フリックス・アレイ コンプレックス 第1話「右手の使用を禁止します!」

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第一話「右手の使用を禁止します!」

 

これは、フリッカー誕生までの物語である。

フリックス・アレイ。それは現在子供たちの間で爆発的なヒットを記録している競技玩具である。
その人気はすさまじくフリックス専門のスクール、いわゆる塾が作られ運営されるほど。
そして当然それほど人気を誇るホビーならばメインターゲッットの子供たちだけではなく、
少し上の世代でも人気を博するのが世の常である。
ここは埼玉県さいたま市。都心から少し離れたベッドタウン。
この閑静な住宅街に建つ学園にもフリックスの魅力に心惹かれた青年がいた。

午後4時すぎ、終業を告げるチャイムが学園に鳴り響く。

「ん~っやっと終わったかー!」

ぐいーっと一人の青年が伸びをする。
髪は黒く少しボサボサ、伸びた前髪は眉毛を隠し瞼の辺りまで伸びている。体系はやせ型であまり運動は得意そうではない。

「おいワタル、お前今日の授業もほとんど寝てたじゃねーか!」

前の席に座るツンツンとした髪型の男子生徒が振り返ってツッコミをいれる。

「仕方ないだろー眠いんだから。というか前の席に座っているノボルがなんで俺が寝てたこと知ってるんだ?」
「当ったり前だ!お前6時限中6時限すべての授業で先生から注意されてただろ!」
「…そうだっけ?寝てたからよく覚えてないや」

ワタルがふわぁ~とアクビをするとノボルがあちゃ~といった感じで額に手を当てる。

「そんなんで明日の大会大丈夫か?というか明日英語の補講あるらしいけどお前引っかかってないの?」

ワタルは英語の成績がクラスでビリ2である。

「補講に引っかかる?そんなヘマはしないさ。なんたって今回の大会には今持てる俺のすべてを持って臨むつもりだ!
そのために今週前半の寝不足は全部英語の勉強に充ててたしな!」

少し誇らしげな表情のワタル。

「すげぇ気合だな。ということは今日の寝不足は明日の大会に向けた機体製作のためか?」
「あぁ。あともうちょいで完成だからな。何としても間に合わせて見せる!」

明日土曜日には非公式ではあるもののハイターゲットをメインにしたフリックスの大会が予定されている。
ワタルはその大会に向けた機体を作るため連日寝不足ぎみだった。

「お前のオリジナルっていうとフレラバ以来か。
 というかそんだけ作るの大変なら模型部に入って施設借りればいいのに。
 うちの学園の模型部はかなり機材が充実してたはずだぞ?」

この学園は文系の部活動もかなり活発であり特に模型部は規模の大きさもあり破格の機材充実度を誇っていた。

「あー、模型部ね。あそこの部長とはちょっとソリが合わないんだよ。
 それに俺一人暮らしだから料理とかも自分で用意しなくちゃだし」

ワタルが少しやれやれといった感じをする。

「そういやそうだったな。でもお前の場合料理くらい嫁さんに作ってもらえばいいだろ?」
「嫁?枕のことか?」
「そっち(二次元)の嫁じゃねぇ!伊櫛(いくし)のことだよ!」

ノボルが視線を投げた先には同じ陸上部の女子生徒たちと部活動へ向かう1人の女子生徒の姿があった。
黒髪にツインテール。目元はキッとした感じの少し気の強そうなの少女である。そしてデカイ。

「まったくいいよなぁ、ワタルは勝ち組で。俺も幼馴染でお隣さんの女子生徒ほしかったなぁ」
「そんなにいいもんじゃないぞ?毎朝起こされるし。身だしなみとかボロクソ言われるし。
 部屋も隣り合ってるからそれこそ四六時中監視状態だ」
「自慢か貴様っ!!」

ノボルが声を荒げる。

「だいたい俺とヒナノは付き合ってるわけじゃない。あいつとはただの幼馴染だ」
「あーはいはい、わかりました。お約束のセリフですね」

ノボルはもう何回も同じことを聞いて聞き飽きたかのような様子である。

「まっとりあえず。俺は明日に向けて機体製作の追い込みに入らなきゃいけないからそろそろ帰らせてもらうよ」
「おうっ!明日の大会、楽しみに待ってるぜ!」

ノボルの声に手を振って返し、ワタルは教室を後にして自宅への帰路についた。

 

その日の夜。

「ついに、ついに完成したぞーっ!!」

歓喜の声がワタルの自室にこだまする。

「疲れた…けど、間に合ったっ!」

完成したフリックスを愛おしそうにじっくりと眺める。
ワタルが至福の時間に浸っているとコンコンッと何かが窓を叩く音がした。
机の右隣にある窓を開けると

「ワタルっうるさいわよ!今何時だと思ってるの!?」

隣の家に住むヒナノがいきなり抗議してきた。
この2つの家、ワタルの住む吉永家とヒナノの伊櫛家はとなりあっていた。
ワタルとヒナノの自室は2階。両家の隙間はわずか数センチほどで両部屋の窓の位置は全く同じところに作られている。
風通し等を考えるとほぼ無駄な窓であるように感じるが、これは両家の両親の仲が良くかつてシェアハウスで同居していた間柄からきているらしい。
ただそんものは親の都合であり子供には関係ない。
昔はお互いの部屋の行き来に利用していたが、今ではお隣さんからの苦情窓口である。

「いいだろ少しくらい。それより見ろよ。やっと完成したんだ!」

ワタルが目をキラキラさせながらヒナノにフリックスを見せる。

「これでやっと明日の大会に参加できるんだ…。俺の…俺の作った俺だけのオリジナルフリックスで!」

ワタルのすごい嬉しそうな表情を見てヒナノの怒りはだいぶ収まったらしい。

「完成おめでとう。本当にうれしくてしょうがないみたいね。」
「あぁ!自分で作ったフリックスで大会に出る!
 …正直バトルは得意じゃないし勝てるとは思えないけどとりあえず出場する!
 それが今の俺の目標であり夢だったからな!!それがもうすぐ叶うんだ…!」
「はいはい。うれしい気持ちはわかるけど、もう少し時間を考えなさいよ?
 こっちも部活で疲れてて眠いんだから」
「もーしわけない。でも時々夜中にうるさいのはお前もだぞ?」
「へ?私もそんなに大きな声出してることある?」

思い当たる節がないらしくヒナノは頭に疑問符を浮かべている。

「わりとしょっちゅうあるぞ。一昨日あたりもあったし」
「そうだったの?ごめん…」

少し申し訳なさそうにするヒナノ。

「まったく夜な夜な人の名前大声で連呼してるからな。一体どんな夢みてるんだよ?」
「………っ!?」

するとヒナノの顔がみるみるうちに真っ赤になっていく。

「なんか少し息切れして迫真迫ってるっぽかったし、夜中にあんなに名前叫ばれたらさすがにびっくりするぞ。
 最近は慣れてきたけど」
「………っ」
「行くとかなんとか言ってるみたいだけど、俺と出かける夢か?」
「…なっ」

ヒナノは下を向き体を小刻みにプルプル震えさせている。

「?」
「何聞いてんのよバカーーッ!!」

ワタルはヒナノのナニを聞いていたのだろう。
耳の端まで真っ赤になったヒナノが思いっきり座布団を投げつけてくる。

「ふぼふっ!?」

ゼロ距離で座布団を顔面に受けたワタルはそのまま椅子ごと後ろに倒れてしまった。

「このヘンタイ!!」

半分涙目になったヒナノはピシャッという音とともに思いっきり窓を閉めた。

 

翌朝。
開けっ放しの窓から入ってきたひんやりした空気でワタルは目を覚ました。
いつもと違う角度で自室の天井が見える。

「朝…か?」

どうやら昨日倒れた際に打ちどころが悪くそのまま気を失って眠っていたらしい。

「まったくヒナノのやつ加減もなしに思いっきりぶつけやがって…俺に何か恨みでもあるのか?」

ふと横に落ちているピンク色の座布団に目が行く。

「…いや、あるんだろうな。おそらく」

一瞬昔のことを思い出し表情が曇る。

「まぁいいや。それより今日は大会だ!遅れないように早めに準備しないとな」

倒れた状態から起き上がろうと右手に力を加える。すると

「ぐっ!痛っ!!」

突然右手に激痛が走った。あまりの痛みに起き上がることができず再び崩れてしまう。

「おい、嘘だろ?こんなところでこんな…」

恐る恐る自分の右手を見つめる。
改めて見ると右手が腫れてしまっているのがわかった。
しかも力を加えると尋常じゃない痛みを感じる。

「っ!とにかく朝食と準備だ!」

無事な左手を使って起き上がるとそのまま階下のリビングへと向かっていった。

 

「「ありがとうございました~!!」」

昼過ぎ、陸上部の午前練習が終わりを迎える。

「ヒナノは今日の午後練に参加しないんだっけ?」

更衣室にて同じ陸上部の女子から話かけられる。

「うん、そうなんだ。ちょっと大事な用事があってね」
「大事な用って例の彼氏さんとのこと?」
「べ、別にワタルはそういうのじゃないよ!私とアイツはただの幼馴染で…」

頬を赤らめながらヒナノが否定する。

「あれれ~?別に私はその幼馴染君のことを言ったつもりはないんだけどなー?」

仲間の部員にからかわれる。

「だからっ!その、別に!」

顔を赤くしながらヒナノは言葉に詰まってしまう。

「アハハ!ごめんごめん!でも二人とも学園じゃけっこう有名だよ?
 初登校の日から毎日ずっと一緒に学園にきてるんだもん。」
「それは、まぁお隣さんだし。アイツの親からも面倒頼まれてるし。
 べ、別に好きでやってるわけじゃないんだかね!私はいわゆる保護者みたいなものよ」

見事なツンデレテンプレートである。

「とにかく!今日はもうこれで帰らせてもらうね!」

旗色が悪くなってきたので逃げるように更衣室をあとにする。

「頑張ってね!私たち応援してるから!」

これ以上絡むと時間が無くなるので無視をすることにした。

 

さいたまハイパーアリーナ。今大会の会場である。
今回初めて開催されるフリックスのエイジフリー大会。
主催はもともとフリックスのコミュニティで個人レベルの大会を開いていた人物とのこと。
そこにフリックスの人気に目を付けたweb動画サイトがスポンサーとして協力し開催に至ったらしい。
故にこの大会はネットで生中継されている。
ヒナノが埼玉新都心に着いたころには会場周辺は多くの人々でにぎわっていた。

「やけに電車こんでるとは思ったけど、まさかほとんどがこの大会目当てだったなんて…」

改めてフリックスの人気を思い知らされる。

「少し遅れちゃったし、早く行かなきゃ」

ヒナノは足早に会場へと入っていった。
今日は予選ということでアリーナの観客席は使用されず参加者も観客もすべてスタジアム内に通されていた。
会場には測定用のテーブルがいくつもならべてありそこで本戦への参加を狙うフリッカーたちが競技を行っていた。
観客との距離が非常に近いあたり、どちらかというとデパート屋上等で行われている大会の拡大版といった感じである。
端には選手登録の受付がありそこで登録を終えた選手たちが続々と各指定されたテーブルへと流れていく。

「さってと、この中からアイツを探さなきゃいけないのか…」

会場内は選手と観客が入り混じって非常に混雑していた。
この中から待ち合わせもしてない相手を見つけるのは難しいだろう。

「まさか、こんなに人気のあるコンテンツだったなんて…
 もう少し少ないと思ってたんだけどなぁ」

とかぼやいていると意外と簡単にワタルを発見することができた。
すでに競技が残念な結果に終わったのか会場の隅で悲しげな、羨ましそうな表情で他の選手のプレーを観ている。

「お~い、ワタルー!」

ヒナノが駆け寄るとワタルの表情が浮かない理由はすぐに理解できた。
右手に包帯が巻かれていたのである。

「ワタル…その手どうしたの?まさか昨日の…!?」

昨日自分が座布団を投げつけてワタルが盛大に転んでいたことを思い出す。

「いや、そうじゃない。今朝階段降りるときに転んでさ。
 念のため病院にいったらこれだよ…」

ワタルはヒナノのせいではないと言っているが一切目を合わせてくれない。
昔からワタルはこういう嘘が下手だった。

「まぁ別にいいんだ。どうせ俺バトル弱いし。出たところで予選落ちだっただろうから」

少し声が震えている。

「ノボルとのバトルもほとんど勝てたことなんてないし。
 こうして大きな大会でいろんなフリックスを間近で観れるだけで十分だよ」

ワタルが必死に自分自身を納得させようとしているのがヒナノには伝わってきていた。
昨日の夜のあの笑顔。それを奪ったのは間違いなく自分だ。

「せっかく必死になって完成させたのに何やってるんだろうな、俺。
 いまさらこいつをノボルに使ってくれなんて頼むわけにもいかないしな」

左手には昨日完成させたフリックスが握られている。
彼は自分の機体が大会に参加することが夢だと語っていた。
かつての自分に夢を、目標を与えてくれた人から自分は夢を奪ってしまった。
そのことがヒナノにはショックで許しがたいことだった。

「ねぇ、ワタル。お願いがあるんだけど」

意を決して頼んでみる。

「なんだよ」

どこか恨みがましい感じ。

「そのフリックス私に貸してくれない?」
「はぁ!?お前いったい何を言って…」

ワタルが激しく動揺する。

「ワタルの代わりに私がそのフリックスで出場する!!」
「いやいや、流石に無理だろ!未経験じゃどうしようもないって」
「確かに私なんかじゃすぐに負けちゃうかもしれない。
 けどそうすればワタルの作ったフリックスは大会に出られるでしょ?」
「確かにそうだけど…」
「それに…運動や体を動かすことは私の担当のはず。そうでしょ?」

幼いころの記憶。2人を作ってくれた思い出。

「…そうだったな。わかった。こいつをお前に預けるよ」

観念したワタルからフリックスを預かる。

「作るの大変だったんだから。壊すなよ」
「わかってる。ありがとう」

受け取ったフリックスからは直前まで握られていたワタルの温もりが感じられた。

「さて、それじゃ選手登録してくるね。このフリックスの名前は…」
「Fセイバーだ」

Fセイバー。その鋭くとがった直線的なフォルムは矢じりを彷彿とさせいかにも高機動重視の機体であることを示している。
さらに白地のボディに赤と黄色のペイントは燃え上がる炎のようにも見えた。

「わかった。それじゃいってくる」

Fセイバーを手にヒナノは選手登録受付へと向かっていった。

 

大会初日の今日は予選のみであり開会式などの催し物はない。
あくまで参加希望フリッカーの実力を測り、成績上位からトーナメント枠の数まで絞り込みを行うのみである。
大会というよりはどこか事務的な空気があり、スタジアム内の各テーブルに並んで測定を行っている様子は身体測定を彷彿とさせた。
フリーエイジ大会らしくやたら筋肉質な男や普段商社に勤めてそうな人、学生など様々な人間が集まっている。
性別の比率は圧倒的に女性が少ないものの皆無というわけでもなかった。

「次の参加者の方、どうぞ!」

測定員に促されてヒナノがフィールドにつく。
今日の内容はロングシューター。スタート位置からフリックスをシュートし、その飛距離を測定する。
一番簡単かつ短時間でフリッカーとフリックスの能力を計測できるところからこの競技が選ばれたようである。
今回は運営側の想定以上に参加者が押し寄せた都合、
通常2回シュートできるところを時間短縮のため1回しか撃てないルールとなっている。

「出られただけでもう十分。この際だ!思いっきりいけっ!!」

セコンドのような位置からワタルの声が聞こえる。
チャンスは1回っきり。
Fセイバーを定位置にセットし深呼吸をする。
キッと前を見据え狙いを定める

(この歓声……緊張感……フリックスアレイは初めてだけど、部活の大会だと思えば……!)

ヒナノは無意識に体を捻りスタンディングスタートのような構えを取った。

「いっけーーー!!」

捻った身体で遠心力をつけてFセイバーを弾き飛ばす。
瞬間、手元からFセイバーが消え、ソニックブームのような衝撃波が巻き起こり、ヒナノの髪と制服のスカートをはためかせた。白だ。

「!!?」

撃った本人も見ていた人間も皆、一瞬何が起こったのか理解できなかった。
スタート位置から遥か離れた場所にFセイバーが姿を現す。

「えっと…伊櫛選手、記録20m!大会記録が出ました!!」

先ほどの衝撃に引き寄せられた周囲の人たちから驚愕の騒めきが聞こえてくる。

「やった…?やったぞヒナノ!予選トップだ!!」

横にいたワタルが嬉しそうに大きな声をあげる。

「信じられない…でもこれで本戦出場は確実になったんだ!!」

非常にうれしそうなワタルと対照的にヒナノのほうはまだその機動力に唖然としていた。

「ちょっとワタル!なんなよ、これ!」

Fセイバーを回収したヒナノがワタルに問いかける。

「あー、おそらくなんだけどFセイバーはもともと非力な俺が扱って機動力を発揮できることを前提にしていた機体だ。
 だから極限まで軽量化してあったし空気抵抗もできる限りカットしていたしシャーシも機動性重視だ。
 その結果、槍みたいな形状になったFセイバーと陸上選手としてのヒナノのシュートフォームが相性抜群だったんだろうな。さっすが馬鹿力!」
「なんか納得したようなしないような…っていうか馬鹿力いうな!」

ワタルの冷静な解析にヒナノがツッコミをいれる。

「何はともあれ、めでたく本戦出場だ!
 ヒナノ、本当にありがとう!!」

さっきまでの暗い表情が嘘みたいにワタルは満面の笑顔だった。

「えっと…まぁ、そのやるからには全力で挑んだだけよ。
 別にこれくらい大したことじゃないわ///」」

面と向かって礼を言われたヒナノは気恥ずかしくなって少しうつむいてしまう。

「2週間後の本戦もよろしくなっ!!」
「えっ!なにそれ!?聞いてないわよ!」
「あれ、知らなかった?2週間後に本戦1回戦目。
 勝ち進む度に2週間のインターバルを挟んでトーナメントが続くんだ」
「聞いてないわよ!というかそれも全部あたしが出るの!?」

一切を知らされていなかったヒナノが動揺する。

「あったりまえだろ!ヒナノで選手登録しちゃってるし。」
「えぇちょっと待ってよ!あたし部活とかもあるんだけど!?」
「まぁまぁそう言わずに。俺が機体作ってお前がバトルする。バッチリじゃん?」
「うぅん…そう、かもしれないけどぉ…」

ヒナノが少し言葉に詰まる。

「正直予選突破できるとは夢にも思ってなかったからなぁ。
 そもそも俺の実力じゃ間違いなく予選落ちは確実だった。
 けどヒナノのおかげで本戦に出れるんだ!
 ここから先の戦いはヒナノじゃなきゃ負けるのは目に見えている。
 だからヒナノ!俺にはお前が必要なんだ!」

最後の一言がヒナノの胸にグッサリささった。
真剣な眼差しで見つめられ、ヒナノは照れてしまう。

「あうぅ…あぁもう!わかった!わかったわよ!
 あんたのフリックス使って大会出て勝ち続ければいいんでしょ!?
 やってやるわよ!」

乱暴な物言いだがその顔はまんざらでもないようだった。

 

次回予告

右手を負傷したワタルを待っていたもの、
それは生活補助という名の一つ屋根の下、保護者なしで幼馴染との共同生活だった。
奪われる布団、握られる食費、始まる朝のランニング…
没収された抱き枕とともに同人誌は焼却炉の炎につつまれた。

次回フリックス・アレイ コンプレックス
第二話『幼馴染との暮らし方』

彼は生き延びることができるか?

 

CM

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