弾突バトル!フリックス・アレイ FICS 第58話「カッ飛べ送別会!千葉県横断バトルロイヤル大会!!」

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第58話「カッ飛べ送別会!千葉県横断バトルロイヤル大会!!」

 

 チームバトルの練習で自信のついたダントツウィナーズ。
 今日も遠山フリッカーズスクール特別研究室に集まって練習をしていた。

「ぶっ飛ばせ!ビートヴィクター!!」

 大きなフィールドの中でゼンマイ仕掛けで動く小型ターゲット達。
 こいつらを三人で協力して制限時間内に全てフリップアウトさせる事が成功条件だ。

「バン、ザキ、追い詰めたよ!」
 リサがプロミネンスドリフトでターゲット達を一箇所に固める。

「おう、サンキューリサ!」
「けっ、別に必要ねぇよ」
 一箇所に固まったターゲットへバンとザキが挟み撃ちするようにシュートをブチ込んだ。

「いっけーー!!!」
「おらぁぁぁ!!!」

 バーーーーン!
 二方向からの高火力攻撃を受け、ターゲット達はたまらず一気に場外してしまった。

「おっしゃぁ!クリアだ!!」
「やったね、2人とも!」
「けっ」

 成功を喜ぶ三人のところへ伊江羅博士が歩いてくる。
「合格だ。強いて言えば、ザキとバンのシュートタイミングがややズレていたが……」
「んな細かいとこまで合わせてらんねぇよ。ぶっ飛ばしたんだからいいじゃねぇか」
「まぁそうだな、許容範囲だろう。なんだかんだで、息が合うようになってきたな」
「まぁな!三人チームでも俺はダントツ一番だぜ!」
「けっ、こいつらのレベルに合わせるのもらくじゃないがな」
「なにぃ〜!!」
「ま、まぁまぁ2人とも……」

「フッ、ケンカの息も合ってるようだ。これなら一週間後のアジア大陸予選も心配はなさそうだな」
「アジア予選……いよいよ一週間後なんですね」
「そうだ。アジア各国の代表がインドに集結し、トーナメント方式でFICS本選リーグ出場チームを決定する」
「アジアかぁ、どんなフリッカーがいるのか楽しみだぜ!」
「たかが予選だ。軽く突破してやるさ」
「二人とも、私達は日本代表なんだから、それに恥じない戦いをしないと……」
 楽観的なバンとアジアを舐めているザキを宥めるリサ。そんな三人へ伊江羅博士が不敵に笑った。
「日本代表、か……フッ、甘いな」
「甘い?」
「お前達は肩書きでは日本代表でしかないが、既に全千葉を背負っているも同じだ!!」
「日本代表どころか、全千葉代表!?」
「おいおい、たかが日本代表ってだけで大袈裟じゃねぇか?」
「あ、そうか!日本代表を決めたのは千葉県の幕張……だから……!」
 リサが重要な事に気付くと伊江羅は満足気に頷いた。
「そう言う事だ。インドへ出発する前に、成田空港で全千葉県民からの壮行会がある。代表者として恥じないように気を引き締めておけ」

「おう!!」
「はい!!」
「けっ、仕方ねぇな……」

 ……。
 ………。
 そして練習も終わり、バンとリサは家に帰って夕食を取っていた。

「そうか、一週間後にインドか。いろいろ準備しとかないとな」
「準備っていっても、着替えとかくらいだろ」
「インドを舐めるなよ?トイレ行っても紙はないから手で拭かないといけないし、水道水飲もうもんならすぐ下痢しちまうぞ」
「飯食ってる時に言うなよ!!」
「それから、飛行機が墜落しないよう交通安全のお守りも必要だな……」
「縁起でもねぇな……」
「あ、でもお守りならこれが」
 リサがこの間貰った勾玉を取り出した。
「そうだよな、こいつがあれば十分だよな」
「うん、なんだかよく分からないけど、不思議な力がある気がする」
 勾玉を眺めながら、リサの表情が穏やかになる。
「俺も、ただの石だと思ってたけど、なんか落ち着くんだよなぁ。父ちゃん、こんなのどこで買ったんだ?」
「え、あ、あぁ、いや、まぁ、ははは!パワーストーンってのは不思議な力があるもんだからなっ!」
 購入先を聞くと、父は何故か露骨にはぐらかした。
 そんな父を疑問に思いながらも、それ以上は追求せずにバン達は食事を続けた。

「……」
 バン達を眺めながら、父はつい数日前の事を回想した。

 ……。
 ………。

 それは、バン達がユーロフリッカー騎士団と練習試合をする前の日の事だった。
 バン父は、仕事の接待を終えて、夜遅くに帰路についていた。

「うぅ〜、飲み過ぎた……。一応バン達には出前取っとくようには言ったけど、ちゃんと食ってるかなあいつら。……腹空かせたって騒がれても面倒だし、なんか土産買って帰るか」
 酔いでフラつく身体に鞭を打って歩いていると、目の前に青年……と言うには歳がいってるが、中年とも呼べないくらいの若者が立っていた。
「段田バンくんのお父さん、ですね?」
「んぁ、はい、そうですが……?」
「初めまして。私、こう言うものです」
 男は丁寧な仕草で身分証明書を見せつつ、名刺を取り出してバン父に渡した。
「あ、これはどうも。……なになに、『フリックス・アレイ公式競技委員会会長 遠山ゆうじ』……遠山?って、もしかして」
「リサがお世話になっております、リサの叔父の遠山ゆうじと申します」
 ゆうじと名乗った男は恭しく礼をした。
「リサちゃんの叔父さん!?あぁ、これはこれはご丁寧に!!いや、しかし、このようなみっともない格好ですみませんね、予め連絡下されば……!」
 バン父は悪足掻きにと慌てて身嗜みを整えようとするが、ゆうじはそれを制した。
「あ、いえ、今日は少々急を要する事でして」
「はぁ……」
「その、ですね。バン君とリサへ渡して欲しいものがありまして……」
 ゆうじは懐から青と赤の勾玉を取り出し、バン父へ渡した。
「こいつは」
「これは、万が一起こり得るフリックス界の危機を救うための切り札です」
「き、危機?切り札?」
 非日常な単語に、思わず聞き返す。
「なんでそんなものをあいつらに?」
「私は、かつて大きな過ちを犯しました。それ故に、それを使う資格がありません。なので、今1番力を持ち、信頼のおけるフリッカーへ預けておきたいのです」
「はぁ、まぁ、一応日本一とかあいつは言ってましたが……」
「……しかし、切り札はあくまで切り札。そんなものは使わずに済むように動くつもりです。なので、なるべくなら事情は伏せて渡して欲しいのです。彼らには何も気にせずにフリックスをして欲しい」
「あぁ……正直よくは分かりませんが、分かりました。まぁ、適当に話でっち上げときますよ」
「ありがとうございます。では、失礼します。息子さん達の世界での活躍、楽しみにしていますよ」
 ゆうじは、うやうやしく礼をするとバン父の横をすり抜けて歩いて行った。

 ……。
 ………。

「父ちゃん!父ちゃん!!」
 バンの声を聞いてハッとした。
「なんだよ」
「だからおかわりってば!」
 バンが茶碗を突き出す。
「まったく、自分でつげよな」
 文句を言いながらもバンから茶碗を受けとった。

 ………。
 そして、いよいよアジア大陸予選の舞台、インドへ出発当日。
 成田空港の特別イベントホールでバン達の壮行会が開かれていた。
 ステージの上でバトルフリッカーコウが司会を務めている。

『さぁいよいよ!我が日本、いや千葉代表の三人が世界へと旅立つ時が来た!!
今日はそんな三人の戦士を気持ちよく送り出すために全千葉県民が総出で集まってくれたぞ!!』

 ズラッと、イベントホールに無数の着ぐるみが集まる。
 そう、千葉県を代表する全ゆるキャラがここに集結していたのだ。

「ぜ、全千葉県民って……」
「そう言う意味だったんだ」

『そう、ゆるキャラこそ県民の代表!今回の壮行会では、ありとあらゆるゆるキャラ達と千葉県の名産物を使ったバトルロイヤルを行うぞ!!』

「お、おぉ、なんか凄そう……!」
「けっ、まぁ付き合ってやるか」

『それではルールを説明します!
千葉県のゆるキャラ達にはいくつかのブロックに分かれてバトルロイヤルをしてもらいます!
バトル方式はアクティブシュートバトル!アクティブシュートを行い、最も遠くへ進んだ機体に1pt!合計3pt取れば勝利だ!!』

 ルール説明も終わり、早速イベントが始まる。
 ぴーにゃんこ、Pマソ、きさボン、きみびょん、上総いずみちゃん、などなどのゆるキャラ達がそれぞれのキャラを模した機体でぶつかり合う。

『おおっと!このブロックでは、うなりた君が勝ち上がった!さすがは地元成田のゆるキャラ!
続いては、オッサんくん!市原市の意地を見せている!!
やや!習志野のナラシドレくんと鴨川シーワールドのオルカンくんの激しい激突!!
それぞれの地区を背負った激しいバトルだ!!』

「すっげぇ!さすが千葉だ!」
「なかなかやるじゃねぇか」
「なんか、見てて力をもらえるね」
 バン達も彼らゆるキャラ達の戦いを存分に楽しんでいた。

 そして、ダントツウィナーズと戦う三人のゆるキャルが決定した。

『さぁ、ダントツウィナーズと戦うのは、やはりこのキャラクター!千葉県を代表するチーバきゅん!見た感じ犬に似ているけど、不思議な生き物だ!!』

 チーバきゅんのボディが赤くなっている。本気になった証拠だ。

『続いては、荒ぶる非公認!船橋市のふなばっしー!!』

「なっしいいいいいい!!!!ぶっしゃあああああ!!!」
 ふなばっしーは梨をモチーフにしたキャラクターだ。だから梨汁を噴射しまくっている。

『最後は佐倉市!ゆるキャラ以上萌えキャラ未満のカ・ムーロちゃん!佐倉城の肖像画から特別に次元を超えてやってきたぞ!!』

「よろしくなーのじゃっ!」
 おかっぱ少女のカ・ムーロちゃんは上品に礼をする。

「あれ?」
 カ・ムーロちゃんが挨拶をした時、バンとリサの持っているお守りの勾玉が淡く光った……ような気がした。

「どうした?」
 バンとリサの様子に、ザキが尋ねる。
「い、いや」
「なんでもないよ」
「なら集中しろ。油断してこんなとこでブザマ晒してるようじゃ、インドなんかにはいけねぇからな」
「へっ、なんだかんだザキもやる気だな!」
「まぁ、やるからには、な」

『さぁ、このバトルはダントツウィナーズへのエールが篭っている!最高のバトルで送り出そうぜ!!』

 全員で揃ってスタート合図をする。

「「「3.2.1.アクティブシュート!!」」」

「おっしゃぁ!千葉県のエールをしっかり受けようぜ、ヴィクター!!」

 

    つづく

 

 

CM

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