第64話「柔と剛!極限のアジア予選決着!!」
FICSアジア大陸予選。各国が激闘を繰り広げ、ついに決勝戦となった。
これに勝った国が本戦リーグへと進むことが出来る。
『さぁ、FICSアジア大陸予選もいよいよクライマックスです!決勝戦を戦うのは、日本代表のダントツウィナーズVSインド代表のアルヤン・イシャーン!
この試合に勝ったチームが世界へと羽ばたく事になるぞ!』
フィールドの横でダントツウィナーズとアルヤンイシャーンが整列して対峙する。
「ヴィハーン!やっぱり勝ち上がってきたな!」
「この時を待っていたのでございますよ。フリックスヨガの力存分にお見せするのでございます!」
そして、両チームスタート位置につく。
「あいつのシュートは読めねぇ。下手に狙うよりも無視して遠くに進む事を考えた方が良いぜ」
「うん」
「言われるまでもねぇ」
ヴィハーンと戦った事のあるバンのアドバイスにリサとザキは頷いた。
『そんじゃ、運命の決勝戦をおっ始めるぜ!3.2.1.アクティブシュート!!』
バシュッ!!
「いけっ!ビートヴィクター!!」
「プロミネンスウェイバー!」
「ダークネスディバウア!!」
三人は相手チームを無視した上での適度な力でフィールド奥を目指す。
「ガネーシャ!」
「ラクシュミー!!」
「ラーマ!!」」
アルヤンイシャーンもそれは想定済みだったのかダントツウィナーズと干渉しないように進む。
『さぁ、最初のアクティブはお互いに避け合っている!先手レースを制するのはどっちだ!?』
全機が止まる。
一見するとウェイバーが1番進んでそうだっが……。
ガネーシャが止まる寸前に鼻先を支点にして反転する事でシュートポイントをより奥へと進ませた。
『先手レースを勝ち取ったのはヴィハーン君!アルヤンイシャーンだ!!』
「な、なんて動きだ」
「多分、フロント先端を重くグリップ力を高めて、速度が落ちた時に反転する仕掛けなんだろうけど、並大抵のテクニックじゃ扱いきれないセッティングだよ」
「味な真似を!」
「フリックスヨガはこんなものではないでございます!」
アルヤンイシャーンはシャーシの中からパーツを取り出し、リア面に取り付ける。
それは半円の形状をしたシュートポイントのようだった。
「い、一体……!」
そして、それを人差し指と中指で挟むようにし、グッと力を込めた。
「「「ヨガピンチング!!!」」」
ドシュッ!!
握力による圧出で放たれた三機は、猛烈なスピンでマインを弾き飛ばし、壁や互いの回転に反発しながら縦横無尽に動き回ってダントツウィナーズ三人をマインヒットした。
「この技は、リサのプロミネンスドリフトに似てる……!」
「フリックスヨガに不可能はないのでございます」
「今度はこっちの番だ!!」
バンとザキがそれぞれガネーシャとラクシュミーを一体ずつ場外させてやろうとシュートするが……。
「まだまだ硬いでございますね」
ヴィハーン達は腕を鞭のようにしならせて軽やかな動きでステップしこれを回避した。
「ぐっ!」
「そんな硬い動きでは見切るのは造作もない事でございます」
(このままじゃ勝てない……流れを変えないと……!)
マインも近くに無い状況。まともな攻撃は通じず、相手はプロミネンスドリフトに近い技で確実にこちらのHPを削ってくる。
リサは素早く状況を整理し、そして信じられない行動をとった。
「……」
バシュッ!
「ちょ、リサ!?」
「何考えてんだてめぇ!」
『おおっとこれは血迷ったか!?リサ君はギミックを解放した状態でシュートし、わざわざマインの近くへ移動した!これでは次のターン楽々マインヒットされてしまうぞ!』
「ほぅ……」
リサの行動にヴィハーンは密かに感心した。
「リサ、何考えてんだよ。自分からマインの近くに移動するなんて」
「こんなやり方、HPに余裕のある今しかできないから」
「なに?」
「このまま普通に攻撃を続けてたら、きっと勝てない。あの動きを封じなきゃ」
「でもどうやって」
「ごちゃごちゃするな!来るぞ!」
アルヤンイシャーンのターン。
バシュッ!!
ラクシュミーがウェイバーへ突進する。
「あ、ほら!マインヒットされる!」
ガッ!
ラクシュミーがウェイバーへぶつかるのだが……。
『プロミネンスウェイバーマインヒット!……だが、ラクシュミーは密着してしまったぁ!』
「なに!?」
しかも、マインはウェイバーが押さえ込んでいるため、他の機体でマインヒットを狙うことが出来ない。もちろん、フリップアウトを狙う火力もない。
仕方なく、ヴィハーン達は反撃を喰らわない位置へ移動するだけのシュートをした。
ダントツウィナーズのターン。
「さぁバン!私ごとラクシュミーを飛ばして!」
「え」
「密着状態ならステップは使えない!今がチャンスだよ!」
「わ、わかった!」
バシュッ、バキィィ!
リサに言われるままウェイバーとラクシュミー両方を場外へ弾き飛ばす。
『なんとぉ!リサ君は自らを犠牲にしてラクシュミーを押さえ込み、それをヴィクターが吹っ飛ばした!まさに捨て身のチームワーク!!』
「けっ、テメェの考えそうな事だ!」
バシュッ!キュルルル!!
飛ばされていくウェイバーに対してザキは投げるようにディバウアをスピンシュートさせてブーメランの如く空中旋回して回り込み、ウェイバーをフィールド内へ叩き込んだ。
『おおっと!今度はザキ君がファインプレー!場外へ飛ばされたウェイバーを空中で弾き飛ばして場内へはたき落とす!』
「こいつはついでだ!」
ガッ!
飛ばされたウェイバーはラーマの上に落とされる。
「っ!反応出来なかった……!」
予想外の素早い動きにステップが出来なかったようだ。
「ザキ、ありがとう」
「うるせぇ、てめぇも決めろ」
「うん」
そして、リサはまだシュートが出来る。
「フリップスペル発動!ブレイズバレット!!」
バシュッ!!
難なく2個マインヒットを決めて2ダメージ。ラーマは残りHP1だ。
「やった!すげぇぜ2人とも!」
「さすがでございますね。しかし、フリックスヨガに同じ手は通用しないでございますよ!」
『さぁ、アルヤンイシャーンのターン!ここからどう動く?!』
「柔よく剛を制する。力だけがパワーではないのでございます!」
バシュッ!
ヴィハーンのガネーシャがウェイバーへアタックする。とても場外へ飛ばせるほどのパワーは無いが……。
「いけっ、ラクシュミー!」
スタート位置に復帰していたラクシュミーが飛ばされているウェイバーを受け止める。
そこはフリップホールの上だった。
『おおっとこれも素晴らしいチームプレイ!味方機をブレーキにする事でプロミネンスウェイバーを穴フリップアウト!これでリサ君は撃沈だ!』
「リサ!」
「これでもうチームプレイは出来ないでございます」
そして、ラーマは安全圏へと移動してターン終了。
『さぁ、リサ君を失ってピンチのダントツウィナーズ!ここからどうする!?』
「くっそぉ、相手は3体残ってんのに」
「心配しないで。フリップスペル発動!アンデッドリメインズ!」
「アンデッドリメインズ?」
アンデッドリメインズ……撃沈された時に発動。撃沈扱いのまま機体をフィールドに戻せる。
リサはウェイバーのギミックをセットしたままラクシュミーのステップ回避を阻害するような位置にウェイバーを置いた。
「そっか、そんなスペルがあったのか!」
「バン、あの技を!」
「よっしゃ!」
バンは死体として蘇ったウェイバーへ向かって突っ込む。ウェイバーに阻害されてラクシュミーはステップでの逃げ道がない。
「「トリプルインパクト!!」」
ビートヴィクターのバネとプロミネンスウェイバーのバネギミックが同時発動し、向かい側にいたラクシュミーを弾き飛ばした。
パキィィン!
バリケードでのガードを突き抜けてラクシュミーは撃沈。
更に、バネの反動で弾かれたヴィクターがラーマと密着して停止する。
「ラッキー!ザキ、こいつを……!」
「あぁ、仕留めてやるよ」
ビートヴィクターと密着して動けないラーマへザキが攻撃を仕掛ける。
「ダークホールジェノサイド!!」
「へ?」
バキィィ!!
ザキの一撃でヴィクターもラーマも場外した。
「ば、バカ!マインヒットでよかったじゃんか!」
「そんなチマチマした攻撃できるか」
「あーもう!」
とは言え、この場外はヴィクターにとって自滅なので残りHP1で耐えている。
「ともかく、あと一人だ!このまま決めるぜ!!」
「そうはいかないでございます!」
ヴィハーンはシュートポイントを大きな板の様なものに付け替える。
「ヨガスリングショット!!」
ヴィハーンは腕全体をしならせながら鞭のようにしてシュートを放った。
その勢いはまさに超速!
シェイドディバウアを最も簡単に弾き飛ばしてしまった。しかもその先にはビートヴィクターがいる。
「ちぃぃ!」
バンとザキは同じ位置から2人でバリケードを構えて2体を守る。しかし、勢いが衰えていなかったガネーシャが更に追撃した事でディバウアのベクトルがズレてしまい、バリケードの横をすり抜けて場外してしまった。
『ヴィハーン君の必殺シュート炸裂!!どうにかビートヴィクターは守ったものの、シェイドディバウアはフリップアウト!これで1vs1だ!!』
「これがヨガの本当の力でございます」
「す、すげぇ、こんな技もあるのか……!」
「柔よく剛を制す……!しなやかさこそが真の破壊力を生むのでございます」
「うっ、俺身体硬いからなぁ……けど、だったら俺は剛よく柔を制してやる!」
バンのターン。ガネーシャはヴィクターと密着している。
「これなら逃げられない!フリップスペル発動!デスペレーションリバース!!」
自滅を無効にする必殺スペル。視界が遮られるのでステップを使われると逃げられるが、密着している状態なら関係ない!
「いっけぇぇぇ!!」
渾身の力でガネーシャをフリップアウト。
これでお互いHP1になり、1vs1の状態で場外したので仕切り直しだ。
「面白くなってきたでございますね!」
「あぁ!柔が強いか剛が強いか、決着つけようぜ!!」
2人はスタート位置に戻って構える。
『3.2.1.アクティブシュート!!』
「ヨガスリングショット!!!」
「いっけぇぇぇ!!ブースターインパクト!!」
バンは腕を思いっきり突き出しながらシュートを放った。
その勢いはヨガスリングショットにも負けず、高速でガネーシャにぶつかる。
「ぶっ飛べええええ!!」
バキィィィ!!!
『決まったぁぁぁ!!バン君の渾身の必殺技でガネーシャ撃沈!!優勝はダントツウィナーズだ!!!』
「やったぜ!!」
「まさかフリックスヨガが敗れるとは……そうか、あの技は身体が硬いおかげでブレずに腕を前に突き出せたからこそ……剛よく柔を制す。そんな事もあるのでございますね」
ヴィハーンは負けを受け入れ、そしてバンへ握手を求めた。
「見事でございました。さすがはフリックス発祥の地でございますな」
「いやぁ、まぁそれほどでもあるけどな!でも、お前らも強かったぜ!」
バンはその握手に力強く応える。
「あなた達はこれから本当に過酷な戦いが待っているでございましょう。頑張ってください!」
「あったりまえだぜ!FICS本戦も俺が優勝だ!!」
つづく
CM