弾突バトル!フリックス・アレイ 第40話

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第40話「決戦への決意」

 

 第1回グレートフリックスカップ予選ヒートはそろそろ終了の時間が近づいてきた。
 みんな少しでもポイントを獲得しようと躍起になってバトルを挑んでいる。

「ピラミネート!神秘の力を!!」
「受け止めろ!アンノウンタビュレイト!!」

「飛べ!アサルト・G・バグ!」
「桂馬の高飛び歩の餌食!次の一手はこれです!傍若歩神!!」

「撃ち砕け!ブロッケンアームズ!!」
「突破しろ!ブロッキングゴーレム!!」

「舞え!ミヤビスピリッツ!」
「和の魂なら負けない!芒月!!」

「寿司職人としては見習いでもフリックスなら負けない!トローリングムロ!!」
「おめぇの握りはあめぇんだよ!年季を見せてやれ!ヘルラッシュファイブ!!」

「漢字一文字機体同士の戦いか!面白い!!災害のように真っ直ぐ進んで壊滅させろ、災!!」
「うぉっ!なんだその棒!めっちゃ伸びる!!でも正面からの攻撃なら鬮の特殊バネで跳ね返す!その後どうなるかは運次第だけどな!」

「超武装装甲グリフォン!!」
「硬っ!ならこっちも!パーフェクトクラッシャー!必殺のバンプレスト!!」

 それぞれが想いを込めた愛機で奮闘している。
 そんな機体達のスペックに関しては機体紹介ページを見てくれ!!

 そして、リサは忍者の格好をした少年とバトルしていた。
「忍べ!旋風刃!!」
「は、早い!」
 忍者刀に手裏剣をつけたような機体の敏捷な動きに翻弄されるリサ。
「そこだ!!」
 更に、鎖鎌でマインヒットもされていく。
「ふっ、拙者の動きはそう簡単に見きれんぞ!」
「確かに、見切るのは難しいかも……だけど!」

 バッ!
 リサは明後日の方向へブレイズウェイバーをシュートした。
「自滅する気か!?」
 ウェイバーはフェンスに当たってバウンドし、速度を上げながらフィールドの中を四方八方駆け巡る。
「なに!?」
「私の動きも見切らせない!!」
 カッ!
 ウェイバーが旋風刃の横っ腹をかすめ、旋風刃は穴の上で停止した。
「無理に拙者に合わせず、拙者を上回る動きで翻弄させるとは、完敗だ」
 リサは順当に勝ち星を稼いでいた。

 そして、同じように順調に勝ち星を稼いでいるのはこの二人。
「いけぇ!リンクスドルヒ!!」
「レヒツドルヒ!!」
 双子フリッカーが使う左右非対称の二機が並んでピッタリとくっ付き、巨大な槍となって突き進んでくる。
「「ツヴァイランツェ!!」」
「甘いわぁ!!」
 巨大な槍に対して剛志とレイジは縦列フォーメーションで迎え撃つ。
 掬い上げモードのファントムレイダーがツヴァイランツェのバランスを崩し、後ろに控えたグランドギガが押し飛ばして場外させる。
「そ、そんな!」
「ツヴァイランツェが破られるなんて…!」
「ガッハッハ!どうした?お前ら双子の絆はそんなもんか!」
「くっ、バカにして!」
「なら、これはどうだ!」
 今度は反対に並べた。
 槍が両サイドにまるでクワガタのように突き出ている形態だ。
「「ツヴァイハンマー!!」」
 再びアクティブシュート。
 ドルヒ二台が凄まじい威圧感で迫ってくる。
「受け止めろ!グランドギガ!!!」
 ガンッ!!
 グランドギガが二機分を受け止める。
「なに!?一台で二台分の攻撃を受け止めただと!!」
「もう一台はどこに!?」
 レヒツ二台を受け止めたのはグランドギガ一台のみ。ファントムレイダーが見当たらない。
「ここだよ!」
 いつのまにかファントムレイダーはフィールドの端にいた。
「い、いつのまに!?」
「ファントムレイダーは相手フリックスをすり抜けられるんだ!いけっ!!」
 先手を取ったレイジが一気にレヒツ二台をマインヒットした。
 これで剛志&レイジペアの勝利だ!

「かなり勝ち星も溜まってきたな」
「絶好調だね、僕達!」
「おう、タッグ戦でわしらに勝てる奴はおらんな!がっはっはっ!!」
 意気揚々と次の対戦相手を探して歩いている二人へよく知った声が聞こえてきた。
「へぇ、じゃあ次は僕達とやろうよ」
 そこには、ユウタとゲンゴが立っていた。
「お前らは!」
「ユウタに、ゲンゴ……!」
「そう警戒する事もないんだな。オデ達は純粋に大会を楽しんでるだけなんだな」
「でも一般参加者はレベルが低すぎて退屈してたんだぁ〜。君達なら少しは退屈凌ぎになるでしょ」
「……!」
「あ、そうだ。せっかくなら持ち星全部賭けて戦うのはどう?」
「なんじゃと!」
「オデ達としては、ここで厄介なお前らを確実に潰しておきたいんだな」
「でも君達だって、僕らをやっつけるチャンスでもあるんだよ?」
 リスクの高い条件だ。負けてしまえば決勝進出の夢が途絶えてしまう。
 しかし、ユウタとゲンゴをここで倒せるというのは大きい。そして何より。
「剛志、この挑戦受けよう!」
「レイジ?」
「どんな条件でも、僕達はこの二人に勝たなきゃいけないんだ!それも、ちゃんとしたタッグ戦って形で……この予選じゃなきゃそれが出来なくなる!」
 決勝トーナメントはタイマンで行う事になる。
 タッグバトルとしてリベンジがしたいなら今この瞬間しかない。
「ここであの二人に勝てないようなら、いくら星があっても僕達が決勝に勝ち上がる意味がない!」
「レイジ……ふっ、強くなったのぅ。分かった!お前らの条件受けてやろう!!」

 そして、四人はフィールドについて対峙した。

「アクティブシュート!!」

「あはは!最初から本気で行くよ!!」
「出鼻を挫いてやるんだな!!」
 タイダルボアとベノムエロシオンが縦に並んで突進してくる。
「「フォーメーションシュート!!」」
 前にやられた必殺技だ。
 最初に力の差を見せつけて心を挫く作戦だろう。
「二度も同じ手を使うとは舐められたもんじゃな!レイジ!!」
「うん!」

 ビュンッ!!
 突如、ファントムレイダーが猛スピードでタイダルボアへ突っ込み、かすめるように掬い上げた。

「なに!?」
「バランスが…!」
「確かに二機分のパワーは強い!だけど!!」
「一度バランスを崩せば、自分の重さの慣性で立て直すのは不可能じゃ!!」
「くっ!グリップが!!」
「ブレーキが効かない!!」

 タイダルとベノムはグリップを失ったせいで自身の慣性のままに自滅してしまう。
「じ、自滅なんだな……」
「いや、でもあのファントムレイダーとか言う機体だって!あんな勢いで突っ込んできたんだから自滅してるよ!」
 同時自滅ならダメージにはならない。
 そう思って見てみたが……。

「うっ!」
「ワシがレイジを助けんわけがなかろう?」

 ファントムレイダーはグランドギガに受け止めてもらうことで自滅を回避していた。

「グランドギガの巨体ならファントムレイダーはすり抜けずに受け止めてくれる!」
「この大会でワシらのコンビネーションには磨きがかかっとるんじゃ!もう同じ手は食らわんぞ!」
「そ、そんな…!こんな短期間で成長できるなんて」
「ユウタ、次は分散作戦なんだな!1vs1なら基本性能はこっちの方が上!」
「わ、分かったよ!」

 仕切り直しアクティブシュート。
 今度は、タイダルボアVSグランドギガ、ベノムエロシオンVSファントムレイダーとなるようにばらけてシュートする。

「いけぇ!タイダルボア!!」
「受け止めろ!グランドギガ!!」

 バーーーーン!!!
 タイダルボアとグランドギガが正面から激突する。
 パキィ……!!
 その時、タイダルボアから歪な音が聞こえてきた。
「そ、そんなっ、アタックブレーキシステムが……!」
 タイダルボアのサイドについているギミックがアクティブの衝撃によって破損してしまった。
「大袈裟な機能ほど脆いからのぉ!FXシステムで強化したグランドギガとの衝突には耐えられんじゃろ!」
 バキィ!!
 剛志はこのままブレーキを失ったタイダルボアをフリップアウトさせた。

 一方のベノムエロシオンとファントムレイダー。
「デュフフ、おでのベノムエロシオンにはどんな攻撃も通用しないんだな」
「どうかな?どんなに防御力があっても、これには耐えられないよ!」
 バシュッ!
 ファントムレイダーは乗り上げモードになり、目の前のマインを弾きつつ飛び上がってベノムエロシオンの上部に着地した。
「な、なんなんだな!?」
「マインヒットダメージに防御力は関係ない!」
「だったら次のターンで振り落としてやるんだな!」
「まだだ!フリップスペル発動、スタン!!」

 スタン……シュート後に敵機が転倒したり、敵機のシャーシ上部に自機のシャーシがかぶるように停止した場合にもう一回シュートできる。

「そ、そんな…!敵フリックスの上に乗って停止するなんて、滅多に起こらないのにそんなスペルいれるなんてありえないんだな!!後出しなんだな!!!」
「そんな事ないよ。スライム状のボディのおかげで上に乗るのはやりやすかったからね」
「ベノムエロシオンの性能に合わせてスペルを選んでたと……!?」
「大会前のバトルの時に僕達もデータはとらせてもらったんだ!対策は万全さ!!」
 バシュッ!
 ベノムエロシオンの上からシュートし、マインに当たる。
 これでベノムエロシオンは撃沈だ。

「やった!ついにあの二人を倒したよ剛志!!」
「おお!ワシらの勝利じゃな!!」
「僕達が、負けた…!」
「予想外なんだな…!」
「さぁ約束じゃ!勝ち星全部貰おうか!!」
「ちぇ」
「仕方ないんだな」

 ユウタとゲンゴは大量の勝ち星を二人に渡した。
 これでユウタゲンゴは実質予選落ち、剛志レイジは予選通過確実だろう。

「でもこれで安心しない事だね」
「本当の戦いはこれからなんだな」
「そのくらいわかっとるわい」
「1vs1でも僕達は負けないよ!」
「まぁ、せいぜい頑張るんだな」
「ふん、次の大会は絶対に僕らが勝つからね」

 ユウタゲンゴは捨てゼリフを残して去っていった。

 リサ、剛志、レイジ、それぞれが勝ち星を稼いでいく中。
 バンは……。

「シェイドディバウア……俺のせいで、覚醒させちまった……くそっ!」
 前回、シェイドディバウアを覚醒させてしまった事と無残にも負けてしまったことのショックで戦闘意欲が起きずに呆然としていた。
 時間が迫っている。このままでは予選通過も厳しくなる。

「やべぇ、もう時間が…!そろそろ戦わないと」
 時間が迫ってることに気づいて動き出すバンへ声を掛ける二人組がいた。
「あっ、段田バンだ!!」
「ほ、本物!!!」
「え、お前らなんで俺の事知ってんの?どっかで会ったっけ?」
「いや、俺たち段田バンのファンでさ!なぁ?」
「お、おう!まさか、ほんとに会えるなんて……あ、お、俺たちの機体見てもらおうぜ!」
「そ、そうだなっ!え、えっと、これ、俺たちの機体なんだ!良かったら見てくれ!!」
「あ、あぁ、別に構わないぜ」
 二人は畏れ多いような態度をしながらもバンに機体を見せてきた。
「この機体……ヴィクター?」
「うん!ドライブヴィクターフレームを改造して作ったんだ!
俺のはシャドウヴィクター!黒くするとかっこいいかなって!」
「俺のは、ドライブフォックス!ちょっとカラーリング変えたら狐っぽくなるかなって」
 二人はぎこちないながらも嬉しそうに愛機について語る。
「そっか、いい機体だな。強そうだぜ」
「え、えへへ、そう?」
「ありがとう!嬉しいなぁ」
 二人は嬉しそうに笑う。
「それじゃ、俺たちはこれで」
「残り時間まで頑張って!」
 そう言って、二人はその場を去ろうとする。
「え、おいちょっと待てよ。せっかくだからバトルしてかないのか?」
 バンがそう言うと、二人は気まずそうに目を逸らした。
「実は俺たち、もう星が無くなっちゃってさ。だから戦えないんだ」
「せめて、段田バンに一目会いたいなって思ってさ。これで満足なんだ俺たち」
 寂しそうに言う二人に対して、バンは思わず口を開いた。
「何言ってんだよ。ここまで来てそりゃ無いぜ。星なんて賭けなくていいからバトルしようぜ!」
「で、でもそんな、時間もないのに」
「段田バンには何の得にもならないんじゃ」
「んなことねぇって!お前らの機体見てたら闘志に火がついたんだ!俺は戦いたい!!」
 バンがそう言うと、二人は顔を見合わせてから頷いた。
「そ、そう言うことなら……」
「よろしくお願いします」

 こうしてバトルが始まった。
 ドライブヴィクターをモチーフにしている二体とは言え初戦は素人の機体。しかも進化系であるディフィートヴィクターの前には歯が立たない。

「やっぱり段田バンは強い!でも……」
「うん、すごく楽しいな!感激だ!」
「大会に来て良かった!ほんとに」

 終始押されているのに、二人は楽しそうだった。
(そっか、そうだよな……そうなんだよな……!)
 そんな二人を見て、バンも何かを悟ったようだ。

 バキィ!!
 そしてついにディフィートヴィクターが二機を一気にフリップアウトしてしまった。

「あはは、負けちゃったかぁ」
「でもスッキリしたぁ!!」
「あぁ、頑張って作った愛機使ってこんな大会で強い人と戦うのってなんか良いよなぁ」
「あ、でもごめんなさい。やっぱり時間を無駄にさせたみたいで……」
「いや、お前らとのバトル、俺も楽しかったぜ!勝ち星なんかよりでっかいものをもらった」
「「??」」

 疑問に思う二人だが、バンの表情は憑き物が取れたかのように晴れやかだった。

(そうだ……そうなんだ!バトルは楽しいんだ!大事に作った愛機で強い奴と戦うだけで……!ダントツ一番を賭けて戦う事が最高にワクワクするんだ!!
相手が強ければ強いほど、負けそうになればなるほど、そのスリルがたまらねぇんだ!!
だったら、あんな強い奴を作っちまった以上、喜ぶしかないじゃねぇかよ!)

 バンはグッと拳を握りしめて叫んだ。

「ザキーーーー!!!!もっともっと強くなってくれーーーー!!!!!
俺はそれを超えてダントツ一番になるぜーーーー!!!!!」

 

    つづく

 

 次回予告

「グレートフリックスカップ予選もついに終了!上位8人になったのは一体誰だ!?
で、肝心の俺は…10人目!?

次回!『ラストチャンス!三つ巴の戦い!』

次回も俺がダントツ一番!!」

 

CM

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