確に決めるなんて!」
「くそぉ……!」
「こうなったら、出し惜しみしてる場合じゃねぇな」
「よし、アレをやるぜ!」
先手の行動が終わったので、アクティブシュートで仕切り直す。
『では、仕切り直しだ!3.2.1.アクティブシュート!!』
「喰らい尽くせ!ダークネスディバウア!!!」
ダークネスディバウアがスピンしながら前に出る。
「いっけぇ!ビートヴィクター!!」
「プロミネンスウェイバー!!」
そこへ、ヴィクターとウェイバーが突っ込む。
「あの合体技か」
「へっ、甘ぇんだよ!!」
「「「フェイタルブラス……!」」」
「突っ込め!エクスカリバー!!」
ダントツウィナーズ3機が衝突する寸前、エクスカリバーが突っ込む。
「なに!?」
バーーーーーーーーーン!!!!
エクスカリバーのせいでバランスが崩れてしまい、ダントツウィナーズはお互いの衝撃で弾け飛び、場外へ放り出される。
エクスカリバーも一緒に弾き飛ばされるのだが……。
「ロンギヌス!!」
ガッ!
ロンギヌスの紐付きの弾丸に絡め取られて場外を免れていた。
『おおっと!まさか、あの合体技が破られたのか!?ダントツウィナーズは自らの技の衝撃で自滅!これによって、ビートヴィクターは撃沈だ!!』
「そんな、バカな……!」
「私達の合体技が通じない……」
「怖気付くな!だったら単体でぶっ飛ばせば良いだけだ!!」
アクティブで場外発生したので再び仕切り直し。
『3.2.1.アクティブシュート!!』
「オラァァ!!!」
頭に血の上ったザキは凄まじい勢いで突っ込む。
しかし、ユーロフリッカー騎士団はザキを完全にスルー。
3機がまとまってプロミネンスウェイバーに向かっていた。
「っ!」
バキィィィ!!
3機分の衝撃には耐えきれず、ウェイバーは弾き飛ばされ。
ディバウアも勢い余って自滅してしまった。
『決まったぁぁ!!ダントツウィナーズ、力みすぎたか!?ユーロフリッカー騎士団の見事なチームワークの前に完全敗北だ!!』
「う、嘘だろ……」
「前に戦った時よりも、ずっと強い……」
呆然とするダントツウィナーズへユーロフリッカー騎士団が語りかける。
「当たり前だろ。練習試合で本気出す奴があるかよ」
「それでも、君達の成長には期待していたんですが……ガッカリですね。一人一人は強くとも、まだまだチームとしては未熟」
「これが世界の壁と言うものだ。次こそは乗り越えてくれたまえ。じゃないと、せっかくFICSが盛り上がらないのでね」
「ぐ、ぐぐ……!」
言われっぱなしのまま、バン達は言い返せないのだった。
つづく
CM