弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第5話「超速!ソニックユニコーン!」


第5話「超速!ソニックユニコーン!」

 

 

 東京ディスティニーランドで開催しているグレートフリックスカップ関東大会もいよいよ大詰め。
 大勢の参加者もかなり絞られて残り8人、あとは準々決勝、準決勝、決勝戦を残すのみだ。
 時刻は午後1時。ここで1時間のお昼休憩となった。

「おおおお!さすが夢の国!!レストランも豪華やでぇ!!」

 様々な料理を乗せた大皿小皿をいっぱいに並べたテーブルにツバサは目を爛々と輝かせる。
 三人が昼食に来たのはディスティニーランド内にあるバイキングレストラン。本来なら子供のお小遣いではとても手が出せないお値段なのだが、2回戦突破したフリッカーはこのレストランの無料券が与えられるのだ。

「それにしても、グレートフリックスカップ運営も太っ腹やなぁ!」
「うん、こんな豪華なレストランなんて初めて入ったよ!」
「よっぽど儲かってるんだなぁ」
「そりゃそうやろ!あれだけの参加者に観客もおるんや、参加費と観戦チケット代でウハウハやで!」
「販売ブースのドラグカリバーとウイングジャターユも凄い売れたらしいしね」
「まっ、それもこれもウチらがええバトルして盛り上げた賜物やからな!このくらいの恩恵は受けてもバチは当らんで!」

 ツバサはホクホクとした表情で料理に舌鼓を打った。

「それにしてもツバサちゃん、よく食べるねぇ……」
「バトルして腹減ってるのは分かるけど、ちょっと料理取りすぎじゃないか?」
「何言うとんのや!これはあんたら2人の分や」
「え?」
「へ?」

 大量に並べた料理を差し出され、ゲンジとユウスケは思わず顔を見合わせた。

「2人はこれから準々決勝を戦うんや!しっかり食べて力つけんとな!ウチができるせめてもの応援や!」
「応援って言われても……」
「こんなに食えるかよ……」
「男のくせに情けないなぁ、胃力見せてみぃ!胃力を!」
「無茶言うなよ……」

「試合前に暴食はやめておけ」
 と、お盆を持った小柄な少年に声をかけられた。小柄ではあるが、眼帯をした強面な顔に思わず萎縮してしまう。

「へ?」
「消化にエネルギーを取られるだけだ」

 少年の言う事はごもっともなのだが、せっかくの厚意を否定されたような気分になったツバサはムッとして言い返した。

「ご親切にどうも。せやけどあんたこそたったそれだけで足りるんかいな?試合中に餓死しても知らんで」

 少年のお盆には梅干しの添えられたお粥とバナナ、そして飲むヨーグルトが一杯乗っているだけだった。育ち盛りの男児にしては少なく感じるが……。

「これは即効性のエネルギー食だ。試合前ならこれで十分」
「確かに、アスリートとしての理想的な食事かも」
「ぐぬぬ」
「フリッカーなら食事管理くらいちゃんとしておけ、東堂ゲンジ」
「え、なんで俺の名前」
「青龍のフリックスは俺が倒す」

 それだけ言うと、少年は不思議がるゲンジ達を無視して歩いていった。

「あいつ、一体……!」

 ……。
 ………。

 謎の少年への疑問はあるものの考えても仕方がない。
 ゲンジ達は昼食を終えると会場に戻り、準々決勝を戦う事にした。
 まずはゲンジの試合だ。

「いっけぇ!ライジングドラグナー!!」

『ライジングドラグナーの凄まじい一撃がさく裂!!見事な勝利だ!!』

 準々決勝からはバトルフリッカーコウの実況が付くようだ。
 心地よい歓声に包まれながら、ゲンジは難なく準々決勝を勝ち上がった。

「やったね、ゲンジ君!」
「ああ!ユウスケのアドバイス通りシャーシの裏にハードラバーシート貼ったおかげだぜ」
「今日の午後は結構気温が高くなるから、硬めのラバーだと丁度いいグリップになると思ったんだ」
「ゆ、ユウスケも…ゲンジも…さ、さすがやな…うぷっ!」
 喜びを分かち合う2人の横で、ツバサは膨れ上がった腹を抱えて苦しそうに口を抑えていた。

「ツバサ……ほんと大丈夫か?」
「あんなに無茶して食べるから」
 結局あのあとツバサは持ってきた料理を全部1人で食べたようだ。

「二人がロクに食わんかったからやろが……食べ物を粗末にしたらバチが当たるからな……うっぷ」
(自業自得な気がするけどな)
「は、はは……」

『さぁ、次の対戦カードは、甲賀アツシ君VS国立タツクニ君だ!!』

 ステージに選手が上がると、そのうちの一人を見てゲンジは声を上げた。

「あ、あいつ、さっきの!!」
「ゲンジ君と、ドラグナーの事を知ってたフリッカーだね……」
「いったい、どんな戦い方をするんだ?」
 ゲンジは緊張した面持ちでアツシの試合に集中した。

『アツシ君のワンサイドウルブズは左右非対称のボディ形状が特徴的だ!そこから繰り出されるパワーは計り知れない!!対するタツクニ君のスカイジャターユは、軽量なウイングジャターユを更に肉抜き改造しフリップスペル【ウェイトカウンター】と組み合わせる事で相手の動きを封じながら戦うぞ!
果たして、どのような試合展開になるのか!?
では、行くぞ!3.2.1.アクティブシュート!!』

「ぬおおおおお!!吠えろ!ワンサイドウルブズ!!!」
 アツシは左回転のスピンシュートを放った。

「スピンシュート!?」
「は、速い!」
「並の回転力じゃないぞ、アレは……!」

 周囲の空気を巻き込み、唸りながら猛回転で突進するウルブズが敵機に接触した瞬間枯れ葉を飛ばす強風の如く敵機を場外どころか会場の外の茂みまで弾き飛ばしてしまった。

「なにぃ!?」
『な、なんとぉ!!ワンサイドウルブズの凄まじい一撃によってタツクニくんのスカイジャターユが会場の外までぶっ飛ばされた!!!このまま30秒以内に再びフィールドへ戻せないと試合続行不可能と判断して敗北になるぞぉ!!』
「く、くそっ!」

 タツクニは慌ててステージを降りて茂みを掻き分けるがそう簡単に見つかるはずもなく、時間は無情に過ぎてしまった。

『タイムアップ!残念ながら試合続行不可能だ!なんと甲賀アツシくん、アクシデントとは言え一撃で決めた!!』

「なんて、パワーだ……!」
「相手が超軽量機体だったにしても、あの攻撃力は普通じゃないよ」

『さすがは去年の関東大会で神童・ナガト君と熱い戦いをした強豪フリッカーだけはあるぞ!!』

「ナガトと!?」
 思わぬ名前を聞いてゲンジは反応する。
「そうか、それでどこかで見た事があったのか……!」
「ゲンジ君の事を知ってたのも、ナガト君と繋がりがあったから……」
「でもそれだけだと青龍のフリックスを知ってた理由にはならないぜ?」
「う〜ん……」

 すっきりしない謎に2人が首を傾げる中、会場にバトルフリッカーコウによる明朗なアナウンスが鳴り響いた。

『さぁ、次の対戦カードは乾ユウスケ君VS雲野リュウジ君だ!!』

「あ、僕の番だ」
「今はとにかく試合に集中しようぜ、ユウスケ」
「うっぷっ、気張っていきぃや……」
「うん!頑張るよ!!」

 ユウスケはステージに上がって対戦相手と対峙した。ユウスケの相手、雲野リュウジは背が高く年上のようだったが威圧感を感じさせない友好的な笑顔を向けてきた。

「やぁ、ユウスケ。君のバトルは注目していたよ。シールダーアリエスも良く調整してあるね、良いバトルをしよう」
「え、あ、はい、よろしくお願いします」

 いきなり初対面の年上に馴れ馴れしくされてユウスケは戸惑いながらも会釈した。

『では、機体チェックが済んだら始めるぞ!両者マインと機体をセットしてくれ!』

 諸々準備が終わり、二人はシュートの構えを取る。ユウスケはリュウジの扱う機体をじっくりと観察しながら作戦を練った。

(あの風を斬り裂くような一本角にゴムタイヤ……あの機体は間違いなく直進型。だとしたらまともにいっても先手を取られる事は必至、ならマインのない方向へ軌道をズラして敢えて先手を取らせて反撃すれば……!)
「フッ」

『では行くぞ!3.2.1.アクティブシュート!!』

(狙い通りに行くぞ)
「いけっ、ユニコーーン!!」
「速い!?」

 ガッ!
 アリエスが思い通りの軌道を描くよりも遥かに速く、リュウジのユニコーンが一瞬で距離を詰めてアリエスを止めた。

『まさに神速!!リュウジ君のソニックユニコーンはまさに疾風の如きスピードでシールダーアリエスを抑え込んだ!!しかもアリエスはフリップホールの上に停止している!これで1ダメージだ!!』

「い、今の動き……全く見えなかった」
「ユウスケ、作戦は悪くなかったけど肩に力が入りすぎだぜ。それじゃどこに撃つのかバレバレさ」
「え……」
「シュートの前に深く息を吐くと良い。そうすれば無駄な力が抜ける」
「……」

 ユウスケは言われるままに深呼吸してみた。

『それでは仕切り直しだ!3.2.1.アクティブシュート!!』

「いけっ!シールダーアリエス!!」

 アリエスは先ほどとは見違えるスピードで進み、ソニックユニコーンを躱した。

「凄い、思った通りのシュートができた……」
「だろ?」

 今までとは比べ物にならない手応えにユウスケが感嘆するとリュウジはニカッと笑った。

(なんで、対戦相手にアドバイスを……?)
「それじゃ、先手は俺だな……っと、これじゃ何も出来ないな」

 どうやらソニックユニコーンはフリップアウトを狙えるほどのパワーは無いらしい。近くにマインも穴もないため攻撃のしょうがない。

「仕方ない、マイン再セットだ」

 そう言って、リュウジはマインをアリエスの前にセットした。

「え!?後ろじゃなくて前に……!」

 通常、マイン再セットするなら相手に利用されないように後ろに設置するのだが、前に設置すればアリエスに簡単に利用されてしまう。

「……ミスかな?」

 相手の設置ミスかもしれないと、ユウスケは恐る恐るマインヒットを狙う構えを取る。

「おっと、そのマインを利用するのはよく考えたほうが良いぜ」
「え?」
「何故俺がわざわざ利用されやすい位置にマインをセットしたか?その理由は簡単、今俺の方がHPが多いからさ」
「つまり、1ダメージわざと食らっても余裕がある」
「そっ。反撃しやすい位置に相手を誘き寄せれば、あとはダメージレースに持ち込んで勝てるってわけだ」
「肉を切らせて骨を断つ……でも、どうしてわざわざ教えて……」
「いいから、時間ないぜ」
「あっ」

 シュート準備時間は30秒までだ。既に半分経過している。ユウスケは急いで構えた。

「反撃を受けないようにマインヒットをするなら……これだ!」

 ユウスケはそこそこ加減した力でシュートした。
 カッ!
 シールダーアリエスはマインを弾いた所で停止した。そして、弾かれたマインはユニコーンのツノにヒットして場外した。

「これでどうだ!」
「なるほど、自機はなるべく近づかせずマインだけを飛ばしてマインヒットして反撃を防いだか。うん、悪くない、及第点だ!だが……」
「?」
「満点にはまだまだだ!!」

『さぁ、これでお互いのHPは残り2!互角の立ち合いとなったぞ!』

 リュウジは指を伸ばしてピタリとつけて、掌を上に向けて貫手のような形で指の先をシュートポイントへ接触させた。

「その、構えは……!」
「一点集中……ソニックホーン!!」

 伸ばした指で突くように機体をシュートする。そして、フロントの先端がアリエスのスポンジにめり込み、その弾力でアリエスを場外へ弾き飛ばしてしまった。

「なっ……!」

『決まったー!見事なフリップアウトでソニックユニコーンを駆るリュウジくんが準々決勝を突破だ!!』

「そんな、反応出来なかった……」
「盤面と機体性能を考えた作戦の組み立ては見事だった。あとはそこにフリッカーの能力も加味しないとな」
「フリッカーの能力も……」
「じゃ、良いバトルだったぜ」

 リュウジは片手を上げて挨拶すると飄々とした足取りでステージを降りていく、ユウスケも少し遅れてステージを降りてゲンジ達と合流した。

「ユウスケ、お疲れ」
「惜しかったなぁ!あと一歩やったのに!!」
「うん……」

 どこか浮かない表情のユウスケに二人は怪訝な顔をする。

「どないしたんや?負けたショックで呆然としとるんか?」
「ううん、そうじゃないんだけど。なんか、不思議な人だったなって」
「対戦相手の雲野リュウジって奴がか?」
「うん。なんか、僕にアドバイスをしてくれながら戦ってたって言うか……」
「はぁ?なんか嫌味なやっちゃなぁ」
「ううん、別に嫌な感じはしなかったんだ!的を射てたし、そのおかげで良いバトルも出来たから後悔もない。なんて言うか、ただ勝った負けたとかじゃなく『タメになった』って感じがするんだ」
「稽古つけてもらったようなもんか?」
「うん」
「なんでわざわざ大会でそないな事するんや?何の得にもならんやろ」
「それは、分からないけど」
「試合に勝つ以外に何か目的があるって事か?」

 大会に出ておいて試合に勝つ以外の目的と言うのもなかなか想像が付かない。

「まっ、分からん事考えてもしゃーないやん。んな事より、うちらん中で勝ち残ったのはゲンジだけや!頼んだでぇ!!」
「あぁ!ここまで来たら行けるとこまで行ってやる!」
「アホ、こう言う時は景気良く『絶対優勝してやるで!』くらい言わんかい!」
「ははは……」

 大会に出るのをギリギリまで渋っていたゲンジにはまだそこまで大口を叩けるほどの自信はなかった。

 準々決勝も終わり、準決勝まで小休止となった。
 しかし、先ほどアツシに愛機を茂みまで飛ばされたタツクニは未だに機体が見つかってないのか茂みをかき分けて探している。

「くそー、どこだぁ……あの野郎、派手に飛ばしやがってぇ……」

 愚痴りながら探し続けるタツクニの横へ、後ろから手が伸び、機体が差し伸べられた。

「え、これ!スカイジャターユ!!」

 タツクニは引ったくるようにそれを受け取り、見上げるとそこには仏頂面をしたアツシが立っていた。

「お前……」

 アツシは何も言わずに踵を返して歩いていった。

 ……。
 ………。

 そして、準決勝の時間になった。
 対戦カードはゲンジVSリュウジだ。二人は既にステージに上がり機体をセットして対峙している。

「東堂ゲンジ、君とのバトルは楽しみにしていた!このバトルをするために勝ち上がってきたと言っても良い」
「そりゃどうも。それより、一つ聞かせてくれ。なんでユウスケにアドバイスしながら戦ったんだ?」
「え、あそうか。君は乾ユウスケの友達か。そうだな、勝ったら教えてあげるよ」
「なに?」

『それでは、そろそろ準備はいいかな?』

 バトルフリッカーコウに促されて二人はシュートを構える。

「ソニックユニコーンはスピードが武器……だったら真正面からぶつかってパワーで押し切る!」
「その構えだと重心がブレて力が伝わらないな。手の甲を路面と水平にするよう意識するといい」
「俺にもアドバイスするのか?」
「ただの独り言と思ってくれ。聞く聞かないは自由さ」
「……!」

『3.2.1.アクティブシュート!!』

 ゲンジは試しにリュウジのアドバイスを無視して撃ってみた。
 ドラグナーは若干シュートの重心がズレてしまい横っ腹を晒して、そこにソニックユニコーンの一本角が突き刺さり、弾かれてしまった。

「くっ!」
「な?言っただろ」

『さぁ、先攻はリュウジくんのソニックユニコーンだ!』

「いけ!ユニコーン!!」
 リュウジはユニコーンの機動力を活かしてアッサリとヒットアンドアウェイでマインヒットを決めた。
 ユニコーンの停止した位置はゲンジのマインの近い位置だが、ドラグナーからはかなり遠い。

「当てればマインヒットは出来るけど、あの距離を狙えるか……?」

 遠距離の狙い撃ちはドラグナーの得意分野ではないが……ゲンジは先程のリュウジのアドバイスを思い出す。

(一応試してみるか)

 言われた通りに手の甲を路面と水平にしてシュート。
 すると、気持ちいいくらいにドラグナーは真っ直ぐ進んでいき、遠くのユニコーンへヒットした。

『やったらやり返す!ゲンジ君もマインヒットを決めてお互いに残りHP2!』

「すごい、簡単に狙えた……」
「呑み込みがいいじゃないか」

 しかし、リュウジも再びあっさりとマインヒットを決める。

『さぁ、これでゲンジ君の残りHPは1だ!後がないぞ!!』

「くっ!」
「このままダメージレースを続ければ俺の勝ちは確定だ。かと言って、この距離じゃフリップアウトを狙うのも厳しい。となれば反撃を受けないようにマインヒットするのが最適解だろうな」
(確かに、ここはリュウジの言う通りに……)

 今度は戦術のアドバイスをするリュウジ。その意見はマトを射ており、ゲンジも納得しかけるのだが……。

「ドラグナー……!」

 キラッと、ドラグナーが太陽の光を反射した。その光は、まるでゲンジに何かを訴えているようで……。

「……そうだよな。戦ってるのは俺達なんだもんな」

 ゲンジは呼吸を整えてリュウジを見据えた。

「確かに、あんたの言ってる事は正しい!そのアドバイスのおかげで俺は前よりも強くなれた……けど、ただ聞くだけじゃなくて、取り入れて自分のものにして、昇華しないと一生あんたには勝てない!!」
「ほぅ」
「だから俺は、そのアドバイスを基にしてもっともっと高みを目指すんだ!!」

 ゲンジはドラグナーのフロントヘッドを展開させた。そしてシュートの構えは、リュウジのアドバイス通り手の甲を水平にするだけじゃなく、手首を若干曲げてアレンジした。

「不利なダメージレースを逆転するには反撃を受けない攻撃をするしかない……その最適解は、コレだ!!」

 手首を曲げた事によって指先の筋肉が張り詰められ、そのテンションを利用して凄まじいシュートを放った。

「いけぇぇ!!ドラゴンヘッドブラスター!!!」
「バカな!この距離からフリップアウト狙いだと!?」

 バキィ!!
 見事にドラグナーの攻撃がヒットし、ユニコーンを弾き飛ばす。

「甘い!!」

 ガッ!
 軌道を読んだリュウジはバリケードでガードするのだが……。
 カンッ!!
 軽量なユニコーンはバリケードの負荷が小さいのでバリケードが破壊される事はなかったが、反射して別方向へ走ってしまいそのまま勢い衰えずに場外してしまった。

「くっ!」
「よし、機動力が仇になったな!!」

『決まったああああ!!!ゲンジくん、見事なフリップアウトで勝利だ!決勝戦へ駒を進めたぞ!!!』

「おっしゃ!やったぞドラグナー!!」
「……なるほど、反撃を受けない最適解はフリップアウトか」

 ドラグナーを手に喜ぶゲンジを眺めながら、リュウジの口元が緩んだ。

「ふ、はは、ははは!あーっはっはっはっ!!」
「へ?」
 リュウジはいきなり大笑いしだした。

「いやー、まいったまいった!まさか俺のアドバイスの更に上を行くとはなぁ!!こんなフリッカーと戦えるとは、最高だ!」
「び、ビックリした……」
「悪い悪い、つい嬉しくなってな」
「まぁ、いいけど。それより」

 試合前の約束の事を察したリュウジは催促される前に話し出した。

「あぁ、なんで俺がアドバイスしながら戦ってたかって事な。簡単さ、勝つにしても負けるにしてもより強い相手との方がいい。特に君達みたいな伸び代のある若いフリッカーにはもっと強くなってもらった方が燃えるからな」

 兄貴然とした余裕のある表情で言うその瞳には一点の曇りもなかった。

「そ、そんな理由……?」
「まぁな。それに、本当の戦いはこれからだしな」
「え、それってどういう……!」
「じゃ、またな。楽しみにしてるぜ」

 リュウジは意味深に笑いながら颯爽と去っていった。
 ゲンジは怪訝な顔をしながらその背中を見送るしか出来なかった。

 

    つづく

 

 

CM

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