弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第6話「決勝激突!ワンサイドウルブズ!」

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第6話「決勝激突!ワンサイドウルブズ!」

 

 グレートフリックスカップ関東予選もいよいよ大詰め。
 ゲンジは初出場ながら愛機のライジングドラグナーを駆使してどうにか決勝戦に駒を進める事が出来た。
 決勝相手は、去年ナガトと死闘を繰り広げたと言う甲賀アツシ……。
 その事もあってか、緊張感を高めるゲンジは、ふと昨日の事を思い出していた。

 グレートフリックスカップ関東予選の前日。
 ゲンジはツバサとユウスケを引き連れてナガトのお見舞いに来ていた。

「よっ、ナガト。調子はどうだ?」

 ベッドの上で退屈そうに窓の外を見ていたナガトは、ゲンジに声をかけられると少し嬉しそうに顔を向けた。

「あぁ、ゲンジにユウスケに……君は、初めまして、かな?なんだ、今日は随分と賑やかじゃないか」

 ナガトはゲンジだけじゃなく、ユウスケや初対面のツバサの姿も見て意外そうに言った。

「こいつは、この前うちのクラスに転校してきた張本ツバサ。俺達の新しいフリッカー仲間だ」
「ツバサや、よろしゅうな!」
「あぁ、君が。ゲンジから話は聞いてるよ。俺は……」
「知っとる知っとる!関ナガトやろ!」

 食い気味なツバサに、ナガトはちょっと身を引いた。

「え、あぁ」
「いやぁ、それにしてもあのフリックス界の神童・関ナガトと同じクラスやったなんて感激やなぁ!!」

 ツバサは顔を綻ばせながらナガトの怪我してない方の手を握った。

「ははは、神童はよしてくれよ」
「謙遜しなさんな!去年の大会もテレビで観たでぇ!!あの華麗なフリックス捌き!しかも愛機を自分で作ったっちゅうから驚きや!あれ観てウチもこのウイングワイバーンを作り上げたんやからな!!」

 ツバサは早口で語り、ナガトにウイングワイバーンを見せた。

「ははは、それは光栄だな。このフリックスも良く出来てる、機動力と攻撃範囲を両立させたマインヒット型か」
「あぁ、あのナガトにうちの機体を見てもらうなんて……感激や!!」
「感動しすぎだろ……」

 うっとりとするツバサにゲンジは少し呆れた顔をした。

「あはは……それにしてもナガトくん、怪我が大した事なくて良かったよね。引っ越しトラックに跳ねられたって聞いた時はどうなる事かと思ったけど」
「跳ねられたってのは大袈裟だよ。ちょっと手に当たっただけだし」
「当て逃げって奴か!?ひどい事するもんやで!!」
「いやいや、ちゃんとその場で対処してもらったし、示談も終わってるからさ」
「せやけど、大事な神童の腕にもしもの事があったらどないする気やったんやろな……」
「まぁ、完治すれば後遺症はないって話だから。ただ……」

 ナガトは事故のことも事故の相手もさほど気にしていないようだったが、顔を伏せて寂しげにポショりと呟いた。

「時期が悪かったなって」
「あ」

 大した事ない怪我で後遺症もなく、相手もちゃんと適切な対応はしてくれた。ただ、よりによって大会が近いこの時期に怪我してしまったのが最大の不幸だった。
 誰に対しても、怒りも恨みもぶつけるわけにはいかないからこそ、この不運がただただ悔しくてどうしようもなかった。

「ナガト、大会のためにずっと頑張ってたんだもんな……」
「だからさ、ゲンジとユウスケが大会に出るって聞いて嬉しかったんだ」
「ナガト……」
「ナガトくん」
「多分、君が導いてくれたんだよな」

 ナガトはツバサの方を向いた。

「へ?いやそんなオーバーやで!ウチはただ、1人で出るより知り合い連れてった方が気が楽や思うただけやし」
「なら、俺の魂も連れてってくれ」

 言って、ナガトは自分の機体をゲンジ達へ向けた。

「ナガト……あぁ!任せろ!!」
「ナガトくんの分も頑張るよ!」
「絶対にうちらの優勝や!」

 三人はナガトの機体にそれぞれ自分の機体を当てた。

 ……。
 ………。

(ナガトのフリッカー魂を背負ってここまで来たんだ。お前の分まで頑張るぜ)

「…ンジ!こらゲンジ!聞いとるんかいな!!」
「あ、え!?」

 隣でツバサの小うるさい声が聞こえてゲンジはハッとした。

「ゲンジ君、何か考え事?」
「あぁいや、ちょっとボーッとしてた」
「まったく、しっかりせぇや。次は決勝やで!この休憩時間のうちにしっかりと対策を練らんとな!」
「あ、あぁ、そうだな!」

 ユウスケはiPadを開いて甲賀アツシのデータを映し出した。

「アツシ君は去年の関東予選で準優勝した猛者だから、調べたらネット上でいくらかデータが出てきたよ。使用機体はワンサイドウルブズ、左右非対称の形状でスピン力に特化した機体みたいだね」
「相手がスピンなら、こっちはストレートやな!」
「そんな単純な話じゃないけど、回転方向は右回転で固定みたいだからその分動きは読みやすいと思う」
「それでワンサイドって事か……片方に特化してる分、回転力は凄まじい。動きが読めた所でどうにかなる相手じゃなさそうだぞ」
「なぁ、去年の試合動画はネットに上がっとらんのか?何か弱点があるかもしれんやろ」
「それが、アツシくんがワンサイドウルブズを開発したのはつい最近みたいで、ネットで見られるバトルは市販機を使ってるものしかないんだ」
「あちゃー、それじゃ参考にならんやん!」
「……」

 ワンサイドウルブズの開発時期は去年の大会の後……それを聞いたゲンジは何やら考え込んでしまった。

「どうしたんや、ゲンジ?」
「あ、いや……確かツバサって、去年の大会を見たからウィングワイバーンを自作したんだよな」
「当然や!あの神童・ナガトが自分で開発した愛機、マイティオーガを駆使してバッタバッタと強敵を薙ぎ倒していく姿を見たらうちかて作りたくなるで!」
「アツシも、そうなのかもな」
「は?」
「ナガトにリベンジするために、同じ土俵で戦うために、ワンサイドウルブズを作ったのかなってちょっと思ってさ」
「確かに、そうかもね。だとしたら、ちょっと気の毒かな」
「あぁ」

 事故のせいで大会に出られなくなったナガトも不幸だが、リベンジしたい相手がいなくなったアツシもまた気の毒だ。
 ゲンジとユウスケがちょっとセンチメンタルな空気になるので、ツバサが口を挟んだ。

「何言うとんのや。うちらかて、ナガトと一緒に大会に出たかったのは同じ。気の毒なのはお互い様やないか」
「まぁ、それはそうなんだけどさ」
「どうした?さっきから様子が変やで」
「……なんでもないよ。さ、そろそろ時間か!とにかく、全力を尽くしてくる!」
「うん、頑張って!」
「絶対優勝やで!!」

 仲間達の応援を背に受けてゲンジはステージへと上がった。
 そして、アツシと対面する。

『さぁ!グレートフリックスカップ関東予選大会もいよいよ決勝戦だ!!
勝ち上がったのは野生のパワーで突き進んだ甲賀アツシくん!愛機はワンサイドウルブズ!!去年は惜しくも決勝で関ナガトくんに敗れてしまったが、今年こそは優勝なるか!?
対するは、今大会初出場ながら戦いの中で成長してきた超新星、東堂ゲンジくん!愛機はライジングドラグナーだ!!』

「……ナガトはいないが、東堂ゲンジに青龍のフリックス……必ず倒して決勝大会に進む!」
(ナガト……俺は、お前みたいに決勝を戦えるかな)

 気合い十分のアツシに対して、ゲンジは少し迷いが見える。

『さぁ2人とも、準備は良いな!?そんじゃ行くぜ!!』

(ワンサイドウルブズの回転は凄い。けど、機動力は低い!ここは相手と接触しない距離まで進んで、確実に先手を取れば……!いや、ナガトと戦ったことのあるあいつならそのくらい読んでくる……!)

『3.2.1.……』

(あっ!)

 まだ作戦が決まってないのに無情にもカウントが進む。

『アクティブシュート!!』

「くっ!!」
「ぬおおおお!!ウルブズ!!!」

 強烈な回転で進むウルブズに対して、ドラグナーは強くも弱くもないなんとも形容し難いシュートを放った。

「なんやねんあの中途半端なシュートは!?」
「ゲンジ君……!」
 ツバサとユウスケも、ゲンジの失態に心配そうな顔をする。

 バキィ!!
 当然、そんなシュートではあっさりと弾かれてしまう。場外はしなかったが、ドラグナーは大きく後退してしまった。

『のおっと!アクティブでの激突を制したのはワンサイドウルブズだ!!』

「しまった!」
「……」

 ハッと顔を歪めるゲンジに、アツシは不信な目線を向けた。
 しかし、すぐにバトルに集中して機体を構える。

 試合を見ているツバサとユウスケもハラハラしている。
「あっちゃ〜、何やっとんねんゲンジの奴!」
「いつものゲンジ君らしくないね……けど、これは怪我の功名だよ」
「そうか?」
「先手は取られたけど、ウルブズとドラグナーには距離があって、周りにマインもない。超スピン特化のウルブズじゃ攻撃手段がない」
「って事は、実質ゲンジが先手を取ったようなもんやな!」

 ウルブズはこのターン、マイン再セットか位置移動するしかないと思われたが……。

「……フリップスペル、ブラックホールディメンション!」

 アツシは静かに宣言した。

『アツシ君、初手からいきなりフリップスペルの発動を宣言!!ブラックホールディメンションで序盤から試合を自分のペースに持っていくつもりだ!』

「そうか!フリップスペルがあれば立ち位置関係なく攻撃出来る……!」
「せやけど、ブラックホールディメンションは妨害出来るから成功率は低い!ゲンジとドラグナーのパワーがあれば防げるで!」

 ブラックホールディメンション……機体をスピンシュートさせてターン終了。10秒以上回転が続けば相手に1ダメージ、30秒続けば2ダメージ与える。
 相手はシュートして回転を妨害出来る。

「ぬおおおおおおおお!!!!!!」

 アツシは猛烈な気合を込めてウルブズをスピンさせた。フィールド全体が振動する凄まじいパワーだ。

「なんてパワーだ……!でも、とにかく相手の回転を止めないと!」

 ゲンジは回転しているウルブズをしっかりと見据えた。

(ナガトならきっと、あの回転の隙を見切って止めるはず。俺だって……!)

 ジッとみていると一瞬ウルブズの回転が止まる瞬間が見えた。
 それは、ウルブズのサイドに備えられている短剣だった。パーツの中で大型な分、回転していても見切りやすいのだ。そこを狙えば……!

「今だ!」

 バシュッ!
 タイミングを見計らってドラグナーをシュートする。
 狙い通り、ドラグナーのフロントがウルブズの剣に当たる。

「よし!」
「それは、悪手だ」
「なに!?」

 バチーーーン!!!
 接触した瞬間、ドラグナーは大きく弾かれてしまい場外してしまった。

「なっ……!」

『なんと!!攻撃を仕掛けたドラグナーが逆に弾かれて場外!!!』

「そんな……!」
「狙いやすい部位はその分破壊力も高い。これは鉄則だ」

 狙いは完璧だったが、そもそも狙った事自体が間違いだったのだ。

(そんな、初歩的な事にも気付けなかったなんて)

『これは自滅扱いなのでダメージは1だが、まだブラックホールディメンションの効果は続いている!既に10秒経過し、追加で1ダメージだ!このまま30秒経過したらドラグナーは撃沈してしまうぞ!!』

「そんな!?」

 ブラックホールディメンションは成功難易度が高い。そもそも普通に単機でスピンしても10秒以上回転させる事自体難しい上に、フィールド特性にも大きく左右される。
 しかも相手のシュートの妨害も受けてしまうため、成功はほぼ不可能と言われる超上級者向けのスペルだ。
 だがその分攻撃力は高く、上手くハマれば一撃で相手を倒す事も出来る。
 そして今がその『ハマりかけ』の状態だ。

『さぁ、ドラグナーが場外した今、妨害するものは何も無い!ワンサイドウルブズが勝利に向かって回転を続けていくぞ!まるでウイニングランのようだ!』

 シュルシュルと勢いは落ちながらも回転を続けるウルブズ。
 15、16、17…と着実にタイムが刻まれていく。

「あ、あぁ……!」

 まるで死刑宣告を待つ囚人のように、ゲンジはその回転を見続けることしか出来なかった。
 しかし……!

「むっ」

 シュルルルル!!
 突如、ワンサイドウルブズの回転がブレ始め、一気に失速しだした。

『おおっと!?残り10秒の所でウルブズが失速!!これはどうした事だ!?』

「なんだと……!」
「た、頼む!止まってくれ!!」

 これが最後の希望だ。

「か、神様……!」
「と、止まるんや!」
 ツバサとユウスケも全力で祈る。

『残り5秒!4……あぁ!?』

 シュウウウウ……。
 ついに、ウルブズのスピンが停止してしまった。

『惜しい!!あと4秒のところでワンサイドウルブズが停止した!!2ダメージならず!!』

「ふぅ、危なかった……!」
「……」

 アツシはウルブズを拾ってよく見てみると、短剣に亀裂が入っていた事に気づいた。これでバランスが崩れたのだ。

「あの一撃か……。青龍のフリックスに助けられたな」
「え」
「撃ったのがあのフリックスじゃなければお前の負けだった」
「!?」

 つまり、フリッカーとしての作戦は失敗だが、それをドラグナーのパワーがカバーしてくれたと言う事だ。
 この大会でドラグナーのパートナーに相応しいフリッカーになろうとしていたゲンジにとってはこれ以上ない屈辱だろう。

(俺、まだドラグナーにとって足りないのか……ナガトみたいに、愛機と一心同体で戦えないのかよ……!)

『さぁ、仕切り直しアクティブをするぞ!!首の皮一枚繋がったとはいえ、ゲンジ君の残りHPは1!追い込まれてしまった!ここからどう挽回するのか!?』

「もう、後がない……!」

 機体を構えながら、ゲンジは焦った。

(どうする!?どう戦う!?ナガトが倒したあいつを俺が倒すには、ナガトならこんな時どうするんだ!?軌道をズラて先手を取るか?でも、先手を取ったところで取り返せない!だったら、真正面からぶつかって……いや、またさっきの二の舞だ!それなら、敢えて相手に先手を取らせて……って、そんなの降参してるのも同じじゃないか!どうすればいいんだ、分からない!クソ……!教えてくれ、ナガト!俺に力を貸してくれ……!)

 どう足掻いても詰んでいるこの状況。最後に頼るべきは背負ってきた親友の想いなのかもしれない。
 そう、どんなピンチも麗しき友情の力さえあれば乗り越えられるはずだ!
 ゲンジは、ナガトのフリッカー魂に祈りを込めて……。

「ぬあああああああああああ!!!!」

 突如、アツシが雄叫びを上げた。会場が騒然とする。

「え、なんだ!?」
「東堂ゲンジィ!!!!」

 ゲンジを睨め付けて叫ぶ。

「!?」
「お前、誰と戦ってる!?」
「誰って……そんなのお前に決まってるだろ」
「違うっっっ!!!」
「っ!」
「俺はっっ!!お前と戦ってるんだぞっっっ!!お前とっ、青龍のフリックスを倒すためにっっっ!!!!」
「っ!俺と、ドラグナー……」

 アツシの言葉は、普通なら全くもって意味の分からない言葉足らずなものだ。しかしゲンジにはその意味が痛いほど理解出来た。

(そうか、俺ずっとナガトばっかり意識して……ナガトと戦うアツシと戦おうとしてた……。
けど、違うんだ!俺はナガトじゃない!あいつが戦ってるのもナガトじゃない!
俺は、俺は……!)

『さ、さぁ、軽い言葉のジャブを交わしたところで!仕切り直しいくぞ!
3.2.1.……』

「俺はっ!」

『アクティブシュート!!』

「東堂ゲンジだああああああ!!!!」

 最大限の気合を込めてのパワーシュート!
 中央でウルブズとドラグナーがぶつかり、同時場外した。

『激しい接触!!同時場外だ!!!』

「はぁ、はぁ……!」
「やっとバトルが始まったな」

 アツシは嬉しそうにニヤリと笑った。

「そうだ……勝っても負けてもいい……!考えて考えて、それでもダメなら一か八かで挑む!そして、何度でも強くなる!それが俺の戦いなんだ!!」
「なら俺は、強くなる相手をもっと強い全力で迎え撃つ!それが俺のバトルだ!!」

 2人はお互いの宗旨を主張し、視線を合わせてフッと笑う。

「甲賀アツシ!ここからが本番だ!!俺とライジングドラグナーの力を見せてやる!!」
「来い!ワンサイドウルブズはまだまだこんなもんじゃない!!」

『それでは、そろそろ行くぞ!3.2.1.アクティブシュート!!』

「いけええええ!!!」
「ぬおおおおおおおお!!!!」

 バチーーーーン!!

『再び同時場外!!』

 バーーーーン!!!

『またも同時場外!!』

 ドゴーーーーーーン!!!

『またしても同時場外!!凄まじい火力のぶつかり合いだが、バトルはこう着状態だ!』

 その様子をハラハラしながら見ているツバサ。
「あぁもう何やっとんのやゲンジは!そんなバカ正直に……!」
「いや、ゲンジくんいつもの調子に戻ってる」
「そ、そうか?」
「うん、きっと大丈夫だよ」
「う〜ん……そういうもんか?せやったら、とにかく気張るんや!ゲンジー!!」
 何故か根拠なくゲンジを信じるユウスケを見て、ツバサもとにかく応援する事にした。

「はぁ、はぁ……!」
「やるな、東堂ゲンジ!」
「あぁ、お前もな!」

『この戦いはいつまで続くのか!?それでは行くぞ!3.2.1アクティブシュート!!』

「ぬおおおおお!!!!」
「いっっけえええええ!!!!」

 バチーーーーン!!!
 再び激しくぶつかって弾かれる二機。また同時場外する勢いかと思われたが……。
 ガッ!
 ドラグナーはフェンスに激突したおかげで場外を免れ、ワンサイドウルブズだけが場外した。

「なに!?」
『おおっとここでバトルに動きがあった!!ドラグナーは運良く壁にぶつかったおかげでワンサイドウルブズだけが自滅だ!」』

「よし、上手くいった……!」
 ゲンジは口元を緩ませた。これは狙い通りだったらしい。

「そうか!ゲンジ君は何度もアクティブシュートで同時場外しながら壁のある方向に飛ばされるように角度を調整してたんだ!」
「さすがやで、ゲンジ!!」
 ユウスケは即座にゲンジの狙いに気付いた。

「何度でも挑んで、何度でも強くなる……か」

 アツシはウルブズを拾いながらそう呟いて嬉しそうに笑みを浮かべた。
 そしてアクティブシュートの準備をする。

「なら、俺は……」

『さぁ、行くぞ!3.2.1.アクティブシュート!!』

「この調子で行くぞ、ドラグナー!!」
「もっと強い力で迎え撃つ!!!」

 カッ!ギュワアアアアアア!!!
 ウルブズは先程とは比べ物にならない回転力を発揮して迫ってきた。

「なっ、この回転力は一体……!!」
「ぬおおおおおお!吼えろ!ウルブズ!!!」

 バーーーーーーーーーン!!!!
 凄まじいスピンシュートにたまらずライジングドラグナーは場外してしまった。

『決まったああああああ!!!!激闘の決勝戦を制したのはワンサイドウルブズ!甲賀アツシ君だああああああ!!!』

「うおおおおおおおおおお!!!!!」

 勝利が決まり、アツシは雄叫びを挙げた。
 それに対しては、ゲンジはフッと息を吐いてドラグナーを拾う。

「お疲れ、ドラグナー。よく頑張ったな」

 穏やかな目で労いの言葉をかけているとそこへアツシが近づき手を出してきた。

「強かったぞ、お前」
「サンキュ、でも次は負けないぜ!」

 ゲンジはガシッとその手を強く握った。

 ステージに降りてユウスケとツバサと合流する。

「悪い二人とも。優勝出来なかった」
「くぁぁぁ!惜しかったなぁ!あと一歩やったのに!!」
「でも、良いバトルだったよ!」
「……」

 ゲンジは少し俯いて口を閉じた。

「まぁ、そんなに凹まんでええで。準優勝かて大したもんや!」
「そうだよ!ナガト君だってこの結果聞いたら喜ぶと思うよ!」

 また南雲ソウの時みたいに泣き出すんじゃないかと焦った二人は口々にゲンジを慰める。

「……す」
「す?」
「す……っげぇ楽しかったぁぁ!!!!」

 急に顔を上げたゲンジは晴れやかな顔で笑い出した。

「なんや、凹んでないんかい」
「俺、バトルがこんなに楽しいと思ったの初めてだぜ!負けたのは悔しいけど、それも含めて楽しいぜ!!」
「ゲンジ君……」
「へへっ、よーし!もっともっと強くなってやる!次は絶対に優勝だあああああ!!!」

 

  つづく

 

 

CM

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