弾突バトル!フリックス・アレイ 特別編第2章「フリップゴッドを求めて」

Pocket

特別編第2章「フリップゴッドを求めて」

 

 遠山フリッカーズスクールでバンキッシュドライバーとのバトルを行った日から、バンとリサは伊江羅博士と遠山段治郎監修の下、新型フリックスの開発に勤しんでいた。

「これらが、バンキッシュドライバーのデータを基に私が試作したフリックスアレイだ」
 机の上にズラッと様々なバネ機が並べられている。
「うわっ、すげぇ……!」
「バンキッシュドライバーの性能を様々な方向性でアレンジを加えた。これらのテスト機でデータを取りヴィクターやウェイバーにフィードバックしていく」

「よ、よし……!」

 バンは様々なバネ機をテストシュートしてみた。

「どうだ?」
「うーん、このトーマスって奴はとにかく強力なバネを付けてる感じが俺好みなんだけど、バネが強すぎて発動しねぇんだよな。
バネをいくつか並べて強くしてるアーバンサーはいい感じだけどこれも安定しねぇな。
バネを弱くしてる代わりにリーチを伸ばしたクローロンは、強いけど反動が大きいし。
アーテルは一番安定してるな……けど、俺的にはもうちょっと攻撃力が欲しいぜ」

「なるほどな……トーマスの火力とアーテルの確実性か……。
リサの方はどうだ?」

「私は、キックバネで力をいろんな方向に利用した機体に可能性を感じます。
ブルコサミンやマイラはキックバネを使って相手をカチ上げるからシュート力に関係なく高いフリップアウト力を出せますけど……ウェイバーの戦い方には向かないですね。
スリップローダーは巨大なキックバネをフロントに取り付けて斜め上へ飛ばすというのが面白い発想ですけど……。
一番ウェイバーに向いているのは、デュランダルヴァルキリーのサイドウイングにバネギミックを仕込む構造でしょうか?」

「ブレイズウェイバーに組み込むならキックバネが最適か、確かにな」

 それぞれ、自分に合ったテスト機を使いどう愛機へフィードバックしていくべきかを見定めていく。

「どうじゃ伊江羅?開発は順調か?」
「えぇ、さすがは日本トップクラスのフリッカーだけはあります。良いデータ収集になりました」
「ふぉっふぉっふぉっ!この分じゃと出発は時間の問題じゃろうな!」
「と言うことは、フリップゴッドの居場所に目星がついたと?」
「確証は無いがな。かなり有力な情報を掴みおった。あのセンバ屋と琴井コンツェルンのセガレ二人組、なかなかやりおるわ」
「となると、こちらも急ピッチで開発を進めましょう」
「楽しみにしておるぞ、ふぉっふぉっふぉっ!!」

 そして、数週間が過ぎた。

「完成だ!」
 大仰な機械の箱が煙を上げながら開き、そこから青いフリックスと赤いフリックスが現れた。
「これが、俺の新しいフリックス……!ビートヴィクター!!」
「プロミネンスウェイバー……!」

「バンキッシュドライバーをベースに、それぞれ今まで培ってきた経験と能力を融合、昇華させたものだ。フリックスの新時代を担い証明するには十分な性能を持っている」

「おっしゃ!早速テストシュートだ!!」
「わ、私も!!」

 バンとリサはそれぞれ別のフィールドにつき、設置しているターゲットを狙った。

「いっけぇ!!ビートヴィクター!!」
 パーーーーン!!
 ビートヴィクターのフロントがターゲットに接触した瞬間、バネの力でビートヴィクターのフロントが伸び、ターゲットを弾き飛ばした。
「す、げぇ…!今までのヴィクターとは比べ物にならねぇパワーだ……!!」
「ビートヴィクターは、スプリングをボディ強度の限界ギリギリまで強化し、ギミック発動のためのトリガーを別に用意する事で高火力と安定した発動を両立させている」

「いけっ!プロミネンスウェイバー!!」
 バシュッ!ガキン!!
 プロミネンスウェイバーはターゲットと掠めた瞬間にサイドウイングがバネの力で開き、急角度にバウンドしてマインヒットした。
「っ!ブレイズウェイバー以上のバウンド性能…!」

「プロミネンスウェイバーは、サイドウイングにキックバネを仕込み負荷を受けると展開する仕組みになっている。その反動を利用した急旋回だけでなく。手動でウイングを広げる事でありとあらゆる場所のマインを狙う事が可能になった」

「ふぉっふぉっ!開発は無事成功なようじゃな!!」
「おう!これならいつでもフリップゴッドと戦えるぜ!!」
「良かろう。では来週の出発を目指し、準備を進めておくのじゃ」

「「はい!」」

 バンとリサのフリップゴッド捜索のための出発準備は順調だった。

 一方その頃……。
 ヨーロッパはドイツにそびえ立つとある貴族の城の中では激しいフリックスバトルが行われていた。

 貴族の息子と思われる二人組を相手に日本人のフリッカー二人がタッグ戦をしている。

「放て!ロンギヌス!!」
 貴族少年の一人がロンギヌスと呼ばれた機体の上部にセットしてある四角い弾丸をゴムの力で放った。
 バゴォーン!!!
 強烈な一撃が日本人のフリックスを襲う。しかも射出した弾丸には紐がついており、自滅せずに本体へと戻っていった。
「どうです!これがかのキリストを貫いたロンギヌスの槍!!射出した槍は自動で戻るから自滅せずに遠距離からフリップアウトを狙えます!」
 こんな攻撃を受けたフリックスはひとたまりもないはず……しかし、日本人のフリックスはビクともしていなかった。
「そんな攻撃!ザキ様の攻撃を耐えるために作った新型機『シュレッドサタン』には通用しない!!」

 日本人二人はザキとゆうだったようだ。
 ゆうは鋭い刃物のような上受け流し形状の防御型機体によってロンギヌスの槍を完全防御した。
「そ、そんなバカな!?」
「今度はこっちの番だ!イービルスライサー!!」
 シュレッドサタンはドリフトするかのようにサイドを滑り込ませてロンギヌスを運び、穴の上で停止させた。

「ちっ、ジャンのやつ油断しやがって。これだからパスタ野郎は詰めが甘い。俺はそうはいかないぜ!エクスカリバー!!」

 ドン!!
 アクティブシュートで、エクスカリバーと呼ばれたフリックスは巨大な剣の刺突によって黒いフリックスを押し込んで先手を取った。

「へっ、これは俺の距離だぜ!喰らえ!アックススラッシュ!!」
 エクスカリバーのフロント剣の側面を黒いフリックスのギリギリまで近づけ、指でつまみやすい特殊な形状のシュートポイントを使ってテコの原理のように回転させて投げ飛ばすようにシュートした。

 ドゴオオオオン!!!!
 ザキはどうにかバリケードでフリップアウトを免れたものの、バリケードは二枚とも破壊されてしまった。

「英雄王、アーサーの聖剣を思い知ったか」
「へっ、新型機のウォーミングアップにはなるだろうと挑んだバトルだったが……ヨーロッパ一の貴族フリッカーチームの名は伊達じゃないようだな。まさか、俺と同じ結論に達していたとは」
「なんだと!?」
「だが、俺には遠く及ばない」

 そう言って、ザキは黒いフリックスを変形させる。
 フロントとリアを延長させ、フロントをエクスカリバーにリアをロンギヌスに密着するギリギリまで近づけた。
 そして、左右に伸びたシュートポイントに両手を添えて、両腕の力を使って思いっきりスピンさせた!

「喰らい尽くせ!ダークネスディバウア!!
ダークホールジェノサイド!!!」

 パーーーーン!!!
 一気に二機のフリックスが勢いよく場外してしまった。

「う、うそだろ…!」
「我々のフリックスが……!」

「さすがです、ザキ様!新型のダークネスディバウアの開発は成功ですね!!」
「へっ、まだまだこんなもんじゃたりねぇよ。こいつの完成にはまだまだ食い足りねぇ…!」

 カッカッカッ…!
 その時、フィールドに重々しい足音が近づいてきた。
「ふん、情けない。ユーロフリッカー騎士団の名に泥を塗るつもりか」
 明らかに威厳の違う少年が険しい表情で現れた。
「アドルフ…!」
「すまねぇ!油断しちまった」
「まぁいい。団員の尻拭いをするのも騎士団長の務めだ」
 アドルフと呼ばれた少年がザキの前に立ちはだかる。
「ほぅ、てめぇがボスか」
「極東の島国のフリッカーがこれほどのものとは恐れ入った。敬意を評して、全力で叩き潰そう」
「御託はいい。とっととやるぞ」

 ザキとアドルフがフィールドに着く。
「「3.2.1.アクティブシュート!!」」

「やれぇ!ダークネスディバウア!!」
「騎士の誇りを見せろ!ジークボルグ!!」

 真っ直ぐ突き進むジークボルグと猛烈にスピンしながら向かっていくダークネスディバウアがフィールド中央で激突する。

 カッ!!!

 その瞬間、ジークボルグのフロントがバネの力で伸びたのちに跳ね上がり、ダークネスディバウアをぶっ飛ばす。
 しかし、ジークボルグもその反動に耐えきれずに弾かれてしまい……。
 両者ともに場外。お互い、自機が地に堕ちる前にキャッチした。

「こ、この俺と互角の立会いだと……!いや、それよりも今の攻撃はなんだ……?ディフィートヴィクターとも似ていたが、それとは別次元だ」
「まさか、バンキッシュドライバーの設計を元に改良を重ねたジークボルグを弾くとは…!」
「バンキッシュドライバー?」
「ふっ、どうやらこの勝負痛み分けのようだな」
「何言ってやがる……っ!」
 ザキはダークネスディバウアの変形パーツが割れている事に気付いた。
「ちっ、可動パーツの付け根の強度がまだ足りなかったか」
「俺の機体もギミックの付け根が折れてしまった。ルール上は続けられるとはいえ、破損した機体でこれ以上戦うのは本意ではないだろう」
「ちっ」
「まだまだ俺もフリップゴッドの領域には至れないという事か」
「フリップゴッド?誰だそいつは」
「知らないのか?フリックスアレイの創始者。言わばフリックスの神だ」
「なんだと……!詳しく教えろ!!」

 こうして、ザキもフリップゴッドの情報を得た。

 そして、再び数日がたち……バンとリサはギリシャの地へ降り立った。

「っひゃー!ここがギリシャかぁ!!なんかギリシャって感じがする場所だぜ!
「どういう感じなんだろう……」
「でもほんとにこんなとこにフリップゴッドがいるのかな?」
「いる可能性は低いと思うけど。最後の目撃情報があったのが、ギリシャの教会から出て行くところだったってだけだから」
「まっ、それでも何もないよりはマシか!おっしゃ行くぜビートヴィクター!フリップゴッドを求めて!!」

   つづく

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

JPEG,PNG,GIF形式の画像を投稿できます(投稿時はコメント入力必須)