第62話「決めろ!ダントツの合体技!!」
FICSアジア大陸予選大会。
ダントツウィナーズは順調に勝ち上がっていた。
「アクリルマゲターノ!」
「レイコンデンサー!」
「エテルニック=ルミネッジ!!」
煌びやかな色の三機のフリックスが迫る。
「喰らい尽くせ!ダークホールディメンション!!」
しかし、どんなに強い色もブラックホールの黒の前には敵わない。
ザキの必殺技により、三機が全て場外する。
『決まったぁ!またもザキ君の必殺技で勝利だ!!モルディブチームを下して、ダントツウィナーズ絶好調!』
「絶好調、か……」
勝利したのに浮かない顔をするリサ。
「へっ、これなら楽勝だな」
「なにが楽勝だ!また勝手に動きやがって!!」
「は?誰のおかげで勝てたと思ってんだ。文句言われる筋合いはねぇ」
「別にお前が勝手な事しなくても、ちゃんとチームプレイしてても勝てたっての!!」
「勝てるならどっちでも同じじゃねぇか」
「だからそう言う事じゃなくて!!」
「今まではいいかもしれないけど、これから先もっと強いチームと当たったら今みたいな戦い方は通用しないよ……」
「だったらその時そのやり方やりゃいい」
それだけ言うと、ザキは別のフィールドへ目を向けた。
そこでは拳弾倶楽部の試合が繰り広げられていた。
『さぁ、台湾代表の拳弾倶楽部とキルギス代表のブロッカーズの試合はまさに剣と盾の戦い!!
ブロッカーズの機体、テンタクル・ブロッカーとツインブロッカーは強固なブロックとそれを紐で繋げたアンカー機構によって巧みな防御力を発揮している!
果たして、拳弾倶楽部はこれを打ち破れるか!?それとも、ブロッカーズが守り切るか!!』
「我らの防御は完璧キル!」
「守り切ったら、アンカーの攻撃範囲でマインヒットするギス!」
完璧な構成だが、ハオラン率いる拳弾倶楽部は落ち着いていた。
「なかなかやるったい。けど、フリックス太極拳は、壁が分厚いほどその力を発揮するったい!!」
ハオランはチームメイトへ目配せすると、静かに深呼吸した。
そして、力を込めてシュートする。
「走!砕破!!」
「グラスホッパー!!」
「パンツァーフェニル!!」
三機が息の合った動きでテンタクル・ブロッカーとツインブロッカーへ直撃。衝撃が余す事なく伝わり、場外へぶっ飛ばしてしまった。
『決まった!これがフリックス太極拳の極意か!!見事な攻撃で拳弾倶楽部の勝利だ!!』
その様子を見ていたダントツウィナーズ。
「ハオランの奴、やるな」
「じゃなきゃ困る。この俺が潰すためにな……!」
……。
………。
そして、次の試合。
『さぁ、続いては日本代表のダントツウィナーズVSブータン王国チームの試合だ!
なんと、ブータン王国チームはここまでインフェリアシリーズの機体のみで勝ち上がってきている凄いチームだぞ!フリックス発祥の日本代表とどんな戦いを見せてくれるのか楽しみだね!』
「へーい!よろしくデース!」
ブータン王国チームは色黒で陽気な少年たちのチームのようだ。
「けっ、今回も楽勝だな」
「油断は禁物だよ。どんな機体であれ、ここまで勝ち上がってるんだから」
「インフェリアだけでどうやって勝ち上がったんだろ……すげぇな」
疑問はあるものの、バン達はスタート位置に機体をセットした。
『さぁ、両チーム準備はいいな?それじゃいくぜ!3.2.1.アクティブシュート!!』
「一撃で仕留めろ!ダークホールディメンション!!」
向かってくるインフェリア三機へ向かって、ザキは必殺のスピンシュートを放つ。
インフェリア三機は真っ直ぐにフィールド中央へ向かい、ダークネスディバウアへ近づいている……と思いきや。
「散開デース!」
バチーーーーン!!
インフェリア通しが密集してぶつかり、弾かれる事でディバウアを回避。
「なに!?」
しかも。
「うわああ、どけぇザキィィ!!」
「っ!」
バーーーーン!!
スピンして場に止まるディバウアへ後ろからビートヴィクターとプロミネンスウェイバーがぶつかり、二機は弾かれて場外してしまった。
『おおっと!これは巧みな戦術!ブータン王国チームは見事な散開で自滅を誘ったぁ!!』
「何すんだよザキ!」
「知るか。てめぇが突っ込んできたんだろ」
「あれがインフェリアだけで勝ち上がってきた力……二人とも、このバトルは今までみたいな力押しじゃ勝てないよ」
「そ、そうだな」
「うるせぇ」
このシュートでさすがのザキも思い知ったのか、次のアクティブシュートは普通に先手を取る。
「おらっどけぇ!!」
しかし、その後のシュートが酷かった。
ザキはヴィクターとウェイバーを強引に押し除けながらインフェリアを狙う。
「効かないデース!」
当然、そんな動きは簡単に見切られてかわされる。
「ちっ!」
「ザキ、お前いい加減に……!」
「プロミネンスドリフト!!」
バンがザキへ文句を言い切る前にリサが必殺技を放つ。
バネによるバウンドとそれによって広がった炎の翼で広範囲攻撃によるマインヒット狙いだ。
「さ、さすがにこれは厳しいデース!!」
バチンッ!!
見事にインフェリア三機をマインヒットする。
しかし、それだけでは終わらなかった。
勢いの尽きぬウェイバーは何故かシェイドティバウアへ向かっていく。
「いっけぇ!!」
「なっ、てめ!!」
バキィィィ!!
ウェイバーのバネギミックがディバウアを弾き飛ばす。
「くっ!アンデッドリバース!!」
ザキは咄嗟の判断で復帰技を発動し、スピンしながら空中で姿勢制御し、どうにか場外を免れた。
「どういうつもりだ、てめぇ!!」
当然、ザキはリサへ食ってかかるのだが、リサは毅然とした態度で言い放った。
「今のザキはダントツウィナーズの敵だよ。だから、ブータン王国チームと一緒にあなたも倒す!じゃなきゃ、私達は勝てない!」
「お、俺を倒さないと勝てないだと……!」
「チームが勝つ上で、あなたは邪魔でしかない。もし勝ち上がりたいなら、この場から消えて」
「リサ……」
いつもと違うリサの迫力に、バンもザキも押し黙った。
(この俺が、勝つ上で邪魔だと……!)
ザキは奥歯を噛み締め、拳を握りしめた。
シュン、バチンッ!!
そんな事してる間にブータン王国チームの一撃がダントツウィナーズにヒット。
全員マインヒットを喰らってしまった。
「くそ、このままじゃダメージレースで不利だ!」
「うん。けど、プロミネンスドリフトで攻めても次のターンでやられる」
「かと言って、あいつらブッ飛ばすのキツイぜ。どうすりゃ……」
「おい」
手をこまねいていると、ザキが口を開いた。
「前に見せたあの合体技、あれを使え」
「えっ。あぁ、あれか。でもかわされるんじゃ」
「……何か考えがあるんだね?」
「……勝ちたきゃやれ」
それだけ言って、ザキは口を閉じた。
バンとリサは目配せして頷き、連携の構えを取った。
「いっけぇ!ビートヴィクター!!」
「プロミネンスウェイバー!!」
ビートヴィクターが一体のインフェリアに向かう。その間にプロミネンスウェイバーがスッと割って入った。
「「トリプル……!」」
「そのくらい躱せマース!」
ユーロフリッカー騎士団との練習試合で見せた合体技、トリプルインパクトを決めようとしたが、当然かわされる。
「く、やっぱそうだよな」
しかし、いなくなったインフェリアの代わりに現れる黒い機体。
「ダークネスディバウア!?」
「ぶつかるぞ!?」
ダークネスディバウアは、まるでトリプルインパクトを迎え撃つかのようにスピンしながら突進してきた。
ガッ!!!
当然、ウェイバーを挟んでぶつかり合う三機。
その時。
「な、なんだこの衝撃は!?」
ブワァァァァ!!!!
三機を中心に凄まじい衝撃波が発生した。
「な、なんか不味いデース!逃げるデース!!」
「逃げ場などどこにも無い!」
ザキが叫ぶ。
「全てを吹き飛ばせ!フェイタルブラスター!!!」
ズバァァァァン!!!!
衝撃波により、インフェリア三体とフリップマインが全て場外へ吹き飛んだ。
『決まったぁぁ!!!ダントツウィナーズの凄まじい合体技でブータン王国チーム三体が同時フリップアウト!!よって勝者はダントツウィナーズ!!』
「か、勝った……けど、なんだ今の技」
「私とバンのバネギミックの衝撃を、ザキのスピンが抑え込む事で力の逃げ場を押さえ込まれた衝撃波が増幅して四方へ放たれた……のかな」
「威力は大した事ないが、あの程度の機体を吹き飛ばすなら十分だ」
「ザキ、お前……」
「けっ、てめぇらが勝ち上がらねぇと俺も負けちまうからな」
「へへっ、おう!これからも頑張ろうな!」
ようやくザキも協力する事を覚えてくれたのかバンは拳を突き出したが、ザキはそれを無視して踵を返した。
「とっとと戻るぞ。次の試合の準備だ」
「……なんだよ、ノリ悪いのは相変わらずかよ!」
つづく
CM