弾突バトル!フリックス・アレイ FICS 第52話「フリックス新時代!目指せFICS!!」

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第52話「フリックス新時代!目指せFICS!!」

 

 フリップゴッドの捜索を終えてから数週間後。バン達は日常に戻り、ゴトーマガリカドーのフリックス大会に出場していた。

「いっけぇ!ビートヴィクター!!」

 バキィ!!
 バンのビートヴィクターがモブの機体をあっさりとフリップアウトさせる。

「おっしゃあ!やっぱり俺がダントツ1番!!」

 別のテーブルではリサが戦っている。
「プロミネンスウェイバー!!」
 カンッ!
 マインヒットで難なく勝利。

『さぁ、久しぶりに開催されたゴトーマガリカドーフリックス大会!なんと、GFC優勝者の段田バンくんと、準優勝の遠山リサくんも参加して大盛り上がりです!!』

 全国大会トップツーの二人が参加してるもんだから、特に何の波乱もなく当たり前のようにバンとリサは勝ち上がっていく。
 それでもトップフリッカーと戦えるという滅多とない機会に、皆沸き立っていた。

 そして、予定調和の如くバンとリサが決勝まで勝ち上がった。

『さぁ、ついに決勝戦!対戦カードは、第一回グレートフリックスカップで伝説的な戦いを見せてくれたこの二人!段田バンくんと遠山リサくんだ!!今回も新たな伝説が生まれるというのだろうか!?』

 こんなデパート屋上大会で伝説も何もないだろうが、それでも対戦カードが対戦カードである。
 それに……。

「へへっ、なんか久しぶりだな、リサ!」
「うん、私達が初めて戦ったのもここの決勝だったもんね」
「今度は負けないぜ!」
「今回も私が勝つよ!」
 ある意味、どんな大会よりも決戦の場に相応しいこの舞台。
 規模の大きさとは無関係に注目度は高かった。
 バンとリサは互いに健闘を誓い合いながらステージへ上がろうとした。

 しかし、そこでバトルフリッカーコウから意外な言葉が出てきた。

『え、あ、はぁ?予定変更……って、いきなりですか!?』

 何やらスタッフからの伝達を受けたバトルフリッカーは素っ頓狂な声を上げた。
 そして、一息つくと再びマイクを手に会場へアナウンスする。

『えー、決勝戦ですが。本来はこれまで通りアクティブバトルで試合を行う予定でしたが。しかし、決勝の場に上がったバンくんとリサくんと言う特別な対戦カードを受けて、急遽予定を変更するよう大会メインスポンサーである遠山段治郎様からの連絡が入りました!』

「え?」
「遠山のじいさんが?」
 急なアナウンスにバンとリサは怪訝な顔をする。

『決勝戦は、これまでのアクティブバトルを更に進化させ、より競技性と戦闘性を高めたルール……その名も【上級アクティブバトル】で執り行います!!』

「じょ、上級……」
「アクティブバトル……!」

 聞いた事のないそのルール名にバンとリサは互いの顔を見合わせた。

『では今からルールブックを選手の二人と観客の皆様へお配りします。
決勝開始は30分後、それまでステージのモニターではルール説明のビデオを流しますので選手も観客の皆様もしっかりと把握された上で決勝戦をお楽しみください!』

 思わぬタイミングで休憩時間となってしまい、バンとリサはルールブックを持ってオサムやマナブの待機している所へ向かった。

「いやぁ、ただの店舗大会がなんか思わぬ展開になったな」
「でも新ルールなんて面白そうだな!」
 戻ってきたバンとリサへ、オサムとマナブが気さくに話し掛ける。
 二人は既に配布されたルールブックを持っていた。
「でも、まさか決勝戦でいきなりルール変更するなんて」
「いいじゃねぇか!上級だろうが高級だろうが、俺がダントツ1番だ!」
「そんな事言って、バンはルール理解できるの?」
「え、あ、いやぁ……そりゃもうこいつを見りゃすぐ分かんだろ!」
 バンは雑にルールブックを開くが、すぐに渋い顔をした。
「ぐ、ぐぐぐ……!」
「……分かった?」
「あ、ああ!!ようするに、これまでのアクティブバトルより上級って事だろ!!!日本一になった俺にピッタリのルールだぜ!」
「……絶対分かってないでしょ」
 リサがジト目になる。
「ははは、ようはHPの上限を増やす事によって、ダメージ判定を細かくしたって事だよね」
 既にある程度ルールを読み込んでいたマナブが言うとリサも頷いた。
「うん。戦略性はかなり深いと思う。けど、今までよりも気が抜けない戦いになりそう」
「……どう言う事?」
「HPが増えたの?」
 バンとオサムはまだ理解出来ていない。
「……つまり、HPが今までの5倍の15に増えてて、マインヒットとかのダメージ数が細かくなってるんだ。
これまではマインヒットも自滅も同じダメージだったのが、上級だとマインヒットは3ダメージ、自滅は2ダメージって具合に」
「そっか、HP3のままだったらそんな事出来ないもんな」
「フリップアウトも細かくなってて、一部だけの場外は5、本体全部場外したら6ダメージ」
「普通のフリップアウトとすげぇフリップアウトがあるって事か!」
 このような具合で、マナブとリサの解説のおかげでバンもようやくルールを理解出来た。
 そして、いよいよ決勝戦だ。

『さぁ、お待たせしました!史上初の上級アクティブバトルでの試合となった決勝戦!いよいよ始めるぜぇ!!』

 バンとリサが対峙する。

『上級アクティブは、これまでよりも過酷なバトルとなるため選手は特殊な光学アーマーをセットします』

「うわわ、なんだ!?」

 上空から降りてきたドローンがバンとリサにレーザーを照射する。
 不可視ではあるが、これでアーマーが装着されたらしい。

「よーし、ルールはバッチリだ!一撃で決めてやる!!」
「……ほんとに理解出来たのかな」

 そんなバンとリサの様子を観戦エリアの隅で3人の少年が意味深な表情で眺めていた。
「……あれが、ジャパンチャンピオンか」
「データ収集を開始します」
「5G接続完了、通信速度正常。収集次第即本部へ転送可能」
 3人とも怪しげなゴーグルをつけており、耳元にある通信器具で何かしらのやり取りをしているようだったが。
 会場の人間たちは皆バンとリサに注目してるので全く気にしていないようだった。

『さて、会場のみんなもルールはバッチリかな?それではいくぞ!』

 バンとリサはマインをセットして機体を構えた。

『3.2.1.アクティブシュート!!』

「いっけぇ!!ビートヴィクター!!!」
 バンは力一杯シュートしてプロミネンスウェイバーへ正面衝突を仕掛けようとする。
「躱して!プロミネンスウェイバー!!」
 が、その軌道を呼んだリサはすんなりとそれを回避した。ヴィクターは勢い余って自滅する。

『ビートヴィクター自滅!いきなり2ダメージた!残りHP13!』

「あっ、くそぉ!」
「バン、いきなりダイレクトヒット狙ったでしょ」
「な、なんでバレた!?」
「やっぱり……あれは滅多に決まらないと思うから無闇に狙わない方がいいよ」
 ダイレクトヒット、飛ばした敵機を相手の身体にぶつけたら一気に15ダメージという即死攻撃だが、よほど力の差がないと通用しない大技だ。
 実力が拮抗してる相手に狙うものではない。
「ちぇ、決まったら面白いと思ったのに」
 これまでのフリックスバトルではアクシデント以外で不可能だった『一撃KO.』と言うものを試してみたかったらしいが、難易度の高さを痛感して諦めた。
「でも自滅のダメージ減ったのはありがたいぜ」
「うん、積極的に攻められるね」

 そして仕切り直しアクティブ。

『3.2.1.アクティブシュート!!』

 バシュッ!!
 今度は流石にダイレクトヒットは狙わずにバンはスピンシュートした。そして、リサはバンの攻撃を躱して先手を取った。

『さぁ、アクティブシュートではリサくんが優勢なのは変わらずか!?プロミネンスウェイバー先攻だ!』

「さすがだぜ、リサ!でも、攻撃はさせないぜ!」
 バンがフィールドを自信満々に指差す。
 そこにはマインが一切なかった。アクティブシュート時にスピンした事でマインを全て薙ぎ払ったのだ。
「考えるようになったね、バン」
 穴を狙えるような立ち位置でもないし、これではウェイバーの攻撃手段がない。
「へん、俺だってこのくらい余裕だぜ!」
「でも、読みこみが足りないよ!」
「なに!?」
 バシュッ!ガキンッ!!
 ウェイバーの攻撃がヒットし、バウンドして離れる。
「そんな攻撃、バリケード構えるまでもないぜ!」
 当然、防ぐまでもなく場外には届かないのだが……。

『ビートヒットで1ダメージ!ヴィクター残りHP12だ!』

「あ、そうか!ぶつかるだけでもダメージ入るのか!?」
「上級アクティブは、攻撃が通じる場面が増えたんだよ!」
 そう言いながら、リサはマインをヴィクターの後ろにセットした。

「けっ!そんなはしたダメージなんかくれてやる!俺は一気に決めるぜ!!」

 バギィィィ!!
 ビートヴィクターの一撃が決まり、プロミネンスウェイバーはたまらずすっ飛んだ。

「っ!」
 バゴォォォォ!パリンッ!!
 どうにか耐えるも、バリケードを2枚破壊されてしまった。

『ビートヒット!プロミネンスウェイバー残りHP14!』

「さ、さすがバン……あたりどころが悪かったらフリップアウトされてた」
「ちぇ、でもバリケード破壊したぜ!次で決めてやる!」
 バンがマインをウェイバーの後ろにセットし、リサのターンへ。
「ここは……バリケード回収」
 リサはターンを飛ばして破壊されたバリケード1枚回収した。
「攻めないのか」
「バン相手にバリケード無しで戦う方が怖いからね」
 リサはあくまで冷静だ。
「だったら遠慮なく攻めてやるぜ!!」
 バシュッ!
 シームレスでバンがシュートする。
 リサはステップで重心を外して受けるが、後ろにあるマインに当たってしまった。

『隙を逃さないバン君の容赦ない連続攻撃!マインヒットでウェイバーのHPは11だ!』

「これなら!」
 しかし、リサも負けていない。
 フィールドにマインがあるのなら得意の機動力とテクニックで遠距離マインヒットが可能だ。

『やったらやりかえす!リサくんもマインヒットで、ヴィクターは残り9!』

「負けるかぁぁ!!!」
 体制を立て直してシュート、ウェイバーにぶつかり、そのまま壁に激突させる。
「ウェイバー!!」
 ガンッ!
 壁にぶつかったウェイバーは跳ね上がり、ヴィクターに被さるように停止した。
「くっ!」

『これは上手い!ヴィクターの攻撃を受けたウェイバーは壁に弾かれてヴィクターと密着!これではビートヒット成立せず!!』

「ビートヒットは当ててから離れないといけないんだった……!」
「フリップスペル!ブレイズバレット!!」
 既に密着した状態からマインヒットするのは猫でも出来るほど容易だ。そんな状態からリサは容赦なく必殺のスペルを発動する。
 このままマイン二つに当たればマインダメージが2倍になる。
「プロミネンスドリフト!!」
 もちろん当たり前のように難なくスペル成功。

『ブレイズバレット炸裂!!マインヒットダメージが2倍となって6ダメージ!ビートヴィクター残り3!さぁ、追い詰められてきたぞバンくん!!』

「くっ!負けてたまるかぁぁ!!!」
 バンはヴィクターのバネギミックをチャージしてシュートした。

「ビートインパクト!!!」
「っ!」

 バキィィィ!!!
 気合いのこもったシュートにさすがのリサも反応出来ず、プロミネンスウェイバーは場外まですっ飛んだ。

『フリップアウト!!本体全てが場外したので6ダメージ!残りHP5だ!バン君も追い付いてきたぞ!!』

 次はリサのターンだが、リサは場外している。場外しているフリッカーのターンが来たらアクティブシュートになる。

 バンHP3 リサHP5。
 まだまだ勝負は分からない。

(あと1回マインヒット喰らったら負ける。絶対に先手は譲れねぇ!)

 バンの手に力が籠る。

 その様子を見ている謎のゴーグル少年達。
「……段田バン、心拍数上昇。右手に発汗を確認。シュート精度低下の可能性あり」
「このバトル、遠山リサの勝利する確率が高いですね」
「いや、まだ不確定要素が多い」

 そして、皆が見守る中仕切り直しアクティブが始まる。

『3.2.1.アクティブシュート!!』

「いっけぇ!ビートヴィクター!!」
「狙いが浅い……!」
 バンのシュートは先手を取るための置きにいってるようなシュートで勢いが足りない。
 そこへ、リサはスピンでウェイバーのサイドをヴィクターのサイドへぶつけてバネギミックで弾き、穴の上に停止させた。

『ビートヴィクター自滅!これで残りHP1だ!!これは、本格的に後がないぞ段田バンくん!!』

「ぐっ!」
 正真正銘のピンチにバンの顔が歪む。
「バン」
 そんなバンへ、リサは叱るとも嗜めるとも付かないような表情で見つめてきた。
「リサ……!」
 その表情を見て、バンは察する。
(そうだ、俺何やってんだ。負けないために先手取るなんて、そんな事してる暇があったら……!)

 そして再び仕切り直しアクティブだ。

『3.2.1.アクティブシュート!!』

「勝つためにぶっ飛ばした方が手っ取り早いじゃねぇか!!!」
 思い切りの良いバンのシュート。
「速い!?」
 速度の乗った一撃を真正面から喰らってウェイバーはぶっ飛ばされてしまう。
 ヴィクターは場内にとどまった。

『おおっと、これは!アクティブシュートで接触し、相手機本体だけを完全に場外させた場合はアクティブアウトで4ダメージ!これでリサ君の残りHPは1!ここに来て並んだぁ!まだまだ勝負は分からない!!』

「おっしゃ!次で決めるぜ!!」
「やるね、バン!でも私も負けない!!」

『そんじゃ行くぞ!3.2.1.アクティブシュート!!』

「飛ばせ!ビートヴィクター!!」
「負けるな!プロミネンスウェイバー!!」

 二人は想いを込めたシュートを放った。
 ストレートに突っ込むビートヴィクターとスピンしながら向かってくるプロミネンスウェイバーがまともに激突。

 ッパーーーーン!!
 お互いのバネギミックが発動し合い、その勢いでお互い場外へと放り出されてしまった。

『おおっと!これは同時場外!上級アクティブにおいての同時場外はお互いに自滅ダメージを受けるので……この勝負、ドローだぁぁぁ!!!!』

「ド、ドロー……?」

『従来のフリックスアレイではルール上起こり得なかったドローが、今のこの場で発生!まさしく歴史的瞬間だ!!』

 決着は付かなかったとは言え、それでも満足し納得が出来るほどのバトルを見せたからかドローでも、いやドローだからこそ大盛り上がりで歓声が沸き立った。

『ゴトーマガリカドー大会優勝は段田バン君と遠山リサ君の2名に決定!!ダブル優勝おめでとう!!!』

 ……。
 ………。
 千葉のとある一等地に聳え立つ巨大ビル。
 それはフリックスアレイ国際競技連盟の本拠地であった。
 そこの一室で、遠山段治郎と伊江羅博士がモニターを見ながら話をしている。

「大会決勝での上級アクティブバトル……なかなか盛り上がったようじゃの。規模は小さいが、あの二人が参戦してるとなればネームバリューは十分じゃ」
「えぇ。……しかし、まさかこのようなルールを温めていたとは」
「我が息子ながら恐ろしい奴じゃ。さすがはゴッドと呼ばれるだけはある。
伊江羅、SNSでの反応はどうじゃ?」
「配信後のアンケート結果はこのようになっています」
 モニターにアンケート結果が映し出される。
 上級アクティブバトルについて、【良かった】に票を入れたのは80%を超えていた。

「ほう、想定以上に高評価じゃな」
 満足気に頷く段治郎。
「しかし、実際にやってみたいかと言うアンケートでは」

 【難しそう】や【従来の方が良い】と言う結果が合計で70%を超えていた。

「ふむ……」
「やはり、ハードルが高いと感じる層は多いようですね」
「となれば、このルールは一般に浸透させるよりも、GFCをも超えたより上位の舞台の、それも特別な場で行うものという位置付けが妥当じゃろうか」
「より上位の舞台、ですか」
「そうじゃ!いよいよ切り開かれるぞ!フリックス新時代の幕開けじゃ!!」
 大袈裟に腕を広げて宣言する段治郎を見て伊江羅は頷き、重々しく呟く。
「……フリックスインターナショナルチャンピオンシップ」

 ……。
 ………。

 大会も終わりバン達は夕日を浴びながら帰路についていた。
 陽の光を赤く反射する水面を眺めながら河川敷を歩く。

「いやぁ、それにしても凄かったなぁ決勝戦の上級アクティブ!」
「うん、なんかゲームとか競技とかの枠を越えて『真剣勝負』って感じのルールだったね」
「だな!けど、見てる分には良いけど、実際やるってなると難しそうだなぁ」
「そんな事ないよ。やってみたら意外と簡単だよ」
「そりゃリサちゃんはGFCでも準優勝だったから……って、バンさっきから黙っててどうしたんだよ?」
 話に加わらず無言で俯いているバンにオサムが話しかけた。
「……やっぱり納得いかねぇ!!」
「え?」
「リサ!決着付けようぜ!やっぱドローじゃ終われねぇよ!!」
「何言ってんだよ。引き分けでもすげぇバトルだったんだからいいじゃねぇか」
「むしろ、それだけ拮抗した試合が見られて僕らは満足なんだけど」
「俺は満足しねぇ!!!リサ、良いだろ!?」
「う、うん、けどどこで……」

 ここら辺にフィールドはない。
 どこでどうやってバトルすると言うのか。

「ええっと、確かここって前に操と戦った事ある場所だから、あそこら辺に……あった!」
 バンは平な石を見つける。
 且つて鷺沢操と野生のオフロードバトルをした場所だ。

「これ使ってやろうぜ!」
「天然のフィールド……」
「おっ、懐かしいな!いいじゃん!」
「おっしゃ!決勝戦の続きだ!」

 バンとリサは石の上に機体とマインをセットした。

「いっくぜぇ!!」

「「3.2.1.アクティブシュート!!」」

 バシュッ!!!
 フィールド端から中央へ向かってカッ跳ぶ二機のフリックス。
「Go!サイバネティックアバター!」
 そこへ、どこからともなく謎の機体が乱入してきた。
 いかにも最先端技術の詰まったメカニカルな見た目をしている。

「な、なんだぁ!?」
「見た事ないフリックスだ……!」

 バキィ!!
 虚を突かれ、ビートヴィクターが弾き飛ばされる。
「ヴィクター!!」
 ギュワッ!!
 更に、その機体は急激に方向転換して速度の落ちたウェイバーへ激突し、弾き飛ばした。

「なんだ、この動き!?」
「フリックスにこんな動きが出来るなんて!?」

 バッ!!
 そのままの勢いで謎の機体はフィールドを飛び出し、持ち主であろう人物の手元へ戻った。

「だ、誰だお前ら!!」
 謎の機体をシュートしたのは、先程大会を密かに見物していた3人のゴーグル少年だった。

「ナイストゥミーツユー」
 少年達は、ゴーグルを外す。
 そこには、金髪に青い眼が特徴の堀の深い顔が現れた。

「が、外国人……?」
「我々はアメリカンフリッカー、TSインテリジェンス。リーダーのデイビット」
「アメリカの、フリッカー……?」
「なんでアメリカ人が」

「ジャパニーズチャンピオン。良いデータを取らせてもらった。これはその礼だ」
「礼?」
 デイビットの言葉の意味を察かねていると、インテリジェンスの3人は踵を返してしまう。
「あ、待てよ!せっかく来たんだからバトルしてけよ!」
 遥々アメリカから来てくれて、あんな面白そうな機体までチラ見せして来たくせにバトルせずにさよならは勿体無いとバンは呼び止めた。
「……まだ戦う時ではない。FICSで会おう」
 それだけ言うと、今度こそ歩いて行ってしまった。

「ふぃくす……?」
 聞いた事がない単語にバンは首を傾げるを
「あの機体、凄いテクノロジーだった……世界には、まだあんなフリッカーがいるんだね……」
「世界、か……」

 未知なる機体との遭遇に、バン達は新たなる戦いの予感を胸に抱くのだった。

 

     つづく

 

 

 

CM

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