弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第27話「セイバーギラフレア 画竜点睛への渇望」

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第27話「セイバーギラフレア 画竜点睛への渇望」

 

 バイフーを取り戻すために潁川エンタープライズへ突入し、インビンシブルソウルと激闘を繰り広げたゲンジ達。
 しかし突如神宮タツヤが乱入し、シェルロードを撃沈。ホウセン達へ解雇を言い渡した。

「さて、そろそろ青龍のフリックスをいただくとしよう」
 タツヤはセイバーギラフレアの向きをゆっくりとゲンジ達へ向けた。
「ふざけるな!フリッカーをなんだと思ってるんだ!!」
「僕達は絶対に負けない!バイフーも、シェルロードも、お前の好きにはさせない!!」
 ゲンジとケンタも迎え撃つようにシュートの構えを取った。

「「いっけーーー!!!」」
 ドンッ!!
 3人が同時にシュートし、真正面から激突する。
 当然、2体であるドラグナーとアルトロンが有利かと思われたが……。
 バゴォォ!!
 吹っ飛ばされたのはドラグナーとアルトロンの方だった。対するギラフレアは、2体を相手にしたと言うのにその場に留まっている。

「なにっ!?」
「僕達2人を相手に……!」
「ふっ、さすがはコウの設計したフリックス。だが、所詮は分割された力。ギラフレアに敵うはずがない」
「ど、どういう意味だ!」
「戦えば分かる」
 タツヤのセリフに一瞬怪訝な顔をすると、後ろからナガトの声がした。
「ゲンジ、次は俺達が行く!」
「ケラトプス!コメットブレイカー!!」
「鬼牙二連斬!!」
 バシュウウウウウ!!!
 コメットケラトプスとマイティオーガの同時攻撃。
 ガキンッ!!
 しかし、逆に弾かれたのはケラトプスとオーガの方だった。

「な、なんで攻撃した俺達が……!」
「あれか!みんな、ギラフレアのフロントをよく見るんだ!」
 サクヤがギラフレアを指さす。そのフロントには短いバネが仕込まれていた。
「シェルロードみたいな、バネが……!」
「シェルロードと違ってただバウンドするだけみたいだが、だからこそ反動も少なくてカウンターに対応できるのか」
「しかも、剛性の高いボディにグリップシャーシで完璧に機体を支えている」
「え、それって……!」
「ドラグナーのボディ、バイフーのグリップ、シェルロードのバネ……!」

 シェルロードと似たギミックを搭載している事に、ホウセンやアスカも反応した。
「ちっ、舐めた機体だぜ……」
「やたら機体スペック隠してると思ったら」

「それだけじゃないさ」
 バッ!
 ギラフレアは翼を広げて突進、ゲンジ達4人のフリックスに触れつつ、奥にあるマインに接触。多段マインヒットを決めた。
「カ、カイザーフェニックスの変形ウイングまで……!」
「四聖獣フリックスの力を内包してるだと……!」
「それじゃ、まるで……!もしかして、さっきドラグナーを分割された力って言ってたのは、まさかデザイアと!?」
「そう、お察しの通り。このセイバーギラフレアはデザイアの成り損ないだ」
「な、成り損ない……!?」
「あ、あんなに強いのに」
 ギラフレアの力に驚愕する。
「ふん。こんなもの、大木スリマが研究していたゴルドライグの足元にも及ばない」
 突如出てきた聞きなれない言葉にゲンジ達は首を傾げた。
「大木スリマ?ゴルドライグ?」
「大木スリマと言えば、俺が小さい頃に人気だったフリッチューバーでそんな奴がいたな……数年前、突然失踪したらしいが」
 サクヤが朧げな記憶を辿りながら言う。
「失踪などしていない。今も彼はダークウェブでフリックス研究の発表を続けている。その中にあった最高傑作、ゴルドライグを元にこのセイバーギラフレアを作ったのだからね。まぁ、結果はご覧の通りの失敗作だが」
 これほどの力を持ちながら失敗作とバッサリ切ってしまえるとは……。
「あれで失敗作……」
「ゴルドライグ、一体どれだけ凄いんだ……?」
 空中にゴルドライグの映像が映し出される。
 黄金のドラゴンを模した形状で、バネギミックに変形機構、ありとあらゆるギミックが詰め込まれていた。
「あれは素晴らしいフリックスだ。バトルに勝つ上で必要な要素を全て備えた、まさに最高傑作。だが、私は更にその上を目指したかった」
「最高傑作の、上……?」
「ゴルドライグは確かに優れている。が、それ故にあれを扱えるフリッカーは少ない。それこそ、神か魔王レベルの者でないとね。しかしそんなものは欠陥品だ」
「け、欠陥品……」
 そこまで言うか。
「どんなに機体性能が高くとも、その力が発揮されるかどうかがフリッカーに委ねられては意味がない。フリッカーを選ばずとも最強になれる機体こそが本物さ。だからこそ私は目指した、全てのフリッカーが持つ強さへの欲望を叶える機体『デザイア』の開発をね」
「そ、そんな理由であんなものを作ろうとしたのか!?」
「最強の追求は研究者として当然の欲求だ。そして私は、遊尽コーポレーションの力を利用する事でついに試作品の完成に漕ぎ着けた。試作品の出来は想像以上だった。テストプレイヤーとして雇った遠近リョウマのオーディンを破壊するほどにね」
「リョウマを!?」
 ナガトの中で全てが繋がった。なぜリョウマが表舞台から姿を消したのか、そしてなぜデザイア開発に協力していたのか……。
(そうか、リョウマはデザイアへ……)
 同じ立場だったら自分もそうするかもしれない、とナガトはリョウマの気持ちを汲んだ。
(それでも、俺は……)

「だが、あと一歩で完成すると言うのに、諸星キンジロウはあろう事か計画の凍結を言い渡し、データを封印した。まったく、愚かな男だ。ようやく掴みかけた最強を手放すとは、フリックスに携わる者の風上にも置けない」
「愚かなのはお前だ!そんなフリックス、最強のわけないじゃないか!!」
「なに?」
「フリックスは、フリッカーが育てるんだ!フリッカーもフリックスのおかげで成長できる!」
「あぁ、その先にあるのが真の最強だ!!」
「フリッカーの成長を促さない強さは最強にはなれない」
「僕はバイフーのおかげで強くなれた!これからだって一緒に強くなりたい!だから、絶対に取り戻さないといけないんだ!!」
 タツヤへ訴えかけるゲンジ達の言葉を側から聞いていたホウセンは神妙な顔で呟く。
「……フリックスと成長」
 そして、今シェルロードを手にしていない掌を見つめる。
「ホウセン……」
「……」

「ふ、はははは!!そんなオカルト、圧倒的な力の前には無意味なのだよ!!」
 ドンッ!!!
 再びギラフレアの猛攻が襲い掛かる。
「フォーメーションシュートで迎撃するぞ!」
「よ、よし!」
「分かった!」
「うん!」

「「「いっけええええ!!!」」」
 ガッ!!
 ゲンジ達4人は迎撃するように縦列フォーメーションで突っ込み、受け止める。
「そんなもの!!弾き飛ばせギラフレア!!」
 パワーはギラフレアの方が上なのか、押されていく。
「ぐっ!」

「トータス!」
「ケツァルトル!!」
 劣勢だったゲンジ達だが、その後ろからトータスとケツァルトルが突っ込んできて支援する。
「なに!?」
 思わぬ伏兵にタツヤはたじろいだ。
「お、お前ら、なんで……!」
「あたし達、解雇されちゃったしね。それにホウセンのシェルロード奪われたまま黙ってられないし」
「神宮タツヤ、俺達をコケにしてくれた借りは返すぞ」
「アスカ、タカトラ……」

「ちぃぃ!!」
 バキィィィ!!
 さすがに耐えきれなかったのか、ギラフレアは弾かれてしまい転倒。
「よし、ゲンジ!トドメ行くぞ!!」
「おう!!」

 ゲンジはドラグナーのシュートポイントにバウンドラバーをセットした。
「ゲンジ、ドラゴングリップインパクトを使うなら、いつもより少しリアが浮くようにシュートしてくれ。試したい事がある」
 ナガトのいきなりの提案に、ゲンジは即座に頷いた。
「あぁ!よく分からないけど、ナガトが言うなら信じるぜ」
 バシュッ!
 言われた通り、ゲンジはドラグナーのリアがやや浮くように意識してシュートした。
「いくぞ……鬼牙二連砲弾!!」
 ガッ、ギュムッ……!
 ドラグナーの浮いたリアへオーガのアッパーパーツが潜り込む。そして二連の刀が挟み込み圧力でリアラバーが変形する。

 バッッッ!!

 圧力からの元に戻ろうとする弾力によってドラグナーは急加速!目に見えないほどのスピードでギラフレアに突っ込んでぶっ飛ばした。
「よし、成功した!」
「す、すげぇ、鬼牙二連斬にこんな使い方があったなんて」
「即興でこれか。さすが神童・関ナガトだな」
 サクヤ達も感心するほどの大技を決めて、一撃でギラフレアを撃沈してしまった。

「どうだ!これでお前の負けだ!バイフーとシェルロードを返せ!!」
 勝負あり。さすがにもう隠し球はないだろうと勝利宣言するゲンジだが……。
「ふ、はっはっはっはっ!!!」
 突如タツヤは笑い出した。
「な、なんだ!?」
「気でも狂ったか?」
「いいから負けを認めてとっとと返すもの返せ!!」
 苛立ちながら詰め寄るゲンジだが、ピタリと笑いを止めたタツヤはシレッとした顔でのたまった。
「何故だ。最初からそんな約束をした覚えはない」
「なにぃ!?」
「この戦いは君達が私に四神フリックスを提供するためのもの。どのような結果であろうとそれ以外の意味はない」
「ふ、ふざけるな!そんな言い分が通るわけないだろ!!」
「そうかな?よく見るといい」
 言って、ドラグナーへ視線を移した。ゲンジ達もそれに釣られる。ドラグナーには、先程撃破したギラフレアの欠片が付着していた。返り血のようなものだろうとさほど気にしていなかったが、その欠片がまるでアメーバのようにウネウネと蠢き始めドラグナーを包み出した。
「な、なんだこれ!?」
「ギラフレアはデザイアの成り損ないと言っただろう?成り損ないと言うものは欠けているものを強く渇望している。それを満たすものが近付けばどうなるか……」
 ゴポォ……!
 アメーバと化したギラフレアの欠片は完全にドラグナーを包み込み、ドラグナーはアクチュアルモード解除してしまう。
「そ、そんな!」
「ここはAR技術を使ったアクチュアル空間。このような非現実な仕掛けも可能と言う事さ」
「くっ、迂闊だった!ドラグナーが狙われてるのは分かってたのに前線を任せるなんて……!俺が仕留めるべきだった……!」
「ナガトのせいじゃない、自分を責めるな」
「それより、アレを止めないと!」
 バシュッ!
 アルトロンとケラトプスが蠢くアメーバへ向かって飛んでいくが……。
 ドラグナーを包んだアメーバはそれよりも先にタツヤの手元へ飛んでいく。
「ふふふ、これで三機目」
「くっ!」
「では、これであなた方への用は終わりだ。私はそろそろ失礼するよ。おかえりはそちらのエレベーターからどうぞ」
 タツヤは演技かがったようにうやうやしく礼をするとフッと姿を消した。

「あ、待て!……消えた」
「いや、忍者屋敷みたいにカラクリで隠し通路を使ったんだ」
「くそッ!エレベーターに乗って追いかけるしかないか!」
 別の階にいくにはもうエレベーターしかない。しかしそれをアスカが止めた。
「やめといた方がいいわよ。多分乗ったら最後、強制的に入口に戻されるだけだから」
「そんな、じゃあどうすれば……!」
 途方に暮れていると、ズイッとホウセンが前に出た。
「ついて来い。俺は散々奴の実験に付き合わされた、研究室の場所くらいなら分かる」
「えっ、でもお前……!」
「……来ないなら俺一人で行く。あとは勝手にしやがれ」
 そう言って、ホウセンはさっさと歩き出した。
「あ、待てよ!」
 一同、ぞろぞろとホウセンに続いて歩きだした。
 部屋の奥の隠し扉から非常階段に入り、降って行く。
 特に話題もないのでしばらく黙ってホウセンの後に続いて歩いていたが、ふいにホウセンが口を開いた。

「……わりぃな、アスカ」
「え?」
「今でもデザイアは欲しいんだろ?」
 ホウセンの問いかけに、アスカは少し間を置いて答えた。
「……まぁね」
「なんなら、ここで邪魔したっていいんだぞ」
 アスカは目を瞑ってゆっくり首を振った。
「正直、今頭の中グッチャグチャよ。さっきだってタツヤにムカついて咄嗟に手が出ちゃったけど、本当はどうしたいのか分かんないし」
「そうか」
「でも、あたしはホウセンの味方。それだけは変わらないから」
「……」
 その言葉へホウセンは答えず、再び沈黙が続いた。

 そして、一同はホウセンの案内でタツヤのいる研究室の前ににたどり着いた。
 その扉は硬く閉ざされておりカードキーがないと入らないような作りだ。

「離れてろ」
 ホウセンはそう言うと、スゥと呼吸を整えてから標的を見定めて拳を叩き込む。
 ズドンッ!プシュゥゥ……。
 ホウセンの一撃でカードキーをスラッシュする部位に拳がめり込み、ゆっくりと扉が開かれた。

 そこは実験用の広いスペースと、研究開発用の機器が端に押し寄せられてひしめき合うような異質な空間だった。

「おやおや、困った客人だ。おかえり願うと言ったはずだが」
 と言いながらもタツヤの表情は余裕だ。
 まるでこの程度想定の範囲内だと言わんばかりに。
「帰れるわけないだろ!」
「なんでも自分の思う通りに行くと思うな」
「ふ、まぁちょうどいい。まだ未完成だが、成果を試すとしよう」
 タツヤは薄緑色の液体が充填されている水槽のような装置へ歩み寄った。
 その装置の中にはバイフーが入っている。

「っ!バイフー!!」
 ケンタが駆け出そうとするが、タツヤが制する。
「おっと、下手に手を出すと電撃を喰らうから気を付けてくれよ。無駄に怪我人を出されても面倒だ」
「っ!」
「この装置はギラフレアの中枢と繋げる事が出来る、そこに四神フリックスを投入すればどうなるか……特別にご覧に入れよう」
 タツヤはドラグナーとシェルロードを水槽の中に入れて蓋を閉める。
 そして、装置を起動させてギラフレアを取り出した。

 ゴゴゴゴゴ……!
 突如、その装置を中心に地響きが鳴り、怪しい赤い光がギラフレアへと注入されていく。

「な、なんだ!何が起こってるんだ!?」
「ふふふ、まだ一機足りないが、それでも凄まじい力だ……!」
 タツヤはギラフレアをスケールアップさせるシュートをした。
 しかし、その姿は元のギラフレアとは違う禍々しいものに変化していた。

「こ、これは……!」
「フリックスが、変化するなんて」
「なんて、禍々しい姿だ」
「見てるだけで圧倒される……!」

 驚愕する一同を見て満足気に笑みを浮かべ、タツヤは両手を広げて高らかに言った。

「さぁ、ショータイムだ!デザイアの力の片鱗、存分に味わっていくがいい!!」

 

    つづく

 

 

CM

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