弾突バトル!フリックス・アレイ FICS 第53話「代表は誰だ!?日本選抜戦開幕!!」

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第53話「代表は誰だ!?日本選抜戦開幕!!」

 

 フリックスアレイ国際競技連盟本部。
 その一室にバンとリサは呼ばれていた。

「よく来たのぅ、二人とも」

 小綺麗だが殺風景な室内に落ち着かなさを感じている二人の前に段治郎と伊江羅博士が現れた。

「なんだよ、いきなり呼び出したりして。また俺達に頼み事でもあるのか?」
「フッ、まぁその要件の続きみたいなもんじゃな」
「あ、それって」
 段治郎の含みのある言葉に、リサは早くも察した。
「そう、いよいよ開催が決定した。フリックスアレイ初の国際大会。フリックスインターナショナルチャンピオンシップじゃ!」

「インターナショナル……」
「チャンピオンシップ……!」
 伊江羅博士が続けて口を開く。
「略してFICS。大会形式は、各国から3人を代表として選ぶチーム戦だ」
「ふぃくす?って、どこかで聞いたような」
「あっ、あのアメリカ人が言ってた」
「ほぅ、アメリカ代表と会ったのか。それは話が早い」
「会ったって言っても一瞬だけどさ」

 伊江羅博士は構わず説明を続ける。
「大陸予選のトーナメントを勝ち抜いた五カ国のチームでリーグ戦を行い、勝ち星の多い国の優勝となる」

「随分、長期間な大会になるんですね」
「なんかプロスポーツみたいだ」
 バンが何ともなしに呟くと、段治郎は嬉しそうに頷いた。
「プロスポーツとは言い得て妙じゃ。まさに、目指しているのはそこじゃ。GFCが、高尚でありながらも誰しもにチャンスのあるアマチュアの最高峰大会とすれば、FICSは実力に覚えのある選ばれしものが国の威信を背負って戦う、より上位の舞台となる」
「より、上位の……!」
「選ばれたものがって事は、やっぱりGFCで優勝した俺やリサが日本代表って事?」

「そうじゃな、順当にいけばそうなるじゃろう」
「順当に、って?」
 遠回しな言い方に、二人は首を傾げると伊江羅博士が説明した。
「日本代表の三人は当然腕に覚えのある人間が選ばれる。となれば、全国大会で上位を勝ち取った段田バン、遠山リサ、そして同率3位のザキか武山剛志のどちらかが代表に選ばれるのは道理だ」
「実績があるのは、そうだよね」
「とは言え、それはあくまでGFCでの戦績。FICS出場を前提とした実績はまだ誰も持っていない」
「なんせ第一回大会じゃからな」
「そこで後日、GFCとは違うFICS日本代表選手を選抜するための全国大会を開く事になった」
「つまり、そこで負けたらGFCの成績関係なく、代表には選ばれないって事?」
「へん、上等じゃねぇか!本当にダントツならどの大会でも勝って当たり前だからな!!」
 バンが自信満々に言うと段治郎は嬉しそうに笑った。
「フォッフォッフォッ!お前さんならそう言うと思ったわ!」
「とは言え、GFCのトップ4は予選免除、トーナメントも潰し合わないようブロックは別れるようになる」
 さすがにある程度は優遇されるようだ。
「そっか、それで順当にいけば私達がそのまま選ばれるって」
「あぁ、GFCの結果が本当に実力によるものならな?」
 伊江羅博士が挑発するように言った。
「決まってんだろ!日本選抜戦でも俺がダントツ一番だ!!」

 ……。
 ………。

 数日後。
 フリップゴッドであり、FICSの特別名誉会長に選ばれた遠山ゆうじは資料チェックしていた。
「……しかし、父さんの手腕は相変わらずだな。これなら別に僕いなくても良いような気がするんだが」
 あくまで全体を取り仕切る総理大臣が遠山段治郎であり、フリップゴッドは象徴的存在、言ってみれば皇族のようなものなのだろう。
 ゆうじの実質的な仕事は殆どなく、やる事と言えば他の人の仕事のチェックと決定のみである。
 とは言え、それもなかなかな量があり決して楽とは言えないのだが……。
 そんな時、備え付けの電話が鳴った。
 ここ最近、あらゆる方面からの連絡事項で電話は頻繁になる。
 今回もそんな感じだろうと軽い気持ちで受話器を取り業務口調で声を発そうとしたゆうじだが、電話先の声を聞いてその口調に熱が籠った。

「お久しぶりです。ゆうじさん」
「……その声は、まさかマエリア神父!?その節はお世話になりました……!」
 それは、かつて犯した過ちを懺悔するために訪れたギリシャの教会。その神父であるマエリアのものだった。
 あらゆる罪を赦し、浄化し、更生させて来たその男の声音は電話越しからでも心地が良い。
 マエリアはFICS開催を祝い、そして二人は二言三言談笑を交えた。

「しかし、今日はどうしてまた」
 ただ世間話をするためにわざわざ電話をかけて来たわけではないだろうと、ゆうじは少し真剣な口調で尋ねると、マエリア神父は声を潜めた。
「……少々厄介な事態になりまして」
「厄介?」
「長年、教会で懺悔を続けていたフクベさんが……失踪したのです」
「なんですって……?」
「しかも、厳重に保管していた邪宝石も何者かに盗まれてしまって……恐らく……」
「邪宝石……懺悔した人々のマイナスの念を封じているアレが、まさかフクベの手に……!?」
「すみません、私の監督不行届でした」
「いえ、マエリア神父のせいではありません。……僕が表に出た事で奴を刺激したんだ」
「……今はお互い自分を責めるのはやめましょう。それよりも、前に護身用にと渡した浄化玉はまだ所持していますか?」
「……えぇ」
「よかった。万が一の時は、それを……」
「しかしあれは、人の尊厳を否定しかねない。僕に使う資格は……」
「……私の方でも万が一が起こらないように、そして起こったとしてもすぐに収束できるように手を尽くします。ゆうじさん、あなたはもう十分に懺悔をした。どうか何があっても、ご自身の活動は」
「分かっています。僕はもう、自身の過ちに屈したりはしません。マエリア神父、あなたの教えは決して間違っていないと、この大会で証明してみせます」
「はい。楽しみにしています」

 ガシャリ……と静かに受話器を下ろした。

「……こうなる事は分かっていた。今必要なのは罰ではなく、精算だ」
 ゆうじは決意を新たにし、取り出した赤と青の勾玉を見つめた。

……。
………。

 そして、数週間後。
 千葉県、幕張メッセ。
 数多くのフリッカーが集結し、それをバトルフリッカーコウがまとめていた。
『さぁ、いよいよ!フリックスアレイ史上初の世界大会!【フリックスアレイインターナショナルチャンピオンシップ】が開催されるゾォ!!!
まずはここ!日本の中心千葉県で、日本代表決定戦を行う!!!
全国から集まってきたフリッカーのみんな!気張っていけよぉ!!!』

 開会式も恙無く終わり、大会の説明になる。

『今大会では、予選を突破した192名のフリッカー達が集まっている!それを3ブロックに分けてトーナメントを行い、それぞれのブロックでトップになったフリッカー三人が代表として選ばれる!誰がどこのブロックへ行くかはランダムだが、GFC優勝の段田バン君はAブロック、準優勝の遠山リサ君はBブロック、同率3位の伊江羅ザキ君と武山剛志君はそれぞれCブロックの最初と最後にエントリーし、途中でぶつからなようにしている!GFCで好成績を残した事による特典だが、もちろん絶対ではない!GFCで結果を残せなかったものも、ここで下剋上して日本代表を勝ち取る事は十分に可能だぞ!!』

 まだチャンスがあると言うことを提示されてフリッカー達は盛り上がる。

 そして、いよいよ大会スタート。
 Aブロックのバンの試合となる。

『さぁ、最初の試合は今大会の最有力候補!GFC優勝者でもある段田バン君だ!対するは、フリッカーチーム【ギルティーズ】に所属している日巻タイチ君!』

「おっしゃぁ!景気良く決めてやるぜ!!」
 元気よくステージに立つバンに対し、相手のタイチは眠そうな顔で欠伸をした。
「ふぁ〜あ……」
「おろっ……やる気あんのかてめー!!」
「めんどうだけどあるよぉ〜」
「だぁぁ、力抜ける奴だなぁ!」
 タイチのやる気のなさにイライラするバンだが、それを観戦エリアで見ているリサが嗜める。

「バン!気を引き締めて!相手がどんな態度でも予選を突破した強敵には違いないから!」
 リサの言葉に、バンはしっかりと返した。
「ああ、分かってるよ!」

『それではそろそろ開始するぞ!』

 バンとタイチがシュートの構えを取る。

『3.2.1.アクティブシュート!!』

「いっけえええ!!!」
 バンの気合いの籠ったシュートがタイチの白いフリックスへ向かう。
「スロウスエッジ、受け流せ」
 スッ……!
 スロウスエッジは掬い上げ形状のサイドカウルでヴィクターの突進を受け流し、そのまま場外へと放り出した。

『おおっと!いきなりバン君自滅!力み過ぎたか!?』

「げぇ!」
 自滅。いきなり残りHP2になった。
「あのサイド……受け流すようになってんのか」
「僕の刃はナマクラじゃないよ」
「おもしれぇ!」

 バンとタイチは再び機体をセットする。

『さぁ、仕切り直しだ!3.2.1.アクティブシュート!!』

「今度は真正面からブチかませ!!ビートインパクト!!」
「スロウスソード!」

 バチンッ!!
 ビートヴィクターとスロウスエッジが真正面から激突!
 その瞬間、互いのバネギミックが発動して弾かれた。

「なっ、その機体もバンキッシュと同じバネ蓄勢ギミックが……!」
「ナマクラじゃないって言っただろ」

 ガッ、ガッ!
 両機ともに横転しながら飛ばされていくも、ヴィクターはギリギリで耐えてスロウスエッジは場外した。

『今度はスロウスエッジが自滅!これでHPはタイだ!まだまだ分からないぞ!!』

「あっ」
「へん、パワーなら負けないぜ!!」

 再び仕切り直しアクティブ。
「いけっ!ヴィクター!!」
 バシュッ!ガンッ!!
 今度はどちらも飛ばされずにヴィクターが先手を取った。
「これで決めるぜ!ビートヴィクター!!」
「受け流せ、スロウスエッジ!」
 ギミックを解放した状態で突っ込むビートヴィクターは、上手くスロウスエッジを掬い上げ、そして弾き飛ばした。

『フリップアウト!!見事に決まりました!勝者は段田バン君です!』

「あっ」
「へへーん!ビートヴィクターはギミックを解放して撃った方が掬い上げしやすくなるんだぜ!!」
 どんな受け流し機体も掬い上げられてはどうしようもない。
「あー、やっぱりGFC優勝者は凄いや〜」
「いや、お前も強かったぜ。GFCに優勝してもまだまだ目指せるダントツがあるってよく分かった!」
 今回の戦いで、より一層更なる強さへの道を感じるバンだった。

 そして、試合は進んでいく。

「押し出せ!ホイールドーザ!!
「耐えろ、トウヤクビン!」

「回れ!ギーロ!!」
「電ブル!運び出せ!!」

「TOKKAN!!」
「オクトス!!」

「イージーライダー!」
「シーニーストレラ!!」

「アスピドケロン!」
「ダークマター!!」

「ほたて丸!」
「サンダーバード!」

 ありとあらゆる機体を使ったフリッカー達が鎬を削る。
 面白いのが、GFCの時と比べて各フリッカーの使う機体の技術レベルが上がっているのか、さまざまなギミック機体が増えている。

「プロミネンスウェイバー!プロミネンスドリフト!!」
「アポピス!!くっ、躱せない……!」

「噛みつけ!ダイル一号!!」
「効かん!復活したカラミティデスガランの力を見よ!!」

「まさかカブヤと戦う事になると思わなかったクワ!」
「俺もだカブ!けどクワトには負けないカブ!いけっ、フリップビートル!」
「フリップスタッグ!!」

「いっけぇ!タイダルボア!!」

「やるんだな!ベノムエロシオン!!」

「待ちに待った舞台だ!いくぞ、サミン!!」

「砕け!グランドギガ!!」

「負けるな!ファントムレイダー!!」

「いきなりお前が相手か、ユウ」
「ザキ様、僕は全力で戦います!いけっ、シュレッドサタン!!」
「それでいい。ブチ砕け!ダークネスディバウア!!」

 お馴染みのキャラや懐かしのキャラ達もどんどん戦い、勝ち抜いている。

 果たして、日本代表に選ばれるのは……!

 

    つづく

 

 

CM

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